偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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ギリシャほどじゃないけど、北欧の神々もアレですね……
ヘグニ(ホグニ)も実装前だし独自設定を足してます。

今話は視点がコロコロ変わります。……読みにくいですね。



5.苦い結末

<魔剣の執念>

 

 

 かつて北欧に、一本の魔剣があった。

 

 ダインという名のドワーフによって鍛えられた、癒えぬ傷を与える剣。

 一度抜かれれば、人の生き血を啜るまで鞘に戻ることを許されぬ呪われた刃。

 

 名はそのまま、ダインの遺産(ダインスレイフ)と呼ばれた。

 

 けれど、そんな危険な剣を誰も持ちたがる事はなく……

 いつしか人々はその存在すら忘れていった。

 

 

 ある時、美しき首飾りに心を奪われ、浮気を犯した女神(フレイヤ)がいた。

 それを知った主神(オーディン)は激怒し、女神から首飾りを奪い、試練を与えた。

 

「英雄である二人の王を永遠に戦わせよ」

 

 女神は報酬の首飾りの為、躊躇なく、互いに盟友であった二人の王を嵌めた。

 

 一方には魔剣を「祝福の剣」として与え、

 もう一方には暗示をかけ、友の娘を攫わせた。

 

 女神の思惑通り、王たちは軍を率い、互いを滅ぼさんと戦を始めた。

 攫われた娘が和睦を取り付けようとするが、時は既に遅く、魔剣は抜かれてしまった。

 

 両軍に死んで欲しくない娘が両軍に蘇生の魔術をかけたことで、戦いは止まることなく続いた。

 それが、後に『ヒャズニングの戦い』と呼ばれた争い、ラグナロクまで続く殺し合いの始まりだった――。

 

 

………………………………

 

 

 ラグナロクが訪れた後

 

 魔剣はしぶどく、飢え続けていた。

 

 

 殺され続け、蘇り続けた北欧の戦士の闘志によるものか……

 彼ら血を啜り続けた魔剣に染み込んだ渇望なのか……

 

 血を啜り、戦を欲する呪いは、もはや意思すら持っていたのかもしれない。

 名を変え、形を変え、担い手を変えながらも、魔剣は世界に居座り続けた。

 

 たとえ神話が終わり、人の時代に変わろうとも。

 たとえ名前を失い、力の大半も無くそうとも。

 その呪いだけは、確かに残った。

  

 

 ついにはある島――まだ神秘が色濃く残るブリテンに流れ着いた。

 そこで騎士と精霊によって封印されてしまう。それでも尚、魔剣はあがく。

 呪いを抑えられようと、魔剣は次の担い手へと微かに狂気を流し続けた。

 

 担い手は立派な騎士となり、民に尽くす理性を持っていた。

 だが、心の奥底では、強者との戦いを求める性質が、確かに育っていた。

 

 

 そう、あと一歩。あとほんの一歩で、堕ちるのだ。

 ようやくだ! ようやく血を啜ることができるのだ!

 

 

 そして今、ちょうど機会が訪れた。

 

 担い手の意識は昏く沈み、近くには血肉を抱えた“餌”が歩み寄ってくる。

 ――無意識のまま、担い手は魔剣を手にした。

 

 

 ここに再び、呪いの魔剣は解き放たれた!

 

 

 ただし……魔剣も、担い手も、まだ気づいていない。

 

 目の前の少年こそが、魔剣以上の“世界の呪いそのもの”であることに。

 

 


 

 

<Side:シン>

 

 

「ラン兄……エカル卿、生きてるよな?」

 

「気絶していますね。私は兄上の手当てを。シンは彼をお願いします」

 

 

 二人の一騎打ちは終わった。

 だけど勝者であるベイリン兄のほうが、よほどボロボロだ。

 

 盾は粉々、鎧は割れ、呼吸も荒い。ラン兄が脱がせて早く手当してもらわないと。

 あれを支えられるのは、ラン兄くらいしかいない。

 

 

 俺はエカル卿の方へ向かって歩いていく。

 途中で地面に転がった、金属の塊が目に入った。

 

 

「……盾の破片じゃん。ココまで飛ぶのかよ……」

 

 

 たしかにエカル卿の切り返しはヤバかったけど、盾も斬り飛ばすのかよ?

 それを防ぎきって勝ったリン兄もどうかしてるわホント。

 

 

 

「お~い、エカル卿~? 無事ですか~?」

 

 

 エカル卿に近づくが、返事はない。使ってた剣も近くに転がってる。

 

 血の匂いは魔剣以外からはあまりしてないから致命傷は負ってないはずだけど……

 うわ! 殴られた場所の鎧がへこんでる! これ直るのか?

 

 取り合えず手当てするためにも鎧を脱がせなきゃ。

 鎧外すの手伝うのも騎士見習い、従騎士の仕事だからやり方は分かる。

 

 

「さぁ~て、まずわっと……ッ!?」

 

 

 ――鼻を刺す、強烈な鉄の匂い!

 

 咄嗟に拾った盾の切れ端を匂いのする方へと向け

 

 

「ぎぃっ!?」

 

 いってぇ!!? なんだよオイッ!?

 

 

 脇腹に焼けるような痛み。見ると、盾を貫いて剣の切っ先が突き出ていた。

 しかも……血が引いていく感覚? おいおい、これヒルかよ!

 

 

「血ィィィ! 久シブリィィィ!」

 

「……てめぇ、エカル卿じゃねぇな。オンボロの魔剣か!」

 

 

 マジか。盾でちょっとズレてなきゃ心臓貫かれてたぞ!?

 てか、あの技を無傷で使ってくるエカル卿が正気じゃなきゃ、マジで死んでた!

 

 

 ……まぁ、でもな。

 

 

「マァァズゥワァァァァァ! 器ヲ癒サネバァァ!」

 

「…………」

 

「血ヲォォ! 器ヲ満タサネバァァァァ!」

 

「おい」

 

 

「俺の()を吸ったな? ナマクラ」

 

 

「アガァ? アガガガ!? オォエエエェェェ!!?」

 

 

 魔剣とエカル卿が震えた。唾を飛ばすなよ、汚ねぇな。

 

 

「吸ってみりゃ分かるだろ。俺の血じゃ治らねぇよ」

 

 

 腹に突き刺さった剣を両手でがっちり掴む。脇腹を掠る程度で止めた。

 弱ってるうえ、単純な力なら負けねぇ。

 

 

 それにしても……近くにいても、魅了も狂気も感じない。

 

 剣がエカル卿を動かすのに手一杯ってことか?

 

 誰か斬りたいだの、殺したいだの、そんな感情なんて――

 

 

 いつも思ってる程度にしか感じねぇな。

 

 

 一応封印されてるんだっけ? その割にエカル卿がおかしくなってるが。

 

 

「オマエ、ナンナンダァァ!? オマエワァァ!?!?」

 

「うるせぇわ! そんなん俺が聞きてえよ!」

 

 

 てか、血を吐きながら喋るな! 腹に響くんだよ!

 

 それでも動けるってのは、やっぱエカル卿の体スゴイんだろうな。

 

 だって俺の血ってさ――

 変な呪いのせいで()()()()()()()()()()ってのにな。

 

 なんだっけ? たまに夢に出てくる、胡散臭ぇヤツの話じゃ――

 

 

「堕落した救世主と誤認させて、最後に本物の様に全ての罪を背負わせる。

 その為の呪いが君には複数付いてる」

 

「コレは……『水をワイン(救世主の血)に変える力』が反転した呪いだね」

 

「『血が毒に変わる呪い』か、何で君まだ生きてんの?」

 

 

 ……知らんがな。人の夢に勝手に出てきて謎だけ吐いて消えんな。

 てかお前、誰なんだよ。

 

 ま、とりあえず。

 エカル卿が死なないよう、ほどほどに抑えて――

 

 

 「ダァァァァーーーー!!!」

 

 「……あ、リン兄、ちょっと待っ――!」

 

 

 ナマクラが叫びに気付いたのか、リン兄が怒声とともに、一瞬で距離が詰めてきた。

 

 その手には、あの一騎打ちで使わなかった手斧が握られていて。

 

 次の瞬間――

 

 

 ドシュッッ!!

 

 

 毒で動けないエカル卿の胴へと、斧が深々と突き刺さった。

 

 ……ああ。

 これはもう、無理だな。

 

 

………………………………

 

 

「わ、わたしは……なんてことを……」

 

「エカル卿、俺は無事です。それより……リン兄を止められなかった。すみません」

 

「すまねぇ……アンタがシンを襲ってると思って……体が、勝手に動いちまった」

 

「い……いえ。兄として……当然、です……」

 

 

 エカル卿の体から、血が止まらない。

 命が、草原に染み出すように、静かに失われていく。

 

 回復の魔術師も近くにはいない。

 いても……この傷では、もう手遅れだろう。

 

 せめて少しでも楽に。

 少しでも痛みが和らぐようにと、俺は彼の傷口に手を当てた。

 

 ――パン(肉)を石に変える呪い。

 コレは傷口を石にして塞ぎながら、重症の場所は痛みを和らげさせることだってできる。

 

 

 エカル卿は、ほとんど動かない体をよじらせながら、目だけで周囲を探っている。

 きっと――アレを探してるんだ。

 

 

「ま……魔剣は……どこに……」

 

「俺が鞘に納めました。でも、どういうわけか、俺の近くから離れなくて」

 

「そん、な……!」

 

 

 リン兄は直感的に魔剣を見てはいけないと判断し、目を閉じていた。

 ラン兄も、目を逸らしたまま距離を取っている。

 

 でも、俺が手を伸ばした時、魔剣は……おとなしく、鞘に納まった。

 

 妙なことに、俺が歩くと、地面を這うように“ズリ……ズリ……”とついてくる。

 

 正直、キモい。

 

 

「エカル卿? 俺、あんまり影響ないみたいなので……こいつ、代わりに何とかしますよ。

 いろいろ話してくれたお礼に」

 

「だ、ダメだ……! 魔剣は、人を喰らう……!」

 

「うーん……それなんですけど、程ほどに血と肉をやれば、けっこう満足するみたいなんですよね。むしろ、無理に封印されてたのがまずかったんじゃ?」

 

「……なぜ、それが……わかる……?」

 

 

 恐怖と混乱が混じったエカル卿の目が、俺を見ていた。

 旅人や商人が、村人以外が俺を見る時と同じ目。

 

 わかるものは、わかるんだよ。

 しょうがないだろ。慣れてるし。

 

 それにさ、この魔剣は狩りに使えそうじゃん?

 血抜きとか、便利そうだし。

 

 ……え? 魔力の多い血じゃなきゃダメ?

 しかも戦士と殺し合いたいって? わがままなナマクラだな。

 

 

「シン、それ以上はもう……。エカル殿が、せめて静かに逝けるように」

 

「………………」

 

「エカル殿……あなたは、我が人生で出会った中で、最高の剣士だった。心より、感謝する」

 

「ありがとう……ベイリン殿……。これは……私の、未熟さが……招いた結末……

 どうか、気になさらぬように……。シンも……すまなかった……」

 

 

 エカル卿の体温が下がっていくのを感じる。心音の鼓動も小さくなってきた。

 

 短い間だったが、いい人だった。

 せめて苦しまぬように、静かに――

 

 魔剣に溺れた自分を、彼が死後も悔やまないように。

 責めず、背負わせず、ただ穏やかに。 

 

 俺は冷えた彼の手を握り、村の葬式と同じように、送ってやる。

 

 

「……あたたかい……。痛みが……消える……。

 ああ……心地よい……全てが……洗われるようだ……ありが……」

 

「……違う。違う!?」

 

「私と父の罪は……我らのものだ! 我らが背負う償いだ!!

 それを……奪うな……! やめてくれ!!

 私の悔いを……償いを……“なかったこと”にしないでくれ!!!」

 

 

 ……どうして嫌がるのだろう?

 楽にしてあげただけなのに。

 

 皆、辛くない方がいいんだろ?

 罪を無くし、死んだ後に天国に行くのを、夢見てるんだろう?

 

 大丈夫、大丈夫。よく分からないけど、俺は慣れてるし。

 死んだ後のことなんて、その時に考えればいいさ。

 

 

 じゃあ、おやすみなさいエカル卿。

 長く苦しい旅路、お疲れ様でした。

 

 


 

 

<Side:???>

 

 

 ……まさか、こんな結末になるとは。

 なぜ、死んでしまったのですか、エカル……。

 

 

 人の私(モルゴース)、そして魔女の私(モルガン)

 この二つが前面に出ているとき、私の“妖精の眼”は見通せなくなる。

 そして最近、アルトリアたちの聖剣の準備に追われ、干渉もままならなかった。

 

 その結果。

 私は、死なないはずの騎士を、喪った。

 

 

 エカル。あなたは、私が育てた誇り高き騎士。

 ウーサーに仕え、魔剣を持つサクソンの狂戦士に打ち勝った騎士の息子。

 

 たとえ、勝手に湖を飛び出してもーー

 たとえ、次代の王の準備に追われていても――

 

 私があなたを忘れたことなど、一度もなかった。

 

 

 他の私にも干渉させぬよう抗った。

 あなたは、私が最初に育てた自慢の子。

 

 ニミュエの子、ランスロットにも負けぬ騎士となるはずだった。

 魔剣すら調伏し、ブリテンの災いを斬る騎士となるはずだった。

 

 

 それを、ただ“強さ”だけを誇る蛮人が、踏みにじった。

 

 

 初めは、マーリンか、魔女である私自身の企みかと疑った。

 次は、諸王の誰かによるものかと思った。

 

 ……だが、違った。

 

 特別な血も、加護も持たぬ、ただの騎士によって。

 あなたは殺された。

 

 たとえ、アルトリアの出来損ないの子がいなくても、

 魔剣に呑まれる機会を与えてしまい、殺されていた。

 

 

 あり得ない。

 あってたまるか。

 

 私が目をかけ、育てた騎士だぞ?

 それが、何も遺すことなく、命を落とすなど……!

 

 

 ……魔女の私の影響か。

 精霊であるこの私にも、かつてないほど強い”怒り”が渦巻いている。

 

 

『ならば――どうするか、もう分かっているのでしょう?』

 

 

 別の私が、嫌味めいて囁く。

 

 ……いいでしょう。

 この身を焼き尽くすほどの怒りを、今は肯定しましょう。

 

 

 魔女のような悪辣な報復をもってして――

 

 


 

 

〇シン

 愛されていい子に育ったからこそ、少し性格が歪んでいる。

 

〇ダインスレイフ

 色んな作品に出るお馴染みの魔剣。fateにはまだ出てないはず。

 何となく以下の感じの効果を持つ剣を想定してる。

 『ドレイン(大)』、『出血(大)』、『不治』

 現在の状態はこんな感じで不治ではないのでシンの傷は治る。

 『ドレイン(小)』、『出血(小)』

 

〇シンが持つ呪いの一部

元ネタが分かりやすいヤツ

・触れたパン(肉)を石に変える

・自分のワイン(血)を毒に変える

・不漁になる

 

〇ヴィヴィアン(湖の貴婦人)

 ブリテン > 推しの騎士(アルトリアなど) >>> その他

 ↑な感じの精霊なので、人に優しいわけではない。

 

 それでも、他の妖精や精霊よりかは価値観がそこそこ人間に近いはず。

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