燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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戦力外通告

控え

椎名ゆかり

近藤咲

坂上芽衣

直江太結

宇喜多茜

塚原雫

竹富亜矢

永井加奈子

 

星野監督からそう告げられた。

ここで名が挙げられなかった人物は、当たり前だが甲子園に出場させてもらえない。別の言い方でいうと、戦力外ということである。

 

控えでも呼ばれたメンバーは嬉しかった。だが、戦力外の現実を突きつけられた選手たちを前には喜べなかった。悲しみを堪えて笑う者、悔しさが顔から溢れ出す者、絶望する者と様々である。

 

その夜、戦力外通告を受けた選手たちの帰り道の背中は寂しかった。

そのひとり、仙波綾子は家の玄関を開ける。7人兄妹たちがどっと押し寄せ、目を輝かせながら野球の話を聞いてくる。いつものことである。

 

「今日も、頑張ったよ…!」

 

作り笑顔で仙波綾子は答える。戦力外の事はバレるまで伏せておくことにした。

いつも通り夕飯を作り、楽しく食事している途中、誰かが呼び鈴を鳴らした。

 

(こんな時間に誰だろう…?)

 

そう思いながら玄関を開けると、そこには星野監督が立っていた。

 

「仙波。夜遅くにすまんな」

 

「監督?どうしたんですか?」

 

「お前に謝らまらんといけんことがある」

 

玄関のうっすらとした明かりが、星野監督の真剣な面持ちとブレザーを照らす。

仙波綾子は星野監督を家に上げ、兄妹の中居間に座る。いつもならドカッとあぐらをかく星野監督が珍しく正座をしている。普段と違う雰囲気に仙波も緊張が走る。

 

「仙波、お前は兄妹がぎょうさん(・・・・・)おって家の事をせんといけんにも関わらず、それでもずっと野球を頑張ってくれてたな。いつもありがとう。そして、お前の青春を俺が奪って申し訳ない」

 

星野監督は仙波に頭を下げる。

 

「監督…!いいんです…!頭を上げてください…!」

 

仙波はいつものユニフォーム姿では想像できない星野監督の行いに驚きながらも、星野監督の体を起こす。

 

「監督…いいんです。野球もそうですけど、スポーツって上手い選手が選ばれるんです。私は、選ばれた選手のサポートを何でもしますから…」

 

試合に出れないことは変わらないが、仙波綾子の気持ちはどこが吹っ切れていた。その後星野監督は手土産のメロンを置くとスッと帰ってしまった。仙波兄妹はメロンに大はしゃぎするのであった。

 

 

翌日。仙波綾子は野球の練習の中でその話をした。すると、どうやら他のメンバーにも星野監督は訪問していた。共通点は、戦力構想から外れた選手・片手にメロンを持っている・正座をして謝罪をしている事であった。特に「青春を奪う」というワードは全員に言っていた。

 

今日もグラウンドのベンチから、星野監督の声が響いている。

戦力外通告を受けた日は浅いが、メンバーの考えはひとつだった。甲子園という舞台の裏で、星野監督を優勝させようと。

 

 

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