燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
強化合宿最終日の夜、夕食を済ませた選手たちはホテルの会議室に集められていた。
しばらくして、ジャージ姿の星野監督が現れる。右手には四つ折りにされた紙が握られていた。
強化合宿を乗り越えてきた達成感に喜ぶ選手たちと対照的に、星野監督の顔は重い。
「今からスタメンを発表する」
内訳は以下の通りであった。
スタメン
1 中野綾香 中堅手
2 阿佐田あおい 二塁手
3 有原翼 遊撃手
4 東雲龍 三塁手
5 朝比奈いろは 一塁手
6 九十九伽奈 右翼手
7 柊琴葉 左翼手
8 鈴木和香 捕手
9 倉敷舞子 投手
発表を聞いて、嬉しがる者やショックを受ける者と様々いた。
星野監督は続けて言う。
「ベンチはまだ決めとらん。決まったらまた伝える」
星野監督は部屋の横の椅子に移動し腰をかける。
そしていつも通り鈴木和香によるミーティングが始まるのだが、誰がどう見ても集中出来ていない選手が何人かいた。
ミーティングが終わり各部屋に戻ると、すすり泣く声が廊下に聞こえる。
外のグラウンドでも、現実を受け入れられずひたすら素振りをする選手がみえる。
トスッ…トスッ…
ホテルの中庭。河北智恵は壁に投げ、はね返ってきたボールを捕っていた。合宿初日から欠かさず続けていた練習。スタメンから外れたショックを何とか誤魔化そうとしているが、むしろショックが増えるばかりであった。
(やっぱり……向いてないのかなぁ…)
そんな考えが河北智恵の頭をよぎる。
「あら…確か貴方は星野監督の…」
後ろから声がして振り向くと、神宮寺小也香が立っていた。
「あ…えっと、神宮寺さんも練習ですか?」
「いえ、別件で用事があって来ただけです」
「そ、そうだったんですね…!」
元気よく振る舞ってみたものの貫き通せず、河北智恵は俯いてしばらく沈黙の時間が流れる。
「あの…神宮寺さん…!わ…私に…!野球を教えてください…!」
覚悟を決め、熱い視線を神宮寺小也香に送り、訴える。
「わ…私に…ですか…?」
「はい!相手チームだからこそ、見えるところがあると思うんです…!お願いします…!」
神宮寺小也香はしばらく考える。
「……分かりました。星野監督に恩もありますし、そこまでお願いされたらさすがに断れません」
「ホ…ホントですか…!ありがとうございます…!」
「その代わりですが…私も星野監督についてもっといろいろ教えてください」
そうして二人は連絡先を交換するのであった。
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一方その頃、鈴木和香は星野監督のところへ行っていた。
「監督、なぜ野崎さんを使わないんですか?」
真剣な面持ちで、スタメン漏れした野崎夕姫の起用を提案する。野崎夕姫はこのキャンプで長打力を磨き、投手では150キロを計測するほど成長していた。しかし、星野監督からは一言。
「アイツは、まだ使えない」