SAMULION ~まじっくナイトはご機嫌ナナメ☆~   作:Croissant

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巻の壱拾

 午後一発目の講義が終わると、今日はもう帰る事が出来る。

 

 人気がない訳じゃないけど、ちょっち厳しいからこの教授の時間をとる人間はそんなに多くない。

 といっても廊下側と窓側の席はぎっちり埋まってる。まぁ、オレの周囲に人がいないからだけどね。ふふん……

 

 おまけに何か知らないけど恭也が来てねーでやんの。

 おかげでただでさえ寂しい環境が冬の荒野のよう。泣いてイイよネ?

 

 アイツの合わせて講義とってる月村さんによると、寝不足で出られないんだそーだ。

 なんでも、夜中に恭也の妹さんがどこかへと飛び出して行ったんだそうな。

 で、アイツは寝てられる訳もなく、心配でずっと待っていた……と。

 

 恭也の妹って事は美由希ちゃんか?

 なのはちゃんはまだ小学校二,三年だから夜出かけたりする訳ないし。

 

 そりゃ年頃の女の子が夜中に出てったら心配するだろーからしょうがない…か? 若干、シスコン入ってる気がしないでもないけど。

 モチロンオレだって美由希ちゃんの理由がどうあれ感心しないけどネ。その晩にあんな事あったわけだし。

 

 

 だけど……何かタイミングが良すぎる気もするんだよネ。

 

 

 恭也のあの通りトラブルメーカーだし、じーちゃん達によると高町家は色々と訳あり一家っぽい。

 何せあの士郎さんにしても、あそこで店を構える前はナゾの仕事してたらしいし。

 そー言えば かーさんも士郎さんは強いって言ってたしなぁ……あの(、、)かーさんが……

 

 確かあそこの実家からして旧家だからややこしくてトラブルに巻き込まれ易いとか何とか言ってたし、そーゆー一族(トラブルメーカー)なのかもしれないなぁ。

 

 

 となると、まさか美由希ちゃん昨晩のアレに巻き込まれてた……とか?

 

 

 だったらアイツが来てないのも納得できるし、ややこしいから月村さんに説明できなくてはぐらかしてる可能性も。

 だから彼女も軽く考えて大学に来たものの、女の勘ってヤツで気にはなってると。

 

 恭也ってどうしようもないフラグ建築士だし、そーゆー事なら納得できなくも……

 

 あー……無い、か。

 

 雷によると、昨晩のアレとかは霊的な攻撃じゃないとどうしようもないんだとか。

 恭也はチョー強いけど雷みたいな力はないっポイし、それだったら勝てたとしてもただでは済まないハズ。だったら勘の良い月村さんが気付かない訳がない。

 ツンドロっつーか、ドロデレっつーか、恭也にべったべたの月村さんが、アイツが悩んでたり困ったりしてたら暢気に一人で大学に来るわきゃないんだ。

 

 今日だって、終わったらさっさと帰っちゃったけど、彼女にとってどーしても外せない講義だった訳じゃないしネ。

 別に焦って帰る風もなかったから、恭也が怪我してるとかじゃないだろう。

 どーせ何時もの理由。恭也がいないからこれ以上いる理由なんてないってとこだろうし。ははは…モゲロ。

 

 ま、まぁ 兎も角、美由希ちゃんが無事で何よりだ。

 やっぱ知り合いが怪我したりするのは嫌だしナ。念の為に後で確認の電話でもいれとこ。

 

 

 知らなかったから大学に行ったけど、そーゆー事だったらアイツんちに行ってたぞ。

 

 これでも一応は単位足りてるんだ。うん。

 だけどアホのように講義を取ってるから、アホみたく出なきゃならないだけ。

 

 自業自得で講義に出まくってるだけだから、知り合いの安否云々が関わったら無視するのは当然。

 

 後で教授に土下座してひたすら謝ってレポート書けばどーにでもなるわい。

 じーちゃんに鍛えられた土下座の技は百八式あるぞ。チクショーめ。

 

 

 兎も角、そんな訳で何時ものよーに何時もの道を歩いてお家に向うのでした。

 

 アイツも心配だけど、切羽詰ったモンがないなら電話で済むし。家帰ンないと電話番号わかんないし……

 

 え? 携帯にナンバー登録してないのかって?

 してねーよ悪かったな!! オレは普段、不携帯電話のヒトなんだよ!!

 どーせナンバー交換しよ♪ なんて言ってくれる女の子なんているわけないしナ。HaHaHaHaHaHaHa……

 

 いかん 泣けてきた。

 

 

 真に持っていつものとーりで甚だ情けないが、やっぱりちょっと道に迷ってしまった。

 やっぱりアレだな。こっち行ったら近道じゃね? と思っちゃうのもフラグなら、その考えをナイスだと思ってしまうのもフラグなんだな。

 幸い一時間未満のロスで済んだけど、時間約束したら泣いてしまうところだったヨ。

 

 『オレ、早く帰れたら翠屋にケーキ買いに行くんだ……』

 

 何て思っちまったのも悪いのか?

 折角、雷にあの味を教えてあげようと思ったのに……こんな時間に買って帰ったら夕飯が入らないじゃないか。

 

 仕方ねー 次の機会にしよっと。

 

 

 そう溜息を吐き、四時という微妙な時間をぽてぽてと家に向かって歩いていた訳なんだけど……

 

 

 何だろネ。ホント。

 

 あーゆーのウッカリ目に入れちゃうのってさ。

 

 

 

 

 

 

           -巻の壱拾-

 

 

 

 

 

 

 足元にばかり目が行っていた所為か、彼女はその人物の接近に気付けずにいた。

 普段の状態であったならそんなミスは犯さなかっただろうが、何しろ今はそれどころではない。

 

 目元は何時の間にか滲み出た涙で濡れ、その顔色も何時もの白さを青くしている。

 要はそれほど必死だったのだ。

 

 

 「落し物か?」

 

 

 意外なほど静かで、落ち着いた声だった。

 しかし外見的な歳はまだ若く、子供以上大人手前といったところだろうか。

 それでもその眼差しは針の様に鋭く、相当鍛えているのだろうその体躯にも無駄な脂肪どころか無駄な筋肉も無い。

 

 ――恰も、鍛え上げられた豪剣が如く。

 

 

 だが少女は身構える事もなくその目を見返していた。

 

 人ならば誰もが恐れるような青年のそれをものともせず、まっすぐ視線を返している。

 彼が纏っている気配も尋常ではなく、僅かな隙を見せれば首を()ねられかねない。

 そんな緊張感を漂わせているにも拘らず、だ。

 

 いや、その理由は簡単である。

 この男、敵意を全く持っていないのだ。

 

 少女に…自分が向けられている眼差しには敵意も害意も全くゼロ。皆無である。

 

 外見的な不気味さや怖気の走る容貌に慣れ過ぎている(、、、、、、、)彼女にとって、この青年が纏っているフィルターは用を成さないので穏やかな好青年に過ぎない。

 だからなのか、或いは虚を突かれたからかは知らないが、彼女は青年の問いにコクリと頷きで返していた。

 

 彼女自身、驚いていたのかもしれない。

 

 その答えを聞き、フム…と顎に手をやって考え事をしている青年に気付く事もなく戸惑っていたのだから。

 

 「それで……何を落したんだ?」

 

 「……エ?」

 

 そして、次に出た彼の言葉によって更に戸惑う事となる。

 

 

 「いや……

 

  探そうにも落し物が何なのか解らなくては探す事もできんからな」

 

 

 

 

 

 

 

 それは貴重な出会いなの――

 

 

 何て思わずヘンなセリフを浮かべてしまったけど、ホントに貴重な体験だ。

 

 だってさ、この娘ってオレ見て怯えないんだぜ?

 

 視線ズラしたりもしないし、目を真っ直ぐ見返してくるし、泣かないし……って、イロイロと思い出してたらオレが泣きそうになったヨ……

 

 

 そ、それは兎も角、

 なんか知んないけど、落し物に気付いて必死こいて探してるんだけどそれが見付からなくて半泣きになってるって事でFAだよね?

 

 だからナニ落したのかって聞いたんだけど……

 

 

 「………」

 

 

 何で目が点になってんのかね、この娘。

 

 聞いたのが悪かった?

 つか、こんな怖いヤツ(涙)に問い詰められた事はやっぱり怖かったとか(泣)?

 それともそれを先に拾って脅迫するとか思われてる?!

 

 泣いていい?

 

 

 

 「……ドうしテ…そンな事聞くノ?」

 

 

 

 あ、反応した。

 

 つーかやっぱ疑われてる?

 

 「いや――

  手伝うからには形状くらい聞いておかないと…な」

 

 お財布かもしれないしネ。

 あ、女の子だからハンカチかもしれないなぁ。

 ひょっとしたらペンダントかもしれないし、キーホルダーかもしんない。だから聞いておこうと思ったんだけど……伝わってない?

 

 「何デ…」

 

 「――む?」

 

 

 

 「……何デ、手伝ッてくれルの?」

 

 

 

 …………は?

 

 いや、何でって聞かれても超困るんですけど。

 

 だって深い理由なんてある訳無いんだし。

 

 勢いに任せてやっちゃった…ちゅー事もあるけど、

 何時ものよーに勝手に体が動いちゃった、というのもある。

 

 脊髄反射っちゅーか、梯子状神経的反応っちゅーか……とーさん達に『お前は考え無しに行動しすぎるよ』って、何時も何時も言われてはいたんだけどねー

 

 でもしょうがないんだ。

 

 だって泣きそうな子がいたんだから。

 

 何か大切なものを探してるって感じの子が目に入っちゃったんだから。

 

 普段だったらねー 近所のおじさんとかがいて必ず声かけてたんだろーけど、タイミングが悪いのか誰もいないでやんの。

 

 つーか夕方になってないのに人っ子一人いないってどーよ。

 

 

 他に誰もいなくて、オレが見つけちゃって、この娘が半泣きで何か探してる。

 

 だったら……

 

 

 「困ってる子供の手伝いをするのに理由なんかいるのか?」

 

 

 ――って事なんだよねー

 無視なんてできる訳ないじゃん。

 

 ねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呆気に取られてしまった事もあり、気が抜けたという事も手伝ったか、意外なほどあっさりとその少女は落し物の形状を述べた。

 

 最初、それを教えられた時には流石にこの青年……太一郎も面食らっていたようであるが、そこは彼。顔に全く動揺を浮かべず『解った』と、しゃがみ込んで捜索を開始した。

 恰も警察の鑑識が如く。

 

 立ったままでは見付け難いという事もあるが、少女の落し物を探す為にここまでできる。

 

 その美点を知らぬ者からすれば目を疑う光景であろうが、彼を良く知る者からすれば然程のものでもない。実際、太一郎の家族であれば『然も有りなん』と納得している事だろう。

 厳ついにも程があり、気を抜いたら縊り殺されかねない雰囲気を持っている彼であるが、その中身はとことんお人好しなのである。

 

 兎も角、何とか再起動を果たした少女と共に、這い蹲るようにしながらも捜索の輪を広げていった。

 

 何しろそれ(、、)はそんなに大きいものではないが、見失うほど小さくも無い。

 

 ではどうやって落したのか? という疑問が無い訳ではないが、相手は少女とはいえ女の子であるし口下手という事もあって太一郎も聞くに聞けない。

 

 「この辺りに落したのか?」

 

 「……ウん。

  ここ周辺域、約15m内のハズ」

 

 「具体的だな……」

 

 十五メートル範囲内。

 そう教えてもらいはしたが、半径なのか直径なのかどこを基点にしてなのかも不明。

 せめてそれくらいは知っておきたいとも思ったのだが、前述の通り聞くに聞けないのが痛ましい。

 

 結局、ローラー作戦で調べてゆくしかなかった。

 

 「(考えてみたら けっこう広くね?)」

 

 そう思っても後の祭りである。

 まぁ、文句を言うつもりも無い訳だが。

 

 

 ちらり、と少女に目を向けると、やはり無言で探し続けている。

 

 彼が腰を落して探しているのを見てそれに倣ったのか、彼女も這い蹲るように捜していた。

 

 黒いタンクトップと黒いミニスカートに黒ニーハイ。そして黒ブーツ。

 狙っていた訳ではないが、捲れ上がった見えてしまった下着まで黒。

 お陰でいっそう肌の白さが目立つ。

 

 見たところ、友人である恭也の下の妹と同年齢であろう。

 その下の妹である高町なのは も愛らしい少女であるが、この少女は纏っている空気からその年齢よりは年上に感じられてしまう。

 

 いや、年上に見えてしまう(、、、、、、)何か(、、)を背負っている。そう思えてならない。

 

 だからこそ余計に放っておけないのであるが。

 

   

 しかし、あれだけ少女が必死になって探し、まだ見付かっていないのだからこの捜索には相当の困難が予想される。

 だからといって『無理』の一言を太一郎が口に出すとは思えないのだが。

 

 家族の教育によって――だけではなく、彼自身の本質がそれを認めず、そして想像の端にも入れないのだから。

 

 

 二手に分かれて探し始めたからだろうか、じわじわと捜索の輪は広がってゆく。

 何せ一人で探している場合は起点の設定がし難い為、無意識に後戻りをしてしまったり、同じところを回ったりして余計に手間がかかったりしてしまうものなのだ。

 

 人数が増えれば、一方の位置を見て行動する事が出来るので、自然と調査の進み具合は良くなってくる。

 部屋の片付けが一人では進みにくいのと同じような理屈である。

 

 それでも三十分ほどかけても見付かっていないのであるが……

 

 「(またヘンなピック……何でこんなモンばっか)」

 

 見つけられるのは奇妙な形のピックばかり。

 

 普通、ギターの絃を弾くピックは角の無い三角形をしているものであるが、これは緩い菱型。ファンタジーに出てくる盾の形に近い。

 色はやや毒々しいがエメラルドグリーンで、アルミがプラスチック製なのかとても軽いものだ。

 

 ぶっちゃければ材質不明であるが、技術革新というものは奇跡の様に早いのでこのくらいの物質が生み出されていてもおかしくない。だろう、多分。

 何かでっかい鱗(、、、、、)に見えなくもないが、そんな巨大生物がいる訳ゃないのでやっぱピックだろう。

 こんなデザインなのも、デスメタルかなんかに使ってるからと思われる。

 

 いっぱい落ちているのも、コンサートの度にギターぶっ壊す輩もいるんだから、ピックだって多量に持ってないといけない筈。

 ピック飛ばす殺し屋のマンガもあった気がするし、演出で使うのに練習しまくったのかもしれない。

 或いは箱ごと落したか?。どちらにせよ大変だろうなぁ……等と他人事ながら心配してしまう太一郎だった。

 

 「(おっといけない。今はあの娘の落し物探してるんだ)」

 

 何となく疑問が湧きかけたのだが、流石に真剣に落し物を探している女の子に失礼だ。

 そう思考を切り捨てて彼も捜索を再開させた。

 

 しかし、だからと言ってそう簡単に見付かったりすれば苦労は無い。

 

 目に留まるのは、真っ二つに割れたポリバケツや、電柱に突き刺さってる例のピック。

 自治会が伐採したのだろう、切断された街路樹。

 工事中なのか抉られるように大きく穴が空いている道路とかばかり。

 

 今更ながら人っ子一人いないのは工事をしているからだと思いつく太一郎であった。

 

 「(……考えてみればどう落したか聞けば良かったんでね?)」

 

 少女が落したというそれ(、、)の事を聞いて若干ショックを受けていた為かウッカリ聞き忘れていたではないか。

 何か自分の式と同じようなミスをしているのだがキニシナイ。

 

 捜索効率の更なる向上の為に、ウッカリミスは頭の端においてその時の状況を聞かんと一度立ち上がった。

 

 

 と――?

 

 

 「……おや?」

 

 這い蹲っていた時には気付かなかったが、例の工事穴の側にもう一つ窪みがあり、その中に何かキラリと光るものがあるではないか。

 

 もしやと思い中をあさってみると……

 

 「……あった」

 

 アスファルトにあった直径約三十cm、深さ十cmほどの窪みの中に、二人が捜し求めていたそれ(、、)はあった。

 

 彼の声を聞き、慌てて駆け寄ってくる少女。

 しゃがみ込んでいたからか、思いっきりスカートが捲れ上がっているのだが全く気にならない様子。

 

 太一郎の手から慌ててそれをひったくって状態を調べている間に、彼は無言で裾を直してやった。

 これもまたエチケットだろう。

 

 「それで……いいか?」

 

 しばし確認作業を続けていた少女であったが、あからさまにホッとしたのを見て彼がやっとそう問い掛けると、太一郎をほったらかしにしていた事に気付いたのだろう、ややばつが悪そうにしながらも、

 

 「あ、あノ……

 

  あリがトう……」

 

 と礼の言葉を口にした。

 

 照れているのか、恥じているのか解らないが、それでもキチンと礼を言えるのは感心だ。

 当然ながら彼も『良い子だなー』と感心してるし。

 

 だが、

 

 「しかし……ホントにそれでいいのか?」

 

 という疑問がどうしても残る。

 その形状から残ってしまうのだ。

 

 「? これデいイけど……何かヘン?」

 

 「いや……」

 

 無垢な目で問い返されるとトテモ困ってしまう。

 

 彼女が探していたのは、まぁ 確かにアクセサリーかもしれない。

 もうちょっと時と場所を変えるとかなり危ないものという欠点はあるのだけど。

 

 親から貰ったものだと聞いてはいたが、どういう趣味というかセンスをしてるんだと膝付き合わせて問い詰めたい気もしないでもないが。

 

 「まぁ、君が納得しているのならいいか……」

 

 「? ウん」

 

 それ(、、)は大雑把に言うと革ベルトだった。

 

 そしてそれは着用しているというだけでインモラル臭が漂っていた。

 

 アクセサリーというには余りに無骨なものであった。

 

 「しかし……」

 

 普通それは、特殊な性癖のある者が着ける物だった。

 

 

 「まさか……本当に首輪だったとは……」

 

 

 大型犬用の革製の首輪(当然、色は黒)だったのである――

 

 

 

 

 

 

 

 いやまぁ、親が音楽やってたんならぶっ飛んだセンスしてる可能性はあるよネ?

 

 ロックの本場ならもっとぶっ飛んだセンスで飾られた子もいるよーだし。

 この娘も何か目が青いし、ハーフなのかな? この町もハーフの娘多いし。

 確かなのはちゃんのお友達にもいたなぁ……

 

 だけど首輪かぁ……首輪、なぁ……アレな性癖を大っぴらに曝け出してる御家族とか?

 

 流石にこの娘にアレな性癖があるとは思えないけど……ないよネ?

 

 ま、まぁ、見栄えはアレだけどチョーカーかもしれないし。

 ホントにでっかいワンコが着けてそーな首輪以外に見えないけどさ。チョーカー……だよね?

 

 でも首輪(チョーカー)ってのはアレだけど、ぶっ飛んでても(一応は)アクセサリーでよかった……いや、ホントに。

 親の趣味がもっとアレだったら、下手するともっとマニアックだったかもしれないし、モヒカンとかだった可能性も……想像するのもイタ過ぎる。

 

 ただ……あんな細くて小柄な娘(…なのはちゃんくらいの歳か?)にあんな大きい首輪着けさせるってどーよ?

 いくらオシャレだからって、ものごっつ背徳感にまみれてるじゃないの。

 放たれてるインモラル臭で鼻が曲がりそーだヨ。

 

 がんばって『違う』って思い込まないとホント首輪にしか見えないし……首が隠れるほど幅の広いベルトなんだよネ。コレ……

 

 唯一の救いは高級品っポイことか?

 いやブランドとかは知んないけどさ、ぱっと見で解るほど良さげなモノなんだよね。

 

 バックルの部分が金の模様がついてる凝ったつくりしてるし、宝石っぽい青い石もついててオシャレだ。

 これで首輪じゃなけりゃあなぁ……今更か。

 

 

 だけどま、どうでもいいや。

 

 

 「……見つかって良かったな」

 

 「ウん。アりがトう」

 

 この娘、こんなに嬉しそうなんだし。

 水差すのも野暮ってもんだしネ。

 

 「もう落さないようにな」

 

 「うン」

 

 おおぅっ スッゲェいい笑顔。

 何だかドスゲェ報われた気分っ

 

 あれ? 考えたみたら面と向ってお話できたのって超久しぶりでね?

 

 怯えず怖がらずお話してくれるのって、なのはちゃん達くらい。

 後は逃げられるか泣かれるか、酷いと腰抜かされてたっけ……ぐすん

 

 

 いいもんっ

 

 今回の事で希望持てたもんっっ

 

 いつかきっとオレと面と向って話せる女の子が現れてくれるんだ。

 

 ウン。

 信じるのは自由だモンね……

 

 

 やっぱり(何時ものように)泣けてきたけど、微かな希望を見た気がする。

 

 そんな夢を見せてもくれた彼女は、急ぎ足で帰ってゆく。

 

 オレはせめてものお礼にと、彼女の背が見えなくなるまで手を振るのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ファスキス-」

 

 『-Aye』

 

 「どうシて勝手ニ離れテいッたノ?

  心配しタ」

 

 『-Sorry.

  I wanted to try.』

 

 「試ス? 何を……」

 

 『-Please do not care.』

 

 「……ワかッた。

  だケど封印がマだ。

  スぐにJSを封印しナいと」

 

 『-It understood.

  Then, let's begin.』

 

 

 太一郎と別れた少女は、独り言を呟きつつすぐに住宅地の中にポツンとある空き地に入っていった。

 

 百坪もないその空き地。そこにはよくある長閑な空間はなく、あるのは瓦礫と大きな窪み。

 

 しかしそこには異常が……

 

 

 ――いや、クレーター(、、、、、)があった。

 

 

 周辺の家壁を巻き込んだ、直径十メートルはあるだろうクレーター。

 そんなものがこの町のど真ん中に穿かれているのだ。

 

 しかし誰も気付けない。

 

 誰一人気にもしていない。

 

 いや、ここには彼女ら以外の人影が全くなかった。

 

 クレーターより何より、この町のこの周辺域に人の気配が皆無。それこそが異常だったのである。

 

 

 そしてその中央。

 

 

 そこに転がっているのは首と胴が斬り飛ばされた蛇…恐らく青大将の死骸。

 そして、青く光る石が一つ。

 

 

 その石の輝きを見つめつつ、少女は首輪(チョーカー)に手をやり、そして――

 

 

 

 

 「-Set Up」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「わっ 何だアイツ急に出てきたぞ!?」

 

 「ママ 怖いぃ~っ」

 「ほ、ほら、こっちにいらっしゃいっ!!」

 

 「ゲゲェッ!? あれは風芽丘の凶眼!?」

 

 「何!? あ、あいつがあの人喰い太一郎……」

 

 「ひ、ひぃい…っ!!」

 

 

 

 あ、あれ?

 何か急に人が出てきたような……

 

 つか何故にオレがオバケ的扱い!? 

 なじぇっ!!??

 

 

 




 今回はここまで。
 流石に連投し過ぎかも……
 だったらスミマセン。

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