転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活 作:フライパンソルジャー
ゼンゼロ作品で実力、経済、開発、恋愛、技術という一分野で活躍するキャラを書きたい!
でも選べない…!
そうだ全部書こう……!(アホ)
今回は戦闘回です
アキラは端末を軽く叩き、隣に立つ長身の影を見上げた。光沢を帯びた外殻と、人間にも似た精密な関節構造。知能機械人ーーエレクトロ。彼は人工的な存在でありながら、声音には奇妙な温かさが宿っていた。
「アキラ、すまないな。無理を言ってついて来てしまった、それに態々車に乗せてもらって……」
どこか居心地悪そうに目を伏せるエレクトロに、アキラは小さく笑みを浮かべた。
「気にしないでくれ、エレクトロ。久しぶりに君と一緒に仕事ができて嬉しいよ。白祇重工の皆からも許可をもらってるし、遠慮する必要なんてないさ」
言葉を受けたエレクトロは一拍置き、無機質な光を帯びた瞳を細める。
「……そうだな。では、謝るのをやめてありがとうと感謝するべきかな。今回の件は私も非常に気になっている。実に個人的な理由からだ。だが、決して君たちの邪魔はしないと誓おう」
その声音には硬い決意が混じっていた。アキラは歩みを止め、彼をじっと見つめる。
「……それって、君が言ってた“ヴィジョンの裏にいた組織”が狙っていたものかい?」
問いかけると、エレクトロはわずかに顎を引き、沈黙ののち答えた。
「ああ。彼らは改修工事に託けて、それを回収するつもりだったのだろう。あの場所には重要な何かが眠っているとーーそう確信している。……すまないな、匂わせる言い方ばかりしてしまって。決してわざとではないんだが……」
エレクトロの声は自嘲を含み、どこか人間的な揺らぎを帯びていた。アキラは吹き出しそうになり、肩を竦める。
「ふふ、まるで映画の登場人物みたいだ。君がそういうことに憧れてるのは知ってるけどね」
「おい、勘違いしてるな……!? 別にそういう“痛いやつ”とかではないからな!」
珍しく声を荒げるエレクトロに、アキラはたまらず笑いをこぼす。
「はいはい、分かってるさ……と話してる内に着いたな、ここがクレタたちのいる工事現場だよ」
二人の軽口は、鉄と油の匂いが混ざり合った空気に小さな温もりをもたらしていた。
ーーーーーーーーー
従業員の案内で中に入ると既に白祇重工の面々が揃っていた。
社長のクレタが前に出て二人に話し始めた。
「プロキシ、態々来てくれて礼を言う。……白祇重工は、本腰を入れて
クレタの視線が此方に向けられたのを確認したエレクトロは、名乗りを上げる。
「お初にお目にかかる白祇重工の諸君。私は『ヒール』でリーダーを務めているエレクトロだ。マックス企業の信頼を掛けられている中、私の様なならず者をお招き頂き感謝する……!」
「本当に無理を聞いてくれてすまないクレタ」
アキラが頭を下げる。
「……プロキシの紹介じゃなけりゃあ絶対に蹴ってたところだぜ。……まあプロキシには事故で行方不明になった三台の知能重機を見つけて貰ってるからな。何か現場で気になることがあるんだろ?あたしらの邪魔をしないなら好きに探せばいい。治安局にバレても庇ったりしねーからな」
「感謝するクレタ社長。是非とも貴女方に協力させてくれ。なに、その後迷惑をかけるような真似は絶対にしないとも」
内心エレクトロは考える。アキラへの信頼がかなり厚いことに気が付いたためだ。
まあそれで警戒が無くなったわけではなく今もビシバシと感じているが。
エレクトロことエレグの与り知らぬことであるが白祇重工は今回の事件でかなり危機的状況に陥っていたのだ。白祇重工を全面的にバックアップしてくれるマックス企業、彼らが力を貸してくれることでプロジェクトの請負を狙った大手競合他社を蹴散らし、前社長が引き起こした後ろ暗い過去についてもメディアに訴えることで庇ってくれた。
そんな中で三台の知能重機の失踪、焦らない訳がない。もしこの改修工事を失敗してしまえば彼らの信頼を裏切ることになってしまう。そのため、白祇重工は事故の解決に協力してくれたパエトーンへの恩は原作よりも大きなものとなっている。それもヒールという大物を受け入れるレベルで。
まあ、アキラならこのくらい信頼稼げるかと楽観的に結論付けた、ある意味原因であるエレクトロはクレタの様子を窺う。
確か今はプロトタイプの事を巡ってグレースと仲がぎこちない筈だ。アキラに短く要件を伝えエレクトロの視界からクレタが立ち去ろうとした時、視界が勢いよく揺れた。
誰かが自分の腕を掴んでいるのだ。慌てて視線を向けるとそこには、
「こ、これは……っ!この合金、既存の機械用フレームじゃない……!?ううん、それだけじゃない関節駆動部のシリンダー、どういう制御で動いてるんだい!?凄い、凄すぎるよこれは!!」
彼女は機械油の染みがついた手袋をしたまま、無遠慮にエレクトロの手をがっしりと握り込んでいる。その鼻息は心なしか荒く、頬は上気し、瞳は獲物を見つけた捕食者のように爛々と輝いていた。
「ひえっ」
立て続けに飛んでくる質問と歓喜の言葉。エレクトロは思わず悲鳴を上げ、握られた手を左右に引っ張られる。
「おい、グレース……!」
立ち去ろうとしていたクレタが慌てて声をかけるが彼女は聞いていない。興奮のあまり完全に没入していた。
「表層装甲の溶接痕も……違う、これは一体成型!?けど、どこかで……ああ!もしかして中枢フレームもーーねえ、少しでいいから分解させてくれないかい!?最低でも外装だけ!いや、せめて関節一基でも!!」
「ま、待て待て待て!勝手に分解されては困る!(外装がすべてだわ!)」
さすがのエレクトロも声を上げた。掴まれた腕を軽く引き戻すが、彼女の握力は予想以上に強い。
必死に抗議するエレクトロの声も、彼女の興奮には届かない。
そこへアキラが慌てて間に入り彼女の肩に手を置いた。
「グレースさん、落ち着いて!エレクトロは人間と同じなんだ。そんな乱暴に触ったら失礼だよ!」
「う、うるさいぞプロキシ君!こんな奇跡みたいな美しい機械人を目の前にして落ち着けるわけないだろう!?」
必死の制止もどこ吹く風、彼女はなおもエレクトロを観察し続ける。後ろでカスタムショップの雇われが全力で歓喜している姿を幻視した。「イエーイ!」
クレタが額に手を当て、呆れを隠そうともせず声を上げた。
「おいこらグレース!来客に失礼だろうが!その手を離せ!」
工場の広い空間に、社長の怒声が響いた。
暫くして漸く落ち着きを取り戻したグレース……いやチラチラ熱い視線でエレクトロを見つめている。美人でも圧がヤバすぎてビリーやボンプが怯えていた理由を心底理解したエレクトロであるが、一先ず話を進めるよう促す。
ーーーーーーーーー
話を聞くに、
関西弁の熱血漢ハンス、恋する乙女グレーテル、中二病フライデーの機械三重機を各地点に待機させ中継器の役目を果たしてもらう。そしてグレースが信号発信機を起動することでプロトタイプの具体的な座標を見つける計画だ。
エレクトロは分析が完了するまで通信を継続させないといけないという一番危険なグレースの近くにいることを提案した。特に反対意見は出なかった。
「もし彼女に襲われたら私は甲高い悲鳴を上げるから絶対に助けに来てくれ……!治安官を呼んでくれていい」
「何言ってんだお前」
義理姉妹のぎくしゃくした関係を和らげるためのジョークであったがクレタに辛辣に返されてしまった。
そして、作戦は開始された。エレクトロ、グレース、フライデーは一番最初に待機地点に着いたので、他の二台が配置につくまで待つこととなる。
グレースと違い通信端末を持っていないので、待ち時間は大変暇となる。そのためフライデーと会話をして時間を潰すことにする。
彼の前にゆっくりと一歩ずつ踏み出しながら近づき、仰々しく
「ーー我が名はエレクトロ。かつて鋼鉄の深淵に生まれ、電光を纏いし者……伝説の組織『ヒール』の長である……!貴公、さぞ名のある知能重機とお見受けする!」
フライデーは此方を驚愕の眼差しで見つめると、機体を大きく震わせた。
「……!ククク……理解するか鋼鉄の同胞よ。ならば知るがいいぞ。我が名はフライデー、わが師ホルスより使命を受けし『明星の断罪者』!いずれ世界を揺るがす存在となる!」
『……グレースさん。なんかそっちから凄く妙な会話が聞こえたけど?』
アキラが訝しむ声が通信の向こう側から届くがグレースは落ち着いた声で返す。
「ああ、気にしなくていいよプロキシ君。客人が私の子供と戯れてるだけだよ、気にせず作業を続けてくれ……ああもうカメラ持ってくればよかったな」
『おい、聞こえてんぞ!……たくっ、ちゃんと仕事しろよ!』
クレタの怒声が響く中、重機と知能機械人がまるで戦隊モノのヒーローのように見得を切っている。
「おお友よ!我と共にこの地の封印を固めようではないか!」
「是非もない!協力させてくれ、友よ……!」
かなり個人的かつ限定的であるが、ホロウ内とは思えないほど微笑ましい光景が出来上がっていた。
やがて三台の配置が終わり遂にプロトタイプへ信号を送り、対象の座標を探る。
「それじゃあ子供たち、後は任せたよ。頑張って先輩に呼びかけるんだ!」
「頼んだぞ我が友フライデー、明星の断罪者としての力を見せてくれ!」
「ああ、任せてくれ……!」
力強く答え、フライデーは信号を送り始めた。そして結果は直ぐに表れた。
「うん、デモリッシャーの所にリプライ信号が返ってきた……よしよし、三台ともプロトタイプからの信号を受信したよ!」
喜んだのも束の間、三人の周囲を囲うようにエーテリアスが複数体現れた。明らかに様子がおかしく活発化している。
『おいどうしたグレース。そいつぁ何の音だ』
アンドーが訝しむ音が聞こえる。原作では危機的状況であるがこの場所には彼がいた。
「いや、エーテリアスが現れただけだ。つまり私の出番ということだな」
エレクトロは落ち着き払った足取りで前へ進み出る。
そして、光学センサーを輝かせ、低い声で言い放った。
「ーー見ておけ、フライデー。これこそが電光を纏いし者の力だ」
……どうやらまだ演技は継続中のようだ。
次の瞬間、エレクトロの全身に青白い稲光が奔った。
火花が迸り、コンクリートの床を焦がす。
その姿はまるで雷そのものが人型を取ったかのようだった。
「な、なんだこの電圧……!?制御ユニットが反応して……ッ!」
グレースは恐怖よりも好奇心を優先させ、目を輝かせてデータパッドを操作し始める。……一応通信は継続させている。
「こんな放電機能、外部装甲にはついていないから内部から?一体内部構造はどうなって……!?すごい……!すごすぎるよ!」
「おお……!やはり只者ではなかったか!」
フライデーは巨大なアームを振り上げ、まるで観客のように歓声を上げる。
「そのまま、通信を続けてくれグレースさん、高周波だから影響はないだろうが念のため放つ電気は抑えさせてもらう」
エレクトロは稲妻を纏いながら、一瞬でエーテリアスの群れへ突っ込んだ。
放たれた拳が稲光と共に唸り、異形の肉体を灼き焦がす。
背後で光が炸裂し、轟音と閃光の中、怪物たちは次々と倒れ伏していった。
「これぞ――雷鳴の裁き!」
最後の一体に蹴りを叩き込み、爆ぜるような閃光と共に吹き飛ばす。
エーテリアスの群れが沈黙したその時ーー。アキラから焦った通信が入る。
『いや、待ったグレースさん!そちらに強いエーテル反応を示す個体が近づいている!エレクトロから離れないで!』
通路の奥から、さらに巨大な影が現れた。
身の丈三メートルを超える異形、全身が黒鉄の殻に覆われ、体表には赤い脈動が走っている。
ただ立っているだけで工場の鉄骨が軋み、フライデーも思わず息を呑んだ。
エレクトロの両眼が雷光を宿す。
迫りくる巨体に向けて、全身の電流を解き放った。
周囲に稲妻が迸る。
ーーバチィッ!!
轟音と閃光に包まれた中、怪物は電撃に晒されて膝をつき動きが鈍った。
「グォオオッ!?」
エレクトロは稲光を纏いながら一瞬で間合いを詰める。
右手を鋭く構えーー稲妻を纏った手刀を振り下ろした。
「雷閃――断ち!」
閃光が走り怪物の装甲を一瞬で切り裂く。
巨体が揺らぎ、次の瞬間両断された上半身が床に叩きつけられた。
轟音の余韻が消えるより早くフライデーが熱狂の声を上げる。
「ッハーッ!見たであろう、グレース!これぞ我が友による真なる雷帝の裁きだ!」
グレースはというと、やはり好奇心に呑まれていた。もはや溺れているといってもいい。
口元には笑み、瞳は輝き、頬は紅潮していた。明らかにまともではない。
「ど、どうなってるんだい!?あの出力で手刀が刃物みたいに通るなんて!本当に内部機構は……いや、それ以前に電気の制御理論が完全におかしい!?普通は内部の動力機構ごと焼ききれるはずなのに!すごい!本当にすごいよ!」
異形を真っ二つにした静寂の中、歓声と興奮がまだ止む気配はなかった。
煙と火花の残滓の中、立つエレクトロの姿にフライデーは高らかに歓声を上げ、
「クゥ……ッ!動力源が震える!エレクトロ!今この瞬間、我が魂に刻まれたぞ!」
グレースは鼻息荒く、興奮した声で叫んでいた。
「すごい!分解したい!今すぐ内部構造を見せて!ああもう気になって死にそう!ごめん見せてーー!」
「キャーー!」
異形の襲撃が一瞬で片付いた工場跡に、妙な意味で熱のこもった二重の歓声が響き渡っていた。
全力で二人を魅了したエレクトロ。些かやり過ぎたのか、興奮したグレースが工具を持ち出しエレクトロに襲い掛かり甲高い悲鳴が周囲に響き渡る。
「馬鹿姉貴何やってんだ!」
やがて現場に辿り着いたクレタ達から雷が落ちた。
ーーーーーーーーー
クレタの叱責が響く現場では、グレースが珍しく圧されていた。
普段なら飄々と受け流す彼女が、今はただ唇を噛みしめ静かに言葉を飲み込んでいる。それは言葉の節々に自身を案じる思いを感じたからか。
グレースが小さく頭を下げると、クレタの表情も徐々に和らぎ、二人の間に漂っていたわずかな溝が、ゆっくりと埋まっていくのがわかった。
その様子を、少し離れた場所からエレクトロたちが見つめていた。
風が吹き抜け、瓦礫の欠片が乾いた音を立てて転がる。
「……ふむ。どうやらあの二人の間にあった、ぎこちなくも微妙な距離感は消えたようだな。」
エレクトロが腕を組み、満足げに呟く。
アキラが怪訝そうに横目で見やる。
「え、もしかしてエレクトロ、ずっと気にしてたの?だからあんなに場を和ませるようなこと言ってたの……?」
「当然だ。」
エレクトロは胸を張って言い放つ。
「私がただの“中二病”だと思っていたのか?」
「いや、その可能性も……捨てきれなかったから……」
「おい!」
突っ込むエレクトロの声に、アキラは慌てて手を振る。
そのやり取りにアンドーが吹き出した。
「ははは!なんだお前ぇ、案外いい奴なんだな!世間を騒がす組織のリーダーだって聞いて、正直どういう奴かと思ってたが……噂とはずいぶん違ぇじゃねぇか!」
ベンも静かに頷きながら言葉を添える。
「ああ……失礼なことをした。伝聞でしか知らない印象で、勝手にそちらの人物像を作り上げていた。」
エレクトロはしばし沈黙した。
やがて、遠くを見やるようにしてゆっくりと口を開く。
「警戒されるのは当然のことだ。我々は……そうされるだけの
その声音には、疲労と決意が静かに混ざっていた。
だが次の瞬間、エレクトロはわずかに笑みを浮かべ、拳を握り締める。
「……ただ、それでも――少しでも君たちが、我々と心を通わせてくれたら。それでいい。」
ぐっと拳を二人の前へ突き出した。
その仕草は不器用で、けれどどこまでも真っ直ぐだった。
エレクトロの言葉――「過去を背負っている」――が、その場に静かに落ちる。
その一言に、アンドーとベンの表情が僅かに引き締まった。
軽口を交わしていた空気が、真実の重みを帯びる。
白祇重工――。
今回のプロトタイプ捜索の裏には、その名にまつわる黒い歴史が眠っている。
もしもそこに“前代社長”の過去が関わっているのだとしたら――。
彼らが笑って過ごしてきた時間の裏側で、避けては通れぬ影が息づいている。
誰もが、言葉を選ぶように沈黙した。
だがその沈黙を破るように、エレクトロが静かに言った。
「……君たちが今追っている“プロトタイプ”。改めて、この捜索に協力させてくれないか?」
その声には一切の迷いがなかった。
風が吹き抜け、埃が舞い上がる。
彼の瞳は、何かと正面から向き合う者のものだった。
アンドーはしばし黙ってその手を見つめ、やがて笑みを浮かべた。
「――いいぜ。過去がどうだろうと、今ここにいるのは俺たちだ。なら、一緒に掘り起こしてやろうじゃねぇか。」
ベンも深く頷いた。
「……そうだな。真実は、見届ける価値がある。」
三人は静かに拳を突き合わせた。
乾いた音が、ホロウ内の空気の中で小さく響く。
それは誓いの音でもあり、過去と未来を繋ぐ音でもあった。
そして誰からともなく、微かな笑みがこぼれる。
重苦しさの奥に、確かな連帯の温もりが灯った。
ーーーーーーーーー
やがて完全にプロトタイプの座標を割り出す事に成功した。
場所はパイオニア記念広場の中央、白祇重工がかつて請け負っていた施工現場であった。
驚きに包まれる一同であったが調べないことには何もわからない。
事実と真相は違うのだからーー
「着いたぞ。白祇重工が工事を請け負っていたかつての記念広場だ」
現場に向かい見えたのは、モニュメントの崩れそうな部分を目的の知能重機、プロトタイプが支えたまま停止しているという奇妙な状態、全員に疑念と少しの探求心を与える光景がそこにはあった。
周囲を固めプロトタイプの中には小柄なクレタとアキラが先行することになった。二人がやがて焦った声を上げモニュメントから何か手に掴んで飛び出してきた。
「お前ら、来てくれ!プロキシがとんでもねえもんを見つけた!」
「どうしたんだ、社長?」
クレタが手に持っていたのはプロトタイプの引渡指示書であった、金額も日付も会社から消えた帳簿とあの夜クレタが最後に見た父親の日と合致する。
「つまりホルスさんがお金を持ち出したのは、プロトタイプの費用の支払いのため……!」
「ホルスさんが持ち逃げなんてこすいマネするはずねえと思ってたぜ!この引渡指示書があれば、やっと先代の汚名を晴らせるってもんだ!」
白祇重工の面々は引渡指示書の発見に驚きつつも大いに沸いた。前社長の濡れ衣を晴らすことができると。プロトタイプがここにあるのかという疑問は残るが一先ずこの真相を喜ぶことにした。
しかし、クレタの表情は暗いままである。その様子を見たエレクトロがクレタに問う。
「クレタ?どうかしたのか……」
クレタは何かを堪えるようにぐっと拳を握った。
「キャビンの中には大量の弾痕があった。多分ここでは何かやばいことがあったんだ。アイツが……
それは社長の姿というより、年相応の親とはぐれて迷子になってしまった少女の姿であった。
エレクトロことエレグは、彼女の姿に唇を嚙み締める。
「クソッ……!」
憤りを感じているのか近くにあった壁を殴る。彼女の脳裏にはあの日の父親の様子が映し出されていた。
「親父は一体何を……見た?どうして誰にも言わねえでーー」
「クレタ、落ち着いて。その答えはきっと見つかるよ。」
背後からグレースが肩に手を置き優しく語り掛ける。そうだ、彼女は一人ではないのだ。この場には彼女の助けになりたいという仲間たちが数多くいる。論理コアの外部記憶素子の中には当時の映像記憶記録があるかもしれないのだ。グレースは力強くホルス失踪の真相を見つけようと言う。そしてその声はグレースだけではない。
「そっすよ社長、何とかなりますって!」
アンドーと後ろで力強く頷くベン。
「クレタ。『パエトーン』はいつだって君の力になるよ!」
手を取り合おうとする意志を示すアキラ。
「私も、いや我々『ヒール』も力になる……!何時でも呼んでくれて構わない」「ボクもね!」
機械音声の中に強い熱を含むエレクトロ。
「みんな……」
彼女の周りには心強い仲間たちがいる。それがクレタの心を奮い立たせた。
「……ああ、そうだな!社長のあたしがこんなんでどうするんだ……!」
仲間に支えられてこその社長なのだ。決して一人では務まらない。
諦めた訳ではない真相は必ず皆で見つけ出すと決意し、プロトタイプを会社まで引っ張ることに決めた。
ーーそして皆がその指示に従い慌ただしく動き回る中、
エレクトロは静かに目を閉じて指先に微かな電流を集めた。ぱちぱちと青白い火花が散る。彼は手の甲をかざしてナノ導電線を微調整した。
静電パルスが発せられ瞬時に周囲の構造物へと反射していく。
反響波の解析結果が視覚情報として彼のHUDに投影され、温度、金属反応、電磁ノイズまでもが立体的に再構成される。
「……スキャン完了。巨大な反応がモニュメントの下に一つ……やっぱりな……」
淡々とした声に、僅かな皮肉が混じる。
「よし!いいぞ」
アンドーがプロトタイプの足元にロープを括り付け、三台の知能重機が行動を開始する。
モニュメントを支えていたプロトタイプはその場から運ばれる。崩れそうな部分は支えを失い落下するが意気揚々とハンスが受け止め地面に降ろす。
「ハハッ、どんなもんや!」
作業は順調で全員がプロトタイプと共に会社へと足を進める。グレースがクレタを慰め、ベンもアンドーも重機三台を先導していた。
そして突如フライデーが何か重要なことを思い出したかの様に声を漏らす。
「待たれよ、我は重要なことを忘れてはおらぬか……?……っ、そう『封印』!我が師ホルスは我に封印を固めよと……」
全員が怪訝な面持ちで彼を見つめる。しかし彼も首を傾げ、自身なさげに続けた。
「しかし……封印とは一体?」
ーーその時であった。
後ろの瓦礫が崩れ、音に気が付き皆が振り向くと突如謎の手が這い出していたのはーー
ーーーーーーーーー
謎の怪物は瓦礫の山を押し退け、ずるりと這い出してきた。
岩片が崩れ落ち粉塵が周囲の空気に溶けて漂う。
その異形の身体は太陽の明かりに照らされ恐怖の輪郭をはっきりと浮かび上がらせていた。
ぐるりと視線を巡らせた怪物は眼下にクレタ達や知能重機を見つける。
皆、突然現れた怪物に事態を理解できないためぽかんとした顔で目を見開き、声も出さぬまま立ち尽くしていた。
ーー獲物たち。
目の前の生物たちに怪物の本能は昂ぶり、四肢が大地を叩き、喉奥から呻き声が漏れ出した。
襲い掛かるーーその刹那。
ふいに影が差した。
頭上から低く響く声が降ってくる。
「……おい」
ぎょろりと顔を上げた怪物はそこで気付いた。
いつの間にか、自分のすぐ傍にひとりの人影が立っている。
生物らしさを感じさせない全身を覆う艶のある黒曜金属の装甲の体。
その存在は夜闇よりも濃く、しかし確かに怪物を鋭く光るライトで見下ろしていた。
無機質な機械音声が、冷たくも滑稽に告げる。
「おはよう。取り敢えず…
次の瞬間、世界が白に焼き尽くされた。
閃光が空から降り注ぎ、轟音が天地を裂く。
ーードゴォオオン!!
稲妻だった。
幾重もの雷撃が雨のように怪物へと突き刺さり、大地ごと震わせる。
瓦礫は砕け、空気は焦げ、怪物の咆哮は稲妻の奔流に呑み込まれていった。
ーーーーーーー
「うお!?」
「眩しい!」
突如発生した雷鳴に皆が視界と耳を奪われた後、エレクトロの鋭い声が響く。
「全員警戒しろ!特に知能重機三体は距離を取ってーー」
「グィ!?ギャア……!」
それは生存本能が故か、一気に瀕死に追い込まれかつてない程身の危険を感じた謎の怪物は周囲の者を無視し知能重機三体の元へ向かう、そして自身の能力の範囲内に入ったことを確認し間髪入れず発動させた。
三体を巻き込む形で巨大結晶を出現させた。
「って言おうとしたじゃないすか……」
狙いが崩され、エレクトロが呆然と呟くと、突如巨大結晶を突き破り、知能重機三体を取り込んだ怪物が飛び出してきた。
「ゴアアアアアアアアッ!!!」
大気を揺るがす巨大な咆哮、周囲に緊張が走る。
「エーテリアス!?」
「……には見えないけど凄いエーテル反応だ、警戒して……!」
「ぐ……なんだこれ!?」
怪物の放った力の奔流によってアキラの目には違和感が走り、思わず目を抑えた。
轟音が地面を裂き、巨大重機の腕が建物を薙ぎ払った。粉塵が舞い、視界はほとんどゼロへ。
「なんだあの化け物!?重機を取り込んだ?」
「モニュメントの中にこんなモンが……まさか親父はこいつを見つけたせいで……!?」
エレクトロは静かに手を上げると、指先から青白い稲光を散らせた。
「しょうがない、プランBだ……生け捕りは諦める!スキャン開始――」
その電流は触角のように広がり、周囲の情報を拾い上げていく。目の前の対象、サクリファイスの体を透視するように
ーーーーーーーーー
怪物のアームが唸りを上げ地面を叩き割る。
衝撃波が石畳を波打たせ瓦礫が爆ぜるように宙を舞った。
全員が散開し、その攻撃を躱す。
次いで重機の尾の様な部分が閃き、収束レーザーが地を焼いた。
「うおおお!?なんて相手だ!こんな相手は初めてだぜ……!」
アンドーはその瞬間、身をひねって跳び退る。その額には冷や汗が滲んでいた。
アンドーの装備している兄弟とは比べ物にならない巨大なドリルが唸りを上げ回転と共に火花を散らす。
「ぐぅ!?みんな下がれ!」
ベンが巨大なタンピングランマーを盾にして前線を張る。もう片方の幾重にも重なって蠢く、回転するチェーンソーが装着されたアームが横から無防備となった彼に迫る。
ーーーしかし、稲妻が奔る。
地を裂くような衝撃が周囲を貫く。
電流は蛇のように這い、アーム群の根元を正確に撃ち抜いた。
バチィィッ!!
高電圧の衝撃が伝わり、暴走重機の動きが一瞬止まる。チェーンソーが空転し、ドリルの回転が鈍る。機体内部でスパークが散り電子制御系統が混線を起こした。
「喰らいやがれ!」
その隙にクレタが特攻し、ハンマーを怪物の胴体に叩きつけ、グレースが電気グレネードを投げ入れる。
まさにエレクトロと機械系の敵の相性は最悪である。
重機を取り込んでも有利に立つことは無い、そのことを理解した怪物は一番の脅威を排除することに決めた。
次の瞬間、轟音。
多数のミサイルが吐き出され、煙を引く弾頭群が尾を引いてエレクトロへ迫る。
十数発、いや数十。
白い軌跡が蜘蛛の巣のように広がり、エレクトロを完全に包囲する形で降り注いだ。
しかし彼は動かないまま手をかざす。
指先から微細な電流が走り、空気がひずむ。
バチ、バチバチッ――!
「……誘導、開始」
瞬間、周囲の電磁場がねじ曲がった。
エレクトロの身体を中心に見えない磁界が形成される。
ミサイル群の誘導信号が錯乱し機体の制御チップが混線を起こした。
弾頭たちは軌道を失い、空中で互いに衝突し始め、彼を避けるように周囲へと散らばり爆発した。
「すっげ……!」
これには全員驚嘆せざるを得ない。『ヒール』のリーダー、まさにその姿は“電気の支配者”であった。尤も、もし正体がバレてしまえば全員が今以上に驚くことになるだろうが……。
ーー金属を噛み砕く甲高い音が響き渡った。
怪物の身体からは、取り込まれた知能重機のパーツが時折ぎしぎしと軋むように動いていた。
まるで助けを求めているかのように。
エレクトロのセンサーがそれを捉え、無機質な声に熱が滲んだ。
「……中にいる彼らは、まだ生きている。怪物が瀕死だったからだな……完全に同化したわけではない。ならば私は彼らを……友達を救いたい」
「はぁ!?あんな化け物に取り込まれたのに救うだと!?」
クレタが声を荒げ、ベンも難しい顔のまま告げる。
「エレクトロ、言っちゃ悪いがリスクがでかすぎる。倒すのが先だ!」
「……俺も同意だぜ」
アンドーが悔し気に歯を食いしばる。
「アイツの動きはもう重機のそれじゃねぇ!兄弟ごと砕くしかねぇだろ!」
だがエレクトロは譲らなかった。瞳に宿る稲光が鋭さを増す。
「私の放つ電流は、制限すれば絶縁コーティングに守られた重機には通らず怪物だけを撃ち抜ける。奴が弱った隙に
エレクトロの言葉に心当たりがあるのか、はっとした顔のまま動きを止めるアキラ。
一瞬沈黙が落ちた。
グレースが唇を噛み拳を握りしめる。
「……わたしも、あの子たちを壊したくない。無茶かもしれないけど……エレクトロ、やってみて!」
クレタは額を押さえ、深く溜息を吐いた。
「ったく……いいだろ。やってみろ。ただし失敗したらすぐに叩き潰す。分かったな……!」
「もちろんだ」
エレクトロは頷き、前に出る。
「じゃあ、俺らは時間を稼ぐってことだな!」
アンドーが叫び、左腕のハンマードリルを叩きつけるように構えた。
「上等だ! 来いよ化け物ォ!」
その横で、ベンが静かに立ち上がる。
「ならば俺も協力しよう。プロキシとエレクトロは何か確信があるんだろ?そもそもあの重機たちは会社の物だ、取り返さなくてはな……!」
次の瞬間、怪物のアームが振り下ろされる。
エレクトロは両腕でそれを受け止めた。
轟音と共に大地が沈み込む。
常人なら一撃で潰されるはずの衝撃。だが、彼は人間を超えた力でそれを押し返し、稲光を纏った姿で吼えた。
「今だ!各員、時間を稼げ!」
その声に呼応するように、仲間たちが一斉に動き出した。
死闘は、ここから本番を迎えた。
ーーーーーーー
仲間たちの猛攻、徐々に怪物の動きが鈍くなっていく。アキラが後方から指示を出す。
「皆!もう少しだ、油断せずに続けてくれ!」
怪物は焦っていた、自身より体格が劣る者たちに一方的に攻撃され追い詰められていることに。
このままでは負けると確信した怪物は怒りと焦燥が混じった感情を原動力にして力を爆発させた。
「……!?エーテル活性が変化してーークレタ避けろ!」
轟音。
怪物の腕が振り抜かれ、地面が砕け散る。
「クレタ、下がれッ!」
エレクトロの警告と同時に衝撃波が襲う。
クレタの体が宙を舞った。
辛うじて武器を前に出して防御したが避けきれなかったーーそう思った瞬間世界が静止したかのように感じた。
視界が反転し、次の瞬間には硬質な腕の中に抱き留められていた。
稲光を纏ったエレクトロが空中で彼女を受け止めていたのだ。
瓦礫を突き破り遠くの地面に着地すると同時に爆風が背後を吹き抜け、二人はそのまま戦線から外れた場所に避難した。
「わ、悪ぃ油断しちまった……!だ、大丈夫なのか……みんなが、あのままじゃ!」
クレタが立ち上がろうとする。顔には焦燥が浮かんでいた。
しかしエレクトロは片腕を軽く上げ、彼女を制した。
「落ち着け。組織の長たる者、まず信頼すべきは仲間だ」
その声は機械的でありながら、奇妙に温かい。
そしてヘルムの奥で、わずかに口角を上げたような仕草を見せた。
「彼らは私たちが信じた者たちだ。……そしてもう一人、頼れる仲間がいる」
「仲間……?」
クレタが首を傾げた瞬間ーー戦場の空気が震えた。
瓦礫の間に漂う空間が歪む。
金属音がまるで空気を裂くように響いた。
透明だった何かがゆっくりと輪郭を現し、四本のアームが曇天から漏れ出る光を反射する。
現れたのはーーー知能機械人《オクトパス》。
「オ、オクトパス!?なんでここに」
「またカワイ子ちゃんかい!?」
全員が驚き歓喜する中、全身を黒鉄で包み四本のアームがまるで生物の触手のように蠢いていた。
光学迷彩が完全に解除されると同時に、低く唸るような機械音声が戦場に響いた。
「……お前が取り込んだ三体、どれもグレースさんの大事な子供だ……!」
「なんかすげえ切れてねぇか……?」
アンドーが呟いた通り、その声には怒気と冷徹さが混ざっていた。
背のアームが一斉に展開され空気を切り裂く。
「それを我が物顔で振るうなんてーー絶対に許さない!」
次の瞬間、オクトパスが地を蹴った。
アームが地面をえぐり、稲妻のような速度で怪物の背後へ回り込む。
鋼鉄の腕が唸りを上げ怪物の肩部を捕らえた。
金属と金属がぶつかり合う衝撃音が響き渡り、火花が散る。
「グオオオオ!?」
一人減らしたかと思えばまた一人戦力投下され、怪物は堪らず悲鳴を上げた。
その光景を遠くから見つめながら、エレクトロが呟く。
「……ほらな。言っただろう、信じろと。今は我々が出来ることをしよう…!」
クレタは言葉を失い、ただその光景を見つめていた。
ーーーーーーーーー
戦場の轟音が遠くに霞んでいく。
瓦礫の影に隠れた場所ーーそこに、クレタとエレクトロの姿があった。
外では、仲間たちが怪物の動きを抑えている。
「さっさと返せこの野郎!!!」
空気を焼く音、金属の軋む音、オクトパスの怒号。だがこの場所だけは不気味なほど静かだった。
静けさの中、巨大な影が横たわっている。
それは今回発見することができた知能重機のプロトタイプ。
その装甲は浸食を僅かに受けている。
クレタは土まみれの手で開いたコクピットのハッチに腰をかけ、未だ弾痕が残る内部へと身を滑り込ませた。シートは擦り切れ、制御スティックの一つにはテープが巻かれている。計器類はほとんど消えていたが、彼女は慣れた手つきでスイッチ類を撫で、コアの位置を指先で確かめた。
「よかった、まだ……生きてる。中枢フレームは死んでないみてぇだ」
彼女の声は低い安心に満ちていた。言葉の端に混じる疲労がむしろその確信を強めているようだった。
エレクトロは一歩引き、手のひらに小さな雷を纏わせた。細い青の光が指先を舐め、静かに震える。周囲の空気がかすかに振動し金属の匂いの中にオゾンの冷たさが差した。
「動きそうか?」
クレタは計器の端子に触れ、そっと笑った。
「ああ、ちょっと時間が掛かるかもしれねえが……」
エレクトロは迷うことなく片手を振り上げた。スパークが指先から放たれ、プロトタイプの外装に触れると、銀色の塗膜に小さな星のように火花が散った。衝撃というよりも、互いに呼び合う二つの力が結びつくような感覚——その瞬間、古い機械の腹の奥で微かな鼓動が始まった。
「うお、動いた!」
機械の胸部で低い唸りがこだまし、油圧系統の隙間から古いオイルの匂いが立ち上る。細いランプがひとつ、ふたつと点灯し、コクピットのスクリーンに断続的なラインが走った。ダッシュパネルの文字はかすれていたが、基幹フレームの温度と出力曲線は、確かに応答している。
「無理やり起動させて悪いな。……クレタ、あの怪物は重機を取り込んでしまう能力を有する様だ。」
クレタの顔に、怒りと焦りが混ざる。
「成程な、プロトタイプまで取り込まれちまったらまずいことになる……」
「問題はない。つまり浸食される前に圧倒的火力で片を付ければいい」
彼の言葉には確信と危うさが同居していた。彼はプロトタイプの外部端子に電気を流すことで触れ、機体に指先を軽く差し込む。金属の接触面で小さなアークが走り、二人と機体を結ぶかのように光が流れる。
「俺が外付けの動力源になって出力を高めてやる。お前が動くための電流を全部流し込む」
クレタはその言葉を聞き、わずかに肩をすくめる。言葉にできないような信頼がそこにはあった。
「……クレタ、心配はいらない。それに言っただろう?力になると。……尤も、会社所有の重機三台を奪う下手人は社長としても放ってはおけないだろうが」
クレタは鼻で笑うと片手をハンドルにかけながら、ふと目を細めた。
「っは、確かにな……あいつには……白祇重工が誇るホロウ用知能重機の凄さってのを教えてやらねえとな……!」
エレクトロの目が柔らかくなる。
「よし、覚悟はできたみたいだな。……そういえばプロトタイプは名前ではないだろう?こいつの名前を教えてくれないか?——共に戦ってくれる戦友の名前は知っておきたい」
コクピット内部の光源の明滅がクレタの顔をやわらかく照らす。彼女は視線を遠くに泳がせ、声を少し落とした。
「こいつは……そうだな、
その名前が空間に溶けると、クレタの胸の中に父の姿がふっと蘇る。油で手が黒く染まった指先、此方を見つめる眩しい笑顔、そしていつも口にした決まり文句
——「名前を呼べば応えてくれる……!」。
思い出は悲しみではなく、重みと温度を持って彼女を支えた。
エレクトロは静かに頷き、彼女に向かって言った。
「……いい名前だ、教えてくれてありがとうクレタ。……我々は組織は違えど同じ上に立つ者だ、今現在も戦ってくれている仲間の元へ向かうぞ……!」
「……おう!」
機体の関節が音を立ててほぐれ、ゲローイの腕が地面を掴むようにゆっくりと持ち上がる。
組織の長である二人が再び戦場へと向かう。二人の間には親友の様な絆が出来上がっていた。
準備は整った、エレクトロは自身の計算を思い浮かべながら遠くにいるサクリファイスを睨む。
ホルスが娘に残した上限突破機能、自身の外付け動力による底上げ。
取り込んだ知能重機を引き剥がした後、通常時の
やっぱ電気を使うキャラは戦闘の華があるな