OVER×GODDESS〜異世界童話〜   作:Ark’s

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少し遅くなりましたが第七話完成しました。
明日か明後日に掲示板回2回目も投稿します。


vsイレギュラー ーー撃破後の一幕ーー

 逸脱の悪魔との死闘が終わり、ボス部屋には沈黙が支配していた。私は、全回復したにもかかわらず、精神的な消耗から全身が震えているのを感じた。目の前では、さっきまで一緒に戦っていた彼がUIを開いて何かを確かめている。彼の動きは静かで、感情を読み取らせない。

 

「本当に、あなたがいてくれて助かったわ。感謝しかない。私の命の恩人よ」

 

 私は心からの感謝を込めて、深く頭を下げた。アイゼンは軽く首を振る。

 

「礼はいい。だが、ポーション代はきっちり請求させてもらうぞ。上級ポークションだ、高い」

 

 彼はわざと金銭的な話を持ち出して、私の感謝の言葉を素直に受け取らないようにしている。その不器用で義理堅い態度が、彼の硬い装甲の下にある優しさを物語っていた。

 

「もちろんよ。街に戻ったらすぐに精算するわね」

 

 私は微笑み、改めて彼に向き直った。

 

「そういえば、さっきは急な出来事で互いに名乗らなかったからまずは、改めて自己紹介を。私はリリーバイス。あなたの名前は?」

 

 私が名乗ると、彼はサングラスの奥から私を一瞥し、短い言葉で応じた。

 

「俺は■■■■■。見ての通り、傭兵だ」

 

 ■■■■■。その名前は、彼の堅実な防御スタイルと、鋼鉄の装甲によく似合っている。私たちは互いの素性をほとんど知らないにもかかわらず、たった一つの共闘で、深い信頼感を共有していた。

 

 互いに名乗り合った後、アイゼンは居心地が悪そうに、サングラスのフチに触れながら口を開いた。彼の声には、僅かな戸惑いが含まれていた。

 

「なぁ、あんたの名前、少し長くて呼びにくい。愛称呼びみたいで馴れ馴れしくて悪いが、リリスって呼んでいいか?」

 

「リリス?」

 

 私が思わず息を呑み、立ち止まると、アイゼンはすぐに気まずそうに顔を逸らした。

 

「駄目なら、断ってくれていい」

 

「いいえ!リリスでいいわ!」

 

 私は即座に、強い熱意をもって答えた。その理由は、この「リリス」という愛称が、私にとって、そしてこの世界にとって、どれほど重い意味を持つかを知っているからだ。

 

 (どうして彼が『リリス』という愛称を知っているの?この世界では誰も、私のプレイヤー名から派生したその愛称を知らないはずなのに……)

 

 原作『勝利の女神:NIKKE』の世界において、リリスはゴッデス部隊のリーダーであり、人類を救うためにラプチャーと戦った最初にして最強のニケだった。

 

 このユグドラシルで、私はその「リリス」という名前を背負いながらも、ただの一プレイヤーとして気ままに過ごそうとしていた。だが、今、目の前の彼から、親愛の情を込めた『リリス』という愛称を呼ばれた瞬間、私は強い運命を感じた。それはまるで、この世界が私に「あなたはこの名に相応しい存在でなければならない」と囁いているかのようだった。

 

「そうか。じゃあ、リリスだ」

 

 ■■■■■は心の底から安堵したように頷き、微かに口角を上げたのがサングラス越しに垣間見えた。その瞬間、私たち二人の間にあった形式的な距離は消え去り、特別な親密さが生まれた。

 

 私は、この和やかな空気を逃さず、彼に問いかけた。

 

 「■■■■■。このダンジョンは、私がNPCからの依頼で来た場所よ。私がダンジョン攻略をしている最中、他のプレイヤーはいなかったはず。あなたはいつのまに、あのボス部屋にいたの?」

 

 アイゼンは、再び周囲を警戒するフリをしてから、大きく、重々しいため息をついた。その沈黙は、彼が真実を話すことへの葛藤を示しているようだった。

 

 (くそっ、今更、「あんたが一人でダンジョンに入っていくのに興味を惹かれて、こっそり隠密スキルを使って追跡していた」なんて言えるはずがない!あの戦闘の苛烈さ、そしてあんたの驚異的な実力を見てしまった後で、自分の行動を正直に話せば、俺はただのストーカーだ。ゲーム内での行動とはいえ、いくら何でも失礼すぎる。それに、あんたの闘志に水を差したくない。あの時、逃げずに助けたのは、俺の意地だ。その意地を汚すような、ヘタレた理屈は言えない)

 

 ■■■■■は、必死に頭の中で作り上げた最もらしい嘘を、早口で吐き出した。言葉の端々から、落ち着きのなさと真実を隠したいという切実な願いが滲み出ていた。

 

 「……はぁ。いいか、リリス。この話は絶対に他言無用だぞ。俺は、このダンジョンのボスが特殊なドロップアイテムを出すという極秘の噂を耳にした。信憑性の高い情報だったから、誰にも知られずに入手したかった」

 

 彼は、まるで自分が秘密組織の一員であるかのように、声のトーンを下げて説明を続けた。

 

 「だから、あんたがボスと戦い始めた時も、俺は隠密系のスキルで影に潜んでいた。あんたがボスを倒して帰った後、リポップしたボスを倒してアイテム入手のために現れようとした。だけど、あの悪魔の空間封鎖に巻き込まれた、というわけだ」

 

 私は、彼のあまりにも分かりやすすぎる嘘を聞きながら、静かに微笑んだ。彼のその言葉が嘘だとわかっても、彼が私を助けるために隠れるのをやめてまで飛び出して敵の攻撃を防いでくれたこと、それは紛れもない事実だった。

 

 「なるほどね。特殊なドロップアイテム、か」

 

 私は彼の顔を覗き込むようにして言った。

 

 「それは大変だったわね。収穫なしで。時間を無駄にさせたのは私の方だわ」

 

 「ああ、まあな。手間をかけた割には、収穫はポーション代だけだ」

 

 彼はサングラス越しに視線を逸らしたが、彼の口元には、微かな安堵の色が浮かんでいた。

 

 私たちはダンジョンを抜け、街の広場へと戻ってきた。外の賑やかな喧騒は、ダンジョン内の重苦しさとは対照的で、私たちの心を解きほぐした。

 

 「しかし、あの連携は本当に凄かったわ、■■■■■。あなたの的確な防御、ヘイト管理と私の敵の隙を付く攻撃、即席ながらも最高の連携だったわ」

 

 アイゼンは足を止め、私に深く頷いた。

 

 「そうだな、リリス。あれは、もう偶然ではない。俺はあんたの動きが、俺の盾の角度と完璧に合っていたのがわかっていた。俺がヘイトを固定する限り、あんたは安心して攻撃できる」

 

 私はUIを開き、フレンド申請の画面を表示させた。この場でこの縁を確かなものにしたかった。

 

 「この妙な縁も、何かの運命かもしれない。よければ、フレンド登録しない?次に会ったとき、また一緒にダンジョン攻略やイベント攻略に挑みたいの」

 

 アイゼンは私の目を見つめた後、小さく頷いた。

 

 「フッ。わかった。あんたのようなプレイヤーは、なかなかいない。俺の盾と組めるやつは、特に貴重だ。登録する」

 

 ピロンッ。

 

 私のUIにフレンド登録完了の通知が表示され、『■■■■■』という文字がリストに刻まれた。これで、私たち二人は正式にこの世界で繋がった。

 

 「じゃあ、私はこれから依頼達成の報告に行くわ。■■■■■は?」

 

 「俺は、特殊ドロップアイテム探しは一時中断だ。ポーションの補充と、装備のメンテナンスをする」

 

 「そう。わかったわ。じゃあ、またね、■■■■■。どこかのダンジョンで、また一緒に戦えるといいわね」

 

 私が笑顔でそう告げると、■■■■■は私に背を向けながら、ぶっきらぼうに言葉を残した。

 

 「ああ、次会うときも、あんたの攻撃を邪魔しないように、俺の腕を磨いておく。達者でな、リリス」

 

 そう言って別れたものの、この後も二人は比較的早い段階で再会を果たすことになる。そして、互いに不器用な■■■■■と、リリスは、その後も予想以上に高い頻度で共闘を重ねる。やがて彼らは、このユグドラシルで名を馳せるクランを結成するまでに至るが、それはもう少し先の物語である。





いつかのメモ: 一部が黒く塗りつぶされている。
 ・彼の名前は「■■■■■」。 
 ・主人公と二人でクラン「■■■■■■■」を結成。
 ・優しいと思えば迫力ある時もあり真面目だったりお茶目だったり子供のようだったりするけど、すごく頼れる人。
 ・後にクランに参加するメンバーたちやリリスからは■■の優れた腕前から「■■■」と呼ばれるようになる。

ゴッデス部隊メンバー(指揮官も含む)をプレイヤー側で登場させても良いですか?

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