燃える男と世界でいちばん熱い夏 作:久戸瀬放映Project
とうとう夏の大会。甲子園の戦闘が始まった。
相手は明條学園。芸能人を多く輩出していることがあってか、マスコミもこぞって取材をする。
今日もテレビや新聞で、キャプテンの大咲みよがインタビューを受けている様子が流れていた。大咲みよは明條学園の4番のショート。アイドルグループの『タッチアップ』に所属している。
「聞いた話だと野球初心者の集まりらしいので、楽々と勝っちゃって次の試合に備えます!応援お願いします!」
大咲みよのインタビューに、星野監督は闘争心を静かに燃やす。いや、今は星野監督だけではない。選手たちも皆同じであった。
試合開始の直前、星野監督もインタビューを受ける。「明條学園相手に勝機はありますか?」という質問だった。星野監督の顔色が険しくなる。
「あるに決まってるだろ。もちろん優勝を狙う」
優勝という言葉に、記者は舐めた笑みを作る。
「優勝ですか?」
「俺のムチに耐えてきたんや。必ず優勝させる」
記者の無礼な態度に怒鳴りたい気持ちをグッと堪えながら、星野監督は最後に不機嫌さ丸出しで言う。
「俺は星野だぞ」
そういうと星野監督はベンチへさっさと行ってしまう。圧倒的に尺は足りないが、去ってしまったものは仕方ない。
開会式が終わり、いよいよ試合が始まる。観客席からも里ヶ浜高校の選手達は緊張しているのが見て分かる。一方で明條学園はステージで慣れているのか、どうということがない顔をしている。
「甲子園でも思い切ってプレーするよ!」
有原翼の言葉にチームは締まる。リラックスできる選手はいない。初の甲子園という大舞台。そして、中途半端なプレーをするものなら容赦なく怒る星野監督。心臓が飛び出しそうな緊張により闘志が一層燃え上がる。
ピッチャーは倉敷舞子。緊張なのか細かくボールを持つ右手が震える。
1番バッターへの投球。調子は良い。ストレートとカーブはしっかりと鈴木和香の構えたところに投げ込まれている。1番2番をしっかりと抑え、3番も空振り三振で切って取る。
「ナイスピッチです。先輩」
ベンチに戻りながら鈴木和香は倉敷舞子に声をかける。
里ヶ浜高校の攻撃。相手投手はそこまで強くはない。1番バッター中野綾香はセンター前に運び塁に出る。続く阿佐田あおいは送りバント。ここまではセオリー通り。続く有原翼、東雲龍、朝比奈いろは、九十九伽奈、柊琴葉とマシンガン打線が続き、一挙に4打点。三塁に九十九伽奈、二塁に柊琴葉。
ワンアウトで鈴木和香が打席に立つ。その初球を鈴木和香は見逃す。結果はストライク。
「打てぇ打てぇ!和香!」
ベンチの最前列に立ち、星野監督は腰に手を当て叫ぶ。
次の投球、鈴木和香が振ったバットにボールが当たる。ポーンと当たった打球は力ないショートゴロ。それを大咲みよが華麗に処理する。
アイドルだからなのか、平凡な守備だけでも明條高校の観客席は盛り上がる。
その後、倉敷舞子がタイムリーを放ちさらに追加点を重ねる。中野綾香は凡退してチェンジ。1回の表から6点と大量リードする形となった。