偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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青年期を開始していきます。

今話はシンたちと色んな騎士の紹介回です。色々と省略してます。
気になった騎士の名前があればググってみてください。大抵の騎士は面白い経歴してます。


青年期 円卓編
30.初期の円卓


 ブリテン統一を果たしたアーサー王――アルトリアに、大きな試練が降りかかる。

 

 サクソン人が軍隊的な行動を開始する予兆を、宮廷魔術師マーリンが察知したのだ。

 その背後には、ブリテンの裏切者・卑王ヴォーティガーンの影もあるという。

 

 アルトリアは即座にブリテン中へと大号令を放った。

 

 

「今こそ、サクソンとの決戦の時! 騎士たちよ、我が元へと集え!」」

 

 

 かつての諸王との戦いで味方であった者、敵であった者、さまざまな騎士たちがキャメロットへ向かう。アルトリアを王と認め、誰もがブリテンの危機に駆り立てられた。

 

 その中には、アルトリアの元で活躍した若き騎士の姿もある。

 

 ガウェイン。

 弟ガヘリスを従騎士とし、父の死を乗り越えんと遍歴の旅を続けていた。

 彼は旅の中で友となった騎士たちと共にキャメロットへ戻った。

 

 ラモラック。

 諸王戦後も反抗的な城主たちに挑み続け、戦いに明け暮れていた。

 彼は城主たちから奪った道具を抱え、兄アグロヴァルと共に集う。

 

 ランスロット。

 一度フランスへ帰還し、祖国を取り戻すために尽力していた。

 落ち着いた彼はブリテンへの食料支援を取り付けて帰ってきた。

 

 こうした、特に優れた騎士たちは王と同じ卓に並び立つ「円卓の騎士」となることを認められた。

 決闘の勝敗や戦いの負傷により円卓の十三席は何度か入れ替わりはあったが……

 安定した強さでガウェインらのように固定化されたメンバーも多い。

 

 その中に、呪いの騎士――シンの姿があった。

 

 

 

 

<サクソンとの戦い一回目>

 

「皆の者、ご苦労であった。初戦を勝利で終えられたことを嬉しく思う」

 

『はっ!』

 

 アルトリアは集まった騎士たちを見渡し、堂々と礼を述べた。

 

 サクソン軍の“威力偵察”に対し、策を練られる前にアーサー軍は速攻の奇襲を敢行。

 

 その効果は覿面。戦力が集まりきる前に散らし、削ることができた。

 

「ケイ卿、ルーカン卿たちも城の防衛ご苦労であった」

 

「あっちも、お前が出た途端に襲ってくるのは予想通りだったがな」

 

「ケイ卿、口が悪いですよ」

 

 敵の奥の手も潰し、正に完全勝利と言えた。

 

 

 

 

 議題は次の方針についてへと移る。

 

「アーサー王、このまま追撃を続けましょう」

 

「待て、深追いは危険だぞ。まだ敵の余力は多い」

 

 ガウェイン、ラモラックら勇猛な者はこのまま攻撃継続を。

 ケイ、アグラヴェインら冷静な者は次に備えた立て直しを進言した。

 

 ただ――円卓内外にも若い騎士が多く、彼らは勝利に沸き、攻勢を主張する声が多い。

 

 しかしアルトリアは、一度戦略を見直したいと考えていた。

 今回の勝利は“突発的な奇襲”によるもの。すぐに対応される可能性は高い。

 また、同じ手が今後も通じる保証はない。

 

「シン卿、貴公はどう考える」

 

「あ? 俺なら……いい案があるぞ」

 

 少し空気を換える意味も込めて、異端の騎士へ問いかける。

 かつて城にいたはずの記憶を失い、ケイ並みに無礼な態度でシンは答えた。

 

「まずは蛮族どもがいる港湾部へ、俺とマーリンで作った毒の雨を降らせる」

 

「騎士シン、それは止めてくれ」

 

「川の上流へ行き、全てを呪いの血に変える」

 

「却下です!」

 

「疫病爆弾にした死体を送り返――」

 

「全部ダメです! 後々の悪影響が大きすぎます!」

 

 シンの自身の呪いを用いた悪辣な策は、円卓全員から即座に却下された。

 騎士道に反し、勝利ではなく破滅を招く手段は受け入れられない。

 誰もブリテンを守りたいのであって、壊したいわけではない。

 

「後々のこと考えて俺の案を拒否するなら、次の方針もちゃんと先を考えてくれ。

 無理に突っ込むなら、俺とアーサー王にブッパさせることになるぞ」

 

 過激な提案にガウェインたちも引き、場は落ち着きだす。

 最終的には、戦力の立て直しと偵察を優先する方向でまとまった。

 

 

 

 

 円卓の議題は早めに終わり、気楽な会話に切り替わる。

 ケイやアグラヴェインなどはこういう場ではすぐに退席する――が、 

 

「私、ルーカンはそろそろ、この席を返上したく思います」

 

「「「待て待て待て!」」」

 

 今日はそうはいかなかった。

 

 

「私はワイン係、従者長が主であって、騎士は兼任で勤めていたのですが……」

 

「まだ人手不足なんだよ」

 

「エクター卿やボードウィン卿もお年で席を譲られましたので、私もと」

 

「……皆の者、誰か推薦したい騎士はいるか?」

 

 アルトリアの問いに、騎士たちは考える。

 

 

「我が弟ガヘリスは、身内贔屓を抜いても良き騎士かと」

 

「同意する」

 

「ガヘリス君か。真面目だよなぁ」

 

 ガウェインとアグラヴェインは弟のガヘリスを推す。

 ガウェインと共に旅をした従兄弟のユーウィンや友のマーハウスも同意した。

 既にガヘリスの実力は広まっていたため、身内贔屓とは言われなかった。

 

 

「私はパーシヴァルという若者に席を譲っても良いと思う」

 

「兄上、私も認めますが、交代には時期尚早かと」

 

「儂は外部顧問を辞めんぞ。ま、あの者なら大丈夫じゃろう。なにせ――」

 

「「父よ、口を閉じろ」」

 

 アグロヴァルとラモラックもパーシヴァルを推す。

 彼らはパーシヴァルが異母弟と隠しているが、好意が漏れていた。

 外部顧問で父のペリノア王はその辺りの機微には疎かったが……。

 

 

「少々お時間をいただければ、我が弟ベディヴィエールを仕上げます」

 

「あいつ、もっと自分に自信を持てばいいのにな」

 

 ルーカンとグリフレットはベディヴィエールを推す。

 彼は義腕のハンデを物ともせず、従者としても騎士としても十分な資質があった。

 

 

「いや、誰もが身内ばっかじゃねぇか」

 

「……私もその内、従兄弟を推薦しようと思っております」

 

「ランスロットもかよ。まあ、道化師ダゴネット入れるよりマシか」

 

 シンとランスロットは現状では誰も推薦せず見送った。

 二人は強者ゆえに、円卓に求める強さの基準が無意識に高かった。

 

 

「指揮や内政寄りでも、まずウルフェンに勝てなきゃダメだろ」

 

「シン卿はあの子を推薦しないので?」

 

「まだ十二のガキで騎士でもないんだぞ……

 いくら俺でも狂犬を推薦しな――」

 

 

「シン殿~!! また、ウルフェンが暴れておりますぞ~!!」

 

 

『…………………』

 

「ディナダンか。悪いが、先に退席させてもらう」

 

 円卓が静まる中、シンが退出する。

 その後すぐ、大地を溶ける音が響いた。

 

 

 こうしたことは何度もあった。

 バースは好奇心のままに動き、ウルフェンは狂気のままに暴れる。

 その度にシンが後始末に走るのだった。

 

 そして――いつの間にか、他の問題児の後始末もシン担当になっていた。

 己の呪いを用いて、恐怖というものを叩き込むのことが日課であった。

 

 もっとも、一番の問題児であるウルフェンは恐怖を覚えること自体がなかったが……。

 

 

(ケイ卿、アグラヴェイン卿、シン卿。

 この三名が“憎まれ役”となり、円卓は上手く回る。

 ……シン卿の策は半分以上、本気だったろうが)

 

 アルトリアはシンを嫌っていなかった。

 むしろ必要な役目として評価していた。

 

 彼女と同じくマーリンを師に持つ優秀な騎士であり、魔術師。

 誰も座れぬ厄災の席を埋めた異端の戦力。

 

 彼女にとって、シンは“危険だが不可欠な柱”だった。

 

 

「いつも騒がしく、礼儀もなってないな」

 

「呪いを引き受けておられるのは感謝しておりますが……」

 

 他の騎士たちも敵に回るより味方としておいた方が良いと考え、受け入れていた。

 

 たとえサクソン軍相手でも本気で戦う事を禁じられた”最悪の騎士”。

 彼は先ほど提案した悪辣な案を単独で実現できる怪物。

 光を呑み込む堕剣を操り、アーサー王に匹敵する破壊を容易くもたらす存在。

 

 それこそが円卓におけるシンだった。

 

 

「昔に比べると、随分と世話焼きになりましたね」

 

「騎士シンは愚者と弱者には変な人気はあるのだ」

 

「人に甘く、厳しい。それでも、マーリン殿よりかは接しやすいですね」

 

 一部の“昔の彼”を知る騎士からは、少しだけ好意的に見られていた。

 記憶を失っても、人を見下した歪んだ優しさが残っていたからである。

 

 “悪辣だが……身内には少し優しい騎士”

 

 彼らの評価は、実際のシンの本質に近かった。

 ただ、最低限の騎士道……人として道ぐらいは守って欲しいとは思っていた。

 

 

 

……………………………………

 

 

 

「で、今日は何があった」

 

 城の裏庭。

 シンの呪いで泥へと変質した地面に、騎士たちと少女がずぶずぶと肩まで埋まっていた。

 

 命の危険があるはずなのに、全員が妙に不貞腐れた顔をしている。

 

 ――だが、キャメロットの者たちは誰も動じなかった。

 

 最悪の騎士による“後片付け”はもはや日課であり、

 これでも相当手加減されていると理解していたからだ。

 

「ディナダン、今日は決闘騒ぎじゃないんだろ?」

 

「決闘は騎士の花ですぜシン殿。喧嘩も止めねえ。

 けど……ウルフェン坊、いつもやり過ぎるでしょう?」

 

(……まだウルフェンが女だってバレてねぇのか。

 いや、アーサー王がバレてない時点で今さらだな)

 

「ワウ」

 

 シンは泥に沈む騎士たちから事情を聞く。

 

 ──サクソン戦で武名を上げた若い騎士が、ウルフェンに木剣を渡して「勝負だ」と挑発した。

 だが木剣を受け取る前に、ウルフェンは蹴り飛ばし、転がったところを容赦なく殴打。

 

 止めに入った数名の騎士も、あっさり伸されてしまったらしい。

 

「今回はウルフェン悪くねぇだろ。挑発したのはそっちだし。

 それに……グーラ使わなかったな。我慢できて偉いぞ~」

 

「ワフ~~」

 

 シンが犬を撫でるように頭をぐしゃぐしゃに撫でる。

 

 もっとも、ウルフェンが我慢したのではなく、ただ“殴る方が早い”と思っただけだった。

 それでも以前よりはマシなので、シンはよしとした。

 

 ウルフェンはいつだって戦いを求める。

 

 新入りが馬の世話を頼んだ。

 寝ていたら騎士たちが起こした。

 狩りに成功して肉がうまかった。

 朝の日差しが気持ちよかった。

 

 ──喜怒哀楽のどれであっても、彼女には“戦う理由”に変換されてしまう。

 狂気に満ちた彼女には理屈など関係なかった。

 

「待て待てシン殿。今回は確かにこの連中が悪いが、せめて決闘の作法くらい教えたらどうだ?」

 

「無理だな。こいつは実戦向けの訓練相手と思って使え。

 死にかけても肉食って寝れば治るんだから、丁度いいだろ」

 

「ワウッ!」

 

「ほら、本人もやる気だ」

 

「いや、その坊主、腕前が円卓に片足突っ込んでんだが……」

 

 騎士たちは愚痴りながらも、どこか呆れた感じが混じっている。

 

 ウルフェンは確かに手に負えない。

 しかし、サクソンとの戦いでは真っ先に敵陣へ突撃し、伏兵も嗅ぎ当て、

 小規模な戦でも初戦の大戦でも、多くの騎士や兵士を結果的に救っていた。

 

 彼女の暴走で怪我人も出るが、

 その何倍も敵を削ってくれるのも事実だった。

 

 

 

「この前なんざ、狩りのついでに迷子の子ども連れて帰ってきたな」

 

「訓練の相手すると、肉分けてくれることもある。うまいんだこれが」

 

 騎士たちは半笑いで愚痴を言い続ける。

 

 ウルフェンは弱者に興味はなく、殺さない。シンに命じられれば助けさえする。

 強者なら仲間と認め、戦う以外にも多少は機嫌よく接する。

 

「……まぁ、扱いに困るが、戦では頼りにしてるぜ。

 なんだかんだで、私たちの命も何度か救ってくれてるしな」

 

「グルゥ?」

 

 ウルフェンは首をかしげる。

 誉められているのは分かるが、理由は理解できていない。

 

 シンはそんなウルフェンの頭を軽く叩く。

 

「お前は敵を殺し尽くせ。味方は戦っても殺すな。分かったな?」

 

「……ワン!」

 

「よし」

 

 狂戦士の少女は、キャメロットでは“扱いに困るが頼もしい存在”であった。

 

 もしシンという首輪がなければ被害は倍で済んだかどうか分からない。

 だがシンがいるから、彼らはなんとか許容できていた。

 

 当のウルフェンだけは、今日も明日も、

 “強い奴がたくさんいて楽しい”と無邪気に笑うのだった。

 

 

 

 

「ところでディナダン、バースを知らないか?」

 

「あの坊主は……さっき宿舎で動物と遊んでたな。

 なぁシン殿、本当にあの子アンタの子なのか?

 アンタ、まだ十六か十七だろうが……」

 

「俺の子だ。それは絶対に譲らない」

 

「事情があるなら、聞かねぇけどよぉ」

 

 泥沼化を解除して、ウルフェンを引っこ抜いたシンは、もう一人の従者を気にした。

 

 バース――シンが作り上げ、拾い上げた歪な子。

 

 シンはバースが歪な存在であることを隠し、

 “普通の人間の子”として皆に認識させようとしていた。

 

 幸い、ブリテンには大らか(脳筋)な者が多く、鎧をあまり脱がない従者を気にしなかった。

 

 ただ――大男のような体格のバースがシンを父と呼び、

 シンも本気で子として扱う姿は、誰もが軽い違和感を覚えてはいた。

 

 

「父さ~ん!!」

 

 

 裏庭に、鎧のこもった幼い声が響く。

 

 大きな獅子に乗り、犬と馬を連れ、バースが駆けてくる。

 

 ウルフェンが獣に飛びかかろうとするのを押さえつけながら、

 シンはその光景を待つ。

 獣たちは近づくにつれ、顔をしかめていった。

 

 シンが少年期の頃から動物たちは直感的に、生理的に彼を受け付けれないままであった。

 

「ありがとう、みんな! 父さん、今日は早かったね」

 

 バースは子供らしい声で無邪気に駆け寄る。

 獅子から降り、鎧をカチャカチャ鳴らし、肉の泥もグチャグチャと鳴らす。

 

 

 

「「「グルル……」」」

 

 シンとウルフェンに向け、獣たちが唸る。

 ウルフェンも唸り返す。

 

 大きな馬だけは、毅然とした顔で彼らを見つめていた。

 

 アーサー王の猟犬、カヴァス。

 ユーウィンの獅子、レオン。

 ラモラックの愛馬、スティード。

 

 獣は人より鋭く察する。

 目の前の三人が“人喰いの怪物”であることを。

 

 ただし、バースだけは“無垢な子”として扱われていた。

 

「バース君、馬の世話をありがとう」

 

「今度は弓を教えてやるよ。ウルフェンは上手くても教えるのは無理だからな」

 

 騎士たちのバースへの態度は好意的だった。

 

 世間知らずだが、シンの子として必死に強くなろうとする姿は微笑ましく、

 ……そして、シンやウルフェンとのやりとり間に挟む緩衝材として重宝もされていた。

 

 キャメロットで最も受け入れられたのは、間違いなくバースだった。

 

 バース自身は人喰いを止められていたが、他の食料をたくさん食べられるため気にしていない。

 ただただ、毎日が新鮮で楽しい。“人としての生”を嬉しそうに味わっていた。

 

 

 

 

 最悪の騎士、シン。

 狂戦士の少女、ウルフェン。

 歪な幼子、バース。

 

 この三人を主役として――シンの青年期は幕を開ける。

 

 


 

〇本作の初期円卓メンバー(番号は席次ではないです)

1 アルトリア2 ケイ3 ガウェイン4 アグラヴェイン
5 ランスロット6 ラモラック7 グリフレット8 アグロヴァル
9 ルーカン10 ユーウィン11 マーハウス12 サグラモール

厄災の席:シン

番外顧問:ペリノア王

 

 固定ではなく、ディナダンやダゴネットなどの騎士と入れ替わりとなることがある。

 それでも、1~5の騎士は最後まで残り続ける。

 次の候補として、ガヘリス、パーシヴァル、ベディヴィエールが挙がっている。

 

 ……原典と騎士加入の時系列がグチャグチャなのは、Fate時空である以上に

 作者が上手く原典の時系列を把握できてないからです。

 

〇動物たち

 カヴァス以外の名前はオリジナル。意味そのままです。

 

 レオン――ユーウィンの獅子

  竜とタイマン張ってた変なライオン。

  助けてくれたユーウィンを気に入った。

 

 スティード――ラモラックの馬

 

 

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