燃える男と世界でいちばん熱い夏   作:久戸瀬放映Project

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星野監督の静かな怒り

 

3番ショート有原翼。カウントは1ボール1ストライク、坂上芽衣の高めに抜けたカーブを有原翼はフルスイングで打ち返す。ボールはセンターの竹富亜矢の頭上を悠々と越えていく。

その間、セカンドランナーの中野綾香がホームに帰ってくる。得点に紅チームはおおいに盛り上がったが、二塁で事件は起こっていた。

竹富亜矢が送球し、有原翼がタッチアウト。

 

「あちゃあ…」

 

首をかしげる有原翼、その様子をベンチから星野監督が見ていた。腕を組み、首を傾げ、さらに険しい表情になる。

 

「(経験者なら、行けるか行けないか見て分かるだろ!)」

 

ベンチに「ごめんごめん〜」と帰ってきた有原翼を見るなり、星野監督は心の中で叫んでいた。ベンチはミスより得点したことを喜んでいた。

 

次のバッター、東雲龍が打席に入る。結果は初球のストレートを簡単にレフトフライにした。

悔しそうな顔をしながらベンチに帰ってくる。

 

「(野球経験者がそろいにそろってアウトになりやがって!)」

 

またも星野監督は心の中で叫ぶ。

 

チェンジとなり、紅チームは各自の守備位置に移動する。

ピッチャーは東雲龍。キャッチャーは鈴木和香。東雲龍の本来の守備位置はサードだが、持ち球のストレートとスライダーはなかなかの球威とスピードがある。一方、鈴木和香のほうは課題が多い。配球やリードなど、頭脳はチーム随一の存在だ。しかし、圧倒的に身体能力が劣っていた。体力と経験が大きく足りてない。さらに今で言えば、東雲龍のスライダーはまだ捕れない状況である。

 

白チームの攻撃、1番竹富亜矢。元陸上部だったが有原翼との短距離走に負け、打倒有原のために陸上部を退部し野球部にやってきた。自慢はもちろん、陸上部で鍛えた走力。盗塁、走塁もそうだが、守っているセンターの守備範囲が広いことが何よりの武器だろう。

 

マウンド上の東雲龍、大きく振りかぶって投げる。投じられたストレートはズバッと音を立ててミットに収まる。

結果、3球で竹富亜矢は見逃し三振。鈴木和香が理想のコースに要求していた。

 

続く柊琴音と坂上芽衣もアウトに打ち取り、紅チームは気分上々でベンチに帰ってくる。

 

「ナイスピッチ!」

「私たちもしかして勝てるかも…!」

 

そんな言葉が飛び交う中、星野監督はポツリ

 

「何をやっとるんや…あいつら…」

 

星野監督は白チームの柊琴音、坂上芽衣の凡退をとても見てられなかった。本来なら、チームを引っ張っていくはずの野球経験者、紅白そろってアウトで帰ってくる光景に、星野監督は期待を裏切られた感覚を味わっていた。

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