偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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マーリンは二人きりかケイ卿がいる時は「アリトリア」、
それ以外に人がいるときは「アーサー王」なので、誤字が……

本話はあっさり風味です。


20.ブリテン統一

<Side:アルトリア>

 

 

「早く準備しろ! 諸王の軍勢がすでに動いているやもしれん!」

「恐らく、あれはリエンス王の神剣……震えが止まらん」

「何を言うか! 我らがアーサー王も聖剣を持っておられる!」

 

 

 キャメロット城内では騎士と従者たちが慌ただしく駆け回っていた。

 無理もない。先ほど、ウェールズ方面――リエンス王の拠点から、地鳴りのような衝撃が伝わってきたのだ。

 

 ロット王ら北方諸王の軍勢は、マーリンの幻術で足止めしている。

 ……だがリエンス王の動きは想定よりも早い。

 

 一体、何が起こったのでしょう?

 本当にリエンス王の軍によるものなのか……。

 

 どちらにせよ、戦支度は整ってきている。

 あとは出立前の最後の調整を済ませればならない。

 

 いやそれよりも先に動揺する兵の心を鎮めねばならねば――

 

「やあ、アルトリア。少しいいかい?」

 

「マーリン……今は忙しいのですが」

 

 いけない。余裕を失い声が荒くなってしまった。

 マーリンに当たったところで、何の意味もない。

 

「先ほどの揺れのことだよ。あれは君たちに向けられた攻撃ではない。安心してくれ」

 

「……信じましょう。ですが、そうでなくとも警戒は怠れません」

 

「大丈夫。もう終わったよ。一緒に城門まで来てくれ」

 

 マーリンに促され、執務室を出て城門へ向かう。

 

 すれ違う若い騎士たちは焦りと興奮に満ちていた。

 年長の騎士たちが彼らを叱咤している。

 

 私の軍は若い騎士が多い。

 腕は確かだが、大戦の経験が浅いのが難点だ。

 

 だが、城門に近づくにつれて別の騒ぎが耳に届く。

 

 ……また厄介な客人でも来たのだろうか。

 

 

「アーサー王、早かったな」

 

「ケイ卿。この騒ぎは一体?」

 

「そこの簀巻きにされたヤツが原因だ」

 

 簀巻き……? この忙しい時に何をやっているのですか…。

 

 道を空ける騎士たちを抜け、視線を下げる。

 そこに転がっていたのは――

 

 

「リエンス王!?」

 

 

 決戦の相手であるはずのリエンス王が、包帯と縄にぐるぐる巻きにされて転がされていた。

 

「アーサー王、やはりこの方はリエンス王ご本人で?」

 

「ええ、間違いありません。しかし……なぜここに?」

 

「今朝がた、『双剣の騎士』と名乗る者が城下に現れ、この方を置いていったのです」

 

 双剣の騎士? 

 そんな者、我が軍にいた覚えはないのですが……

 

 だがリエンス王を捕らえるほどの実力者が、名も知られていないはずがない。

 

 誰が、何のために――?

 

 

「ベイリン卿のことだよ」

 

「「は?」」

 

 

 マーリンが、まるで悪戯を打ち明けるように微笑む。

 

 ベイリン卿……。

 彼を誅したいと嘆願する騎士たちを、私は止めなかった。

 結果、追手は全滅し、関係者は悲嘆に暮れている。

 

 そんな彼が、なぜ私に協力を?

 

「……何のために?」

 

「彼ら兄弟からの伝言だ。『さっさとブリテンを統一しろ』ってね。

 言っただろう? 彼は悲劇を呼ぶが、君には大きく貢献するって」

 

 ……マーリンの予知は外れない。

 あの時は軽く聞き流していたが、確かにその通りになっている。

 

 私への忠義のためでなくとも、彼らはブリテンの騎士として私に期待しているのだ。

 

 ならば――私もそれに応えねば。

 

 

「少し余裕ができましたね。着実に準備し、確実な勝利を目指しましょう」

 

「いきなり攻め込まれることがなくなった分、楽になったな」

 

 ケイ卿と共に戦術を練り直す。これで時間が稼げる。

 

 ん? マーリンが何か思いついたようだ。

 彼の助言は参考にすべき――

 

 

「そうそう。リエンス王の弟、ネロ王がすぐに攻め込もうと準備してるよ」

 

「「え?」」

 

「彼を含めた十二王の連合の動きは、もうすぐそこだね」

 

「「ちょっと待っ――」」

 

「それにモルガンも起きそうだから、北方を覆ってる幻術ももう保たないだろうね」

 

「それを早く言いなさい!! マーリン!!」

 

 

 

 

 

 ……そして数日後。

 たった二日で、どうにか出立の準備を整え、全軍を率いテラビル城へ向けて進軍していく。

 

 我ら三千。

 対する敵軍、総勢一万を超える大連合。

 

 ペリノア王の軍勢と合流しても、なお倍以上の差がある。

 

 ネロ王に次ぐ戦力を誇るロット王は、まだ動けぬが――時間の問題だ。

 

 だが、負けるつもりなどない。

 

 ガウェイン卿、ラモラック卿、ランスロット卿……

 若き精鋭たちが、私の背に続いてくれている。

 

 まずはエクスカリバーで敵陣を粉砕し、士気を上げる!

 

 

 WAAAAAAA!!!

 

 

 いや、私はまだ何もしてないのですが?

 大きな鬨の声がこっちにも響いてきてるは、おかしいでしょう!?

 

「まだ始まっていないはず! 誰かが先走ったのですか!?」

 

「いえ! 誰も命を破っておりません!」

 

「では、一体何が……!」

 

 馬を駆り、最前線の丘へと登る。

 何が起きたのか――自ら確かめねば!

 

 

 

「なんじゃあ、ありゃあ……」

 

「ペリノア王、どうかし――」

 

 同じ様に考えていたペリノア王もその場におり、呆けた声を上げている。

 戦場を見下ろした私も言葉を失った。

 

 

 眼前にあるものは――

 

 竜巻と津波が騎士たちを呑み込み、赤い霧を生み出す悪魔が吠える光景だった。

 

 


 

 

<蹂躙と終結>

 

 

 アルトリアたちが見た三つの災厄――その正体は、言うまでもなくベイリン三兄弟である。

 

 

 

「オラオラオラァ! てめぇの兄王は強かったぞぉ!!」

 

 長男・ベイリン。修復した石剣と無銘の剣を両手に、斬撃の嵐を放つ。

 リエンス王を追い詰めた技に抗える者などおらず、軍勢はただ巻き込まれ、肉片と化していく。

 

 哀れにも標的にされたネロ王は指揮を執ろうとするが――蹴散らされるのも時間の問題だった。

 

 

 

「少し借りましたが、素晴らしい剣ですね。このまま貰えないでしょうか?」

 

 次男・ベイランはリエンス王から奪った神剣を携え、巨大な波のように薙ぎ払う。

 一撃ごとに津波の斬閃が起こり、騎士たちを鎧ごと両断していく。

 

 防壁を構えた諸王の一人も、大楯ごと横一閃に斬り伏せられ、戦線が崩壊した。

 

 

 

 そして三男・シンは――

 

 

「GUuuGAaaaAAaaa!!!」

 

 

 もはや人ではなかった。

 彼は異形の魔人と化して暴れていた。

 

 

 リエンス王との戦いに続き、大戦による死と呪い、憎悪を一身に浴びたシン。

 そのすべてが彼に吸い込まれ、自身の呪いが強化され、肉体と精神を蝕む。

 

 そうして――青白い左腕を除く肉体を、醜悪な異形へと変えていく。

 

 膨れ上がった肉、赤黒い鱗、黒い体毛と羽、鎌のような爪。

 竜・蛇・狼の呪いを核に、鳥や虫、魚の因子まで混ざり合う。

 

 吐息は瘴気、踏みしめる地は腐り、視線は恐怖を、声は嫌悪を、霧は毒と穢れを撒き散らす。

 

 ――世界を歪める悪魔。その具現だった。

 

 

 

「う、うわぁぁぁあああ!!」

 

 恐怖を振り切り、騎士たちは挑む。

 だが、結果は残酷だった。

 

 左手で触れられた者は石と黄金に変じ、他者の欲望を誘う贄となる。

 爪に掠められた者は呪いを写され、人狼となって仲間を喰らう。

 撃たれた鱗を受けた者は病を発し、鱗から変質した虫に体内を侵食されて崩れ落ちる。

 

 口に咥えた魔剣が、死者と生者の血を啜り、主の力へと還元していく。

 

 

『今ナラ兄ちゃんタチを超えられるカ?』

 

 竜、蛇、狼――それぞれ別の呪い、生物。

 しかし、全ての特徴を持つ悪魔がいる。それこそがシンに”怒り”を教え与えた存在。

 

 シンを媒体として、世界に影響を与えようとしているもの。

 

 

 あの悪神のように凡人を化身としない。この救世主モドキこそが相応しい。

 過剰に罪を背負い、人を堕落させる――これほど神と救世主を貶す存在はいない。

 

 

 精神が、肉体が、さらに悪魔へと近づく。

 血の霧を吸い込み、竜人キメラの姿へと変わったシンは空へ舞い上がる。

 地上の騎士たちを見下ろし――凝縮した穢れを吐き出した。

 

 

 ――世界が、溶けた。

 

 

 諸王の軍勢の一角が、跡形もなく消滅する。

 

 

「調子に乗りすぎだ、阿呆」「流石においたが過ぎますよ~」

 

「へぶぅぅぅううう!!」

 

 

 次の瞬間、ベイリンとベイランの剣が閃き、悪魔の翼と角を両断した。

 そのまま大地へと流星のように蹴り堕とされ、杭のように突き刺さる。

 膨れた肉体が剥がれ落ち、やがて元の少年の姿へと戻っていった。

 

 

「ブレスはいいけど、こっち巻き込むなよ。面倒くせぇ」

 

「少し危なかったですねぇ」

 

「いやリエンス王のときは俺がリン兄に巻き込まれて死にかけたんだけど!!」

 

「それはそれ、これはこれ」

 

 塵に包まれた大地の上、三兄弟はいつも通りのやり取りを交わす。

 そこが地獄の只中でも、彼らにとっては変わらぬ日常だった。

 

 

「よし、もう一度……あれ?」

 

「おいおい、もうダウンかよ」

 

「たった一回なのにめっちゃ疲れた……動けない……」

 

「シン、グーラでの回復用に少しは残せばよかったのでは?」

 

「じゃあ、俺がその辺の生け捕りにしてくるから、それ使えよ」

 

 

 再び地獄が生まれるかと思われた、その瞬間。

 

 

「いや、君らはもういいから! 他の騎士たちの手柄がなくなるから…」

 

 

 突然現れたマーリンが、珍しく慌てた声で止めた。

 

 こうして――三兄弟による蹂躙は終わった。

 

 

………………………………

 

 

 ベイリンたちが暴れ去った後、アルトリアの軍は一気に優位に立つ。

 

 若き騎士たちが目覚ましい戦果を挙げていた。

 

 太陽の騎士ガウェインは歩兵を率い、防御陣形を力任せに粉砕した。

 烈火の騎士ラモラックは騎兵を率い、正面突破で押し貫く。

 湖の騎士ランスロットは精鋭とともに要所を切り崩した。

 将来の忠義の騎士ベディヴィエールとグリフレットも、王の傍らで見事に支えた。

 

 この戦いは、彼らを一回りも二回りも強く成長させた。

 ――後に続くサクソンとの長き戦いの、まさに前哨戦として上々の結果であった。

 

 十二王との決戦は、アーサー王の勝利に終わった。

 

 

 

 

 だが、すべてが良い結末ではなかった。

 

 

「ロット王が孤立しておる、武功の稼ぎ時じゃ!」

 

「父よ!? 王からガウェインへの恩賞を知っているだろう!」

 

「戦にて優先すべきは功よ。それに魔女の夫など、王にも邪魔じゃろ?」

 

 ガウェインの願いも虚しく、ロット王はペリノア王に討たれる。

 

 

 

「此度の活躍、実に見事だったランスロット卿」

 

「ありがたきお言葉……その御方は?」

 

「こちらはギネヴィア。私の妻となる女性だ。いずれ護衛を任せることもあるだろう」

 

 アルトリアの目に留まったランスロットはギネウィアと引き合わされる。

 

 

 

「あああぁぁぁあああ……」

 

「哀れな人の私(モルゴース)。夫を殺されても妹を憎みきれず心を病むなんて」

 

「せめて……子供たちは……」

 

「安心しなさい、長く利用してあげるわ。それと、もう一度その腹を借りるわ」

 

 ヴィヴィアンとモルゴースの力が弱まり、モルガンが肉体の主導権を握る。

 

 

 ――ブリテン破滅の足音は、静かに鳴り始めていた。

 

 

 ベイリンの物語は終盤へと突入する。

 しかし、シンとアルトリアの物語は、まだまだ序盤である。

 

 


 

 

〇ベイリン

 あまりの活躍に「天使か悪魔か」と諸説によって呼ばれたらしい。

 どこに天使要素があるんだコイツに?

「あ、悪魔たん…」

 

蛮勇の三兄弟(サヴェージ・ナイツ)

 三兄弟の逸話が元になったベイリンの対軍宝具。

 ・三人で百人を倒し、リエンス王を生け捕りした逸話。

 ・三人で諸王連合の数千の軍勢を蹴散らした逸話。

 弟二人を召喚して、突撃するだけで対軍扱いになる。

 

〇ベイラン

 この後、マルミアドワーズをアーサー王に献上した。

 流石に持ち続けるのはチートすぎる。

 アルトリアもエクスカリバーよりマルミアドワーズの方が使いやすい模様。

 

〇シン

 ジークのFGO宝具とかなり被った。

 少年期で英霊召喚されるなら、この20話ごろ。

 セイバーでなくキャスターの適性。

 

〇悪魔と英雄たちの残滓

 ランスロット戦から目立ち始めた。

「アンリマユのヤツ、ただの凡人を選ぶなど阿呆か」

「ドラコーとは別方向だが……神を貶めるのに良い」

「我の化身にふさわしく育ってくれよ?」

 

〇ガウェイン

 恩賞としてガラティーンを賜った。

 彼が一番欲しいものではなかった。

 

〇ラモラック

 ガウェインとぎこちなくなった。

 

〇ランスロット

 まだまだギネウィアと知り合ったばかり。

 彼女の護衛が増えるほど、彼女の苦悩に触れ始める。

 

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