燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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めっちゃ個人的な話ですが、最近ハチナイのゲームを作ろうかなと本気で考えている。(プログラミング素人なのに)

「迷ったときは前に出ろ!」(by星野仙一)ということでちょっと頑張ってる。プログラミング以前に素材づくりからだが。


反省

その後の試合。倉敷舞子は失点を食い止めるが打線は奮起せず、14-10で向月高校に敗れた。

 

「今日はありがとうございました」

 

「ええ。こちらこそ、いい練習になったわ」

 

有原翼と高坂椿はお互いに笑顔を作りながら握手を交わす。いつもの高坂椿ならここで一言二言皮肉を言うのだが、今回は大人しく済ませた。

 

里ヶ浜高校の選手たちは宿泊するホテルに帰る。汗と土に塗れたユニフォームを着替え、食堂に集まる。白いテーブルクロスの上には豪華な食事が並んでいた。全員席に着くが、料理を目の前にしても誰も喜ぶ者はいなかった。ただ頭にあるのは、試合に負けたことと怒る星野監督の姿のみである。

 

食堂に星野監督がユニフォームのまま現れる。全員の背筋が凍りつく。

 

「お前ら、飯食ったら寝るまでに今日感じた事をノートに書いて提出しろ」

 

星野監督はそう言うと食堂を出ていった。もちろん、食堂には星野監督の分も用意されていたのだが。

生徒たちは星野監督不在で食事をしていいか戸惑ったが、しばらく待った後に食べ始める。味はしなかった。料理が不味いというわけではない。ただ、味がしなかったのである。

 

食事後、各自決められた部屋に向かう。大浴場に交代交代で行く間、今日の試合の反省や自分に足りなかった事を黙々と書いていく。もっと集中できていれば…もっと練習していれば…もっと思い切ってプレーできていれば…こみ上げてくる気持ちを文章に変え続ける。

 

書き終わった選手たちは星野監督の部屋にノートを持っていく。全員怒られる覚悟の上だ。扉を開けると、星野監督はまだユニフォームのままで腕と足を組んでこちらを向いて座っていた。黙っているだけなのに恐怖が感じられる。最終的に怒鳴られることなくノートを渡せた。

ドキドキが収まらない者、安堵する者、様々に分かれた。

 

就寝時間までの自由時間。素振りをしようと東雲龍バットを持って部屋を出る。するとばったり野崎夕姫に出くわした。

 

「…野崎さんも?」

 

野崎夕姫の左手にはグラブあった。

 

「ええ。どうしても今日の事が悔しくて…」

 

「そう。私もよ」

 

ふたりはホテルの外の中庭に向かう。そこにはちょうどいい壁があり、的あてにはちょうど良かった。

静かな夜にトスッと時折音が聞こえる。そこには河北智恵がいた。

 

「あれ?野崎さんと東雲さんも練習?」

 

「ええ。気持ちが切り替えられなくて…」

 

「そっかぁ。そうだよね」

 

「河北さんも?」

 

「うん。私も今日の試合に納得できてないんだ」

 

少し会話を交わした後、河北智恵と野崎夕姫は壁にボールを投げ、その後ろで東雲龍は素振りをする。ホテルの灯りに照らされながら3人は黙々と練習をする。

そろそろ就寝時間になりかけようとしていたその時、東雲龍があることに気づく。次々に部屋の明かりが消えていく中、食堂の電気だけずっとついていて、人影が見えた。

 

(監督……)

 

就寝時間になり、3人は各自部屋に戻る。東雲龍は部屋に戻る前に、食堂の扉のすき間から中をのぞく。そこには机の上に山積みになったノートと、すっかり冷えてしまった食事を黙々と食べる星野監督の姿があった。しかもまだユニフォームのままである。

 

(監督…まさか…全員のノートを…)

 

食事が終わると星野監督は一冊一冊読み始める。そして別に用意していた紙に何かを書く。一冊読んでは何かを書き一冊読んでは何かを書きの繰り返し。時計は日付変更線に差し掛かるがノートはまだ半分にも到達していない。星野監督も時々、目のツボを押したり外の景色を少し見て読み続ける。

 

東雲龍は明日のことも考え、星野監督こっそりと部屋に戻る。同じ部屋のメンバーが寝てる中、汗まみれの服を脱いでタオルで汗を拭き取ってから寝間着に着替える。

 

(……監督)

 

東雲龍は少し自室の扉を見ると布団に入る。

 

(そういえば、まだ小さい頃に一度だけ似たようなことがあったな…)

 

父との思い出を思い出しながら、眠りにつくのであった。

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