転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活 作:フライパンソルジャー
お気に入り登録4000突破ありがとうございます!!!
始めた当初はこんなに読んでくれる人がいるとは思いませんでした!執筆頑張ります!
人を見かけと雰囲気と状況だけで判断するんじゃねぇっ!!
昼下がりの風がやわらかく頬を撫でていく。
オフィスに積み上がった書類の山からようやく逃れるようにして、エレグは昼のわずかな休憩時間を外で過ごすことにしていた。
手にしているのは近くの店で買った焼きたてのパンと温かいスープ。
大企業のCEOとは思えぬほど質素な食事だが、今の彼にとってはこれが何より贅沢だった。
車のエンジン音が遠ざかり、やがて波の音だけが耳に残る。
町の喧騒から少し離れたこの海辺の小さな公園。ここ最近の彼にとって唯一の”行きつけ”と呼べる場所になっていた。
「……おや?」
その日いつもの海辺の公園には珍しく先客がいた。
ベンチの端に腰を下ろしていたのは黒い帽子を被り、スーツを着込んだ男性。
金色の髪が海風に揺れ、横顔はどこか穏やかな表情でどこか遠くを見つめているようにも見えた。
「失礼、こちらの席をお借りしても構いませんか?」
「ええ、どうぞ。ちょうど出ようと思っていたので……」
エレグが反対側のベンチに腰を下ろすと彼はちょうど立ち上がった。
入れ違うように歩き出すその背中にほんの一瞬、エレグの視線が吸い寄せられる。
ふとした拍子に彼が振り返った。
眼鏡から窺えるその瞳がまっすぐにエレグを捉える。
「……あなたもお仕事。頑張ってください」
エレグは軽く頭を下げた。
「ありがとうございます。良い午後を」
彼もまたニコリと笑みを返す。
そのまま公園の外へと歩き、もう彼の姿は風の中へと溶けていった。
「………」
その姿を無言で見つめたままエレグはしばし静かな余韻の中に佇んでいた。
潮の香りとともに風がスーツの裾を揺らす。
エレグはベンチに座ったまま紙袋の中からパンを取り出した。
忙しない日々の中でこの時間だけは誰にも奪われない。
(……せめて昼だけでも人間らしく)
そう思いながら彼はゆっくりと噛みしめる。
パンの素朴な味が乾いた心にじんわりと染みていった。
――ブブッ!
ポケットの中で突然スマホが震えた。
短い振動音が静かな海風に溶ける。
エレグは反射的に画面を確認する。
呼び出しかと思ったが表示されたのは
「……ふむ」
自分の連絡先を知る者は限られている。
無言のまま数秒画面を見つめた後、エレグは指先で通話ボタンを押した。
「……こちら、エレグ・マックスです。どちら様でしょうか?」
耳に届いたのは低く加工された声だった。
機械的なノイズが混じり、男女の区別すら曖昧。
『驚かせて申し訳ないエレグさん。怪しい者じゃありません』
ボイスチェンジャーの類と彼は瞬時に判断する。
『ただ、少し質問をさせてほしいことが一つ……』
穏やかな調子。しかし妙な違和感がある。
波の音だけが遠くで聞こえる中、エレグはゆっくりと息を吐いた。
「……ずいぶんと回りくどい登場ですね」
薄く笑みを浮かべる。
その笑みには皮肉と警戒、そして興味がないまぜになっていた。
「とても怪しいですが興が乗りました。いいでしょう、何が知りたいんです?可能な限りお答えしましょう」
『“ダイナ・アレックス”という人物について、お聞きしたい』
その名が口にされた瞬間、エレグの瞳がわずかに細められた。
マックスPMC、彼の企業傘下にある民間軍事会社。その指揮官の名前だ。
(ああ~!?くっそ忙しい今にですかい!もっと早く掛けてくれれば会わせられたのに……!)
だがその反応は一瞬。すぐにいつもの穏やかな口調へ戻る。
「申し訳ありませんがその質問には答えることができません。……あいにく、見ず知らずの人間に関係者の個人情報をお話しするわけにはいかないので……」
声には冷静な断固さがあった。
通話の向こうで、一瞬の沈黙。
やがて機械的なエフェクトの中から落ち着いた声が再び響いた。
『見ず知らずの人間……か。……では、まずは僕の正体を明かしましょう』
ノイズが一度だけ高く鳴り、声の質が少し変わる。
それでも依然として加工はされていたが、わずかに“人”の温度が戻る。
『――パエトーン。そう名乗ればあなたには通じるはずだ。そしてそれを裏付ける証拠としてあの日のヴィジョンの爆破解体阻止の裏側も話せる』
エレグの指がわずかに止まる。
過去、彼が極秘裏に依頼した任務を完遂したプロキシの一人。
そしてその任務には兵士、ダイナ・アレックスも関わっていた。
電話の向こうにいる相手は邪兎屋と猫又、そしてヒールと共にホロウで成し遂げたことをエレグに告げた。
「……なるほど(……知ってるけども)」
エレグの表情がゆるやかに変わる。
わずかに口角が上がり、警戒の色が消える。
「あなたがかの“パエトーン”ならダイナ指揮官のことを気にかけているのも納得です」
風がまた吹き抜け、遠くでカモメが鳴いた。
画面の向こうの沈黙がどこか懐かしい呼吸のように感じられる。
『ええ。あの時の彼はとても印象的でしたから。ただ、任務中はまともに会話をする余裕もなくて。だからこそ、こうしてあなたに繋がせてもらいました』
電話の向こうの声にはほんのわずかな笑みが混じる。
「はは……これは参ったな。つまりあなたは、私に“貸し”を作った人物ということになる。ならば快くその恩を返すために彼のことを話したいところですが――」
彼は一拍置いて軽く息をつく。
「――あいにく、今は時期が悪いのですよ(本当にすまん……!)」
わずかな沈黙がその場を包む。
『……時期が悪い、とは?』
パエトーンの声が静かに問いかけた。
淡々とした口調だがその奥に探るような色がある。
エレグは少しだけ視線を海へ向けた。
陽光が波間で反射し、細かな光の粒が揺れている。
「(ちょっと……、どうにか違和感なく断らないと……!)――今は市政選挙の真っ只中なんですよ。新エリー都は警備体制が過去に例を見ないほど強化されています」
スマホ越しに短い沈黙。
エレグはその間に一息つき、落ち着いた声で続けた。
「恩人に礼を返せるせっかくの機会を断るのは心苦しいのですがね。この時期にマックスPMC、私の民間軍事会社の関係者を裏の者と会わせるとなるとさすがに監視の目が厳しすぎる。政治的にも好ましくない」
彼は手元の紙袋を閉じながら柔らかい口調で言葉を締めた。
「それに……マックスPMCのメンバーは私の傘下の中でも特に機密性の高い部門です。指揮官であるダイナに関する情報は内部でも限られた者しか扱えません。あなたが相手でも例外ではないのですよ」
海風がまた吹き抜ける。
その声の余韻には静かな誠実さと越えられない一線の確かさがあった。
「……ですが、あくまでも“今は”ということです」
エレグの声は柔らかいまま、しかし確信を帯びていた。
「すべてが片付いた後、その時は必ず”貴女”と彼を会わせることを約束します」
言葉を終えるとエレグはふっと笑みを浮かべた。
だが次の瞬間、彼の視線がふと横をかすめ、そしてゆっくりと後ろを振り向いた。
「……それで構いませんね?」
声の調子は穏やかだがどこか鋭い。
誰に向けた言葉なのか一瞬わからなくなる。
続いた一言が空気を裂いた。
「――元”ライアー小隊”の狙撃手さん?」
「………っ!?」
海風が一瞬止まった。
ベンチの後ろ。木陰の影がわずかに揺れる。
そこにいたのは一人の女性。
その名を“トリガー”という。
驚きの息が電話の向こうからも漏れた。
『……まさか』
パエトーンの声にわずかに混じる動揺。
エレグはゆっくりとスマホを見やり、表情を変えずに淡々と口を開いた。
「私のスマホには複数のアドレスが登録されています」
パエトーンの息がわずかに止まる。
エレグは構わず、静かに言葉を重ねた。
「この番号は新規追加したものです。……“あの時”、クレタ社長にのみ教えたはずの番号」
海風が吹き抜け、木の葉が小さく揺れた。
エレグは目を細めてどこか遠い記憶を探るように視線を落とす。
「白祇重工の現場視察では見ることのなかった、見覚えのない“ボンプ”が事件現場にいたことには初めから気が付いていました。オレンジ色のスカーフを巻いた兎耳のボンプ。そして……不自然なほどこちらを観察していましたね?」
スマホ越しにかすかなノイズが混じる。
「……あのボンプがあなたでしたか。なるほど、納得がいきます」
軽く息を吐き、わずかに笑みを浮かべる。
「あなたの視線の高さならアドレスの記入された紙を覗くことも可能だったでしょう。……ボンプの視線は常に低い位置から正確に角度を取れる」
淡々とした声。
「まだ終わりませんよ。――その特徴を持つボンプの情報をこちらでも少し調べてみました」
『……っ!?』
「六分街のビデオ屋に勤めているボンプ……ですね。兄妹ふたりで運営しているあの小さな店。来店客の顔ぶれもなかなか特殊で驚きました」
彼は一拍置いてから、ふと視線を横に流す。
「……ああそういえば先ほど公園ですれ違った男性も見覚えがあります。あの方は確か情報屋でしたね。仕事柄、裏の事情にも詳しくないとすぐに他企業の刺客に刺されてしまいますから」
電話の向こうでパエトーンが小さく息を呑んだ。
沈黙が重く緊張の色を帯びていく。
『まさか、そこまで……』
エレグは肩をすくめるように笑った。
……今、彼はアキラたちから途轍もなく警戒されている。
だがそれは決して意図したものではなかった。背後に気配を感じて「誰かいるな……トリガーさんか?」と何気なく振り向いたところ本当に彼女が立っていたので思わず名前を呼びそうになり、慌てて所属名を口にしてしまう。
しかしその一言が「なぜ知っているのか」という疑念を招くかもしれないと考え、彼は慌てて“情報通のCEO”として振る舞うことで取り繕おうとした。
違和感は消せたはずだった――が、結果的には逆に不信感を深めてしまったのだった。
「ああ!勘違いしないでいただきたい。あなた方に対して不利なことは決していたしません。状況が整い次第……約束通りお会いしてダイナ指揮官についてお話しします」
エレグの声は落ち着いていたがどこか揺るぎない圧があった。
パエトーンはわずかに息を吐き、納得した様子で頷く。
『……わかった。今はそれを信じるよ』
「ええ、ありがとうございます」
静かに通話を終えるとエレグは腕時計に目をやった。
昼休憩ももう終わりの時間だ。
ゆっくりと立ち上がり、トリガーに軽く会釈する。
「失礼します」
「っ………」
トリガーも静かに応え、木陰から姿を外す。
立ち去ろうと歩き出すエレグにふと振り返るような声が届く。
「――彼は!……ダイナ・アレックスは今、無事なのでしょうか?」
声は丁寧だが圧を感じさせる。
エレグはゆったりと立ち止まり、視線(と思わしき位置)を合わせる。
「もちろんです」
微笑みを交えつつ、しかし威厳を崩さず。
「”あなた方と同じように”私も彼に助けられています。いつか必ず会わせる……その約束は守ります」
その言葉を最後にエレグは静かに海風の中へ歩みを進めた。
背後では公園の木々がそよぎ、波の音が穏やかに広がる。
しかし、そこには確かな約束とこれから訪れる新たな動きの気配があった。
その後、公園を離れて周囲に誰もいないことを確認するとエレグの表情がふっと緩んだ。
先ほどまでの緊張感や知的な鋭さは跡形もなく消え去り、空気は一変する。
「ああ~……時間がないからつい突き放す感じになってしまった……。理由もしっかりしてるし、なんだかんだ誠実に対応したし……アキラやトリガーさんも納得してくれるかな……?」
ダイさんは現在バレエツインズから回収して雇用したばかりの新人達の教育に熱を上げていることだろう。自分もこれから郊外で忙しくなる。
肩を軽く落とし、ゆっくりと歩を進めながら彼は小さく呟いた。
「……もう、仕事すんのやだな」
その声には昼下がりの疲れと肩の重みがにじむ。
一瞬だけ巨大企業のCEOではなく、くたびれたサラリーマンのような影がそこにあった。
誰にも聞かれないことをいいことにエレグは背中を丸めてオフィスへと戻る道を選ぶ。
公園の風はまだ穏やかに吹いているのに彼の心は少しだけ日常の重みに押されていた。
ーーーーーーー
【ゼンゼロ考察・感想スレ part19】
1: 名無しのプロキシ
クロエちゃんとカリンちゃんの再登場キタ――(゚∀゚)――!!
2: 名無しのプロキシ
3章を終わらしたけど、もうヴィクトリア家政が個人的にトップ陣営なンナ!?
3: 名無しのプロキシ
わかる!メイドと執事という最高にオシャな高級エージェント集団ンナ!
4: 名無しのプロキシ
獣人メンツに心撃ち抜かれました!クロエは初期登場から言わずもがな!オオカミ執事とサメメイドとか立て続けに殺しに来てるやンナ!
5: 名無しのプロキシ
俺たちがホロウ内を案内するはずだよな?いつの間にかスマートにエスコートされててビビったんだが?
6: 名無しのプロキシ
気が付いたら貴族階級になっていたという事実ンナ
7: 名無しのプロキシ
全員好きだから有り金全ブッパしてお迎えするわ!もうこれで終わってもいい……!
8: 名無しのプロキシ
わい最近このゲーム始めたんだけどヴィクトリア家政マジで神がかってるな……
特にクロエ、あの完璧メイド感。戦闘中の動きの美しさ、礼儀正しさなのに戦闘でのギャップが最高すぎる。戦闘シーンで見せる「静と動」の切り替えがたまらんわ。
9: 名無しのプロキシ
わかるわかる!しかもクロエってただ強いだけじゃなくて、プレイヤー視点だと頼もしすぎるんだよね。メイドとしての丁寧な立ち振る舞いは崩さないところに心持ってかれたわ
10: 名無しのプロキシ
ヴィクトリア家政の他のメンバーもヤバい。
リナさんはマジで母性の塊だわ、皆に頼りにされて全体が締まる感じ。
11: 名無しのプロキシ
リナさんのエージェント秘話は不覚にも泣かされた
うぅ、彼女に包まれたいンナ……
12: 名無しのプロキシ
お巡りさんこいつです
13: 名無しのプロキシ
カリンちゃんがこの陣営の末っ子感あるな……やっぱ可愛いもんな、安心したぜ!
14: 名無しのプロキシ
なお、彼女が一番物騒な武器を振り回してるというギャップよ。おどおどしながらもバカでかいチェンソー振り回してるとか……!
15: 名無しのプロキシ
無気力なエレンもすこ。彼女は一体その身にどれ程の属性を詰め込んでいるというのか!黒タイツ!尻尾!拘束具の様な装飾!ギザ歯!ダウナー!ほくろ!髪の内側のピンクカラー!塩対お――!
16: 名無しのプロキシ
実利主義的なスタイルに加え驚異的なスタイルはもうお迎えするしかないンナ!!
17: 名無しのプロキシ
ライカンさんとか唯一の男でマジ裏山だけど物腰やわらかな敬語ケモ執事という強すぎる属性が全てを許してくれる。
18: 名無しのプロキシ
エージェント秘話やってきたけど、これ恋愛ゲームだったっけ?
19: 名無しのプロキシ
あなたクロエさんの兄ってマジすか!?昔は義賊の怪盗やってたみたいだし、そんなん絶対見たいんだが!?
20: 名無しのプロキシ
かつての仲間ぽい少年とロリクロエちゃんが出てきて盛大に萌えたンナ!ライカンさんの荒々しい口調もギャップだったけど、幼いクロエちゃんがマジで最高過ぎたンナ!お兄様呼びは萌え禿散らかすンナ!
21: 名無しのプロキシ
CV福〇潤の少年「ライカン。お前まさかやっぱここがイマイチなんじゃ……」
ライカン少年期「うるさい!」
ロリクロエたん「まあまあ、お兄様方。仲がよろしいのは結構ですが、その辺で……」
二人「「仲良くない!」」
何だこれ……最高か……?
22: 名無しのプロキシ
その後クロエがライカンの代わりに完璧な台詞を披露したけど、翼が特徴として強すぎて変装しても意味ないって駄目だし喰らってしょんぼりしてたの可愛すぎた!この頃は表情がはっきりしてるな、おい!
23: 名無しのプロキシ
小さい頃からこの丁寧口調なのか。でも子供らしさも見えてホンマすこ!
24: 名無しのプロキシ
やっぱ、クロエよな!月をバックにした美しすぎるラストムービーの飛行もそうだけどヴィクトリア家政を掻きまわしてる天然ぽさがマジでヤバみ!
25: 名無しのプロキシ
ストーリー中クロエの逆ハー状態だったんだが!?いいぞもっとやれ!完璧メイドの総受けを見せてくれ!
26: 名無しのプロキシ
カリンとエレンがクロエを取り合う光景が目に浮かぶンナ……!そこにお客様のレインを添えてヘブンを創設しよう……!
27: 名無しのプロキシ
ストーリー道中、スタイリッシュにシャッターをギリギリで通過するのは惚れますて……!その後現れたエーテリアスにも美しい舞で返すとかマジでキャラとしての完成度がレベチだンナ!
28: 名無しのプロキシ
動きの全てがお美しい。制作陣の翼の作りこみがえぐ過ぎるなこれ!?
29: 名無しのプロキシ
最後アキラとビリーの後ろよく見たら、ちゃんと最後ヴィクトリア家政の全員がレインとクロエに反応してて草。ホンマ罪な子ンナ
30: 名無しのプロキシ
ついにクロエが実装されたけど皆どこまでやり込んでる?あの完璧メイド、ただの補助キャラじゃないよな。戦闘でも指揮でもバッチリだし、セリフもキャラ立ちまくり!(幻覚)
31: 名無しのプロキシ
重症状な者がおられる……。運営よ、早く彼女を実装させてくれんか!!
32: 名無しのプロキシ
マジそれな!お預けは辛いンナ!!
33: 名無しのプロキシ
まさかかつてのモッキンバードの少年が登場するまで実装無いとは言わんよなぁ!?頼むで運営!
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83: 名無しのプロキシ
……そういや『ネズミ色のブルース』と追加でエレグ(黒幕)に触れるイベあったけど、マジで怖かったんだが。急に畳みかけるやんお前。
84: 名無しのプロキシ
知らん奴からの急な電話のはずなのに終始エレグが冷静すぎてこちらの心が追いつかンナw
85: 名無しのプロキシ
恩人とか抜かしながら此方の正体を丸裸にしてきたんだが!?
86: 名無しのプロキシ
ええ……ビデオ屋のことエレグにバレちゃったんだけど大丈夫なん?
羊飼いのおっちゃんは……うん、いい人だったよ
87: 名無しのプロキシ
殺すな、殺すな。
88: 名無しのプロキシ
まああの人がエレグの居場所伝えてきたからな……。まさか白祇重工で得たアドレスの件をここで片づけるとは……
89: 名無しのプロキシ
でも謎は何も片付いてないというね。何ならよりエレグへの疑念が深まったんだが!?追及を諦めたのは向こうがこっちの情報を全て開示してきたことへの恐怖からだしな……。こいつ怖すぎるンナ!
90: 名無しのプロキシ
「元ライアー小隊の狙撃手さん?」って一言で緊張感爆上げしすぎンナ
91: 名無しのプロキシ
てか、アキラたち11号のエージェント秘話で出てきたトリガー呼んでたんかい!?また声だけの登場で姿が気になり過ぎるンナ!
92: 名無しのプロキシ
そのトリガーの位置も把握してたみたいやし……ホンマ何もんだよあのCEO
93: 名無しのプロキシ
まじで1章の最後と印象が違ったんだけど!?裏の事情に詳しいって……やっぱ清廉潔白なCEOは演技だったんか!
94: 名無しのプロキシ
まあ立場的に仕方ないかもしれんけど、裏があるのは間違いないンナァ……。こいつ約束守ってくれるんか?
95: 名無しのプロキシ
いや流石に嘘だろ。正直に話すと思えん。なんか知らんけど1章で兵士って名乗ってたダイナもこれもう闇落ちとかしちゃってんじゃない?
96: 名無しのプロキシ
2章でもそうだけど結構一緒にいるよな。エレグが黒幕なら絶対に立ちはだかってきて主人公側のSAN値を削る展開になりそう
97: 名無しのプロキシ
うわぁ……それでダイナの後ろにいるエレグがこっちを見下しながら笑ってるというね……。余裕で想像できたンナ。
98: 名無しのプロキシ
そういえばそろそろVer.1.2が公開されるな。エレグの企業が郊外で何かしてるって街のあちこちで話題になってたし大きく関わってきそうンナ……!
99: 名無しのプロキシ
容量が増えるがしゃあねぇ!アップデートできるように別のゲーム消してくるぜ!
100: 名無しのプロキシ
先行公開映像とかもうすぐだし、めっちゃ楽しみンナ!
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そして間もなく、その瞬間は訪れた。
全世界のゼンゼロプレイヤーが待ち望んでいたその映像の視聴を行う。
Ver.1.2 PV「ツール・ド・インフェルノ」
「――テレビの前に!ラジオの前に!それに会場にいる、熱き燃料バカたち~!」
明るい女性の声がマイクを通して流れ、軽快なエコーが弾ける。
画面には砂に半ば埋もれた建物群。かつてのショッピングモールの残骸、看板だけが風に軋むガソリンスタンドなどの郊外の映像が。
ひび割れた道路を砂埃が這うように流れていく。
カメラが地面を舐めるようにパンしながら倒壊した道路の支柱を通り抜ける。
「みんな大好きジョリー・ジョニーだよ!30年前か40年前、はたまた50年前!炎の海に落っこちた英雄が奇跡の帰還を果たした!」
陽気な声が響き渡ると同時に画面がフラッシュ。火山へと落ちていく一台のバイク。
そして一転、砂を巻き上げるバイクの群れが荒野を駆け抜ける。
照り返す陽光が大地を真紅に染め、砕けたガラス片が風に舞って、血のような輝きを散らす。
「そして、もうあと何分かしたら……新たな英雄が再び『ツール・ド・インフェルノ』で快挙を成し遂げるの!」
音楽が跳ね上がり、画面がテンポよく切り替わる。
特徴的な帽子を被った金髪の少女、ルーシーが背中の後ろでバットをくるりと回しその金属音が乾いた空気を裂いた。年齢に不相応な鋭い瞳が一瞬カメラを射抜く。
次に黒と赤を基調とした服に身を包み、背には無骨な火炎放射器を担ぐ女性。ヒールで地面を軽く叩き、発射口からちらりと炎の残滓を吐き出す。
続いて、剣を構えた緑髪の女性の後ろ姿が映し出されたかと思うと既に黄砂に覆われた道を映していた。
「ルールはシンプル!先に“儀式”をやり遂げた猛者が、すなわち次の”覇者”だ!!」
一瞬の轟音。
巨大な影が画面を覆う。
四足歩行の巨大なエーテリアス。金属のような装甲をその身にまとい、目を光らせた。
砂を吹き飛ばしながら咆哮を上げるその前方には、何者かが立ち塞がっている。
そして一瞬の暗転。
エーテリアスの前を転がる知能機械人ビリー、その傍らにはパエトーンであるリンの姿が。
「ツール・ド・インフェルノ、レースぅスタートぉ!!」
カウントダウンの電子音が響き、爆発的なバイクエンジン音が吠える。
砂煙を切り裂いて、バイクが飛び出した。
降り立つは剣と盾を構え、緑髪を風にたなびかせるコートを羽織った女性の姿。
「ちゃんと自己紹介しとこう。オレらは『カリュドーンの子』。オレ様はここの首領、シーザー!」
自己紹介と共に敵を薙ぎ払うキング・シーザーの姿が映る。
その刃先が傾くと周囲の空気が揺らめき、光が鋼の線を描いた。敵の攻撃を盾で弾き、渾身の反撃を繰り出す。
「オレ様は…一歩も退かねぇ!」
その言葉には強い意志と覚悟が滲んでいた。大地を裂くような一撃が爆ぜ、敵を沈黙させた。
「燃えてきちゃった~」
バトンを移すかのように画面の人間が切り替わる。明るく快活な声を響かせながら火炎放射器で敵を火葬していくのはバーニス・ホワイトだ。
「レッツ・スーパー火遊び!」
彼女は美しい炎の軌跡を描きながら敵を包み込む。陽気な笑みで炎を操り、敵を焼き尽くしたバーニスは息を吹きかけるように火炎放射口の小さな炎に息を吹きかける。
フッ。
その仕草に合わせて画面が一瞬暗転――
『警告 ――エーテル濃度の急激な上昇が検出されました』
感情の窺えない電子音声。フェアリーの声が虚空に響いた刹那、火の湖が噴き上がる。
画面が炎に塗り潰され、次の瞬間、
映像は、シーザーたちが驚愕の表情で光輝く巨大エーテル結晶を見上げる場面へと切り替わる。その結晶はまるで心臓のように脈動していた。
謎の男の声が重なる。
「弱者も能無しも、もうとっくに時代から見捨てられてるんだよ!」
月明かりに照らされひとり立つ“郊外の覇者”の背が映える。
かと思えば次の瞬間、銃火器が火を噴いた。
閃光と轟音が交錯し、視界を裂くように爆炎が巻き起こる。
「エーテルの力さえあれば僕はリーダーのいない郊外に新たな秩序を打ち立てられる!」
風圧に抗い、盾を構えるシーザーとその仲間たち。
空気がねじれ、世界の輪郭が歪んでいく。
そこに現れたのは結晶を纏ったエーテリアス。人の形をしていながらどこか機械的な滑らかさを持ち、その手には結晶を纏ったバイクが握られている。
無機質な顔がこちらを睨み返した。
「僕の指先ひとつで動く王国をな!」
砂塵を蹴立て、無数のエーテリアスが跳び上がる。
「ここに来たのは 約束を果たすためだから…」
「オレ様に任せろ!」
「シーザー!待ちなさいってば!」
郊外を走り去るバイクのようにシーンは加速し、やがて画面にはカリュドーンの子と共にツール・ド・インフェルノという文字が映った。
臨場感を残し、視聴者に期待を持たせて映像は終了した。
……が、その瞬間。
ジジッ――!
「………っ!?」
突如としてノイズが走る。
画面が乱れ、ロゴが崩れ、映像がブレる。
機械的な映像ノイズの中にはスーツを着た若い男が立っている。
「私は新エリー都から参りました。ささやかながら事業を営む者――エレグ・マックスと申します。突然のご挨拶で恐縮ですが、これよりこの地に新たな発電施設を建設する計画があります」
人好きの良い笑顔を浮かべ、郊外でそう告げるのはTOPS財政ユニオンの一角、エレグ・マックスであった。
「これは常軌を逸している。正直、見ただけで震えたよ。……つまり都市じゃ動かせない装置を……ここで?」
荒れ果てた大地。
吹きすさぶ砂煙の中、建設途中の巨大な施設を前に初老の男、ヨシダ社長が資料を握りしめていた。
その手はかすかに震え、瞳には畏怖と疑念が入り混じっている。
彼の問いにエレグはゆるやかに口元をほころばせる。
「心配はいりません。これは試験的なものです。稼働が確認できればそれで十分」
エレグは視線を建物へ戻し、淡々と続ける。
光を反射する彼の瞳はどこか人のそれとは違って見えた。
「それがもし成功すれば新エリー都のエネルギー構造は変わるでしょう」
風が止む。
その瞬間周囲の音がすべて吸い込まれたように静まり返る。
エレグの笑みだけが残り、まるで何かの終わりを告げる鐘のように静かに、確かに、恐ろしく美しかった。
「――お初にお目にかかります。カリュドーンの子の皆さん」
場面が変わり、整然とした足音と共にエレグが部隊を従えて現れた。
彼は穏やかな笑みを浮かべながら困惑した表情のシーザーたちに丁寧に頭を下げる。
しかし次の瞬間、その視線は彼女たちの背後にいる男、パールマンをまっすぐ射抜いた。
「早速ですがその男を此方に引き渡してもらえませんか?」
――場面は切り替わり、火の湖が地を赤く染め上げる。
その近くに佇むエレグの正面では、ひとりの大柄な男が膝をついていた。
息は荒く、全身の皮膚に結晶のような異物が突き出している。それは光を反射し、まるで体そのものが内側から侵食されているようだった。
「……お辛そうですね、郊外の覇者さん」
優しげな声音で言いながら彼は傍らの結晶片を足で軽く弾く。
男は苦痛に顔を歪めながらも、なおも立ち上がろうとする。だが指先を動かすたびに結晶が軋み、鈍い音を立てて砕け散った。
「助けてあげましょうか?」
その声には、慈悲よりも観察者の好奇心があった。
男が呻き声を上げるとエレグは小さく息を吐き、まるで“壊れた玩具”を見るようにその姿を見下ろした。
――薄闇。
冷たい青の光が点滅する無機質な空間。
天井を這うケーブルが火花を散らし、足元では液体のようなデータ光がゆっくりと流れていた。
中央にエレグはひとり立っていた。
背後に映し出されたホログラムには誰かの戦闘記録や、複数の生命反応データが乱雑に重なっている。
エレグはそれをただ見つめ、口元に静かな笑みを浮かべる。
指先でホログラムの光をすくうようにしてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ツール・ド・インフェルノ――、新たな覇者の誕生を私は心より楽しみにしております」
声が響いた瞬間、ノイズがさらに強まる。
警告音のような電子音が重なりカメラが激しく揺れる。
バシュンッ!
爆ぜるようなノイズと共に画面が完全に暗転。
音も光も途絶え、わずかな電子ノイズだけが残る。
――PV、終了。
ーーーーーー
その後視聴プレイヤーの反応により、SNSのタイムラインは瞬く間に燃え上がる。
「郊外めっちゃ楽しみ~と思ったら最後ォォォッ!!」
「エレグが動きやがった!」
「新要素に心躍らされたと思ったら最後全部持ってかれたんだが!?」
「奴が笑った瞬間に背筋凍った」
「次章にラスボスと前面衝突!?早くない!?」
“こいつが次の物語の根幹を担う――”
そんな見出しがまとめサイトに並び、考察動画はアップロードからわずか1時間で再生数は数万を超えた。
静寂だった闇のシーンが今度はネットの熱狂で光を帯びる。
『ツール・ド・インフェルノ』――その名がまるで新たな火種のように世界中へ拡散していった。
薄明かりだけが灯る執務室。
机の上には書類の山。郊外開発、エネルギー配分、部隊行動報告、どれも重く冷たい文字ばかりだ。
束の間の休憩を終えて仕事に戻ったエレグは無言でペンを走らせ、サインを一枚ずつ片付けていく。
その指先は疲弊しておりインクの染みが指の関節にまで広がっていた。
――カサ、と紙をめくる音。
ふと手が止まる。
無意識のうちに天井を仰ぎ眉をひそめた。
心の奥に言葉にできないざらつきが広がっていく。
「……な、何だ……?この感覚……?」
低くかすれた声が漏れる。
書類の隙間に映る自分の影。
「……何か、途轍もない勘違いをされているような……」
静寂。
ペン先が紙に触れ、再び動き出す。
だがその目はどこか遠くを見ていた。