燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
「監督。今日で調査は以上になります。今回の得られた事を生徒会に報告します」
皆がグラウンドに行っている頃を見計らって、部室で星野監督と九十九伽奈は密会をする。
「そうか。ご苦労さん」
「それから監督、これも」
九十九伽奈は一枚の紙を差し出す。それは正式な入部届であった。
「入るのか?」
「はい。楽しかったですし、何よりやり甲斐を感じたので」
「そうか。それは良かった。これからよろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
星野監督は入部届を受け取る。九十九伽奈は生徒会に報告のため、部室を出ていった。
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一方その頃のグラウンドでは、投手育成に力を入れた練習を行なっていた。星野監督の命令でキャッチャーの鈴木和香、椎名ゆかり、近藤咲、仙波綾子全員は招集され、永遠と球を受け続ける。
ピッチャーの候補は出番が来たら少し投げて、再び元の練習に戻っていく。ピッチャー候補は様々だが、ほとんどはポジション争いに負けて二軍で燻っている選手である。そのため、初ピッチャーの選手も多い。
各ピッチャーは、臨時コーチの有原翼と東雲龍のふたりが一から教え、データを記録している。
「東雲さん。気になる投手いた?」
「そうね…宇喜多さんと直江さんはリリーフピッチャーにどうかしら?」
宇喜多茜。本来のポジションはライトである。しかし、新加入した九十九伽奈もポジションはライトであり、身体能力からスタメンを剥奪されるのは間違いなかった。
しかし、それだけが理由ではない。『すぴにんぐたーとる』と名付けられたハイスピンのカーブ。その膨大な回転数でボールにブレーキがかかり、仮に当たったとしても凡打にすることが期待できる。
そして、直江太結。本来のポジションはショート。守備は上手いが、引っ込み思案の性格から有原翼に譲っている。
ピッチャーとしての特長は、アンダースローから投じられるライズボール。本来ならソフトボールの浮き上がる球だが、何とそれが投げられるのである。それに、カーブとシンカーを兼ね備えているので、なかなかの逸材である。
「問題は先発ね…」
東雲龍が記録用紙を見ながらボソッと言う。実際、その通りである。
現時点での先発候補は有原翼、東雲龍、柊琴音、野崎夕姫の4人。全員、専属ピッチャーではなく、各ポジションのスタメン候補でもある。
「とりあえず、この分だけでも監督に伝えましょう」
「そうだね。まだ皆投げ始めたばかりだから、焦る必要なんてないよね」
そして、今日の練習は終わるのであった。