偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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かなり短めです。

カッコイイ宝具名が思いつかない……
fate二次作者はどうやってるん考えてるんでしょうかね?


7.旅立ち

<Side:シン>

 

 

「ヤロウッ! どこ行きやがったぁぁぁ!!」

 

「あの女の仕業ではない? シン、匂いで追えま…… シンッ!!」

 

 

 怒りが収まらない。狂気が止まらない。

 

 魔剣も同じだ。俺を真の担い手と認めたのか、歓喜とも殺意ともつかない衝動を大量に脳に流し込んでくる。

 

 正直、このまま暴れても、兄ちゃんたちなら止められるだろう。

 多少強くなったからって、二人同時に相手できる気はしない。

 

 

 だが、ここは村の中央だ。周りには村人がいる。

 このままなら……誰か一人は確実に殺す。

 

 精霊の女に騙されていたとはいえ、こいつらも母ちゃんを死へ追いやった。

 

 この怒りは否定できない。この殺意は消えない。

 

 血を啜り肉を喰いたいという狂気は、いつだって胸の奥にある。

 人間らしくあるために、今までは理性で押さえてきた。

 

 だが今――感情と狂気、理性の均衡が、崩れている。

 夢と現実の境界も、曖昧になってきた。

 

 

 

『やぁ、魔術師のお兄さんだよ』

 

 

 ……うるさい。夢の中だけじゃなく、現実にも出てくんな。

 お前があの女を逃がしたんだろ。殺すぞ。

 

 

『おぉ怖い。邪魔したお詫びに、助言を送ろうと思うんだ』

 

 

 助言? どうせ回りくどい話しかしねぇくせに。

 

 頭に響く声に悪態を付く。

 魔剣や呪い関係なく、腹が立っているんだよ。

 

 

『時間がないからすぐ言うよ。……オホン!

 呪いの子よ、その魔剣に名前を付けてあげなさい』

 

 ……はぁ? 名前ぇ?

 

『名付けは強力な呪いだ。その在り方を定義づける最高クラスのね。

 魔剣が暴走してるのは、従来の力だけじゃなく“名前を失っている”のも原因だね』

 

 ……なるほど。確かに、こいつは「血をよこせ」「戦わせろ」以外にも、何か訴えてきていた。

 

 

 ――自分が分からない。忘れられたくない。消えたくない。

 

 

 剣にこびりついた戦士の念が、血を求める呪いと混じって、静かに泣いている。

 

 散々殺しまわっておいて、今さら泣き言かよ。

 たとえ俺を使って村を皆殺しにしても、その嘆きは消えねぇだろ。

 

 

 だから……俺が名前を付けてやる。

 エカル卿の代わりに、こいつを何とかするって言ったからな。 

 

 そうだな――

 

 

 お前の名は、グーラ。暴食魔剣(グーラ)

 

 

 暴食の”グラ”と、人喰い鬼”グール”を混ぜた……お前にぴったりの名前じゃないか?

 

 ――って、女版のグールも同じ呼び名? じゃあやっぱ考え直し……

 

 うわぁ! いきなり落ち着くな! 殺意まで引っ込めやがった!

 おい、これで決まりでいいのか!? もっといい名前を――

 

 

『終わったようだね。

 罪と呪いを背負う子よ。それらに宿る人の思いを知る子よ。

 これからも名もなき呪いと出会うだろう。それらを調伏し、ブリテンを救いたまえ』

 

 

 何、予言者ぶって帰ろうとしてんだ。俺はまだお前を許してねぇぞ。

 

 おい! 逃げるな! クソがぁ!!

 

 

 

 

 

「……ン! シン!」

 

「目が覚めましたか!? ああ、良かった……。あなたまで失ってしまったら……」

 

 

 兄ちゃんたちの声で意識が浮かぶ。

 俺は二人に抱き起こされながら、手にグーラを握っていた。

 

 

「ん? 魔剣、変わってないか? もっとボロかったよな」

 

 

 見ると、古びて錆びた片手半剣は変貌していた。

 

 大きさは同じだが、光を反射しない滲んだ血の様な赤黒い刀身。骨と皮を思わせる柄。

 ……いかにも、魔剣らしい姿になった。

 

 いや、そんな事より――

 

 

「……兄ちゃん、あの女は? 母ちゃんは?」

 

「逃げられました。母上は……」

 

 

 ラン兄が視線を向けた先、戦闘の余波を避けて運ばれた母ちゃんの姿があった。

 村人たちは、俺たちと母ちゃんを遠巻きに見ている。

 

 ふらつく体を二人に支えられ、一歩ずつ近づく。

 

 そのたびに、視界の端で避けていた光景が、鮮明になっていく。

 

 

 焼け焦げた服。

 縛られた跡の残る上半身。

 燃え尽きた下半身。

 煤に覆われた肌。

 そして――息が出来ず、苦悶のまま固まった顔。

 

 

 兄ちゃんたちと多くの賊を殺してきたけど、こんなヒドイ死体は見た事ない。

 

 だが、それが俺たちの母ちゃんだった。

 

 

「ああ、あぁぁぁぁ……」

 

 

 誰の声かは分からない。リン兄か、ラン兄か、あるいは――俺か。

 

 ……いや、違う。今、俺が感じてるのは兄ちゃんたちの”嘆き”だ。

 俺自身の胸にあるのは――”怒り”だけ?

 

 まだ熱い心臓が燃え続ける。

 悲しみも苦しみも、すべてが怒りと憎しみに変わり、 この身に溢れる力へと変わっていく。

 

 これも、与えられた呪いなのかもしれない。

 

 でも……母ちゃんが死んだ時くらい、泣いてみたかった。

 

 

「シン……母ちゃんが亡霊にならねぇように、楽にしてやってくれ」

 

 

 リン兄が、いつもの台詞を口にする。

 ……亡霊になってでも、会いたいとは思わないのか?

 

 怒りの矛先がリン兄に向かいかける。

 だが、その指先が震えているのを見たら、続かなかった。

 

 三人で母ちゃんの前に座る。

 乾いた手を握り、いつものように、俺が嫌な感じのするものを引き受けようとする。

 

 

 ――できなかった。

 

 

 火刑で苦しみぬいたはずの母ちゃんから、恨みも後悔も、一片も感じ取れなかった。

 

 俺は……それを、美しいと思ってしまった。

 

 

 

 人はこうも美しく死ねるのか。

 

 誰もがこういう死を迎えて欲しい。

 

 


 

 

<騎士たちの旅立ち>

 

 

 大きな家。その前には、まだ新しい土盛りの墓が一つ。

 

 その墓の前に、三人の騎士が並び、それぞれが花を置いていた。

 

 

「……本当に来る気か、シン」

 

「うん。母ちゃんが復讐を望んでないって分かってても……心臓の熱が収まらないんだ」

 

「私は賛成です。シン一人を村に置いていく方が心配です」

 

 

 精霊との戦いから数日。

 

 彼らは母の残した仕事――周囲の村の賊や獣の掃討――を片付けていた。

 

 全員が次の事を考えるの避けていたのもあるが、生きていれば母に「まだ終わってないだろ!」と叱られるだろうと思ったからだ。

 

 しかしそれも長くは続かなかった。

 精霊ヴィヴィアンや騎士エカルとの戦いを経た三人の力は、この地には大きすぎた。

 並みの賊も獣も、もはや敵ではなかった。

 

 そして、やるべきことを終えた時――残ったのは、仇を討つという一つの目的だけだった。

 

 

「……村に居づらくなったのも、あるよ」

 

「アイツらは悪くねぇ。でも……怖がってるのは分かる」

 

「普段見せない戦いをしましたからね。報復を恐れているのでしょう」

 

「「…………」」

 

 

 母が亡くなり、村付きの騎士を続ける理由も、もうない。

 

 領主に辞める旨を告げても引き止められることはなく、むしろこれまでの功績を讃えられ、新しい馬と鎧まで与えられた。

 

 

 今の三人を縛るのは――仇への復讐心だけ。

 

 

 だが、シンにはもう一つ、心に引っかかる疑問があった。

 

 

「なぁ兄ちゃん……どうして皆、楽に生きないんだろう? それで満足して死ねるんだろう?」

 

「あん? 急にどうした」

 

 

 彼は思い出していた。

 

 父の罪を背負い、償いに生き、穏やかな死を望まなかった騎士。

 苦しみの末に焼かれ、誇りを汚さてもなお後悔を抱かなかった母。

 

 人は普通、苦しみから逃れたいと願う。

 それができなければ、何かを恨むはず――そう思っていた。

 なのに、二人は違った。それが何故だか分からず。モヤモヤしていた。

 

 

「……その人にとって、楽に生きるより大事なものがあったからですよ。愛とか、誇りとか、忠義とか……色々とあります」

 

「お前だってそうだろ。その”怒り”を捨てて楽に生きられるならそうするか?」

 

 

 シンは考えた。

 

 怒りは嫌な感情だ。抱え続けるのはしんどい。

 美味しい飯、穏やかな眠り、楽しい歌、興奮する戦い――そんな日々だけで生きられるなら、きっと幸せだろう。

 

 それでも――

 

 

「いやだ。この怒りは……俺が母ちゃんを愛してる証だから」

 

 

 彼は人を学び始めていた。

 押し付けられた誰かの思いからで理解したふりではなく、自分の思いを通して。

 

 

「シン、お前が復讐だけじゃなくて、お前の大切なものが見つける旅にしようぜ」

 

「シン、君が他人の大切なものを知る旅にもしましょう」

 

 

 兄たちは母だけでなく、弟も愛している。

 だからこそ、暗い旅路だけではなく、未来へ続く明るい道も差し出す。

 

 まだよく分かっていなそうな顔の弟を見て、二人は微笑んだ。

 

 墓の方から吹き始めた風が、少年の髪を撫でていく。

 

 

 

 三人は旅立った。

 やがてブリテン統一の渦中に、身を投じていく――。

 

 


 

 

<アーサー王伝説 シンの章>

 

 

 ベイリン、ベイランに拾われた呪いの赤子――シンは、騎士の子として育てられた。

 

 その身に多くの呪いを宿し、さらに他者の呪いを押し付けられる不幸と災いの体質を持ちながらも、家族に深く愛され、齢十で兄たちと共に賊や獣を討伐できるほどに成長する。

 

 ある時、訪れた旅の騎士とベイリンが決闘し、誤ってその騎士を殺してしまう。

 その死を嘆いた湖の精霊は奸計を用い、ベイリンの母を火刑に処した。

 

 母の無残な死に、子らは烈火のごとく怒り、精霊を討とうとするも逃げられる。

 

 こうして、ベイリン、ベイラン、シンは――母の仇を追う旅に出た。

 

 


 

 

〇シンの感情

 数多の呪いに耐えるため、大きな負の感情を持たないように設計されてた。

 マーリンは設計漏れがあったかなと思って帰った。

 

暴食魔剣(グーラ)

 ほぼオリジナルの武器・宝具。

 ダインスレイフを元にしているけど、武器が別の神話・物語とかで原典と違うものになるのはよくある事。

 産まれ直して、一杯食べて成長中。

 

〇その頃のアルトリア

 三人の復讐の旅とは逆に、ウキウキ気分で花の旅路を始めていた。

 この頃が一番幸せだったんじゃないかな?

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