燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
星野監督が就任してから数日後、近所のグラウンドを借りることができた。といっても、しばらく使ってなかったので、雑草まみれの荒れ放題であった。なので、しばらくは草むしりの日々が続いた。
その間、入部希望者はちらほらと現れた。星野監督は部室で入部届の動機や鈴木和香と新聞部と兼部で入部した中野綾香からのデータを確認していた。
「…なんぼか経験者はおるが、ほぼ初心者か…」
それと同時に、星野監督には別で気になる選手がいた。
東雲龍。リトルリーグ時代では準優勝しており、走攻守そろった三塁手。
近々クラブチームのトライアウトを受ける予定らしいが、星野監督としては何としてでもチームに欲しいと思っていた。
鈴木和香からだが、有原翼に「お遊び野球には付き合ってられない」と言って揉めたことも知っていた。その野球に対しての情熱と真剣さを星野監督はプラスとして考え、今のチームには必要な存在と考えていた。
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トライアウト当日
東雲龍は打順7番でサード。試合形式で開催社のチームとの対戦。
東雲龍の第1打席。東雲龍は足でバッターボックスの土を整え、ゆっくりとバットを構える。星野監督はファースト側の内野席からそれを見ていた。
そのピッチャーの初球。内角低めのストレートを東雲龍はバットを振り抜き、レフトの頭上を悠々と越すツーベースヒットを放つ。
次のバッターが三振に倒れ、東雲龍はベンチに帰ってくる。スコアボードは0…0…とたこ焼きのようになっている。
それから東雲龍は第2打席で右中間のツーベースヒット、第3打席はレフトへホームランを放っていた。
しかし、事件は次の回の守備で起こった。
場面は7回裏、1-0の場面。先頭打者の打ったサードゴロを東雲龍は捕球し、ファーストに送球する。しかし、ファーストがエラーしランナーはセーフとなる。
次のバッターが打席に入る。ピッチャーが投げると同時にランナーが走り出す。盗塁を刺そうとキャッチャーは送球するが、それが大暴投。ボールは大きく逸れてレフト前に転々としている。その隙に、ランナーはサードまで進んだ。そしてバッターはライト前ヒットを放ち、スコアボードは1-1。
3人目のバッター、打球はショートに転がった。明らかなゲッツーコースだったが、ショートはファーストに送球する。
東雲龍はお粗末な守備を見て苛立ちを隠せず、その場で土を蹴り上げた。
この守備をきっかけに、東雲龍のチームは7失点。次の攻撃も湿りっぱなしで、結局得点は東雲龍のホームランのみで1-7と敗れ、トライアウトは終了した。