転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活   作:フライパンソルジャー

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誘い受けを決行するリーダー


リーダー、全力で勝ちに行く

新エリー都の空は、ビル群の間に沈む陽の光で黄金色に染まっていた。

TOPS財政ユニオンの一角、巨大企業マックス・コーポレーション本社の最上階にあるオフィスは、まるで未来を象徴するかのように無機質で美しく、その中心に立つ男――エレグ・マックスは静かに受話器を耳に当てていた。

 

「……エレグさん、お疲れ様です。マックスコンストラクションのヨシダです。」

 

電話の向こう側には落ち着いた、年齢を感じさせる声。しかしその裏にはかすかに緊張と敬意が滲んでいる。

 

マックスグループの中核建設会社『マックスコンストラクション』の社長、ヨシダ・セイジ。かつては独立系中堅ゼネコン『東都建設』の創業者であり、エレグよりも二回り以上年上の“現場の鬼”として知られた男だった。

 

エレグは静かに報告を聞いていた。

 

「例の旧都地下鉄改修工事の件ですが……資料の最終チェックに入っています。技術面では申し分ないのですが、自治体の意向に合わせる部分で少し気になる点がありまして……」

 

「ヨシダさん。」

 

エレグは穏やかに声をかけた。

 

「今は二人だけです。敬語はやめましょう。」

 

「……ああ。そうだったね、エレグ。」

 

しばしの沈黙のあと、ヨシダは少しだけ声を柔らかくした。

 

「どうも君の前に出るとあの時の気持ちを思い出してしまうんだよ。」

 

エレグはモニターから視線を外し、窓の外に目をやった。夜が少しずつ街を包み始めている。

 

「思い出す…あの頃ですか。」

 

「そうだ。”マックスコンストラクション”が、かつて”東都建設”と呼ばれていた頃。あの時、私は毎晩社員にどう説明するか悩んでいた。資金繰りは尽きて銀行はもう振り向いてくれなかった……!」

 

「……」

 

「だが君が私の会社を傘下に入れてくれた。あの場で言ったんだ。“あなたの会社には、まだ価値がある。あなた自身にも。”って。」

 

「事実だったからですよ。技術も人材も、まだ活かせる会社でした。私はそれを買っただけです。」

 

「それでも、私は救われたんだ。」

 

ヨシダの声には、若干の震えがあった。

 

「会社だけじゃない。私の人生そのものを君が引き上げてくれた。」

 

エレグは静かに笑った。

 

「それを言うなら私もあなたに感謝しています。あなたのような実直な経営者が、今このプロジェクトにいてくれるのは私にとっても幸運です。」

 

「……ありがとう。」

 

二人の間には年齢差も立場も超えた深い信頼と敬意があった。企業グループ内とはいえ、そこにはただのビジネス以上のものが流れている。

 

「この入札、全力で臨みましょう……()()()()()()我々が負ける道理はない!マックスコンストラクションの名を再び新エリー都に刻むんです。」

 

「ああ。今度は俺が君の期待に応える番だ。」

 

通話が切れた後もエレグは受話器をしばらく手にしたまま、窓の外を眺めていた。新エリー都はまだ変わり続けている。その変革の最前線に立つ自分たちがただの企業ではなく“希望”であるということを彼は強く意識していた。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

新エリー都に冷たい雨が降り続いていた。

 

都市の再開発を加速させる巨大プロジェクト――旧都地下鉄改修工事の入札結果が発表された日、マックス・コーポレーション本社の重厚な会議室には重い空気が漂っていた。

 

エレグ・マックスはCEO席から窓際に移り、濡れた街を静かに見下ろしていた。

 

ドアが開く。

 

「……すまない、エレグ……!」

 

ドアを開けて飛び込んできたのは、マックスコンストラクションの社長、ヨシダだった。

年配の男が、こんなに疲弊した顔を見せるのは珍しい。彼のネクタイは歪み、足元は濡れていた。入札に敗れた責任が彼の体に重くのしかかっていた。

 

「ヨシダさん、まずは腰をかけてください。落ち着きましょう。」

 

エレグはすぐに近づき、彼の腕を支えてソファへ導いた。

 

「……こんな結果になって、本当に……申し訳ない。俺が、もっと強気に攻めていれば……!」

 

「やめましょう。責任を感じる必要はない。貴方はよく頑張ってくれた」

 

「だが、俺たちは新エリー都の基礎を築いてきた。ここ五年間で支えた主要インフラの5割は、俺たちの手によるものだ。住民も、行政も、信頼してくれていたはずだ……!なのに、あのヴィジョンに……!」

 

「――そのヴィジョンが、“どうして勝ったか”を、私も考えていました。」

 

エレグの視線が鋭くなった。

 

「正直な話、私たちの入札額はギリギリまで削っていた。それでも、あの価格には到底届かない。いや、“常識的には”不可能です。」

 

ヨシダが顔を上げる。

 

「……つまり、何か仕掛けがあると?」

 

「そう思っています。」

 

エレグはデスクからタブレットを取り出し、画面にいくつかの資料を映した。

 

「ここを見てください。ヴィジョンが提出した工程表……。」

 

ヨシダは食い入るように見た。

 

「おかしい。解体工程が……ない?」

 

「いや、正確には“簡略化”されてる。……実に巧妙だ、行政側はコストや短期間という利点に目を奪われ気づけないでしょう。まあ気づけない原因は他にもありそうですが……。兎に角、数百世帯が暮らす区域の再整備で、建物の解体を“3日間”で終わらせる計画が出ている。しかも、地盤調査も“後工程”に回してる。」

 

「3日だと?そんな……解体なんて最低でも――」

 

「2週間は必要です。通常の手順で、()()()()()()()()しながらならね。」

 

エレグは静かに言った。

 

「実は、ヴィジョンには数年前から、新エリー都内で“即時解体”を行っている実績がありましたが……その大半が無人区域や産業用施設だった。だが今回は違う。」

 

ヨシダの顔色が変わる。

 

「……まさか。この場所で“爆破解体”を……?」

 

エレグは深く頷いた。

 

「その可能性がある。住民の避難計画が見当たらない。“周囲一帯を制限区域とする予定”とだけ記載されている。」

 

「それじゃまるで……“人がいる状態で爆破する”ような……!」

 

「極論ではあるが、十分に危険だ。ヴィジョンは、“都市の未来”を口実に、効率とスピードを最優先している。だがそれは、現実の人間の生活を無視した“ビジネスとしての都市解体”に他ならない。」

 

ヨシダは肩を震わせた。

 

「……そんなことが、許されていいはずがない。」

 

「だから調べます。徹底的に。」

 

エレグの瞳には、冷たい炎が宿っていた。

 

「私たちは、ただの企業じゃない。都市を創り、命を守る責任がある。マックスコンストラクションはその中心だった。私は、その歴史をーーあなたの努力をこんな方法で汚されるのを許せません。」

 

ヨシダはゆっくりと、まっすぐにエレグを見た。

 

「……俺も、まだ戦えるだろうか。」

 

「もちろんです。戦いはむしろこれからです。」

 

雨は止んでいなかった。

 

だがその中で、静かに始まろうとしていた。

 

 

 

エレグはヨシダの狼狽を受け止めつつ、瞳の奥に静かな決意を灯した。窓の外の雨音が二人の呼吸に合わせて小さく響く。

 

「ヨシダさん、ひとつ提案があります。」

 

ヨシダは震える声で顔を上げた。

 

「何でも言ってくれ。」

 

エレグはデスクの端に置かれたタブレットを指で弾いた。画面には、これまで集めた入札書類、工程表、ヴィジョンの過去の案件に関する断片的なメモが並んでいる。だが、そこにあるのは戦術的な資料以上に、彼の覚悟そのものだった。

 

「私は、この計画をーー私たちが持っている資料を、すべて公にします。メディアに開示する。入札の“価格”だけでなく、彼らの工程表、住民避難計画の不備、過去の類似事例での契約変更の痕跡ーーそれらを透明に提示するんです。」

 

ヨシダは言葉を失った。やがて、かすれ声で言った。

 

「メディアに……だと?それは、相当大胆だ。訴訟や名誉毀損のリスクもある。行政や他の企業からの圧力が来るかもしれない。君は、それでも公にするつもりか?」

 

「私は迷っていません。」

 

エレグの声は冷静だったが揺るがなかった。

 

「このまま黙っていれば、もしヴィジョンが計画を実行に移したとき、取り返しのつかないことになる。住民の命が危険に晒される可能性がある以上、企業間の“内輪の争い”に留めておく理由はない。」

 

ヨシダは額に手を当て、深く息をついた。

 

「でも、我々の立場もある。君が全社のトップであっても、法的な手続きや慎重な根回しは必要だ。感情だけで動いてはいけない。」

 

エレグは頷いた。

 

「もちろん、感情だけでは動きません。私たちが出すのは、裏取りの取れた事実だけです。推測や憶測は含めない。メディアに公開する前に、弁護士チームに目を通させ、記者会見では証拠を順序立てて示す。住民保護のための緊急対策案も同時に提示します。私たちが正しい手続きを踏んでいることを明確にすれば、単なる“企業同士の喧嘩”にはさせない。」

 

ヨシダの目に、一瞬の希望が戻った。だが不安も消えない。

 

「ヴィジョン側が反撃してくるだろう。行政との癒着があるなら、情報の封じ込みや報道のコントロールをされるかもしれない。君は、その覚悟があるのか?」

 

エレグは窓の外の街並みを見つめた。新エリー都の灯りが雨に滲んでいる。

 

「私には、覚悟しかありません。マックス・コーポレーションはこの都市の一部です。私たちはこの都市の“安全”と“信頼”を壊されるのを黙って見ているわけにはいかない。もし真実を隠すために力が使われるなら、それを白日の下に晒すのが私たちの義務です。」

 

ヨシダはゆっくりと息を吐いた。

 

「わかった。ーー君がそこまで言うなら、私も全面的に協力する。現場の図面、工事の工程管理記録、住民への説明資料ーー隠し持っているものは全部出す。俺たちが知っている事実を、一つ残らず。」

 

エレグは僅かに笑みを見せた。

 

「ありがとう。だが二つ条件があります。」

 

「条件?」

 

「一つは住民の安全が第一です。メディア戦略は住民保護を最優先に組み立てる。パニックを避けるための連絡体制、避難ルートの確保、即時に動ける支援チームの配置ーーそれらを私たちが先に用意する。暴露は守るための手段であって混乱を招くためのものではない。」

 

ヨシダは力強く頷いた。

 

「いいだろう。俺もそこまでは考えていた。だが、もう一つ懸念があるーー我々の情報源の安全だ。内部で動いている者がいるなら、その者の身の安全をどう確保するかも重要だ。」

 

「その通りです。」

 

エレグはタブレットの一角を指差した。

 

「ここに、弁護士、広報、安全管理、そして市民支援チームの連絡網を組み合わせた計画があります。今日中にチームを召集し、情報の精査と公開準備を進めます。報道発表は、我々が全面的に準備を整えた時点で行う。まずは“事実”を揃えましょう。」

 

ヨシダは震える指でタブレットを受け取り、画面の資料に目を落とした。ページをめくるたびに、彼の表情に覚悟が宿っていく。

 

「それで……もう一つの条件というのは?」

 

「今回、我々が持つ地上波放送局『マックス・テレビジョン』は報道に使いません。」

 

「……は?()()()()()()()使()()()に?エレグ、それは……!」

 

「勘違いしないでいただきたい。確かに今を見るのは必要だが、私たちは先も見据えなければならない。報道は公平でなければならない。もし私たちが、自分たちの企業グループのメディアを使って“敵を糾弾する報道”を行えば、それはただのプロパガンダだ。マックス・テレビジョンは、あくまで中立の報道機関として市民の信頼を得てきた。それをCEOである私が壊すわけにはいかない。」

 

その言葉に、ヨシダは改めて“企業家”ではなく、“都市と未来を背負う覚悟を持つ人間”としてのエレグを見た。

 

ヨシダは見た、自分の半分にも満たない歳の若者が瞳に燃えるような強い決意を宿していることを。

 

彼はこれまで”未来予測”を思わせる意思決定、他企業の動きを完全に予測した事業展開。あっという間にTOPS財政ユニオン入りを果たし、様々な企業を傘下に納めた。

 

私の会社を救ってくれた時もこの燃えるような瞳であったことを思い出す。

やがてヨシダはゆっくりと口を開いた。

 

 

「……わかった。君のやり方に従う。マックスコンストラクションが培ってきた信頼を、守るために。」

 

エレグは立ち上がり、窓の外の街を見据えた。雨はまだ止まない。だがその先には、薄く光る一筋の灯りが差し始めているようにも見えた。

 

「では、ヨシダさん。準備を始めましょう。真実を示して、この街を守るために。」

 

二人は互いに短く頷くと、動き出した。表向きの敗北を覆すべく、メディアと市民の前で真実を突きつける──それは大胆で危険な賭けだった。しかしエレグにとっては、企業の名誉以上に守るべきものがあった。新エリー都に暮らす人々の“生活”と“命”のために、彼は全てを賭ける覚悟を固めていた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

ヴィジョン・コーポレーションが旧都地下鉄改修工事に着手する、という報道が流れたのは、その数か月後であった。

 

「業界最大手マックスコンストラクションに見事入札で勝利」

「都市を変える、民生プロジェクトがついに始動へ――」

「ヴィジョン社、再開発第一期工事を来週から着手、TOPS財政ユニオン入り目前」

 

メディアは一斉にこのニュースを取り上げた。

“スピード再開発”は行政からも支持され、ヴィジョンの代表のパールマンが笑顔を見せる姿がニュースのトップに踊っていた。

 

しかし、その翌日ーー

 

エレグ・マックスとヨシダは記者会見の壇上に立った。

 

「この計画には重大な危険が潜んでいます。私たちマックス・コーポレーションは、ヴィジョン社が行おうとしている再開発工事に関する内部資料、及び設計図の一部を入手し、そこに極めて重大な問題があると判断しました。」

 

通常なら広報部長か、建設部門の責任者が担う場面だった。

だがエレグは、CEOとして、自らこの場に立つことを選んだ。

「これはトップの仕事じゃない」と多くの役員が制止したが、彼は首を振ってこう言った。

“トップが出なければ、誰がこの都市の未来に責任を持つんです?”

 

会場がざわつく。CEOが自ら出張ってきたのだ、話題性は十分である。

 

「爆破解体です。住民が未だ十分に退去していない区域で、危険な解体手段が取られようとしています。避難計画は不完全、騒音・粉塵に関する説明もなく、……これを“スピード”と呼ぶならあまりにも安易です。」

 

報道陣のフラッシュが一斉に光る中、エレグは静かに、しかし確信に満ちた声で続けた。

 

「この街を創る者として、私は黙って見過ごすことはできません。」

 

ーーーーーーーー

 

情報公開後、ネットとメディアは炎上にも近い騒ぎとなった。

 

ネットには称賛と非難が入り混じる。

 

「エレグは正しい。誰かが止めなきゃ街が壊される」

「告発するだけでなく、代替案を示しているのがすごい」

「でもこれは業界のルールを無視してるんじゃないか?」

「単なる敗者の逆恨みにしか見えないw」

「改修を遅らせた責任をどう取るつもりだ?」

「ヴィジョンに負けて赤っ恥かいた感じ?これ以上恥かくのは見苦しいよ」

 

テレビの討論番組では、都市開発専門家が言葉を濁し、行政関係者は「確認中」という曖昧なコメントを繰り返した。

 

 

そして当然業界からの圧力も圧し掛かる。

 

ヴィジョン・コーポレーションは公式声明を出し、エレグを「事実無根の妨害行為を働いた」と非難。

 

「当社の工事計画は、行政と協議の上で適正に進められている。マックス・コーポレーションが提示した情報は不正取得されたものであり、法的措置も検討している。」

 

それに呼応するように、複数の建設・不動産関連企業がエレグとの契約見直しを開始。マックスグループの一部事業にも取引停止が相次ぎ、株価は1週間で12%下落した。

 

内部では、社員たちの間にも不安の声が広がった。

 

「本当に正しいことをしているのか……?」

 

「このままじゃ、会社が干される……」

 

だが、エレグは揺るがなかった。

 

「すべては想定内です。ここから先は、信じて動くしかない。」

 

彼は各部署のリスク対策チームに「任せる」のではなく、自ら会議に同席し、資料に赤を入れ、社員一人ひとりの疑問に直接答えていた。

CEO自らが夜遅くまで会議室に残り、机の上に広げた案件ファイルを手に、役員たちと議論を交わす姿は、社内に驚きと静かな熱を呼び起こしていた。

 

“マックスが守るのは利益ではない、信頼だ。”

 

その言葉は、社内回覧で全社員に伝えられた。

 

内部では士気を保つためのヨシダと共に社内放送やメッセージを出し続け、社員一人ひとりに説明の機会を設けていた。

 

 

ーーーーーーーー

 

ある晩、オフィスの灯りがほとんど落ちた後、ヨシダが訪れた。

 

「……みんな、ついてこられるか、不安がってるよ。」

 

「不安は当然です。でも、私は諦めません。」

 

エレグは苦笑した。

 

「ヨシダさん、あなたがかつて会社を立て直した時、周りはどう言いました?」

 

「……“無理だ”と、言われた。」

 

「今、私たちも同じです。“無理だ”と笑われている。でも、それを覆すのが、我々マックスの仕事じゃないですか?」

 

ヨシダは静かに頷いた。

 

「なら、踏ん張るしかないな。」

 

そう言いながらも、彼の目は、数日前のある夜を思い出していた。

深夜0時を過ぎた社内、ひとり執務室でタブレットに向かっていたのは、秘書でも役員でもない、エレグ本人だった。

工程表、近隣の人口分布、避難計画、爆破実績――すべてのデータに自ら目を通していた。

 

“トップは決断を下す人間じゃない。最初に現場の泥に手を突っ込む人間でなきゃダメなんです。”

 

その姿勢こそが、エレグの異常なカリスマの源だった。

 

かつて彼が倒れかけたときに救ってくれた若きCEOが、今また前に立っている。彼はその姿に胸を打たれ、静かに覚悟を固めた。

 

数日後、”報道の逆風は一層強まった”。ヴィジョン側から訴訟の準備という噂が流れ、エレグを目の上のたん瘤だと認識していた他企業はこれ幸いと便乗し圧力をかける。

外部の取引先は慎重になり、マックスグループ内の一部部門は孤立感を募らせている。

 

社内には退職を検討する者、黙って耐えようとする者、激励する者が混在していた。

 

だがある夜、窓際で一人、エレグはゆっくりと立ち上がり、最上階オフィスの大きな窓越しに濡れた街を見下ろした。

 

遠方の街灯が雨に滲み、ネオンが水面のように揺れている。世間からの評価は厳しく、他企業からは距離を置かれ、株価も下落している。責任を問う声が連日報じられている。

 

TOPSの一角とはいえ、今の状況は非常にまずかった。

 

だがその光景を前にして、彼はふと笑った。

 

小さな笑みは誰にも見えないが、笑いは確かにそこにあった。彼は窓ガラスに映る自分の姿を見つめ、低く、しかし力強く呟いた。

 

「さあ、逆転劇だ……全てひっくり返してやるぞ……倍返しじゃあ!ボケが!

 

 

ーーーーーーーー

 

631:デンキウナギ ID:zzztensei02

という訳でみんな~、お仕事の時間だよ!!

 

632:軟体エンジニア ID:zzztensei05

台無しで草

 

633:サイ男 ID:zzztensei01

なんかもう返してくれ、俺たちのカッコいいリーダーを……

 

634:サソリ薬師 ID:zzztensei03

ヨシダさんに謝れお前は

何が”マックスが守るのは利益ではない、信頼だ。”だよ

おもっくそ利益じゃねーか

 

635:カラスメイド ID:zzztensei04

もはや人格が変わってるんだよなぁ……

 

636:デンキウナギ ID:zzztensei02

はいはい、そういうの良いから

今株とか俺のグループの評価ががやばいことになってるし逆転しないとまずいんだよね

いや~TOPSとはいえ敵が多すぎるッピ

 

637:カラスメイド ID:zzztensei04

よく言うわ、わざとつけ入る隙を作ってたくせに

 

638:軟体エンジニア ID:zzztensei05

今から全力の報復も開始しようとしてるしね

 

639:デンキウナギ ID:zzztensei02

だがまあ思ったよりも罠にかかった奴が少ないな……

今までの俺の実績を警戒、嫌な予感を感じとって静観に徹したか……?

 

640:サイ男 ID:zzztensei01

えぇ、これで少ない方なのか

テレビとか全てお前の所の批判だぞ

 

641:軟体エンジニア ID:zzztensei05

まあ、自分の傘下の会社とはいえ、そのCEOが異常なほど出張ってるのは気になるよね

賢い奴らなら怪しむだろうけど

ここまで目の上のたん瘤だったリーダーがようやく見せた隙だからね~

 

642:カラスメイド ID:zzztensei04

ああ……、ヴィジョンコーポレーションのマジで鬼畜な爆破改修工事の可能性をよく調べずにリーダー批判に走っちゃったか……ご愁傷様です

 

643:サソリ薬師 ID:zzztensei03

彼らに“攻撃する口実”を与えた、そしてそれに世間は注目している

恐らくヴィジョンの不祥事が明らかになれば今の評価は一変するな

またリーダーの一人勝ちになってしまうな……

 

644:デンキウナギ ID:zzztensei02

何言ってるんですか皆さん!これは人命が掛かってるんですよ!

勝ちとか負けとかじゃない……!私はTOPSの一人として見過ごせないだけです!

 

645:サイ男 ID:zzztensei01

こんな腹立つ綺麗事そうそう無いぞ

 

646:カラスメイド ID:zzztensei04

全然欲望が隠せてないんですけど

 

647:サソリ薬師 ID:zzztensei03

まだこれで他のTOPSより全然ましってマジ?

 

648:デンキウナギ ID:zzztensei02

取り敢えず今回はドクで頼む!

人手がいるからな!住民の避難とか、邪兎屋及びパエトーンのサポートとかよろしく!

俺も外から清廉潔白CEOを演じ……手助けするからな!

 

649:軟体エンジニア ID:zzztensei05

おい口が滑ってるよ

はあ、まあヴィジョンの思い通りにさせるわけにはいかないからね

やってみるよ……!

 

650:カラスメイド ID:zzztensei04

いいな~羨まし

 

651:サイ男 ID:zzztensei01

一応俺もリーダーの傘下の会社勤めだからよろしく

頑張れよ

 

652:デンキウナギ ID:zzztensei02

くっくっく!散々好き勝手言いやがってTOPS傘下の他企業のアホどもが……!

こっからマジで目にもの見せてやるからな覚悟しとけコラァッ!

 

653:軟体エンジニア ID:zzztensei05

マジで情緒どしたん?

 

654:サソリ薬師 ID:zzztensei03

ストレスで疲れてるのよ、彼

 

 

 

 




ヨシダ「負けちゃう?」
リーダー「勝つさ」
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