燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
二学期って書きながら、最近になって5月になってますもん。
やっぱり計画性を持って書かんといけんってことですな。あと、しれっと修正しました。
九十九伽奈は振りかぶり、スリークウォーターからストレートを投じる。166センチの長身と長い腕。大きな落差をつけながら外角低めにズバッと決まる。
「ストライク!」
審判役である有原翼の声が響く。阿佐田あおいは黙って、初球の軌道を何度も見返している。
キャッチャーの鈴木和香からの返球を受け取った九十九伽奈は、再びセットに入る。阿佐田あおいもバットを構え、次の投球を待つ。
九十九伽奈からの第2球は真ん中低めのカーブ。これに対しても阿佐田あおいは手を出さなかった。目でミットに収まるまでボールを追いかける。それだけである。
「次の球で仕留めます」
ノーボールツーストライク。返球を受け取った九十九伽奈は、周りの歓声と拍手の中つぶやく。セットに入り、3球目を投じる。
カツン!
やや内角のストレートに、阿佐田あおいはようやく手を出した。打球を三塁側のファールゾーンをコロコロと転がっている。
鈴木和香から新しいボールを受け取った九十九伽奈。ミットを見つめ、4球目を投じる。今度は外角低めのストレート。その投球も阿佐田あおいはコツンとファールにする。
その後も、第5球の内角のカーブ、第6球の内角のボール球、第7球のボールになるカーブも阿佐田あおいはファールで粘る。
「九十九〜どうしたのだ〜?全然打ち取れてないのだ〜」
ニヤニヤしながら阿佐田あおいは九十九伽奈を見ながら煽る。その光景を見て、鈴木和香は第1球と第2球で阿佐田あおいがボールを見逃したことを思い出す。
「(阿佐田先輩はわざとバットを振らなかったのね…ボールの速さや動きをしっかり見るために…)」
前かがみになって鈴木和香のサインを見る九十九伽奈。肩が少し上下しているのが見て分かる。歓声が飛び交う中、ある一言が九十九伽奈の耳に鮮明に聞こえた。
「九十九〜もしかしてビビってるのだ〜?」
声の主は阿佐田あおいだ。間違いない。
「(大丈夫…よくある事だ。よくある…)」
天才肌がゆえ何事も淡々と出来てしまう。そのため、周囲から恨まれて冷たい言葉をかけられることはよくあることだった。それには慣れているはずだった。
しかし、今回は少し何かが違う気がした。怒りではない。怒りではない何かが九十九伽奈の心の中で蠢いていた。何と表現するのが正しいのか分からないが、九十九伽奈は必死に考える。
「九十九〜長いのだ〜!早く投げるのだ〜!」
バッターボックスで構えていた阿佐田あおいがまたも話しかける。その言葉に九十九伽奈はひとつの結論にたどり着く。
「……負けたくない!」
気づけば無意識でそう言っていた。
九十九伽奈はカッと目を見開くと大きく振りかぶる。
「………ッ!」
しなやかな右腕からリリースされたボールは、鈴木和香のミット目掛けて真っすぐに伸びていく。
阿佐田あおいもタイミングを合わせ、九十九伽奈を仕留めようとスイングする。
カキン!という乾いた金属音が鳴り響く。その瞬間、さっきまで騒がしかったグラウンドが静かになる。
……ポスッ
阿佐田あおいの打球は真上に上がり、鈴木和香のミットに収まる。その瞬間、グラウンドの全員から再び歓声が起こる。
「ちくしょ〜悔しいのだぁ〜!」
打ち取られたことに阿佐田あおいは悔しがる。普段は無表情な九十九伽奈だが、その姿を見て自然と口角が上がる。
「(………勝った…!)」
初めて味わう感覚に九十九伽奈は酔いしれていた。苦労した先にある達成感。普段ならある程度で加減をしてしまうが、全力でぶつかっていく闘争心。それがどれほど気持ちのいいものかやっと理解できたのである。
「九十九先輩!ナイスピッチです!」
鈴木和香がマスクを外しながらマウンドに駆け寄る。
「ありがとうございます。おかげで楽しく野球をすることができました」
普段は何事にも熱中することがない九十九伽奈。しかし、この野球に対しては密かに燃えるものが生まれたのであった。
どうやらゲームのハチナイの選手登録はスタメン9人ベンチ9人らしい。
つまり10人くらい二軍落ちってことになりますな。全員出してやりたいんだがねぇ。
……ショート有原。大事な試合でヘディングして、二軍と交代みたいなことが起こるかも。その時はすまんな。