偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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騎士の紹介回と小ネタ回です。


38.揃い出す円卓

<Side:シン>

 

 真冬は越えたが、まだ骨身に染みる寒さが残る頃。

 

 フランスから食糧支援を取り付けたランスロットたちが、ようやく戻ってきた。

 備蓄も心許なくなってきていたから、正直助かった。

 

 最終手段として、俺の呪いで全員を怪物にして死体喰いさせずに済んだのは――

 惜しいような、まあ良かったような、だ。

 

 

 帰還の途上、俺たちは彼らと合流した。

 ガキ共や怪物兵、そしてサクソン軍の動きを監視していた部隊だ。

 

「少し遅くなったな。サクソン軍に見つかって、妨害でも受けてたのか?」

 

「い、いやぁ……その……。

 そうだ、シン卿! 皆に紹介したい騎士がいるのだ!」

 

 ……おい。何を誤魔化した、ランスロット。

 

 視線を向けると、ガヘリスとディナダンが、揃って呆れた顔で歩み寄ってくる。

 

「ランスロット卿は、母――モルガンに呪いをかけられていた女性を助けたのだが……」

 

「その女性、エレイン嬢に惚れられて大変な目にあったでさぁ!」

 

「まさか……あのような姿で……」

 

「ああ、もういい。分かった」

 

 騎士どもの下半身事情ほど、どうでもいい話はない。

 詳しく聞く気も起きなかった。

 

 ……もしかして、マーリンが言っていた“栄光の騎士”が近いのか?

 ランスロットの子だと言っていたが、ギネヴィアの子ではないだろうし。

 

 

 

「で、紹介したい騎士ってのは――向こうで変な弓を持ってるヤツか?」

 

 十台ほど後ろの馬車の陰。

 そこに、何かがいる。

 

 殺気も音も抑えているが、匂いまでは隠し切れていない。

 俺に気付いたのか、その存在が姿を現した。

 

 赤い髪の、整った顔立ちの男だ。

 今は警戒心を隠そうともせず、眉を顰めている。

 

 複数の弦を持つ、弓とも楽器ともつかぬ武器をこちらに向けながら、ゆっくりと近づいてきた。

 

「ランスロット卿……何ですか()()は……?」

 

「へぇ。なかなか期待できそうな騎士だな。

 お前と似た匂いの強いのが二人いるが……まだ甘い」

 

「手厳しいな……。二人の方は私の従妹、ボールスとライオネルだ。

 トリスタン卿、彼が話していた円卓の一員、シン卿だ」

 

 

 ――トリスタン。

 

 

 聞き覚えがある名だ。

 確か、コーンウォールの騎士に……。

 

「思い出した。マーハウスを返り討ちにしたヤツか」

 

 冬前、サクソン軍との戦いの前。

 マーハウスは実家の命でアイルランドへ戻り、代表として決闘に出た。

 

 毒を使ってなお敗れ、死んだ。

 その勝者の名が――トリスタンだったはずだ。

 

 

「トリスタン卿は、その後いろいろあってコーンウォールを追われ……

 ディナダン卿と拾ったのだ」

 

「あなたが、あの悪名高い“最悪の騎士”殿ですか……」

 

 トリスタンは警戒を解かぬまま、ゆっくりと弓を下ろした。

 

 コイツ、耳も勘も、かなりいい。

 今この瞬間も、俺の中から響く悲鳴と絶叫が、頭に届いているんだろう。

 

 

「ハハハ。気を抜いたら驚かせようかと思ったが、その必要はなさそうだな。

 俺はコイツを円卓に推薦するぞ。ランスロットたちもだろ?」

 

 赤毛の騎士は、ただ静かにこちらを見返してきた。

 

 ――また一人、強いが、面倒で厄介そうな騎士が増えた。

 

 だが、今のブリテンには、そういう連中こそが必要だ。

 

 

 

 

 ――数週間後

 

「シン卿、ラモラック卿といざこざを起こしてしまいまして……」

 

「シン卿、私がアーサー王に付いたことで、パロミデスが敵に……」

 

「シン卿、イゾルデへの贈り物には何が……」

 

 

「厄介にも限度があるわ! 何で俺に相談しに来るんだよ!」

 

 

「皆さんも言ってますが、シン卿は……

 ダメなところも含めて受け入れてくれますからね」

 

 ……こいつ、円卓上位勢らしく、実力もあれば癖も強い。

 

「それに、あなたは歪んではいますが、優しいですよ。

 それだけの呪いと悪意を抱えながら、それでもそう在れるのは……尊敬します」

 

 ……本当にやりづらい。

 

 

 

 

「兄貴ィ~! 今日もおねシャス!

 ――ウゲェ!? シン卿!?」

 

「ボールス、失礼ですよ。申し訳ありません、シン卿」

 

 一方で、ランスロットの従妹の二人は、まだ俺に慣れていなかった。

 兄弟揃って、露骨に顔が強張っている。

 

 ランスロットと行動を共にするようになってから、よく見る光景だ。

 

 むしろ、これが普通だ。

 強い騎士ほど、俺の本質に気付き、無意識に距離を取る。

 

 

 そして――それを乗り越えられるのが、本当に強い騎士だ。

 

 

 ……俺を舐めるヤツは、論外だがな。

 

「円卓に常駐してる連中は、もう慣れてるぞ。少しは見習え」

 

「いや、人を笑いながら呪い殺すのは、普通に怖いっす」

 

「この前も『石と砂と泥、どれになりたい?』って処刑してましたよね……」

 

「ランスロットの陰口叩いたヤツに、

 決闘仕掛けて殺しまわるお前らの方が問題だと思うぞ?」

 

 ――やれやれ。

 

 強い騎士は増えた。食料不安も解消された。

 

 去年以上に、サクソン軍に対して強く出られる。

 向こうは冬前の大打撃で、かなり戦力を失っているはずだ。

 

 

 ……はずだった。

 

 

 だが、それでも――サクソンとの戦いは、数年続いた。

 

 ブリテンを終わらせようとする世界の意志が、既に踏み込んできていた。

 

 

 

………………………………

 

 

 

「ユーウィンと偵察に行ってきたが……

 前より戦士と魔術師が増えていたぞ」

 

「あり得ない!冬前で叩きのめしたはずだ!」

「食料も、あちらも有限のはずです!」

「一体、何が起きているのですか……?」

 

「ローマがサクソンを支援している可能性がある。

 これまで以上に、慎重に戦いましょう」

 

 冬が明けた円卓で、サクソン軍が健在どころか、

 むしろ戦力を増していることが報告された。

 

 

 

 

「春一番ッ! 転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!!」 

 

「……思ったより残ったな。

 ガウェインの腕が鈍っているわけではなさそうだが」

 

「ならば、もう一度です!

 日は何度でも昇る! ガラティーン!!」

 

「今度は、かなり減ったな。

 アーサー王のエクスカリバーでも、一撃は厳しいか?」

 

「ピクト人のように、三度耐えられるほどではなかったようですね」

 

 春先、戦いは再開されたが、

 なぜか敵戦士の対魔力が上がっていた。

 

 強さ自体はピクト人よりはマシだが、数が多い分、厄介さはこちらの方が上だ。

 

 

 

 

 今年も、春から秋にかけて戦いが続いた。

 

「はぁあああ!」

「やぁああああ!」

「グラァアアア!」

 

 モードレッド、バース、ウルフェン。

 それぞれが怪物兵を率い、存分に戦果を挙げていく。

 

 

 特にモードレッドは成長が早い。

 春先までに、目に見えて強くなった。

 

 魔力頼りだった戦い方は改善されたが……

 その代わり、ベイリンやウルフェンに近い、行儀の悪い戦い方になってきた。

 

 まあ、強ければそれでいいか。

 

 

 バースは逆に、騎士の技と人外の技を併せて磨いていった。

 ベディヴィエールやランスロットを真似て、綺麗な剣を振るうようになっている。

 

 渡した炎の剣も使いこなしているようで、正直、少し複雑だ。

 

 

 ウルフェンは……何だコイツ?

 魔術や呪い抜きでは、俺でも正面からは厳しい。

 何か、相当ヤバいものと繋がっている気がする。

 

 作成中の毛皮と弓が完成すれば、

 円卓でも手を付けられなくなるだろう。

 

 

 

 

「呪いや悪意の気配が薄すぎる。

 これだけ人が死んでいるにも拘らず、だ」

 

「私の目でも追えないほどの隠蔽か。

 卑王も、相当警戒しているようだね」

 

 俺は戦の合間を縫い、マーリンと共にサクソン軍の本拠地を探った。

 

 同時に、発生する悪霊や精霊モドキを討伐し、堕槍を成長させていく。

 

 他にも――問題児の相手。

 呪い対策。ピクト人狩り。

 馬鹿どもの行政の代行。

 

 やることが…やることが多い…!!

 

 俺、一応“最悪の騎士”って呼ばれてるよな?

 人材不足だからって、ここまで便利に使うか、普通。

 

 とっととサクソンを殲滅して、“終わり”の準備に入りたいんだが。

 

 早く“栄光の騎士”と席を代わりてぇ……。

 まだ、来ないのか?

 

 

 

 そうして二年が経ち、サクソンとの戦いも七を超える頃。

 

 ようやく――サクソンの戦士王と、裏切り者たる卑王の所在が判明した。

 

 

 最後の決戦が、近づいている。

 

 


 

<小ネタ:ガヘリスとバースの工房見学>

 

「父さ~ん、今日はガヘリス卿と来たよ~」

 

「シンさん、お疲れ様です」

 

「ガヘリスが来るとは珍しいな……」

 

 そもそも、俺の呪具工房を訪れる騎士は少ない。

 うっかり触れれば死ぬ代物ばかり置いているから、泥棒すら近寄らない。

 

 そもそも、俺の呪具工房に来る騎士はあまりいないんだがな。

 うっかり触れると死ぬのが置いてるから泥棒すら来ない。

 

 生きたまま植物の苗床になった奴を飾っているのも、理由の一つかもしれんが。

 

 

 バースは自作の槍を見せに来たとして……

 ガヘリスは、どうした?

 

「皆さんに比べて、力不足を感じまして。

 何か、良い物でもないかと」

 

「俺の呪具より、ガウェインみたいにアーサー王から何かもらえばいいだろ?」

 

「カルンウェナンの使用許可は頂きましたが……恐れ多くて」

 

 カルンウェナン――影に身を隠せる短剣だ。

 

 護衛、潜入、暗殺向けな武器を渡そうとするあたり、

 アーサー王も、ガヘリスの適性は見抜いているらしい。

 

 ただし、本人がそれを好んでいない所までは察していないようだが。

 

 ガヘリス自身は、不意打ちや暗殺を騎士らしくないと恥じている。

 

 だが、目立つガウェインと組ませると本当に強い。

 太陽と影。そう呼ぶに相応しい兄弟だと思う。

 

 

 まぁ、本人がさせたいようにさせるか。

 

 

「なら、その辺に転がってるのを適当に持っていけ。

 分かってるだろうが、呪具には必ずデメリットがある」

 

「父さん、全部説明してくれないとデメリット分かんないよ」

 

 面倒くせぇ……。

 近くのから挙げていくか。

 

 ピクト人の脊髄剣。石化させた熊の棍棒。

 血管を編んだ槍。妖精首狩りの斧。

 魔術師の重ね顔皮の盾。蛇妖精の死体鞭。

 

 どれも微妙だって? 贅沢だな。

 

 

 なら、俺の体を素材にした特別性から――

 

「『身代わり人形』はどうだ。

 お前の血と髪を混ぜれば、一度だけ攻撃を肩代わりしてくれる」

 

「……かなり便利ですね。それにします」

 

「作るのに体削ったから、今度、何か奢れよ」

 

 俺の『相手の呪いを背負う呪い』や『的中の呪い』など混ぜた人形だ。

 常に持ってると余計なモノまで背負うが……大事な時には使えばいい。

 

 多分だが、その一回がガヘリスの”終わり”をより良くする気がする。

 

 ……勘だがな。

 

 

 

「そっちが終わったなら、見てよ父さん! この槍!」

 

「何だこの……何だ?」

 

 六本の短剣を繋げた構造。

 分解可能で、バース自身の一部として個別操作もできるらしい。

 

「マーリン様は『ロケット鉛筆みたい』って言ってた」

 

「それ、多分馬鹿にされてないか?」

 

 ……まあ、便利そうだし完成ならいいか。

 

 

「これ、槍じゃなくて遠隔操作の短剣の方が強くないですか?」

 

「ガヘリス。バースが槍だと言うなら、これは槍だ」

 

「相変わらず、変な所で親バカですね……」

 

 


 

<小ネタ:ベディヴィエールの義手>

 

「マーリン殿、義手の調整をお願いしま――

 ……シンも居ましたか」

 

「おう。この前付けた火矢の機能はどうだ?」

 

「牽制には便利ですが……義手が熱くなりすぎます」

 

 マーリンと卑王探知をしていると、ベディヴィエールが訪ねてきた。

 こいつの義手に色々仕込むの、正直楽しいんだよな。

 

 

「やっぱ、杭打ち機能(パイルバンカー)付けね? カッコいいだろ?」

 

「重くなりすぎるので却下です。

 一度使ったら義手ごと壊れるなど、欠陥以外の何物でもありません」

 

 

「じゃあ塩を入れる空間は? 生活に便利だろう?」

 

「マーリン殿も、無駄な案を減らしてください」

 

 

「塩入れるくらいなら、浄水用の砂を詰めろよ」

 

「そうだねぇ……塩と水、両方使えれば便利かも」

 

「……こうしていると、本当に親子ですね」

 

「んだとゴラァ!!!」「照れるねぇ」

 

 マーリンと親子とか似ているとか、最悪の蔑称だぞ!

 訂正しろ、訂正!

 

 

「しゃあない。仕込み鉤縄だけにしとくか」

 

「いや、だから要らないんですが……」

 

 

 ――後日。

 

 鉤縄を完璧に使いこなし、立体起動じみた動きをする

 ベディヴィエールが目撃された。

 

 ……無茶苦茶使いこなしてるじゃねぇか。

 

 


 

<小ネタ:パーシヴァルとの冬越し>

 

「すまない! ここに食料は残っていないだろうか!」

 

「どこも残ってるわけねぇだろ。

 ……って、どこから嗅ぎつけやがった」

 

「シン!? ……何だ、この倉庫はッ!?」

 

 いきなり大声出して扉を開けるな。

 

 俺がここにいる時点で、パンは無い。

 全部、石になるからな。

 

「チーズ、ドライフルーツ、干し肉……色々ある……」

 

「保存食の作成も、俺の仕事の一つだ」

 

 触れた物を腐らせる“腐食の呪い”を制御して発酵食品。

 触れた物を乾かす“枯渇の呪い”を制御して乾燥食品。

 

 ……ただでさえ仕事多いのに、何でここまでやってんだ、俺。

 

 

「そんな便利な呪いがあるのか!」

 

「普段は処刑用だ。人を泥にするか、砂にするかのやヤツ」

 

「えぇ……」

 

「それより、何の用だ」

 

 

 どうせまた、新入りに飯を奢ったんだろ。

 

 でもなぁ……金じゃなくて、数の問題なんだよ。

 

 ……はぁ、面倒くさい。

 少し手助けしてやる代わりに子守りでも頼むか。

 

 

「ここにあるのを少し分けてやる。

 代わりに、ガキ共連れて冬眠中の熊でも狩ってこい

 ……死体持ってきたら、食える程度には調理してやる」

 

「ありがとう! シン!」

 

「声がデカい! とっとと行け!」

 

 

 

 後日――

 

 俺は大量の肉に埋もれながら、グーラで血抜きをしていた。

 

「すまない……ウルフェンの制御ができなかった」

 

 ウルフェンは、狼の毛皮を纏う狂戦士――

 ウールヴヘジンの力を主としている。

 

 だが……剥いだ熊の毛皮まで被って、

 ベルセルク化するとは思わなかった。

 

 ……いや、どっちも北欧の狂戦士だけどさ。

 暴れて必要以上の獲物を狩ってくるなよ。

 

 だが――まあ。

 

「臭ぇけど、肉だぞ肉!」

「硬い、でもうめぇ……」

「鍋! 鍋! 鍋ぇ~~!」

 

「「「ありがとうございます、シン卿」」」

 

 たまには、こういうのも悪くないか。

 

 


 

 

〇エレイン

 同名の女性がたくさんいるが、ギャラハッドの母の方。

 モルガンに呪いかけられるほど警戒されてたり、ギネヴィアに化けてランスロットに気付かれないままワンナイトしたりと……かなり腕のいい魔術師のはず。

 このワンナイトからギャラハッドが作られた。

 

〇トリスタン

 マーハウスと交代で円卓入り。後はFGOと大体同じ。

 

〇ボールス

 ランスロット従妹、ランスロットガチ勢。

 原典でも本作でもそうとしか言いようがない。

 

〇ライオネル

 ボールスの兄。

 後々の逸話から、すごいタフネス持ち。

 

〇今の円卓メンバー(番号は席次ではないです)

1 アルトリア2 ケイ3 ガウェイン4 アグラヴェイン
5 ランスロット6 ラモラック7 ベディヴィエール8 パーシヴァル
9 ガヘリス10 トリスタン11 ユーウィン12 良く変わる枠

厄災の席:シン

番外顧問:ペリノア王

 

 12番目はサグラモール、ディナダン、ボールス、ライオネルなど……候補が多い。

 かなりFate時空の円卓メンバーで埋まってきた。

 

 

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