SAMULION ~まじっくナイトはご機嫌ナナメ☆~   作:Croissant

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巻の壱拾壱

 

 今世に()でてより、自分の事をウッカリ者ウッカリ者だと思ってはいた。

 

 「……」

 

 武の者としても目を見張る御力を持ち、凛々しく男らしく心優しく(中略)他者に対してのお気遣いを欠かさないお心を持たれておられる我が主であるが、その実力は家事においても抜きん出ておられる。

 

 何せ式に過ぎない我の為に昼餉に使えと弁当を拵えてくださっているのだ。

 流石に異変調査での弁当であるので五味五色五法とはいかなかったようだが、俵握りになされた飯に五色の色と五味が整えられており、その味付けの濃淡も我が好みに合わせてくださっていた。

 

 味付けは当然であるが、その心遣いに感涙しつつ食したものだ。

 

 何と心憎いお方であろうか。これでは恩義が溜まる一方。

 こうなっては夜伽等で返す他あるまいが……自分の貧相な身体では主を満足させられまい。かと言って主と御釣合が取れるほどの女性(にょしょう)がおられるかどうか……超一級の武士なだけにこれは難しい。

 

 それに御心の優しい殿の事。相手の事をお考えになられて良い返事はなさらぬだろう。

 

 せめて某がそれなりの容貌であり、魅力的な肢体をもっていれば御奉仕の限りを尽くせるだろうのに……

 嗚呼……貧相なこの身が恨めしい。

 

 

 (※注:雷の感想はあくまで彼女の主観ですので騙されたりしないように)

 

 

 ――で、

 

 前置きが異様に長くなってしまったのだが本題である。

 

 その御優しい主のお心遣いがドっぷり篭った御弁当を食した訳であるが、そのお陰をもって身も心もでっぷりと満たされてしまった事は言うまでもないだろう。

 

 そして、身も心も満たされてしまった者がどうなってしまうのかというと……これまた言うまでもなかろう。

 木陰で休憩しつつ食事を行なっていた自分は、すっかり満たされてしまっておもいきり仮眠をとってしまったのである。

 

 

 いやぁよく寝た…というヤツで……

 

 まぁ、何というか……今の時間は又しても夜。

 

 

 余りの心地良さに何と調査をほっぽり出し、昼から夜まで眠り呆けてしまったのだ。

 

 

 

 こ、この雷、一生の不覚ぅっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

        -巻の壱拾壱-

 

 

 

 

 

 

 

 雷という女性の術式概念が生まれた時代はかなり古い。

 少なくとも百年単位の過去の事だ。

 だと言うのに、外見的な特徴は近年の外国人女性のそれをしている。

 

 赤い…というか紅い髪をポニーテイルに纏め、胸は大きく腰は細くてプロポーションが良く、手足もバランスよく長い。

 それでいて見た目には解らないだろうが、退魔剣術に必要な筋肉を必要十分以上内包している。

 おまけに容貌もやや童顔気味ではあるが確実に美形の範疇だ。

 

 前にも述べたが、こんな美女が歩いていればそれは目立ちまくるだろう。

 

 

 実際、木陰で休んでいたのも騒動から逃げ…いや、調査を再開した後も人目を避けていたからだ。

 

 凛とした物腰も相俟って、近年あまり見られないに古式ゆかしい女性らしさは洋服で無理に押し込んでいる分やたら目立つ。

 外見が外国人であるのだから尚更だ。

 

 

 が、だからと言ってそのまま夜まで昼寝に没頭するのは頂けない。

 

 

 「あ゛、あ゛あ゛~~~っっ

  拙者という(オンナ)は何という(うつ)けでござろうっっ!!」

 

 頭を抱えて身悶えしつつゴロゴロ転がってはいるのだが……まぁ、美人には違いない。

 

 だから目立つ。

 今が夜でホントに良かった。

 

 

 

 等とオポンチ極まりない行動をかましていた雷であったが、

 

 「……む?」

 

 突如そのアホ行為をピタリと止めてその身を起こした。

 

 彼女は退魔戦闘用の式であるから感応値のそれは人のそれを大きく上回る。

 

 だからこそ、駆けて来る何かにすぐさま気が付いたのだ。

 

 「何だ?

  何かが物凄い速度で近寄ってくるでござる」

 

 秒を待たずして響いてくる駆け足の音。

 何か途轍もない重さのものが全速力で走っているのだ。

 

 おまけに――

 

 「あの化生と同様の妖力とも法力ともつかぬ怪しげな力も感じるでござるな……」

 

 となると、やはり怪異なのであろう。

 

 主の勘が当たっていたという事か。

 

 うむ! 流石は我が殿…と、また主褒めで我を失いかけたが、地響きを足で感じたお陰で事なき(武士の恥)を曝さずに済んだ。

 

 断続的、そしてリズミカルに伝わってくる振動。

 

 それは何か…恐らく二本足のものが駆けているそれだろう。

 

 となると人の形をした怪異、という事か――

 

 「早い…方でござるな。

  人の早駆け程度……ふむ」

 

 念の為に呪式を組みはしているが刀は抜かず、身構えるだけ。

 万が一という事もあるので警戒しているのだ。

 

 何せ不覚を取りまくっているのでこれ以上の失態は簡便なのだから。

 

 ずしんずしんずしん、とほぼ間隔を置かない地響きが大きくなってきた。

 

 彼女ほどの武人となると、音を聞くだけで大凡の事が感じ取れる。

 それは、これは大きいのではなく単純に重いのでござろうな、と当りも着くほど。

 

 となるとそれ相応の対応をせねばならんな、と腰を落し気味にして刃を現界させようとした正にその瞬間、

 

 「んなっ!!??」

 

 雷の表情が凍りつく。

 

 「これは…まさか結界?! それも恐ろしく広い。

  こんなものを瞬時に張り巡らせるだと!!??」

 

 対象が近寄ってきたと思った瞬間、いきなり周囲を結界に包まれてしまったのである。

 おまけに範囲が異様なほど広い。少なく見てもこの町一帯の広さがあり、任意のもの以外が全てはじき出されていた。

 人払いのそれではなく、退魔のそれでもない、地域の相異をずらされた別空間と言った方が良いだろう。

 そんな隔離空間を一瞬で生み出すなど、大妖怪クラスのものでなければできるものではない。

 

 「力量を見誤ったか……っっ」

 

 と悔んでも後の祭り。

 その怪異は直そこにまで迫っていた。

 

 「来る!!」

 

 組んでいた呪式を急速展開。

 言霊が形を結ぶと彼女の左掌から剣の柄が飛び出し、それをやや乱暴に引っつかんで愛刀を引き抜いた。

 

 

 

 それ(、、)と相対したのは、彼女が刀を手に取ったと同時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 「ぬ? (わらし)?」

 

 何と現れ出でたのは、やたら大きい高下駄で駆けて来る少年。

 

 それも今や珍しい着物姿の勤労少年(、、、、)だったのである。

 

 「この少年が化生!?」

 

 やや呆けかかったものの、慌てて刀を握りなおす雷。

 理由どうあれこれほどの事を成す怪異であれば止めねばならないからだ。

 

 さあ来いっとばかりに剣を構えた彼女であったが、当の少年はそんな雷に目もくれない。

 というより手に持った本から目を放さないので気付いていない節がある。

 

 そのまま踏まれる訳にはいかない雷はやや大きめに距離をとって回避。

 少年はやはり目もくれず、高下駄(?)の音も高らかにそのまま前を通り過ぎてゆく。

 

 その呆れた脚力と、完全無視状態の少年に呆然としていた彼女であったが、直に復帰。

 駆けてゆくその子供の背と、周囲の状況を見てキョトキョトするばかり。

 

 それも当然だろう、意味が解らないのだから。

 

 「あの(わらし)ではなかったか?

  となると……」

 

 何せ謎が謎を呼んで謎ばかりが残っているのだ。それは彼女でなくとも首を傾げるだろう。

 

 兎も角、話だけでも聞いてみるかと判断し、少年を追おうとした雷の背に、

 

 

 「す、すみませんっ!!

  この辺に二宮金次郎が走ってきませんでしたか!?」

 

 

 という子供の声が掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 「むっ!?」

 

 その気配に気付けなかった事も驚いたが、掛けられた声が空中であった事にも驚いた。

 おまけに声の主は年端もいかない少女。

 

 驚きの理由には事欠かない。 

 

 「ぬっ!? 怪奇空飛ぶ少女。

  何と最近の少女は空も飛べるでござるか。時代は進んだものでござるな……

  なるほどこれが所謂飛行少女というものでござるな」

 

 また一つ今の時代を知る事が出来たという事か。

 術者は減ったが、それらを補うに余るほど技術が進んだという事なのだろう。

 

 「ち、違いますっ

  これには深い理由が……って、あれぇ? 何でお姉さんは結界の中にいるの?」

 

 「ぬ?」

 

 何故 結界の中にいるのかとは不思議な問いかけ。一体如何なる理由が。

 

 いや、いやいやいや、違うぞ。

 よくよく考えてみると……

 

 「ぬぉっ!?

  カラクリも手妻もなく宙に浮くとはひょっとして術の行使でござるか!?」

 

 「え? 今更!?」

 

 「驚くのは当然でござろう!?

  そなたのような歳若い娘子が術師とは思わんでござるよ!! 常識的に考えて」

 

 「遠まわしに非常識って言われたの……」

 

 そう言いかえすと何だかズズンと落ち込む娘子。

 発せられている波動からして、その小さな身体にはとてつもない力を内包しているだろうが、精神は歳相応に脆いようだ。

 

 しかしこの娘子の言動が正しければこの途轍もない結界を張ったのはこの少女という事に……

 

 となると……

 

 

 「よぉーし、解ったでござる。

  この怪異の元凶はそなたでござるな?」

 

 「え゛?」

 

 

 ふ……そのような可愛い顔をしていようと拙者の眼は誤魔化されぬわ。

 

 その発せられている非常識な内包力、

 

 密教の秘術級である飛行呪を楽々と行使し、露ほども披露を見せず維持し続けている技量、

 

 更にはその飛行呪と結界術とを並行使用していると言うのにそれを露ほども見せていない。

 

 おまけに足に翼まであるではないか。

 

 つまりは彼女が何かしらの怪異という事。

 

 ウム。一分の隙もない推理だ。

 

 

 「という訳で大人しく縛に付くでござる!!」

 

 「な、何が何だか解らないの!!」

 

 

 隠し事がばれてしまったからだろう、覿面にうろたえる少女…いや怪異飛行娘。

 

 だが逃がす訳にはいかない。

 

 事があの石が起したものであるのなら、如何なる災害が起こるか解ったものではないからだ。

 

 流石に主のような優れた眼力を持っている訳ではないので、取り憑かれたものであるか生霊なのだか見取る事は出来ない上、事が事なので始末する訳には行かない。

 だから取りあえず自由を奪ってから調べるとしよう。

 

 「縛っ!!」

 

 「え? きゃあっ!!」

 

 懐から細注連縄(しめなわ)を取り出し、呪を紡いで放つ。

 すると力が篭った細注連縄は蛇の様に身をくねらせつつ少女に襲い掛かる。

 

 当然ながら少女は慌てて回避する。

 まぁ鳥だって回避くらいはするので避けるのも当然だ。

 

 

 しかし、直線的に避けるのは浅はか。

 

 

 小鳥が鷹から逃げる際には小さく避け続ける訳だが、速度に劣る小鳥が助かるにはそれしかない。

 

 そうやって避け続ければ、襲い掛かる方の旋回範囲が広い為に体力を余計に使う鷹の方がきつくなるからだ。

 

 しかしこの場合、式としての呪も組み込んだ細注連縄なので旋回範囲もやたらと狭い。

 

 確かに避ける様を見れば少女の速度は恐ろしく速く、矢と同じ速度で飛ぶ細注連縄でも追い切れていないようだ。

 

 だが直線的に追う必要は全くなく、尚且つ彼女の行動を牽制しつつ追えば良いし、そもそも注連縄には体力がないので疲れない。

 

 「来ないで!!」

 

 そう言いつつも回避行動を続けられるのは見事の一言。

 

 だが悲しいかな彼女には武の才が無いのだろう、速度そのものは目を見張るものがあるのだが、次の行動までに半拍の間が見えてしまう。

 

 素人なら兎も角、主や自分のような退魔剣士を相手にするには半拍という長い時間は命取りだ。

 

 何そしてより――

 

 「次にどこにどう避けるか丸解りでござるよ」

 

 しばらく眺めていたから少女の体捌きは見切れた。

 身体の沈め方でどこにどれくらいの勢いで移動するのか全て読み取れてしまったのだ。

 

 よってこの一枚の符を彼女の上空に放つと……

 

 「シッ!!」

 

 「え!? あ……」

 

 と、このように反射的に身を竦めるので細注連縄が追いつくという訳である。

 

 

 ともあれ、悪く思わんでくれよ。

 

 これも世の為人の為。

 すぐその歪みから開放してやるから――……

 

 

 

 『なのは!!』

 

 

 

 

 ――は?

 

 

 

 

 

 

 

 その小さな闖入者が割り込んできたと思った瞬間、少女と縄との間に光る障壁が出現し、封縛の呪が退けられてしまった。

 

 「ユ、ユーノくん!!」

 

 『大丈夫!?』

 

 何とその勇敢なるモノは小さな獣。

 

 流暢な人語を話すところをみると(あやかし)か使い魔といったところか。

 

 「む……っ管狐か?」

 

 と雷も一瞬そう判断したほどに。

 だが確かに色は真白く細き獣であるが、その頭部は(イタチ)と思われるそれ。

 

 おまけに自分の封縛を障壁で遮ったのであるからそれなり以上の力を持つモノに相違ない。

 となると管狐のランクでは済むまい。

 

 「白き身体に人語を解する鼬。

  そして斯様にも身に余る力。

  まさか、伝説の白鼬であるノロ……」 

 

 『僕はイタチじゃないよ!!』

 「なんの話なの!?」

 

 二人(?)の剣幕にむぅっと口を(つぐ)む雷。

 

 それに、てっきり冒険鼠らに退治されたという伝説の白鼬かと思ったのだが、何か声が可愛いから違うっぽい。

 にしても、鼬なのに鼬ではないとはこれ如何に?

 

 そう首を傾げまくる彼女に対し、息を整えた少女とイタチ(?)が対峙する。

 

 「いきなり何をするの!?」

 

 ……それも何だか怒っている風だ。

 まぁ、いきなり拘束されかかったら当然の事であるのだが、雷はおや? と腑に落ちない。

 

 「何をするも何も…杖を手に空を飛ぶ怪しげな少女を見れば何事かと思うのが普通でござろう?

  この町を守護する者としては、捉えようとするのは当然でござるよ」

 

 「え?」

 

 言われた少女もちょっと驚く。

 彼女からすれば変わった恰好をしている魔法少女のつもりだったのだ。

 

 しかし言われてみれば確かに怪しい。

 

 何せその衣装(バリアジャケット)のデザインベースはというと、実は少女が通っている小学校の制服。

 小学校の制服来た女の子が杖を片手に空飛んでやって来て、二宮金次郎の事なんか問い掛けたら自分だってナニコレと思うだろう。つーか不審者以前に異常者だ。

 今更ながらトンチキな行動だった事に気付き、落ち込んでいたり。

 

 『町の…守護?

  貴女はこの世界の魔導師なんですか?』

 

 そして別の事に驚いていたのは例の白鼬だ。

 入念とはいかないものの、それなりにこの世界(、、、、)の事を調べており、魔法という存在がなかった事だけは解っていた。

 だからこそ『管理外』だと思っていたのであるが……

 

 今さっきこの女性が行使していたのは形は違えどバインドの魔法だ。

 とすると半管理世界なのか、固有の魔法なのか知っておく必要が出きてしまった。

 

 のだが……

 

 

 「まどーし? 何でござるかそれは?」

 

 

 『は?』

 

 

 少女の方は兎も角、この小動物(フェレット?)の方はそう返されると対応に困る。

 

 しかしある意味当然ともいえる。

 何しろ彼(?)からしてみれば完全に異世界である訳で、どうしようもない文化文明の差異だってある。最悪 常識のあり方からして違う。

 

 一応は生活圏外の別世界を知ってはいたのであるが、それが管理外ともなると話は別。

 今一緒にいる少女と出会って何とか情報を集め始め、それでようやく魔法が無い世界だと知れたぐらいのだから。

 

 尤もこの少女は体内にある魔法の核といえる物……リンカーコアが、自分のいた世界でも有数の大きさを持っていた事もかなり影響を与えている。

 魔法文明の発達が遅れているという感覚でいた可能性だってある。だからこそ目の前の女性によって齎されたショックが大きいのであるが。

 

 兎も角、この女性は魔法(バインド)を使えるのに魔法を知らないという事だけは何とか受け止められた。

 

 『え、えと……

  要するに魔法が使える人間の事ですけど……』

 

 とまぁ、これだけ掻い摘んで言えば理解してもらえるだろう。

 というよりゲームとかを知っていたら解ってもらえそうなレベルの事だ。

 

 せめて冗談とかそういう段階ででも受け止めてもらえたら取っ掛かりになるだろう。そういう淡い期待もあった。

 

 だが――

 

 

 「何!? 魔法を使うと申したでござるか!?

  つまりは悪!!」

 

 

 「『え゛?』」

 

 

 相手がちょっと悪かった。

 

 

 

 

 

 戦国の時代。

 この日の本の国にも海外からヤソ教を広めに宣教師が渡来するようになっていた。

 僧侶等は良い顔はしなかったが、別に他宗派を弾圧する訳ではないし、鎮守の神々を蔑ろにしないのであれば文句を言うつもりもなかったし、海外のそれに比べてかなり友好的に広めていった事もあってそう気にするものでもなかったのであるが、問題はその中に混ざっていたものにあった。

 ヤソ教をこの日の本に持ち込んだ伴天連(バテレン)の中に()天連という厄介者が混ざっていて、邪教を広め始めたのである。

 そして至極真っ当な吉利支丹(キリシタン)達に混じって、読みが似てその実全く異なる切死丹《キリシタン》(or鬼理死丹)というとんでもない邪教集団が出来上がっていったのだ

 

 こやつらは悪魔を崇める悪魔教団で、ヤソ教に混ざって日本にその手を伸ばしてきたのである。

 

 その被害の大きさは筆舌に表せぬ。

 何せ僧侶も多大な被害受けるわ、後の世でもまるで無関係な農民たちが矢面に立たされて処刑されまくるわで途轍もない傷痕を残していったものである。

 

 無論、我らも影に日向に戦い続けてはいたが、身代りに罪を押しつけまくって逃げに徹していたので凄まじく手古摺ったという。

 そんな鬼畜どもを殲滅する事に成功のは江戸の世も半ばを過ぎる事になっていた。

 

 その際に異国より齎され、この地に邪法として残ってしまった術が《魔法》。

 忌まわしき悪魔の力である。

 

 この目の前の者達はその魔の法を使える者を知っているようだ。

 

 「数百年前、この日の本を混乱に導いた忌まわしき悪魔の力!

  その悪の力を行使する者を知っていると申すか!?」

 

 『え゛? え゛?』

 

 尚且つ、このケモノは『この世界の(、、、、、)』と申していたではないか。

 

 つまりは外界から襲来した魔の一味と言う事か。

 外観の小動物的な可愛さにウッカリ騙されるところであった。

 

 ふ……この雷、そう何度も轍を踏まぬでござるよ。

 

 

 (※注2:雷の知識は勘違いによってとても偏りが大きいので惑わされないでください)

 

 

 「と い う 訳 で 大 人 し く す る で ご ざ る ! !」

 

 『何でさ!?』

 

 

 

 

 

 

 

 唐突に始まってしまった謎の諍い。

 主の側と違って何と殺伐としたものであろうか。

 

 御互いの情報のズレというか、ギャップにより全く持って無駄にも程がある追いかけっこ。

 

 一人と一匹(?)がおっ始めたそのアホな争いは、怪異をほったらかしにして続けられるのであるが、

 その所為で七不思議的な怪異が被害を広げる事となる。

 

 

 しかし……

 

 

 

 

 「ゆくぞノ○イ!!」

 

 『○ロイって何さ?!

  ってゆーか、僕はイタチじゃないぞ!!』

 

 

 「あ、あの……金次郎さんの像を……」

 

 

 

 

 ――三人が落ち着くまで まだもうしばらくかかるようであった。

 

 

 

 

 

 


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