燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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2番 阿佐田あおいの大勝負

2番バッターの阿佐田あおいがバッターボックスに入る。

阿佐田あおいは博打運に恵まれているのが特長。時々グラウンドでじゃんけんをしている姿をみているが、負けたところは見たことが無い。本人も、運の強さは自覚しているようだ。

 

阿佐田あおいとの出会いははっきりとは覚えてない。気がついたらそこにいたのだ。実際、しばらくの間星野監督も入部届をもらってないことに気づくまで部員だと思っていた。

 

阿佐田あおい自身、野球は初めてだった。しかし、今は見違えるほど変わっている。彼女の長所は、ずばり飲み込みの早さ。バッティングで2〜3球を見れば、大体は打ち返せるようになる。守備も映像や他の人の風景を見せておけば、見事に形にできている。

データや理論より、感覚でプレーする選手のようだ。

 

星野監督は阿佐田あおいの勝負強さに注目していた。

阿佐田あおいはランナーがいるのといないのでは打率が大きく変わっていた。ランナーがいる方がヒットをよく打つのである。さらに、ランナーが増えれば増えるほど、打率は高くなっていた。

 

星野監督から見て阿佐田あおいはそれほど身体能力が高い選手ではない。フルスイングしてもせいぜい外野の前に飛ぶのが精一杯。しかし、その短所を天性が補っているように見える。

阿佐田あおいの打球は、内野の頭をギリギリ越えて外野の前にポトッと落ちたり、内野の間をすり抜けるヒットが多い。ただ、意図的に狙っているのか、運良くそうなっているのかは分からない。

 

 

坂上芽衣が第1球を投げる。すると阿佐田あおいはバントの姿勢をとる。ボールはズバッと音を立てて、ミットに収まる。

 

「なぬ…!」

 

バットに当たらなかったことに阿佐田あおいは驚きの表情を見せる。

第2球のストレート。阿佐田あおいはまたもバントの構え。しかし、またもやバットには当たらず、ツーストライク。

 

「ふぅ~ん…読めてきたのだ…!」

 

阿佐田あおいの口元がニヤッとする。星野監督はそれを見逃さなかった。

 

「(……何か仕掛けてくるな)」

 

ピッチャーの坂上芽衣にボールが返球される。すると阿佐田あおいはすでにバントの構えを見せる。それを見てファーストとサードが少しバッターに近づいて守る。

坂上芽衣の第3球。ストライクコースのストレート。それに対して阿佐田はバットを引く。

 

カキン!

 

バントの構えからヒッティング。一同はトリックプレーに驚く。いい当たりだが、打球はショート正面に転がる。ショートの新田美奈子はファーストに送球し阿佐田あおいはアウト。ランナーの中野綾香は二塁に進んだ。

 

「くぅ〜…惜しかったのだ〜!」

 

内野の方を見ながらベンチに帰る阿佐田あおい。

そして次のバッター、有原翼が打席に向かう。

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