燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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試合後、監督室にて

オレンジ色の空がだんだんと暗くなる中、有原翼と東雲龍のふたりは周りが練習を終え帰っていく中、フラフラになりながらもランニングを続けていた。かれこれ3時間は走っている。

 

「(ハァ…ハァ…キツイ……もう…限界……)」

 

普段からトレーニングを重ねて体力には自信があるとしても、それを超える疲労感が全身にのしかかる。

 

「ふたりとも〜!もう終わりでいいわよ~!」

 

丘の上から声がする。顧問の掛橋先生だった。

有原翼と東雲龍は掛橋先生を見るや否や、その場に倒れ込む。

 

「ハァ……ハァ……やっと……やっと終わったよぉ……」

 

有原翼がうつ伏せの状態で荒い息を吐きながら細い声で言う。

東雲龍も四つん這いで必死に息を整えている。

 

「有原さんも東雲さんもよく頑張ったわね」

 

労いの言葉をかける掛橋先生。しかし、

 

「監督が後で部室に来いって呼んでたわよ。後で必ず行ってね」

 

「………ええぇ!」

「………ええぇ!」

 

〜〜〜〜〜

 

その後、有原翼と東雲龍はヨロヨロになりながら学校への道のりを休憩しながら走った。そして部室の前に着く。

 

「いくよ…」

 

有原翼がドアを開ける。

 

「失礼します…」

 

星野監督は中でユニフォーム姿のまま椅子に座っていた。星野監督の前にふたりは整列する。

 

「監督…今日は……」

 

東雲龍が謝ろうとするが、ランニングの疲れから思考が巡らず言葉が出てこない。

 

「……お前ら、何を考えながら走ったんや。何を考えながら試合をしとったんや」

 

「えっと…」

 

「勝つためじゃないのか!甲子園で優勝するためじゃないのか!」

 

即答出来なかったことに、星野監督は声を張り上げる。

 

「有原!今日のお前の走塁はめちゃくちゃじゃねぇか!打球を見る、外野手の守備位置や肩の強さを把握するのは当然のことだろ!何年野球やっとるんじゃ!」

 

「…はい……」

 

星野監督の追い打ちの言葉に有原翼から涙がこぼれ落ちる。

 

「東雲も、打てもせん投げれもせん、一体どうなっとるんや!てめえこそお遊びでやっとるなら退部にするぞ!」

 

「…はい…」

 

東雲龍も視線を下に落とし唇を噛む。

 

「そうもなくうちのチームは初心者がぎょうさん(・・・・・)おるんだから、有原も東雲も周り以上に闘う姿を見せなあかん。だから、あんな基本的なミスをするな」

 

「ぐすっ…すみません…監督…」

 

有原翼はすすり泣きながら星野監督に謝罪する。

 

「試合をする楽しさじゃなくて、試合に勝つ楽しさをみんなに教えてやれ。ええな」

 

「…はい…」

 

「よし。分かったなら、着替えて早く帰れ」

 

星野監督は立ち上がると部室を出た。

 

「………有原さん……大丈夫……?」

 

東雲龍はボロボロ涙を流す有原翼を気遣う。

 

「……うん…大丈夫…。帰ろっか……」

 

暗い声で有原翼は返事をする。

有原翼は指で涙を拭くと、着替えるため自分のロッカーを開ける。

 

「…!なに…これ…」

 

ロッカーの中には自分の制服と鞄しかないはずだが、その上にタオルとスポーツドリンクが置いてあった。

 

「…私もよ…」

 

東雲龍のロッカーにも、同じくタオルとスポーツドリンクが置いてあった。

 

「誰かからの差し入れかな…?」

 

お互いに顔を見つめ、首をかしげる。

その時、扉をノックする音がする。

 

「有原さん。東雲さん。着替えおわったら鍵を閉めて、職員室に持ってきてね」

 

扉の外からの声は掛橋先生だった。

 

「それから、ロッカーの中のタオルとスポーツドリンクは持って帰っていいって、星野監督が言ってたわよ」

 

「あ、はい…!」

 

あれだけ怒号を飛ばし、ランニングを強いた星野監督。しれっと差し入れを置いていく行動に有原翼と東雲龍は不思議と思うのであった。

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