転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活   作:フライパンソルジャー

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感想ありがとうございます!!
滅茶苦茶小説を書く励みになっております!


皆がコテハン名”サイ男”にとても期待している……!

描写が少ないのに一体何故!?頑張れサイ男、みんなのハードルを越えろ……!


人間判定されて無くて草

空がーー泣いていた。

 

いや、泣いているだけではなく、慟哭していた。

 

裂けるような雲の奥から、滝のような雨が降り注ぎ、稲妻が光る。

 

雨粒はもはや雫ではない。

無数の刃のように、空から叩きつけられる。

地面を打ち、瓦礫を濡らし、冷たい大地に容赦なく降り注ぐ。

 

風が呻き、雨が叫ぶ。

空はまるで何かを止めたくて泣いているようだった。

 

パン――ッ!

 

突如として銃声が空気を裂いた。

 

その乾いた破裂音が、空の涙を、風の叫びを、すべて無視して炸裂する。

 

ここはホロウ内部、銃を放った男が巨大コンテナの上で叫んでいた。

 

「何で俺たちを見捨てたんだ!?あの時援軍が来てくれれば、あいつらが無駄死にすることもなかった!」

 

それは男の絶叫であった。全てを失い、復讐に囚われた男。その瞳には憎悪に染まっていた。

 

「何で俺を止めるんだ!後続隊の腰抜けどもはたじろいで援軍を取りやめた、お前も軍に見捨てられたじゃねえかっ!?同じ苦しみを共有する仲間のはずだろう、裏切るのか!?ふざけるな、騙したなこの屑がぁ!」

 

もはや男の言は支離滅裂であった。だがその狂気がどこか痛ましさを感じさせる。

彼は旧都陥落時に市民を助けるために動員された先遣隊の一人であった。彼の隊は、彼を残し全滅。孤児であった彼にとって、その隊の仲間たちは本当の家族の様な存在であった。

 

対する黒いバイザーで両目を隠している彼女は心の底から同情した。同じ境遇、同じ役職。唯一の違いは彼の隊の下に()()が現れなかったことだろうか。

 

彼は生き残った、しかし本当の意味で助かっていない。”希望を失ったまま生き延びてしまった者”のなれの果てだった。今回の事件では軍の関係者、その家族にまで手にかけている。

 

「……ごめんなさい、せめて安らかに」

 

全てを見透かす狙撃手は静かに手元のライフル銃を構える。

 

彼女が響かせたその音が、彼を苦しみから開放した。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

その日の依頼は人探しであった。ホロウ内部でその人物の痕跡や情報を探すという一見なんてことない依頼だと思っていたが、それでもアキラとリンにとって()()()の依頼だ

 

依頼人は()()()()()()()()()()()()()()()()。どうやら探している人物は彼女の恩人のようであった。

 

ホロウを総出で当たってみるも全て空振り。

 

もしかすると基地で行われる慰問の日にその人物が顔を出しているかもしれないと淡い希望を胸にその集まりへと参加した。

 

しかし、そこで事件が起こってしまった。

復讐で目の曇った元軍人によって行われた元防衛軍関係者を狙うテロ行為。

首謀者はホロウに人質を連れて立てこもった。

 

単独でホロウに入ろうとするカロンを何とか説得し、共に事件解決に向けて行動した。

 

内部で首謀者と一騎打ちを果たし、カロンが勝利した。

彼女は勝った。だがーー復讐に囚われた男の姿を見て、何も残らない、虚しさだけが胸にあった。

 

果たしてーー彼が起こした軍の関係者を狙ったテロ事件は終息を見せた。彼が誘拐し人質として捕らえていた人たちは無事に救助され、無事ホロウから帰還。

 

初の依頼がとんでもない大事になってしまったと、アキラとリンは依頼人と共にポート・エルピスへと向かっていた。

 

人探しの最中にテロ事件に巻き込まれ、依頼人本人も無関係ではない非常に痛ましい事件だった。

 

事件が終息してもなお、元気のない彼女のためにと気分転換としてこの場所に訪れたのだった。

 

遠くの水平線には、沈みゆく太陽が名残惜しそうに顔を出し、海面を茜色に染めていた。ゆるやかな波がまるで光を抱きしめるように揺れている。

 

彼女は目が見えないがこの穏やかな潮風の吹く、美しい雰囲気を楽しんでほしい。そうアキラとリンは願っていた。

 

「プロキシさん……いえ、アキラさんにリンさん。今回は本当にご迷惑をおかけしました。人探しの依頼のはずなのに、あなた達を危険な目に合わせてしまった……。それでも、これだけのことを私にしてくださって……、とても感謝の一言では表せません。」

 

「いや、大丈夫さカロン。今回の出来事を経て僕たちも大きな学びになったよ。……ただ君の人探しについて得られることが無かったのが残念なくらいだ……力になれなくて申し訳ない。」

 

「ほんとにね……、初の依頼を失敗するなんてこれじゃあプロキシとしての仕事を始めることに先が思いやられるな~……。」

 

「そんな……!もういいんです、気にしないで下さい。もう何年も私と戦友たちが探し続けている人物のことです。貴方たちが謝るようなことではありません……!あなた達は私にとって間違いなく最高のプロキシでした!」

 

彼女は狼狽えた後、熱を持った言葉を絞る。

 

「カロンってさ、首謀者の元軍人の人にトリガーって呼ばれてたけど、もしかして……。」

 

リンが気遣うように黙ったままの彼女に問う。何となくは理解しているが聞いてしまった以上聞こえていないふりは、どこかもやっとする気持ちを感じていたからだ。勝手な推察よりも彼女の口から直接聞きたい。

 

「ええ、ごめんなさいリンさん、アキラさん。どうやらここまで気を遣わせてしまったようです。薄々気づいていらっしゃるかもしれませんが実は私のコードネームはカロンではないのです。これは私を拾い上げ、今はもう()()退()()()恩人が使っていたものです。」

 

そこで、カロンではない彼女は言葉を切る、此方に顔を向け微笑みかけるように笑った。

 

「背中を預け合える、信頼できるあなた達に教えます。私のコードネームはトリガー……、元ライアー小隊所属、コードネームは”トリガー”です……!」

 

 

彼女は本当のコードネームと隠していたことを全て打ち明けてくれた。

 

「じゃあ今回の依頼で調べていた人物はもう数年前にホロウに消えていった人物だと?」

 

「ええ……そうです。隠してて申し訳ありません。言ってしまえば引き受けてくれないだろうと、私は初め、あなた達を信じることができませんでした。」

 

「謝らなくても大丈夫だって!今回のことで私たちも大きな学びを得られたし、トリガーともこうして出会えたんだから……!」

 

「リンの言うとおりだ。今回を通して僕たちは互いに信頼できる仲間になったんだ。だから君が謝ることじゃない、それに今は全てを打ち明けてくれるんだろう?」

 

トリガーは感極まった声で二人にありがとうございますと告げた。涙を見せないように震える手でバイザーを抑えていた。

 

やがて自身の過去、その少年との出会いを話した。

 

「私は目にエーテル浸食を受け意識がありませんでした。……ですので生き延びた私の戦友たちの証言となります。」

 

その声色は真剣なものでアキラとリンは何も言わずに耳を傾けていた。

 

「当時私たちの小隊は突如吹き荒れた”カゼ”により一時の危機から逃れることができました。しかし私含め、もうまともに動ける者は少なかったのです。その時、突然目の前に現れた少年が私たちについてくるよう言い、私たちをホロウの出口まで連れて行ってくれたそうです。私たちをホロウから脱出させた後、彼は再び拡大を続けるホロウの中に消えていき、そのまま……」

 

「……そうかこの子が……。今も行方不明なのかい?」

 

アキラは手元の似顔絵を見つめる。そこには10代(なか)ばほどの少年が描かれていた。

 

「ええ、初め彼は自分が後続隊の一員であると言っていました。軍の判断に逆らったため、装備も捨てて此方まで来たと。今ではとても信じられないような状況ですが、当時皆はもういっぱいいっぱいだったそうで、それを信じてついていったそうです。」

 

「……身分を偽ってたって事?」

 

リンが静かに訊ねる。

 

「はい、恐らくは……。その後ホロウを出た戦友たちと共に彼を探しましたがそんな少年はどの防衛軍の隊にも所属していないと。今日まで彼の情報を探りましたが全て空振りで、それで残るはホロウだけに……。」

 

「そっか、それで私たちに人探しの依頼を……」

 

「その通りです。おかしいですよね、ホロウで出会った彼がもう何年も行方不明なのに……、普通だったらもう彼はこの世にいないって結論付けるはずなのに……!でもどうしても私と戦友たちは、助けてくれた彼にお礼を言いたかった。軍に見捨てられたあの日、彼だけが危険を顧みず私たちを助けてくれた……!」

 

トリガーの思いにアキラは否定することなく、聞く者の心をそっと包み込むように優しい声で言った。

 

「何もおかしいことじゃないさ、トリガーのその気持ちは決して間違っているとは思えない。」

 

「っ、ありがとうございますアキラさん。彼を目撃し、助けられていた先遣隊の人々からは現実が見えていないと何度も言われました。もう今では彼について調べているのは私たちの隊だけです。この絵もあの日少年の姿を見た戦友の『レテ』が描いてくれたものです。少年の名前も彼が最後に聞き出してくれました。……本名かどうかは分かりませんが。」

 

 

「それは確か依頼の始めに教えてくれたよね。確か……」

 

 

アキラ名前を口にしかける前に、トリガーが静かにその名を口にした。

 

 

「彼の名前は()()ナ・アレックス、確かに彼は、私たちにそう名乗っていたそうです。」

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

ファルコンことクロエは全力で、飛行していた。高度を維持し、周りの全てを置き去りにする高速移動であった。

それでも自分の下、後ろから追跡の音は止むことは無い。規則正しく、容赦なく、こちらの息づかいとはまるで違うリズムで迫ってくる。

 

「はぁっ……ぜぇっ……どこまで、追ってくんだよ……化け物ですか雅さん……ッ!」

 

平時であれば、わあい、雅さんと鬼ごっこだー、超嬉しい!などと歓喜極まるところであるが、今は恐怖しか感じない。自分を狩らんと迫る尋常ではない気迫に只々圧倒されていた。

 

「それでもっ……私は……雅っ……さんを嫌いに……なることは、……ない!ーーて危な!?」

 

遥か上空にいるはずの自分に向けて斬撃を放つ雅。その範囲は広く、射程は恐ろしく長い。

蒼い焔を纏った斬撃がクロエの金属肌を焼く。

何とか身を捻り間一髪のところで攻撃を避けたが完全にバランスを崩してしまった。

 

「どんどん攻撃が無法にーー、ってうわぁ!?」

 

いつもはすぐさま立て直すところだが雅の攻撃に曝され続け、精神が確実に削り取られてしまっていたクロエ。そのままビルの中へと壁を突き破りながら突っ込んだ。

 

「ぐっ、う、あ!?」

 

床は埃に覆われ、ただ冷たく広がるコンクリートに囲まれた空間を瓦礫と共に転がる。

スーツも無事では済まなかったようで、装甲が凹み、大きな傷が走っている。

 

痛みに呻いていると、突如窓ガラスが割れ侵入者が現れた。当然その人物は雅だ。

 

「……どうやら、追い込んだようだな」

 

その視線は鋭く、焔を纏わせながら此方ににじり寄ってくる。

 

非常にまずい。コンクリートに囲まれた閉鎖空間、どう考えても袋のネズミである。

詰み、打つ手なし、万事休す。そんな単語が頭をよぎるが、ある一つの策を思いつく。

 

もはや賭けに近いが現状を打開するにはこれしかない。

目を細め、平静を装うファルコン。

 

「…………さあ、どうでしょう?冷や冷やする場面は多々あれど……、一度もそちらの斬撃はまともに当たっていないじゃないか。雅さんが望むのであれば、今回も華麗に躱して見せましょうか?」

 

「………」

 

挑発を行うファルコン、気が狂ったとかそんなんではない。ただ、策を成功させるには雅さんの本気の斬撃が必要なだけだ。

大変危険が伴うことには変わりないが。

 

鋭く目を細める雅は何も答えないが、やがて口を開く。

 

「確かにそうだな、貴様の攻撃は見切れどこの刃がまともに貴様を斬りつけることは無かった。……その挑戦受けてたとう。」

 

「(ーー掛かった!)」

 

その瞬間目の前の圧が膨れ上がる、クロエは肌を突き刺すような圧に震えるが臆さず、目を決して離さない。

 

武器を再度変形レーザーライフルから二刀のブレイドに戻し、構える。

 

「(避けれなかったら即死、避けれなかったら即死、避けれなかったら即死!)」

 

かつてない緊張と危機感の中、雅の姿を、一挙手一投足を凝視しクロエはゾーンに入り極限の集中力を見せる。

 

 

ーーそして緊張の一瞬。

 

ーーザンッ!

 

雅の姿がぶれたかと思えば、次の瞬間世界が横に割れていた。

 

「ぐ、ぎぃっ!?」

 

受け止めようと見せかけ、()に使ったブレイドの片方は刀身の根元から真っ二つに裂けた。

一瞬しか見えなかった攻撃をほぼ勘で下に伏せることで、装甲がいくつか持ってかれたが辛うじて回避した。もう少しでブレイドと同じ結末を辿っていた。

 

雅の目が僅かに驚きで見開かれた。

 

そのまま雅の横をすり抜け、全速力で飛行する。雅の放った斬撃でビルの反対側の支柱は全滅、ではもう片方はーー?

 

残った片方のブレイドで反対側の支柱を切断する。斬るのは一本で事足りる。予想通り、ビルは倒壊を始めた。

 

雅が入ってきた窓へと向かい脱出を図る。狙いに気が付いた雅が背後から迫ってくるが、極度の集中に陥っていたクロエは雅の脱出を妨害するためその身へ的確な蹴りを繰り出したーー!

 

「……っ!」

 

蹴りは刀により完璧に防がれてしまったが、雅の体はビルの屋内へと向かう。

 

クロエは放り出されるように倒壊するビルの外へ身を投げ出した。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「うぐぅ!?」

 

外へと脱出したクロエは飛ぶこともなく、そのまま地面に激突し、転がった。

 

なんとか体を起こし、後ろを見ると物理的な破壊音を伴い鉄骨がねじれ、コンクリートが爆ぜるように崩れ、フロアが落ちていく。

 

「!(……なんとかうまくいった)」

 

重力が確実に命を奪って、地面へと沈んでいく

 

自身の重さを支えきれなくなり、崩壊するビル。周囲に衝撃を伝播させながら砂塵を舞い上げる。

 

流石に中にいる者はひとたまりもーー

 

ーーキンッ!

 

その時鋭い金属音が響き渡ったかと思えば天へと蒼い光が立ち昇った。

 

崩壊し地面へと降り注ぐビルが一瞬で真っ二つに()()()

海を割ったモーゼのごとく、斬り開いたその道を悠々と歩き、無傷で出てきたのは星見雅その人であった。

 

「~~~っ!!?」

 

もはや驚きで声も出なかったが、武器を変形させ、クロエは銃口を向けた。

 

「(片方のブレイドの欠損で武器が反動で壊れても構わない、最大出力を放つ。)」

 

しかし、クロエは失念していた。ここは天空ではなく地上。虚狩りが最も得意とする領域であったことを。

 

引き金に指を掛けるよりも遥かに速い速度で接近した雅、クロエの視界は割れ、全身が蒼い炎に包まれた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

552:カラスメイド ID:zzztensei04

ワァ……アァ……

 

553:軟体エンジニア ID:zzztensei05

あーあ、泣いちゃった

 

554:デンキウナギ ID:zzztensei02

だから言ったろ策が上手くいっても、やったか!?はフラグなんだって

ビルが割られてらあ、雅さん傷一つねぇじゃん

 

555:サソリ薬師 ID:zzztensei03

所詮私らの企みなんぞ虚狩りからすれば猿知恵よ……

ひえ、めっちゃこっち見てる

 

556:カラスメイド ID:zzztensei04

……だが、だがまだだ雅さん!

この武器はブレイドの刀身部分が無くても変形できる

制御機構部分が無くなり発射時の衝撃に耐えられずぶっ壊れるが、一発だけなら何とか打てる!

つまり次に突っ込んでくる時にこれを喰らわせればーーー!

 

557:デンキウナギ ID:zzztensei02

……まさか、ここから逆転するというのか?

あの虚狩りに、原作最強格に……!

 

558:軟体エンジニア ID:zzztensei05

マジで!?

うおお!行けぇ、クロエ!

ボクの開発兵器が虚狩りに届くところを見せてくれ!

 

559:サソリ薬師 ID:zzztensei03

確かに虚を突けばいけるかもっーーー!

 

560:カラスメイド ID:zzztensei04

良し構えを取った、このタイミングで……

掛かったな!この時を待っていた!もうレーザー撃てないと思っていただろ!?

くらえチェックメイ、ぐわああああああ!?

 

561:デンキウナギ ID:zzztensei02

ええ!?

今何が起きた?

視界が青く燃えたと思ったら、武器破壊されたぞ!?

 

562:軟体エンジニア ID:zzztensei05

あの距離じゃ刀届かないんだけど……

一瞬で間合い詰めて斬りかかったの?ヤバすぎ……

 

563:サソリ薬師 ID:zzztensei03

あーあ、完全敗北かよ6課全員強すぎ

 

564:カラスメイド ID:zzztensei04

いや、まだだ、まだ終わらんよ!

武器を失っても私にはまだ拳がある!

行くぞ雅さん!

喰らえ、ファルコォン!パァンt、うわああああ!

 

565:デンキウナギ ID:zzztensei02

おい、なにしてんねん

 

566:サソリ薬師 ID:zzztensei03

普通に刀で弾かれて、斬りつけられた……

もう諦めなよ?

 

567:カラスメイド ID:zzztensei04

ぐぅ、ならば!

ファルコォン!キィィk、NOOOO!?

 

568:デンキウナギ ID:zzztensei02

もうええわ

 

569:サソリ薬師 ID:zzztensei03

躱されてカウンター喰らってる……でも峰打ちで済ませてくれてる

雅さん優し

 

570:カラスメイド ID:zzztensei04

くそう、ここまでか……!

 

571:デンキウナギ ID:zzztensei02

……マオに比べて遥かに諦め悪い最後だな

ん!?え!?マジすか、しゃあ!耐えたぞ!

 

572:サイ男 ID:zzztensei01

……もう大丈夫だ

……見えてきた、ちょっとここにある手ごろな瓦礫で、

そおい

 

573:サソリ薬師 ID:zzztensei03

……え、まさか

 

574:デンキウナギ ID:zzztensei02

よくやった二人とも!

援軍が間に合ったぞ!

 

575:軟体エンジニア ID:zzztensei05

うん!アキラは送られた座標地点で回収したよ!

ダイさんが戦うとなると絶対ホロウの環境変わるからボクたち先に出ておくね!

 

576:カラスメイド ID:zzztensei04

た、助かりました!

私……生き延びたんだ!帰ったらライカンさんと結婚するんだ……!

 

577:デンキウナギ ID:zzztensei02

死亡フラグっぽくなるからやめろ

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「ぐぅ、……ぁ」

 

知能機械人が地面に蹲り呻いていた。彼女が持つ鋼鉄の深紅の翼は地面へと力なく倒れ、装甲には袈裟にかけての大きな裂傷が存在していた。手に持っていた武器はもはや原型は留めていない、完全な決着であった。

 

「安心しろ峰打ちだ、大事にはならない」

 

それを近くで見下ろす星見雅。

 

武器も失いつつも戦意はなお折れず、丸腰で果敢に此方に飛び込んできた相手。

敵ながら雅は確かに相手を称賛していた。

 

武器を破壊した瞬間、相手はすぐさま冷静に右のストレートを放ってきた。

刀身で弾き、返す刀で袈裟に一撃。

 

やや怯んだが、すぐさま片足を軸に回し蹴りを放ってきた。

それを距離を取って躱し、助走をつけ峰で同じ個所を打った。

 

近年稀にみる強敵であった。

 

決着をつけ、雅は初めに比べて彼女について意外にもかなり好意的な印象を抱いていた。

 

それは、生粋の武闘派として自身の全力に耐えられる者への称賛か、自身の手の中にある妖刀の思念による感情の昂ぶりによる影響か、雅には分からなかった。

 

少なくとも彼女に対して、裏の者であるのがもったいない、上に掛け合えば戦力として融通を利かせてくれるかもしれないと考えている。

 

だが、それは全て終わった後だ。まだ仲間の元にいるもう一体の知能機械人、あれもやり手だ。仲間たちであれば恐らく大丈夫であるが、誰かが重傷を負っているかもしれない。急いで戻らなければいけないのは変わらない。

 

一先ず目の前で動けなくなっている敵を連行してーーー

 

そう思考し、一歩踏み出そうとしたところ自分の立っている地面にありえないほど大きな影が音もなく滑り込んでくる。

 

「……!」

 

急いで後ろに跳躍し、身を翻す。

着地と同時に、すさまじい衝撃が周囲に走った。

 

ーードォオオン!

 

吹き荒れる砂塵と風圧。さっきまで自分がいた場所に、巨大な瓦礫が突き刺さるようにして横たわっていた。

まるで空から落とされた隕石のように無慈悲で、唐突で、破滅的な一撃。

 

雅の視界では先ほど目の前にいた知能機械人、ファルコンの姿が伺えない。潰されてしまったかと思ったが、どこが手ごろな瓦礫なんだよ!と叫んでいる声が聞こえる。どうやら無事のようだ。

 

砂塵の中、耳がわずかに異音を捉えた。

 

金属を打つような硬い足音。重く、規則正しく、大地を支配するように響いてくる。

 

足音の方向へ顔を向けると、その先には巨大な人影が見えた。

 

やがて、砂塵が落ち視界が晴れると雅の目はその全貌を捉えた。

 

ーー巨大な鋼鉄の知能機械人。

 

分厚い鋼鉄の装甲に包まれ、関節部からはわずかに蒸気のような霧が漏れている。

肩幅は扉ほどもあり、脚は支柱のように太く、見るからに一撃で人間を叩き潰せる腕を備えていた。恐らくあれで先ほどの瓦礫を投擲したのだろう。

機械人の全長は自身の……およそ二倍。全体像はどこかサイを思わせるデザインだ。

 

その機械の顔面には表情も口もない。ただ、赤く光るセンサーの双眼が強い意志を帯びてこちらを捉えていた。

 

「……何者だ」

 

そう聞きながらも雅は確信していた、新手であると。

 

周囲に吹いていた風が止み一瞬の静寂が訪れる。

 

やがて、低く響く声がスピーカー越しに空気を震わせた。

 

 

「……俺は『ヒール』所属の戦闘員、コードネーム――――《ライノ》だ」

 

雅の視線とライノの視線が嵐の前の静けさのようにゆっくりと交錯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

そこは暗い室内であった。

光源は女性の前にある青白い画面だけであり、カタカタ、と静かにキーを叩く音が響く。

 

「中々興味深そうな情報じゃない、セキュリティも随分と強力なのね」

 

その声は女性のものであった。その口調はどこか軽くノイズが交じっているように聞こえる。

 

 

女性の姿は光源が足りずに闇に包まれており、表情は窺い知れない。

彼女は手慣れた様子で画面に映ったファイルを開き閲覧を開始した。

 

 

 

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【機密文書/ホロウ内部空間異常現象調査報告書】

 

発行機関:ホロウ調査協会

 

発行日:■■■■/08/11

 

分類:極秘

 

文書担当:主任研究員 バース・■■■■

 

■件名:

旧都エリー都陥落時において零号ホロウ内部で複数回にわたり発生した局所空間異常現象の発生および調査報告

 

■説明:

新たに発見されたホロウ内部の空間作用特性(以下”カゼ”)は()()()()()()()に観測された空間異常現象である。

従来のホロウでは内部空間の無秩序な連結、零号ホロウにおいては重力場に影響を及ぼしている。

しかし、”カゼ”は力場、圧力、磁場などを含む物理現象を表す概念に極めて大きな干渉を行い、強烈な衝撃波を伴い伝播した範囲の物理法則を一時的に崩壊させていた。

軍の先遣隊が偶然記録したデータには、発生直前の■時08分01秒〜02秒の間に、”非常に高周波かつ低振幅の異常振動(43.2kHz〜51.7kHz)”が記録されている。

当時、エーテリアスを起点に、通常の爆発・衝突現象では説明不能な速度・分布の圧力波が観測され、()()()()()()()()()点からエーテル濃度が極めて集中した箇所で発生する空間湾曲現象であると推察されている。

”カゼ”が人間を巻き込んだ被害報告が挙げられていないことは特質すべき点である。*1

現時点で、本現象に関する新たな発生は認められておらず、ホロウ内部の状況は安定している。

 

 

 

■録音記録:

 

本報告書では、関係者の証言内容を聴取記録として記載する。

 

 

証言者A(■■代・当時治安官・女性)

 

「エーテリアスから必死に市民を守っていた時に、突然空気が“抜ける”感じがして、周囲が爆発したんです。何も見えずに衝撃を耐えていたところ、急に静かになったんです。恐る恐る目を開けると何もなかったんです。さっき迄いたエーテリアスも、周囲にあった建物も……。少し向こうを見ると電柱が一気に倒れて、木がバラバラになってました。*2……」

 

◉ 証言者B(40代・配達員・男性)

 

「ホロウから出るために軍の人に誘導されながら道を走ってたら、突然視界の先の景色が“ぐにゃ”って……いや、視覚の映像じゃなくて空間本体が歪んだ気がする。その直後馬鹿みたいに大きい音と衝撃に襲われたけど距離があったからかな……、周囲の建物とかはとんでもないことになってたけど俺たちは無事だった。その後、景色も数秒で戻ったけど、ちょうどそのとき運よくホロウの出口で……、今思えば光が変だった。うまく言えないんだけど、なんつーか、全部が“広がってく”感じ。」

 

◉ 証言者C(■■代・当時防衛軍所属・男性)

 

「自分の隊全員がエーテリアスに囲まれたときはもうだめかと思ったんですよ。援軍も来ないし、ああ、ここで死ぬんだなって……。でもまだ幼い仲間がいたんで、その子だけは逃がそうと必死に防衛線を展開したんですよ。その時でしたね、でっかい”カゼ”が吹いて周りのエーテリアスを飲み込んだのは。当時は何が起きたかわかんなかったんですけど、その後すぐに後続隊から独断専行してきたという少年に連れられ何とか脱出できました。……日々の生活にすら苦労するような体になってしまったけど命あっての物種ですよ。」

 

◉ 証言者D

 

 

 

 

 

 

 

■ 研究者所見:

◆ 所見1(主任研究員 ロバート・■■■■)

 

本事案において最も顕著な特徴は、「構造力の外部入力が一切確認できない中での、内部力の一斉解放」にある。

 

特筆すべきは以下の点である:

 

各構造物が受けた力の向きが内部中心から外周へ向けて放射されている。

 

通常、爆発・圧縮・地殻変動では”外力に応じた応答”が見られるが、本件では“反応”が先で、原因が不明。

 

例えるならば、『バネが長年圧縮されていたものが、一瞬で固定を解かれた』ような現象。

 

◆ 所見2(客員理論物理学者スター・■■■■)

 

この現象は、”局所空間テンション(張力)”の急激な開放によって引き起こされた可能性がある!

 

仮説を提示する:

 

空間構造そのものが、何らかの“拘束状態”に置かれていた

→ その拘束が外れた瞬間、空間が“自然な形”に戻ろうとする

→ 結果として、空間内のすべての物体がその「張力開放」に巻き込まれる

 

重要なのは、これが爆発でも重力波でも量子的崩壊でもないということだ。

むしろ、これは「宇宙のストレッチ素材が一瞬だけ弛緩した」ような現象であり、根本的には空間そのものの“癖”に近い。

 

 

◆ 所見3(

 

 

 

 

 

 

 

■ 結論:

 

現在のところ、本事案は従来の物理理論によって完全に説明できない。

しかし、観測事実から以下の2点を留意すべきと考える。

 

人的被害報告ゼロは偶然であり、次回も保証されない。

 

今回のホロウ内部空間異常現象”カゼ”が偶発的か、意図的かは不明である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警告

以下は上層部関係者および最高レベルのセキュリティクリアランスを持つ職員のみ閲覧可能

 

この現象は、局所的・一方向性・時間的瞬間性に優れており、明確に“通過”の痕跡を持つ。

『空間撚縮』あるいは『空間伸展』とも呼べる現象であるが、本件においてはーー

 

空間が捻じ曲げられたのではなく、“引きずられた”結果として破壊されたと考えられる

 

ーーーーーーー

 

「何かが通り過ぎた」

—— それだけで、世界が壊れる。

問題は次に“それ”が戻ってくるのか、”それ”に再び我々人類が対峙した時どうすることもできないということだ。

 

— ホロウ調査協会上層部

 

*1
まるで人を避けるように発生している。編集済み

*2
まるで何かが“通った後”みたいで編集済み




SCPとかの報告書好きなんですよね

実際にやってみたけどかなり難しいなこれ!?

描写の少ないライノさんの登場、いったい彼は何者なのか(すっとぼけ)
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