燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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監督のところへ謝りに行こう

試合後、神宮寺小也香は星野監督の元に謝りに行っていた。

 

「お前あんなプレー教えとるのか!」

「清城はそんな野球をするんか!」

 

ベンチ裏の監督室でスパイクを履いたまま正座する神宮寺小也香に星野監督は叱りつける。かれこれもう1時間は経過していた。

 

「お前、坂上が復帰できんかったらどうしてくれるんや!」

 

それを言うなら一二三ゆりに鉄拳を出してボコボコにした貴方はどうなんです…?と、思いながらも、神宮寺小也香はジッと黙って聞いていた。

 

ケガの具合をいうと、坂上芽衣はスライディングを受けた際の転び方が悪く、捻挫。治りはするが、しばらく離脱を余儀なくされました。

一方、一二三ゆりはそこまで大したものではなく、鼻血が出た程度。しかし、先ほどのグラウンドの威勢はすっかりとなくなってしまっていた。

 

一二三ゆりは一般用語で言うところのヤンキー。昔からオラオラという性格で、向かうところ敵なしであった。しかし、見ず知らずの人、ましてや同学年では無く年上の男に何度も殴られた。昭和のスパルタ野球を知らない一二三ゆりにとっては大ダメージだったのだろう。

 

その夜、清城高校の生徒たちは合宿所に戻る。

神宮寺小也香、牧野花、一二三ゆりが一部屋に集まる。

 

「小也香…大丈夫だった…?」

 

「大丈夫です」

 

いつもの調子で淡々と返事するが、内心疲れと恐怖で染まっていた。一二三ゆりのように手は出てないが、あの鬼の形相と声はしっかりと記憶している。

 

「それより、一二三さん。あなたは?」

 

「…チッ。なんてことねぇよ」

 

とりあえず、強がってみせた。

それからしばらく、沈黙の時間が流れる。

 

「あの…もう一度謝りに行こう…」

 

「そうですね…牧野さんの言う通り、全員で行きましょう」

 

「…へ。しょうがねぇなぁ」

 

ーーーーー

 

神宮寺小也香、牧野花、一二三ゆりは里ヶ浜高校が泊まるホテルに向かった。自分たちの合宿所よりずっと豪華な場所だった。

掛橋先生に案内され、星野監督の部屋の前に着く。

 

「失礼します」

 

扉を開けるとそこにはバスタオル一丁の星野監督が座っていた。グラウンドにいた時の怒りのオーラは健在だった。

3人は1列に並んで、星野監督に対峙する。

 

「監督、今日は本当にすみませんでした」

 

神宮寺小也香がそう言っても、星野監督は口を開かない。その沈黙が益々怖い。ただジッと目が合っているだけである。

 

バサッ…

 

神宮寺小也香の隣で音がして、何か動いた気がした。ちらっと横目で見ると牧野花が倒れていた。

 

「おい。何やってんだよ」

 

一二三ゆりが声をかけるも返事が無く、ピクリとも動かない。

 

「牧野さん!?大丈夫ですか!?」

 

「人呼んで来い!」

 

一二三ゆりは部屋を出てホテルのスタッフを連れてくる。神宮寺小也香は牧野花を引きずって部屋の外に連れ出した。

しばらくして、牧野花が目を覚ます。

 

「牧野さん!大丈夫ですか?」

 

「ん…?小也香…」

 

「心配しましたよ…急に倒れるんですから…」

 

「おい、何があったんだよ?」

 

「えっと…星野監督の目を見てたら、なんか吸い込まれていって…それで、目の前が真っ暗に…」

 

「はぁ?なんだそれ?」

 

牧野花の話を聞く分に緊張して気絶したようだった。

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