燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
九十九伽奈はライト前にヒットを放つ。しかし、続く野崎夕姫は内角に食い込んでくるスライダーを見逃し三振。阿佐田あおいは進塁打となるサードゴロ。
ランナー二塁のこのチャンスの場面で迎えるは8番河北智恵。
「ともっちー!頑張れー!」
有原翼がベンチから声援を送る。その声に河北智恵は気合が入る。そしてその初球、河北智恵は打ち返した。打球は三遊間に飛んでいく。
(よし…!いける…!)
そう河北智恵が確信し、一塁へ走り出す。その時
「アウト!」
審判の声がそう聞こえた。河北智恵は打球の方向を見る。サードが寝そべってグラブを高々に上げている。そのグラブの中に白いものが見えた。向月高校のサードのファインプレー。里ヶ浜高校は無得点に終わる。
チャンスに活気づいていたベンチもシーンと静かになる。ランナーの九十九伽奈とバッターの河北智恵が帰ってくる。
「ごめん。みんな」
河北智恵が一言謝る。
「切り替えていこう!この回、絶対抑えるよ!」
有原翼が落ち込むチームを盛り上げる。そこの声に周りも元気づけられ、守備についていく。
その間、星野監督はベンチ裏に向かった。通路を通ってたどり着いたのは医務室。扉を開けると交代させた東雲龍がいた。
「おい。どうなんや?」
東雲龍は椅子に座り、左足首には氷嚢が置いてある。星野監督は腰に手を当て、東雲龍をじっと見る。
「大したことないです。少し違和感はあるけど…」
「プレー出来るんか?」
「1日待てば、大丈夫だと思うわ」
「大会前にケガなんかするなよ」
ケガという言葉が東雲龍の心に突き刺さる。野球は体が資本。いくら能力が高くても、ケガをしてしまえばそれで終わり。大会どころかその先のプロ野球選手の夢も閉ざされてしまうのである。
「お前、動けるならブルペンで倉敷の球見といてくれ」
その時、星野監督と東雲龍はベンチのほうが騒がしくなってきたことに気づく。
「監督?そろそろ戻ったほうがいいんじゃない?」
「おう」
星野監督は医務室を出ていく。ベンチに戻り、外野席の電光掲示板で得点を確認する。ノーアウト。点差は8-5に開いていた。
「柊。何があったんや?」
「鈴木さんのエラーで……」
柊琴葉は経緯を説明する。原因は鈴木和香の捕球能力にあった。今の鈴木和香のレベルでは、阿佐田あおいの不規則に揺れるにゃんこボールを捕り続けられ無かったのである。その結果、それを向月高校に見抜かれ、ストレートは狙われて痛打され、ナックルは振り逃げで塁に走られる流れになってしまったのである。
ちょっとその時、鈴木和香が捕逸をする。隙をつかれ、1人がホームに帰ってくる。9-5。
「椎名。お前行け」
指名された椎名ゆかりは慌てて防具を着けるとベンチを飛び出していった。ホームで鈴木和香と少し会話をした後、キャッチャーボックスにしゃがむ。
何度も後ろに走り、鈴木和香が肩で息をしながら帰ってきた。
「………すみません……監督……体力が追いつかなかったわ……」
星野監督は見向きもしなかった。鈴木和香は防具を着けたままベンチに座り、近くにあったスポーツドリンクを飲む。
試合が再開され、阿佐田あおいは自慢のにゃんこボールを投げる。ボールは低めのストライクゾーンに入り、椎名ゆかりはしっかりと受け止めた。だが、同時に元投手の椎名ゆかりならでは理解できる違和感が手に伝わったのであった。
「監督!」
椎名ゆかりはベンチにいる星野監督に手を挙げる。星野監督も何事かと椎名ゆかりの元へ向かう。
「どしたんや?」
「あおい先輩、スタミナ的にキツイかも。こう…ズバッと来ない」
その言葉に星野監督はマウンドの阿佐田あおいの様子を見る。見たところまだ苦しそうにはないが、長くは投げられないと感じた。星野監督はミットにあるボールを取るとある選手に向かっていった。
この試合に全員出しせやろうと思ったら、めっちゃ書いてた…(まだ強化合宿1日目なのに…)