転生者達の新エリー都、二足のわらじ生活   作:フライパンソルジャー

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ボンプの名前決めに協力していただきありがとうございました!
この名前良いなと思うものが多すぎて決められないという事態になりましたが、しっかりと決めてみせます!

再びファンアートをいただきました!転生メンバーの年長者のダイさんを描いていただきました!本当にありがとうごぜいます!大変感謝です!!!
カッコいい!絶対に強いし、安心して頼れるような魅力的なキャラ容姿ですね……!

ダイナ・アレックス

【挿絵表示】



ー追記ー

メンバー紹介(仮設)の場所にメンバー全員分のAIイラストを入れました。よろしければドゾ



虚ろに潜む復讐劇
緊急ミッション!イメージ改善任務!


ヤヌス区の中心に広がる商業地区、ルミナスクエアはいつにも増して騒がしかった。

商業地区とはいえ、ここまで局所的に人が集まるのは珍しく、それにどこか様子が違った。

 

確かに普段から人の往来が絶えない場所ではあるが、今日の広場は混雑という言葉では片付かないほど異様な熱量を帯びていた。

 

その中を歩くビデオ屋を営む兄妹、アキラとリンは首をひねりながら広場を進んでいた。

 

新商品の仕入れでこの地区を訪れ、HIAセンター前を通りかかったときに人の密度が急に跳ね上がったのだ。

 

流れる人の波がいくつも折り重なり、まるでその一点にだけ重力が集中しているかのような密度。耳に届くざわめきは次第に熱を帯び、鼓膜を押し返すほどに膨れあがっていく。

 

「わっ……。今日のルミナスクエア、やけに混んでるね……」

 

「イベントがあるのかな……?」

 

リンが人波にぶつかりながら呟くとアキラも眉を寄せて頷いた。

 

異様だ、と二人が感じたそのときだ。

 

「ねぇ、たしか……『パエトーン』でしょ?」

 

「………っ!?」

 

その単語が耳に飛び込んだ瞬間、兄妹の全身が金縛りに遭ったように固まった。

アキラがリンの手を反射的に握り、リンも息を呑む。

 

(――バレた?)

 

心臓が跳ねる。

喉の奥がキュッと縮まり、視界の端で空気がざらつくように揺れた。

 

裏で活動しているプロキシとしての名、パエトーン。それを知る者は限られているはずだった。

 

ここで終わるわけにはいかないと、アキラは周囲を素早く見回し逃走経路すら探り始める。

 

だが、すぐに別の声が飛んだ。

 

「違うってば!パエトーンじゃなくて『千面相』だよ!」

 

アキラとリンは顔を見合わせ、同時に胸を撫でおろした。

背中に冷たい汗が伝う。

どうやら二人を指したものではなかったらしい。

 

安堵とともに力が抜け、二人は人混みの端へそっと移動する。

周囲では会話が続いていた。

 

「パエトーンが静かになってさ、最近人気出てきたプロキシが千面相なんでしょ?」

 

「なーにが千面相だよ!絶対大したことないって。ほら、『虚狩り』星見雅様がいるんだからさ!六課が動いたら時間の問題だぜ!」

 

誇らしげな声に周囲の空気が熱を帯びた。

 

どうやら集まっているのは対ホロウ六課のファンのようであった。

 

今日、六課のメンバーがこのHIAセンターに現れる。その噂を聞きつけて、続々と人が集まっているというわけだ。

 

「だいたいさぁ……!あの伝説の組織、『ヒール』のメンバーの正体まで世間に引きずり出したんだぞ?六課が負ける訳無いっての!」

 

得意げに語るファンたちを横目にアキラはため息をもらした。

 

「……はぁ、六課のファンの熱っていうのは本物のようだね」

 

「うん。でも、こっちはシャレにならないよ……びっくりした~……」

 

六課の話題はあっという間に広がり、周囲は“英雄談義”に染め上げられた。

 

最近の六課の活躍は目覚ましく、出動するたびに確実にホロウ内のエーテリアスを殲滅し、市民の救助まで同時にこなしてしまう。まさに英雄部隊と呼ばれるにふさわしい働きぶりだった。

 

「最近の六課、マジで気迫が違うよな!」

 

「ほんとほんと。『ヒール』ですら六課の敵じゃないって言われてるし!」

 

そんな声が周囲のあちこちから沸き立った。

 

その言葉を聞いてアキラとリンは視線を交わし、小さく胸を痛める。

 

アキラは息を吐き出した。

 

ヒールは世間から恐れられる裏組織。

だがアキラたちにとってはパエトーンを何度も支えてくれ、そして助け合ってきた仲間だ。

 

互いを信頼し合い、”対等な”仕事仲間として動いている。世間が言うほど危険でもなく、決して無秩序ではない。

 

世間と自分たちの認識のギャップ、それはかつての恩師を思い起こさせた。

 

六課を貶めたいわけではない。その功績は都市全体を何度も救ってきた本物の誇りだ。

 

ただ、”ヒールが六課の足元にも及ばない”と断じられるのはどうしても黙って飲み込めなかった。

 

「……ちょっとだけ嫌だね」

 

リンが苦笑混じりに呟く。

アキラも同じ表情で頷いた。

 

そんな複雑な気持ちを飲み込んだその瞬間、突如耳を劈くほどの歓声が上がった。

 

「きゃーーっ!雅様がいらっしゃったわ!!」

 

女性の甲高い声が周囲の熱気をさらにかき立て、人混みが一気に波打つ。

その視線の先へアキラとリンも目を向けた。

 

H.A.N.D.の制服が光を受けてきらめく。

そこに姿を現したのは四人の美男美女、六課の精鋭たちである。

 

「対ホロウ六課の執行官たちもいるぞ……!」

 

先頭に立つのは綺麗な女性。黒髪の隙間から大きな狐の耳がピンと立ち、腰には一振りの刀。

対ホロウ六課の課長にして“虚狩り”の称号を史上最年少で得た天才、星見雅。

気品と殺気を両立させたような圧倒的な存在感を纏っている。

 

雅の隣には桜色の髪をきっちり編み込み、端正な眼鏡をかけた女性が歩む。

まるで完璧なキャリアウーマンのような佇まいの対ホロウ六課副課長、月城柳。

整った背筋と冷静な視線が、周囲のざわめきすら切り分けるようだった。

 

その後ろには、センターパートの黒髪に黄色い鉢巻きを巻き、首にチョーカーを締めた青年。

文武ともに極めて優秀な能力を持つ対ホロウ六課の斥候、浅羽悠真。

軽く笑みを浮かべながらもファンの熱狂ぶりに困惑を隠せない。

 

さらにもうひとり。

蒼い肌に頭から小さく鋭い二本の角を生やした幼い少女。

鬼族の血を引く対ホロウ六課の癒し、蒼角。

その小さな体躯からは想像もつかない怪力で鋼鉄の刃旗を持ち歩いている。

 

四人が揃って歩みを進めると、ファンたちは大歓声を上げた。

 

「雅様ーー!!あたしを踏んでくだしゃい!!」

 

「柳さん今日も美しすぎるぅ!!」

 

「マサマサー!言いたいことがあるんだよォオオ!」

 

「蒼角ちゃぁぁああん!!!キミの犬を僕のペットにィイ!?」

 

オタク声援が容赦なく飛び交い、空気が振動する。

まるでアイドルの出待ち会場のような熱量だ。

 

アキラはその波を見ながら小さく呟く。

 

「……凄い人気だ……。みんなのお目当てはやはり六課だったようだね」

 

「うん……、早いところ退散しよ?私たちも千面相みたく六課のお手柄にされちゃう」

 

「ふふ、何を言っているんだい、リン。僕たちはただの善良な市民じゃないか」

 

軽口を言い合い、二人は人混みの端に立ちながら声援の渦を静かに見守った。

 

アキラとリンがそっと人混みから離れ、視界から消えるように位置取りを変えたその瞬間。

 

――別方向で、明らかに“気配を殺しきれていない集団”がいた。

 

人混みの一角。

 

”何か”を隠すかのようにオーバーサイズの黒いロングコートを背中に羽織り、艶やかな黒髪を揺らす長髪の女性が団扇を手に持ち、両手を全力で振り回していた。

 

団扇には手作りと思しき装飾「六課最強」「雅様尊い」などの文字がこれでもかと貼り付けられている。

 

「六課のみんなぁあああ!今日もその才気ほとばしる実力が眩しく輝いておりますわぁああ!!」

 

声量だけならイベントMC顔負けである。完全にただの熱狂的ファンそのものだった。

 

その隣。

 

フードを深く被った三つ編みの女性が、悠真の方向に必死で跳ねている。飛ぶ度にパーカーのフードが上下に弾み、サングラスが落ちそうになっては慌てて押さえていた。

 

「マサマサぁー!結婚を前提にお付き合いしてくれぇ!絶対に養ってみせるからぁあ!!」

 

叫びながら両腕を思い切り伸ばしてアピールする姿は求愛というよりもはや求心。

声の震えと必死さは本気そのもので、冗談か本気かなど議論するまでもない。

 

そしてその二人の後ろ。

 

「ダイさんもっと右!右だってば!!ほら、六課全員の表情が全然見えないんだって!あ、行っちゃう、行っちゃう!早く急いで!」

 

幼い少年ともあどけない少女ともつかない中性的な小柄な子が大柄な男に肩車された状態で指示を飛ばしていた。

 

手に持つのは明らかに素人の趣味ではない軽量高性能カメラ。

望遠レンズが光を拾う度、小さくチリチリと金属音が響く。

 

「わかった……!わかったから、そんな急かすな……!……あ、すみません少し通してください」

 

肩車している大柄な男。その巨体は周囲の人より頭一つ以上も高く、今はできるだけ丁寧に身を縮めるようにして人混みをすり抜けながらながらぼやいた。

 

「そんなに揺すると落ちるから暴れるなよ……!後、お前らもあんまり騒ぐな……!掲示板の中じゃねえんだぞ……!」

 

不満を漏らしつつも、子を落とすまいとしっかり支えている様はどう見ても家族サービスを行う“休日のお父さん”だった。

 

その前を走るロングコートの女性とパーカーの女性にも一応注意を送るが、二人の耳には一切届いていなかった。

 

「ニュースでの数々の活躍、この眼に焼き付けましたぁ!このまま悪者全員捕まえてぇー!」

 

「悠真ッッ!!君の長命と健勝を心から所望ッッ!!」

 

「おお!良いポジションキタコレ!六課の皆~!コッチヲ見ロォ!!」

 

全員がサングラスとマスクでギリギリの身バレ防止をしているが、その圧倒的な存在感は隠しきれていない。

 

そう、この四人組はリーダーを除く伝説の組織、『ヒール』のメンバーであった。

 

この光景を誰が信じられるだろうか。

 

パエトーンも六課も、そしてこの場の一般人たちも、まさか彼らがここに紛れているなど夢にも思うまい。

 

「お、おお落ち着けお前ら……!遊びに来たんじゃない。忘れんなよ……これは“任務”だ。目立つような真似をするな、声量を抑えてくれ……!」

 

ダイナが必死に小声で、しかし鋭く三人を窘めた。

その低い声は小さくても迫力だけは抑えきれず、聞いた三人をほんの少しだけ静かにさせた。

 

彼らは決して遊びに来たのではない。

ちゃんとした“仕事”でここにいる。

 

この場にいれば間違いなく仲間たちと共に騒いでるであろうリーダーが不在なのも、ハブられたというわけではなく別動任務に当たっているだけだ。

 

――時は少し遡る。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

243:デンキウナギ ID:zzztensei02

俺遂に気が付いたんだよ……!今の俺たちに必要なのはイメージ改革だと……!

 

244:サソリ薬師 ID:zzztensei03

おお……!ようやく気付いて……ん?ちょっと待て、”たち”……?

……おいリーダー、間違えてるぞ

 

245:デンキウナギ ID:zzztensei02

は?何も間違えてませんが?

 

246:カラスメイド ID:zzztensei04

いやいやいや。郊外での話を聞くに、必要なのはどう考えても“エレグ・マックスの”イメージ改革だけじゃないか?

 

247:軟体エンジニア ID:zzztensei05

そうだね。間違いなく今のはリーダー単体のお話だね

 

248:サソリ薬師 ID:zzztensei03

まずお前のイメージをどうにかしてくれ。今、郊外どうなってるんだよ?

シーザーたちも馬鹿じゃない。流石にお前への誤解がそろそろ解けてきた頃じゃないかと思ってたんだが……?

 

249:デンキウナギ ID:zzztensei02

ああ、何も問題はない

例えば俺が改定案を提示したところ、まずルーシーが内容を穴が開くほど確認してからビッグダディさんと一緒に話し合いを重ねて通していいかの検討。その後、俺の郊外での目撃情報及び行動をメンバー全員ですり合わせて、怪しい案じゃないかの過度すぎるチェックが毎回入ってるだけだ

 

250:サソリ薬師 ID:zzztensei03

オイィィィ!?悪化してるんですけど!?なんでだよ!

 

251:軟体エンジニア ID:zzztensei05

問題ありまくりで草

 

252:カラスメイド ID:zzztensei04

いやそれもう完全に警戒されてるじゃないか……。なんで嘘ついたんだよ

 

253:サイ男 ID:zzztensei01

信頼の欠片もない状況だな……。じゃあ企業は受け入れられず、郊外事業は全滅か?

 

254:デンキウナギ ID:zzztensei02

いや、それは”マオのコネ”を使って住民たちとの仲を何とか取り持ちました

カリュドーンの子を除く郊外連中との関係は比較的良好です

 

255:サソリ薬師 ID:zzztensei03

私の、コネ……?待て待て、なんか胸騒ぎがするんだが……リーダー、お前は一体どういう名目で契約を取ったんだ?もしかするとその行動が、シーザーたちのリーダーに対する不信を一層深める原因になっている可能性がある

普通は郊外のために動けば彼女たちはその恩をきちんと胸に刻む義理堅い面々のはずだ。普通はな……

 

256:デンキウナギ ID:zzztensei02

えー……まず、マオが企業の技術提供者ってだけじゃ大した信頼は郊外の人々から得られそうになかったから、“マオは自分の企業勤めだった、それもかなり偉い立場の”ってことにして、更に「昔から俺と仲が良くて、今でも関係は良好です」って話を盛ったら、警戒が一気に和らいだんだよ

これはチャンスだ!と思って「この計画には彼女のお墨付きがありますのでご安心を」って伝えたら……まあ、ほとんどの連中は信じてくれて、事業を受け入れてくれた

 

257:サイ男 ID:zzztensei01

嘘と真実を混ぜた訳か……。郊外事業が上手くいって何よりだが、それをカリュドーンの子の子に見られたら不味そうだな

あ、まさか……

 

258:デンキウナギ ID:zzztensei02

ええ、やらかしました(白目)

その様子を偶然見ていたカリュドーンの子の態度がその日を境にめちゃくちゃ刺々しくなってしまいました(絶望)

 

259:サソリ薬師 ID:zzztensei03

お前ッ……!馬鹿野郎!本当に何してんの……!?

いや、計画に対しては賛成してる……してるけども……!

 

260:カラスメイド ID:zzztensei04

リーダーとマオの関係を知っているシーザーたちからすればプロジェクトを通すために、マオが賛成しているように話をでっち上げたように見えただろうな

今やマオはリーダーに連れていかれた哀れな薬師(笑)扱いだし、都合の良いようにマオを利用してると勘違いされたわけだ……

 

261:軟体エンジニア ID:zzztensei05

あー、これは非道ですわぁ

シーザーたちを除く郊外連中は悪徳企業のCEOに丸め込まれたわけだ

 

262:デンキウナギ ID:zzztensei02

違うんだよ!!俺だってそう見えたんだろうなって分かってた!

でも仕方ねぇだろ!!俺個人ではなく企業そのものを警戒されたら物流が止まる!

今の不安定さで一番困るのは郊外の人たちだからな!?

……まあ皆もそれを理解してるから、悔し気ながらも此方をめっちゃ警戒するだけで済ませてる感じ……心痛い

 

263:サソリ薬師 ID:zzztensei03

……もう私が郊外に帰って事情を説明しても、そう言うようにお前に指示されてると勘違いされそうなんだが……!

 

264:カラスメイド ID:zzztensei04

なんというか、ある意味天才っすねリーダー……。まるで羨ましくはない才能だ……!

 

265:デンキウナギ ID:zzztensei02

うるせえよ!

はぁ……誤解については郊外が安定してから改めて話し合いの場を設けます……ハイ

悲しいけど今は、取り敢えずビジネスライクに徹するしかねえ……!

 

266:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ビジネスでもライクか怪しいけどね、それ

 

267:サイ男 ID:zzztensei01

まあ郊外は一旦置いておいて、……まずは話を聞くか。イメージ改善が“俺たち”……つまりヒールでいいんだな?

必要だと思った理由は一体なんだ?

言っちゃあ悪いが話題となってもう随分経つぞ。世間の評価は簡単には覆せないだろ

 

268:サソリ薬師 ID:zzztensei03

確かにもう無理じゃないか?

インターノット上の私らの印象見たけどホロウレイダーじゃなくて“超戦闘犯罪集団”って書かれてたからな?

普通なら最優先で対処される案件よ。公的機関が排除に動いていないだけ奇跡だな

 

269:軟体エンジニア ID:zzztensei05

正体不明で神出鬼没、スーツ姿が知られるまでは都市伝説みたいな存在だったから排除しようにもどう動けばいいのか分からなかった、ってのも理由の一つだろうね

 

270:デンキウナギ ID:zzztensei02

いや、世間的なイメージは変えなくていい。名声は大きいほどブランドとして機能するからな

さっきは説明を省いたが、本当に変えたいのは“世間”ではなく、対ホロウ六課のメンバーが抱く俺たちへの印象だ

 

271:サイ男 ID:zzztensei01

六課?ああ、最近は目覚ましい活躍みたいだな

けど彼女たちが俺らに抱く印象って……

 

272:カラスメイド ID:zzztensei04

良い筈がないでしょうね!

だから私は別に今回の提案に反対じゃないぞ!……何でまた急に?とは思うけど

 

273:デンキウナギ ID:zzztensei02

六課が職務上俺たちを警戒してんのは当然だ

だがな……その“過度な警戒”につられて俺たちと協力関係であるパエトーン、アキラたちまで距離を取られると困る、そう思わないか?

 

274:サソリ薬師 ID:zzztensei03

あ~納得。確かにそれは困るわ。関係があるからとアキラまで敵みたいに見られたら、やりづらくなる一方だし

……それに、パールマンが目を覚ますのだって”あともう少し”だしな……

 

275:軟体エンジニア ID:zzztensei05

はいはいはい理解理解

ブリンガーとの決戦時に六課の協力が得られない事態は避けないとね……!

 

276:サイ男 ID:zzztensei01

……つまりリーダーは、六課に対しての誤解を”少しだけでも”解いておきたいってわけか?

 

277:デンキウナギ ID:zzztensei02

そういうことです

 

278:軟体エンジニア ID:zzztensei05

一回だけ不幸なバッティングが起こったけど、まさか今も遺恨がある感じ……っすよね、ハイ

その節はどうも申し訳なく……

 

279:カラスメイド ID:zzztensei04

反省出来て大変よろしい

よく考えると確かに世間では頻繁に六課とヒールの関係が持ち上げられてたりするな

こちらの特記戦力をぶつけてしまった以上六課の皆は相当警戒してるだろうな……

 

280:サソリ薬師 ID:zzztensei03

そりゃそうだろ……!誰でもそうするわ!てか雅さんじゃなかったら恐れ慄かれてるぞ!

ダイさんの全容バレたらどんな巨大機関もパニックになるわ……!

 

281:カラスメイド ID:zzztensei04

ですよね~……

私も今の今まで雅さんたちに敵意を向けられるのは耐えられない!って思ってたけど、最近リーダー忙しそうだったし、どうすることもできなかったわ

けど……今回動き出すってことでいいんだな?

 

282:デンキウナギ ID:zzztensei02

ああそうだ。六課に俺たちを過度に危険視する必要はない、少なくとも無闇に暴力は振るわない組織だと思わせなければならない

 

283:サイ男 ID:zzztensei01

そうは言うけど実際どうするんだ?菓子折り持って直接謝罪しでも行くのか?

 

284:軟体エンジニア ID:zzztensei05

うん、そんなことしたら間違いなく出会って五秒以内に戦闘だろうね

 

285:サソリ薬師 ID:zzztensei03

難しいな……イメージ改善と言ったって話し合いに応じてくれるか分からないし、どうしようもなくないか?

 

286:デンキウナギ ID:zzztensei02

フッ、まあ任せろ。

この陣営のブレイン!!リーダーである私が皆さんが動きやすいよう完璧な計画を立案しましたよぉ!!?

 

287:サソリ薬師 ID:zzztensei03

は?……っ、……お……うん。……いつもありがとうな

 

288:軟体エンジニア ID:zzztensei05

今一瞬で色んな感情を飲み込んだねマオ

まあ急にリーダーの情緒が変わったら、「あれ?疲れてんのか?」ってなるよね

 

289:サイ男 ID:zzztensei01

これは……テンションが妙な時のリーダーだな。激務明けによくある

 

290:カラスメイド ID:zzztensei04

お労しいな……。まあそれでもリーダーの指示で上手くいくことは多い

……コホン、ではリーダーさんや、計画を聞かせてくれんか?

 

291:デンキウナギ ID:zzztensei02

いいでしょう!

あ~……、まず私たちが恐れられているのはなぜかについて説明させててください!

六課が、いや世間が私たちを恐れる本当の要因を話すと……“目的が不明瞭”だからです!

 

292:カラスメイド ID:zzztensei04

……なるほど、続けてくれ

落ち着いてな

 

293:デンキウナギ ID:zzztensei02

私たちは法を犯しながらも、正しいことをしようと心がけている。いや……そりゃ自分の企業のために皆にはちょーと協力してもらいましたけどね……でもそれは結局は多くの人に就職先を与えたり、新エリー都に暮らす全ての人の生活を豊かにする企業理念の元、活動してるわけで決して個人利益のために利用してるわけじゃあなくてですね……

 

294:サソリ薬師 ID:zzztensei03

おい!大丈夫か!?

急に誰に言い訳してるんだよ!?

 

295:サイ男 ID:zzztensei01

……実は最近、リーダーの企業も、俺のところの傘下企業も”TOPSの監査機関”に徹底的に洗われたんだよ。選挙期間ゆえの警戒なのか、調査は異様なほど丹念でな……。

しかも今回派遣された担当の職員の一人が飛び抜けて鋭くてな。いつもの手口じゃまったく誤魔化しが通用しなかったらしい

 

296:軟体エンジニア ID:zzztensei05

うわそれやっば!なんか後ろ暗いことでも見つかったの?

 

297:サイ男 ID:zzztensei01

いや、ひとまず危機は避けた。だが、その過程で相当神経を削られたようだ

うちもそうだが、リーダーの企業の創業期の事情はとても清廉無垢とはいえない

今回の調査を切り抜けられたのは正に安堵の一言だ

 

298:デンキウナギ ID:zzztensei02

またのお越しを……嘘です。もう二度と来ないでくれ……(震え)

 

299:軟体エンジニア ID:zzztensei05

リーダーがこんなになるなんて……一体誰が……?

 

300:サソリ薬師 ID:zzztensei03

恐らく調査が急に入ったのは郊外との往復が続いていたせいだろうな

けど、それだけで監査機関が介入するのか?……これは誰かが裏で告げ口した可能性もある

察しはある程度つくが……

 

301:デンキウナギ ID:zzztensei02

……それは俺も予見していたし、そう仕掛けてくるだろうとは覚悟していた。

あの”黒幕”らの視点から見れば、今回の計画が頓挫した原因は間違いなく俺だからな。TOPS に対して効果的に揺さぶりをかける方法といえば監査機関の投入だろうというのも分かっていた

だからポンペイさんとルシウスを都市へ密かに送り込んだ件も、勿論企業自体の不安要素も徹底的に隠したつもりだった。準備には万全を期した……はずだったんだが

 

302:カラスメイド ID:zzztensei04

なんか予想外のことが起きたんだな……?

 

303:デンキウナギ ID:zzztensei02

ああそうだ!完全に相手の実力を読み違えていた……!まさか郊外に運び出した”発電装置”に勘づき、調査の手を伸ばされるとは想定していなかった!

 

304:軟体エンジニア ID:zzztensei05

えっ!?噓でしょ!?

あの装置って特殊性が高すぎて秘密裏に作ったもんだから、開発時に本来必要な手続きを全カットしてたよね!?

しかも、この世界基準でも未知の代物なんだからバレたら絶対アウトだよ!?

 

305:サソリ薬師 ID:zzztensei03

重要な要素を人(外)力で解決して、開発を成功させたんだからそりゃ特殊だろうな……

 

306:デンキウナギ ID:zzztensei02

装置の露見は致命というほどじゃあないが最終的にうちの信用に関わる!

だから郊外への装置の搬出は施設の施工資材とは別にして、一度にまとめて運んで痕跡を残さないようにした!発電計画は“試験運用”って名目だから不自然さを消すため、ソーラーパネルも併せて搬出した!最後まで情報は細心の注意を払って隠蔽し、調整していた……!

職員たちの意識が向くとしても郊外で売る予定で運び出した大量の物資の方だろうと想像していた……!

 

307:サイ男 ID:zzztensei01

偽装工作やカモフラの力の入れようについては俺も把握してる。あれは外部からは何の違和感もなく、完全に事実情報が秘匿されていたように見えていた

 

308:デンキウナギ ID:zzztensei02

そうなんですよ!抜かりはなかった!……なのに、どうして察した?まさかあれが調査職員としての勘ってやつか?

怖かった……っ、思い出すだけで胃が痛ぇ……!最早バレるまで秒読みだったぞ……!

 

309:カラスメイド ID:zzztensei04

でも最終的に隠し通せたんだろ?いや凄いなリーダー、どうやったんだよ?

もしかしてニュースでやってた”アレ”か?

 

310:デンキウナギ ID:zzztensei02

多分、それだな。……幸いなことに、俺には逃れるための手段が残されていた。郊外で掴んだエーテル企業のスキャンダルを、調査の手が装置に届く前に大々的に公表して監査機関の注意をそっちに逸らした。ルシウスの背後にいたエーテル企業は明らかに”ルール”違反を犯していたため、向こうも無視はできなかったんだろうな……

一先ず時間を稼いで一時的に自由になった隙に、なんとか隠蔽を完遂させたってわけだ

 

311:軟体エンジニア ID:zzztensei05

おおお!間一髪の生還を果たしたんだね……!さすリー!

 

312:デンキウナギ ID:zzztensei02

まあ本来なら調査が終わって動ける状態になってから公表するつもりだったが、背に腹は代えられなかったからな……

俺たちは身動きが取れず、手を出せない間に他企業がハイエナのように群がって営業停止に追い込まれたエーテル企業を解体、吸収してしまった

結果、本来構想していたエーテル企業の大部分をうちに取り込む計画は実現しなかった……!

 

313:サイ男 ID:zzztensei01

莫大な利益を捨てて何とか生き延びた訳か……よく頑張ったな……

 

314:サソリ薬師 ID:zzztensei03

いや調べたけど、あの組織の監視をすり抜けるなんてTOPSでも滅多にないと思う……あんた天才だよ……!

けど……なんでこんなにも人から誤解を受けてるんだ?

 

315:デンキウナギ ID:zzztensei02

それは俺が知りたいわ!!!

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

331:サソリ薬師 ID:zzztensei03

まさか知らないうちにそんな窮地に追い込まれていたとはな……。郊外での勘違いを責めた前言は撤回させてくれ……

正直すまんかったリーダー……

 

332:デンキウナギ ID:zzztensei02

ええんやで、誰にでも間違いはある

正直に言うと、郊外の誤解の件はお前が帰った翌日やったからな。あの時は別に忙しくもなくて、普通に凡ミスや

 

333:サソリ薬師 ID:zzztensei03

前言撤回

 

334:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ワァ……優しい世界ダネ?

 

335:カラスメイド ID:zzztensei04

時系列的に別に関係なかったの草、話の流れ的にてっきり疲弊による判断力の低下が誤解の引き金と思ったじゃねーか

 

336:サイ男 ID:zzztensei01

さりげなく間違いは誰にでもあると言ってるところが小賢しいな

 

337:サソリ薬師 ID:zzztensei03

はぁ~あ……。しかし、だとしても流石にお労しいな。こんなに頑張っているのに、このまま放っておくのは心苦しい。シーザーたちに彼は信頼に値する人物だと私から連絡しとこうか?

 

338:軟体エンジニア ID:zzztensei05

いや、止めといた方が良いでしょ!それだと絶対に勘違いが発生するって!

 

339:カラスメイド ID:zzztensei04

悲しいことに先が見えたわ。きっと止めを刺すことになるだろうな

 

340:デンキウナギ ID:zzztensei02

言うなら絶対に対面で頼む……!今はもう現状で満足するから……!

……ゴホン!話が逸れ過ぎたな。

兎に角!話題を”俺たちを恐れる本当の要因”の話に戻すが、俺たちはこれまでホロウや都市を蔓延る害悪を潰し、正しきことを貫いてきた。それは事実だ!

だが……“正しいこと”、つまり“正義”というやつは”悪”同様に広すぎる。広義すぎて俺たちが起こしてきた大事件は傍から見ればまるで一貫性がない

 

341:サイ男 ID:zzztensei01

まあそうだな。規模を問わず、個人から企業まで……、厄介な輩は散々相手してきたな

 

342:デンキウナギ ID:zzztensei02

伝説だの、最凶だの、犯罪組織の総称みたいに囃し立てられるようになった。だが実情はそんな単純じゃない。…良いか?未知は恐怖だ

何を考えているか分からない奴が怖いように……六課は、俺たちが“何を目的としているのか分からない”から余計に警戒している……と俺は考えている

 

343:カラスメイド ID:zzztensei04

……確かに、敵でも味方でも目的が読めない相手は一番ヤバいな

そんなヤバい組織に、マジでヤバい戦闘員がいるから尚更

 

344:軟体エンジニア ID:zzztensei05

ボクらはダイさんがどういう人物か知ってるから怖くはないけど、六課の皆からしたらそんな裏側分かりっこないよね……

少なくとも新エリー都に潜む、動く核弾頭という恐怖の認識だろうね……(震え)

 

345:サソリ薬師 ID:zzztensei03

そして全貌はまだ表に出ていない。リーダーが特定されていない以上、向こうは私たちの組織規模を正確に掴めていないはずだ。もし現時点で判明してる情報を“氷山の一角”だと受け取ってしまったのであれば、向こうからしたら胃が痛くなる話だろうな

 

346:サイ男 ID:zzztensei01

すっーー……。それは、申し訳ないな……

 

347:デンキウナギ ID:zzztensei02

ですがそれでも!いくら危険組織でも多少なりとも理解されるのは重要なんだ!

例えば強盗は分かりやすい。自分の利益のために金目の物を奪い、人を傷つける。やってることは悪でも、目的ははっきりしている。だが俺たちはどうだ?

インターノット上では事件の裏側を勝手に“解釈”され、陰謀論や考察が山ほど溢れている。俺たちの目的の不明さがさらに拡散されていく

 

348:デンキウナギ ID:zzztensei02

俺たちは今まで活動の目的を公に話したことがない。理由は簡単だ。──正体すら未公開のまま活動してきたからだ。

俺以外の容姿が世間に露出したのも、つい最近だ

 

349:軟体エンジニア ID:zzztensei05

あの時の六課との邂逅だね

 

350:デンキウナギ ID:zzztensei02

ああ。最近の調査で分かったが世間は“俺たちが六課を恨んでいる”と思っているらしい。元を辿ればスーツ姿の世間露出は六課が原因だからな。報道やネットで勝手に『確執』みたいに語られている……!

 

351:サソリ薬師 ID:zzztensei03

私らは気にしてないけど、大衆はそんなん知ったことではないんだろうな……

 

352:カラスメイド ID:zzztensei04

……つまり向こうを傷つけてしまった上に、目的不明で、しかも世間は私たちが六課を逆恨みしていると思っている。そりゃあ警戒されて当然ってわけね。少しでも情報を得るためにアキラたちの逮捕を強行し始めても不思議じゃない

 

353:デンキウナギ ID:zzztensei02

その通り、だから俺たちは“目的を明らかにしないまま”活動している限り、六課の警戒は絶対に解けない

秀でた戦闘力も問題だが──本当の問題は『何をしようとしているのかが分からない』ことだ

誤解はしっかりと解かなければ後に響く……!

 

354:サソリ薬師 ID:zzztensei03

おい、なんか最近やけに覚えのある内容だな……

 

355:カラスメイド ID:zzztensei04

あの……言い辛いんだけどそれって、今リーダーがシーザーたちに警戒されてる原因じゃね?

 

356:サイ男 ID:zzztensei01

最近というか直近で出た話題だな……?

 

357:デンキウナギ ID:zzztensei02

分かってるよ!ゴタゴタが終わって最近ようやく自覚したことだから!ブリンガー倒すころにはアキラたち共々絶対誤解を解いてやるからな……!

 

358:軟体エンジニア ID:zzztensei05

それ、絶対第三者の補足がいるでしょ!じゃなきゃ何をするか分からない奴というレッテルが一生剥がれそうにないよ!

 

359:サソリ薬師 ID:zzztensei03

全くその通りだな……!

いや、リーダーは交渉でちゃんと目的もセットで伝えてたわけだが、真意を皆に深読みされてしまっていた……

正直、衝撃だったぞ。全て上手くいってポンペイさんからサイン貰った後、上機嫌のまま私に「マオ、お前は下がっていろ。交渉事は場数を踏んできた俺に任せておけ!(キリッ)」と意気揚々と交渉に臨んだら無自覚オーラでみるみる空気が悪くなっていったからな……

 

360:カラスメイド ID:zzztensei04

ああ、例の黒幕モードね……お祓いには行ったのか?

 

361:デンキウナギ ID:zzztensei02

うぐっ……正直調子に乗ってた。けど普通に企業の代表者として表立っていこうと思っただけなのに……。てか、これ確かに呪い染みてるけど祓えるもんなんか!?

 

362:軟体エンジニア ID:zzztensei05

まあまあ元気出してリーダー、そりゃ仕方ないよ。

ボクらはパエトーンじゃない。彼らみたいに相手に警戒を抱かせずに仲を深められるわけじゃない

例えばアキラが「お子さん元気ですか?」って尋ねるのとリーダーが「お子さん元気ですかねぇ……(暗黒微笑)?」て尋ねるのじゃあ真意が一緒でも受ける印象がまるで違うもんね

 

363:デンキウナギ ID:zzztensei02

おい!励ましてると思わせといて、急に弄ってるやん!?お前どんな切り返しだよ!

 

364:サイ男 ID:zzztensei01

はは!誇張し過ぎ感は否めないが一番分かり易いな

 

365:カラスメイド ID:zzztensei04

後そうだな……

リンが「好きです!付き合ってください!」って言うのとダイさんが「隙だ!ド突き合ってくれ!」って言うのじゃあ全然違うだろ?

 

366:サイ男 ID:zzztensei01

えぇ!?俺に飛び火した!?なんでだよ!今完全にリーダー弄る流れだったろうが!

 

367:デンキウナギ ID:zzztensei02

いや、そんな流れは来てませんが!?

 

368:サソリ薬師 ID:zzztensei03

こらクロエ!ダイさんに失礼だろう。ダイさんと互角にド突き合うことのできる存在がそもそもいないだろう!

 

369:サイ男 ID:zzztensei01

問題はそこじゃねぇよ!

 

370:軟体エンジニア ID:zzztensei05

あはは!……っと、ふざけるのもこの辺にしてそろそろ真面目に考えないとね

もうリーダーはさ、勘違いされやすいから通訳とか必要なレベルじゃない?今のうちに練習としてボクらがリーダーの通訳を務めるよ

 

371:デンキウナギ ID:zzztensei02

真面目に考えて何言ってんだ。まだボケてんのかよ?

……いや、普通にいらねえよ。どういう意味?

 

372:サソリ薬師 ID:zzztensei03

ふむ……クロエ、彼はなんと?通訳を頼む

 

373:カラスメイド ID:zzztensei04

彼は「いや、普通にいらねえよ。どういう意味?」と言っています

真意は恐らく相違ないかと……

 

374:デンキウナギ ID:zzztensei02

やめろ通訳すんな!?敬語も腹立つな!ていうか内容が俺が言った内容と全く変わってないだろうが!

 

375:軟体エンジニア ID:zzztensei05

でもこれで大分誤解が生まれるのを防げそうだよ!ブリンガー打倒までに誤解解くんでしょ?ちゃんと間に合わせないとね!

 

376:デンキウナギ ID:zzztensei02

ふざけてるんじゃなくて、本気で俺のことを考えて言ってるのかよ……!?

……くそ!とりあえず俺については後回しでいいから!

先に計画の流れを告げるぞ!いいか、まずは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

場面は再びルミナスクエアに戻っていた。

巨大な建物群が光り続け、人々が行き交う広場の一角、HIAセンター前。

 

その喧噪を遠くに聞きながら建物の影にひっそりと巨体を沈めている男がいた。

 

ヒールの戦闘員ライノことダイナ・アレックスである。

 

身長も体格も一般人の倍くらいはある彼は建物の影にほとんど身体を押し込むようにして人混みを見つめていた。

 

視線の先では六課のメンバーがファンに囲まれている。

イベントが開催されているわけではない。

ただ六課がHIAセンターに現れるらしいという噂が一つ流れただけで自然とこの人数が集まったというのだから、その人気ぶりは推して知るべしだった。

 

ファンの時に狂気じみたほどの行動力。六課の面々は困惑しながらも丁寧に応じていた。

 

写真を求められれば断らず、プレゼントも嫌な顔ひとつせず応じる。

その立ち居振る舞いはまさに“正義の味方”という言葉が似合う。

 

ダイナは知らず知らずのうちに目を細めていた。

 

「……なるほど、これだけのファンが存在するわけだ」

 

建物の影に紛れていなければダイナも近くで見守りたいところだが、今の状況でそれは叶わない。

先ほどのように人混みに紛れて仲間たちと六課を迎える程度ならまだしも、今は六課と“直接交流”できる時間だ。この巨体で近づけば悪目立ちしてしまうのは火を見るより明らかだった。

 

そもそも、今日の彼の役目は別にある。

 

――ただの監視役。

 

それも、監視対象には“自分の仲間”まで含まれていた。

 

彼の胸中には不安と焦燥が滲む。

 

視線の先にいる仲間たちがファンに自然に?混じって六課と交流しているが、その外見だけで違和感は濃厚だった。

 

一人は黒いマスクにサングラスをかけたクロエ。

もう一人は深くフードを被り、同じくサングラスのマオ。

明らかに “近寄らせてはいけないタイプ”の二名である。

 

そんな不審者二名の片割れ、クロエは興奮を隠せないままに星見雅に詰め寄っていた。

 

「雅さん!いつも応援しております!今の私はあなたを直視して心が焼けている状態です本当に最高で死ぬほど美しくて強くて神秘的で凛としてて冷静で狐耳が信じられないくらいかわいくて刀を腰に差してるのは存在そのものが説得力の塊で最年少の虚狩りとか凄過ぎだしホント生きてるだけでみんなに希望を与えるとか拝み始めて良いですか雅さんがそこに立っているだけで都市の治安指数が跳ね上がると思いますいや実際上がってるんですだって雅さんが目を細めただけで悪党は悔い改めるしあなたの声は冷たく澄んでてそれでいて優しい芯があって――」

 

「…………そうか

 

雅の応答は乾ききった一言だけだった。

 

あの時、ダイナと激突した虚狩りにして六課の課長、星見雅。

その彼女が為す術もなく膨大な語彙を浴び続けている。表情は相変わらず動かないが、立派な狐耳はしゅんと垂れ、瞳の光はどこか遠く、宇宙の果てにでも旅立ったかのように虚ろになっていた。

 

もう一人のフードの女、マオの方に目を向けると、こちらの状況も惨憺たるものだった。

 

「マサマサ……お仕事お疲れ様だ!だが、最近気を張り過ぎじゃないか!?体調を気遣いなさい!ほらこれ!ビタミン剤と喉飴だ。さすがに都市内だから市販の物しかないがな……。あと、定期的に健康診断には出るようにな!執行官は体が資本なんだから、しっかりしなさい!」

 

「え?あ、これはこれはどうも、ありがとね……って医療ケースから取り出したの!?やけに本格的だね!?……あ、ちょっと……!?」

 

不審者スタイルの女は医療従事者顔負けの手つきで医療ケースから取り出したサプリと飴玉を浅羽悠真へと渡し、さらに胸元のポケットを軽く叩いて彼の呼吸や体温まで気にし始めていた。

 

とても一般のファンがする行動ではない。むしろ医師か保護者が心配性のあまり暴走しているような濃密な距離感だった。

 

完全に世話焼きお母さんムーブ。

拒否する隙など微塵も与えず、まるで某ケアロボットみたく「あなたの健康を守ります」と言わんばかりの勢いである。

 

新手の押し売りかと錯覚するほど自然に健康管理が始まってしまっていた。

 

六課の二名、雅と悠真はもはや逃げる隙さえ見つけられず、ただ圧倒され、押し切られ、翻弄されるばかりだった。

 

ダイナは影の中でそっと額に手を添えた。

 

(……いやお前ら、それは流石に踏み込み過ぎてるだろ……!リーダーが”どうせあの二人は勝手に目立つんで具体的な指示なしで好きなようにやらせればいいだろ”と呆れていたのがよくわかるな)

 

心の中で渋いツッコミを入れつつも、ダイナの口元には苦笑が浮かんでいた。

 

六課の二人は困惑こそ見せている。

だが”厄介ファンのハイテンションな奇行”という枠からはギリギリ……本当にギリギリ外れていないらしい。

 

少なくとも今は、その場で逮捕されるほどの警戒は抱かれていない。

 

ファンというだけであの異様な行為が彼女、彼らにまかり通ってしまうのだから恐ろしい世の中である。

疑われていないのは作戦的には好都合だが、気分は複雑だ。

 

まさか目の前の“熱狂的ファン”二人が、過去に死闘を繰り広げたヒール構成員だとは思うまい。

 

六課ほどの人気ならこれくらい濃いファンにも慣れているのだろう。

しかし、あの二人は服装も挙動も突出している。

今日何百人のファンが来ていようと、間違いなく記憶に刻まれるインパクトだ。

 

(とはいえ問題はないがな……)

 

そもそも、あの二人は“目立つこと”を目的として動いている。

素なのか演技なのかはもはや判別不能だが、役割としては完璧だ。

 

彼女らが注意を引きつけている間に――、

 

「蒼角ちゃん……!」

 

視線の先、三人のうち最も小柄な影。

本命であるドクがゆっくりと動き、六課の中で一番精神的に幼い鬼族の少女、蒼角の前に立った。

 

マスクとサングラスを外したドクは少年とも少女ともつかぬ中性的な顔立ちで、身なりも派手すぎず地味すぎず、まさにファンの一人として溶け込める絶妙な存在。

 

単独であるならこの場にいるアキラたちにバレても問題はないし、最も警戒しにくいタイプだ。

 

蒼角がドクの声に気づき、くるりと振り向く。

その瞬間、ドクは朗らかに微笑んだ。

 

「はい!これ、よかったら……!」

 

差し出された手には丁寧に包まれた小さな食べ物とさりげなく添えられたかわいらしいバッジ。

作り物めいていない、その自然なプレゼントの仕方は誰が見ても“善意のファンの一人”にしか見えない。

 

蒼角はぱちぱちと瞬きし、すぐにぱっと表情を明るくした。

 

「蒼角にくれるの!?ありがとう!わぁ……このバッジもかわいい……!」

 

そして何の疑いもなく食べ物をその場で嬉しそうに平らげ、気に入った様子でバッジを服に取りつけた。

 

影の中でダイナは小さく息を吐く。

 

──作戦成功。

 

あのバッジにはドクが用意した“特殊コード”が仕込まれている。

 

それは”これから襲撃される予定の”六課を守るために働く。敵意のない、自分たちの真意を伝えるための最初の橋渡しになるものだ。

 

リーダーはバッジを付けさえすれば、”後は自分に任せとけ!”と豪語していたが、もちろん不安は残る。

 

「まあ信じるしかないか……後は、リーダーが上手くやってくれるさ」

 

静かに呟くその声音には、確かな信頼が滲んでいた。

 

「それにしても六課も大変だな。アイドルじゃないから引き剥がしてくれるスタッフもいないし、現に襲われている最中だというのにこれから更に襲撃に遭うとは……ん?」

 

――その時。

 

ダイナはふっと目を細める。

 

見つけたのだ。

自分たちと同じく、六課に“プレゼント”を渡していた人物を。

 

それだけであれば不思議ではないだが情報通り”月城柳を除く、六課全員にバッジのプレゼント”である。

 

間違いなく千面相の残党だろう。

 

千面相は人海戦術を得意とすると聞いている。

だが今回一人しか派遣しなかったのは、多人数で行動すれば六課の警戒を招くと判断したためか。

それとも、六課ファンを装い贈り物を手渡す役割に適した人員が確保できなかったのか。

 

なんにせよ、その男は驚くほど特徴が薄かった。

髪型も服装も地味で、顔立ちも凡庸。

まるで”記憶に残らない存在”を意図的に装っているかのような影のような一般人。

 

ファンの輪から離れるその背に誰も注意を向けない。

 

(……見つけた)

 

ダイナは影から静かに身体を押し出し、その男の進行方向へ一歩踏み出した。

 

男は六課の方へ意識が向いていたのか、それとも仕込みを終えた安堵に浸っていたのか、目前に現れた巨体にまったく気づかず、

 

ドン、と沈んだ衝撃音とともに、真正面からぶつかった。

 

「痛っ……!どこ見て歩いて──」

 

怒声が喉までせり上がった瞬間、言葉がぶつりと途切れる。

 

男の視線が真正面の“それ”を捉えた途端、喉の奥がひゅっとすぼまり、呼吸が止まったのだ。

 

「………」

 

そこに立っていたのは常識の枠を軽く飛び越える“巨躯”。

 

ただデカい、では済まない。

存在そのものが周囲の空気を押しのけ、形を変えてしまうほどの圧を帯びている。

服越しでもくっきり浮き上がる、鉄板のように張り詰めた筋肉。

歩くだけで衣服の縫い目が悲鳴を上げそうな異様なまでの密度と重量がそこにあった。

 

肩幅は壁のように広く、一挙手一投足に積み重ねた修練の重みが滲む。丸太のような腕を見れば、一撃受けただけで身体が吹き飛ぶ未来が容易に想像できる。

 

「……ひっ、…!?ぁ……えっと、……その……」

 

声は上擦り、言葉にならない。

 

どう考えても喧嘩を売っていい相手ではなかった。いや、売る以前に“出会った時点で負け”だった。

 

ダイナは男を静かに見下ろし、低く短く告げる。

 

「……すまない。だが、危ないだろう?前を見て歩かなければ……」

 

その声音は落ち着いているのに視線だけは刃物のように鋭い。

刺すような圧だけで男の足をすくませるには十分だった。

 

「……はいぃっ!?……すみませんでしたぁ!!」

 

男は情けなく裏返った声を張り上げると、背中を丸めてその場を逃げ去っていった。

 

ダイナは追わない。ただ去っていく背を見送るだけ。

 

――これで準備は整った。

 

わずかな接触の間に男のジャケット裏へ位置特定用の特殊タグを貼り付けていた。

気づかれるはずもない、自然すぎる動作だった。

 

そもそもあの慌てようであればバレる心配もないだろう。

 

ダイナはゆっくりと顔を上げ、再び広場へ視線を戻した。

 

作戦は完遂した。

 

あとは撤収するだけと彼は端末を取り出し、連絡ボタンへ親指を伸ばした。

だが、そこでふと動きが止まる。

 

三人はまだそこにいた。

六課のメンバーと本物のファンである三人は談笑している。

 

緊張の気配はどこにもなく、むしろ楽しそうだった。

 

「……まったく」

 

苦笑混じりの呟きは誰にも届かない。

もちろん、このまま長居するのはリスクしかない。

 

六課は良い意味でも悪い意味でも勘が鋭い。

この場に長く留まれば、どれだけファンに紛れていても何かの端緒を掴まれるかもしれない。

 

だから本当ならすぐにでも撤収指示を出すべきなのだ。

 

「……早く撤収するように言わないといけな――……っ」

 

――だが、突如胸の奥で何かが沈むような感覚がよぎったのだ。

 

目の前の仲間たちの幸せそうな様子が妙に眩しく見えた。

 

六課のメンバーと熱心に言葉を交わし、写真を撮り、肩の力を抜いて笑っている三人。

 

その光景を見ているとダイの脳裏に嫌でも“あの日”の記憶が滲んでくる。

 

ほんの一瞬、喉が詰まった。

 

あの日……仲間に迷惑をかけた。

巻き込んでしまった。

 

連帯責任だと誰一人責めることなく言ってくれた。

ダイさん一人のせいじゃないと全員がそう言ってくれた。

 

本気で言ってくれるのは分かっているが彼はそれを割り切ることはできなかった。

 

(あれは……俺の行動で……)

 

心の中だけで呟く。

 

騒がしくて、くだらなくて、ふざけ合える時間。

誰かが笑い、誰かが突っ込み、ただ平和で何でもない日常。

 

それが今こうして目の前にあり、仲間たちが無事でいてくれる。それだけで胸が締めつけられるほどありがたかった。

 

広場の騒音は相変わらず賑やかで、六課を囲うファンの明るい声が周囲に溶けていく。

 

なのにダイナの周囲だけどこか音が遠のいたように静まっていた。

まるで彼の心だけが別の層に沈み込んだかのようだ。

 

落ちていく。

そう思った瞬間、自分で自分を引き戻すようにふっと小さく息を吐いた。

 

そして、ほんのわずかに微笑んだ。

それは自分を奮い立たせるための小さな灯火のような笑みだった。

 

「……はあ、やめだやめ」

 

仲間たちは「気にするな」と言ってくれた。

ならいつまでも同じ場所で立ち止まっているわけにはいかない。

過去の行いを引きずり続けるのは、彼らの言葉を無駄にするようなものだ。

 

これは贖罪なんて大げさなものじゃない。

償いだとか責務だとか、そんな堅苦しい感情でもない。

 

ただほんの少しでいい。

少しでも仲間たちと、その仲間を大切にしてくれる人たちのささやかな幸せの時間を、目の前で笑っているその瞬間を守れるのならそれだけで十分だった。

 

それ以上を望む気持ちは不思議とどこにもなかった。

 

撤収指示を出すのをやめ、彼はそのまま影に身を潜めて監視を続けることにした。

 

その横顔はどこか感傷に浸り、しかし同時に確かな温かさが滲んでいた。

 

“あの日”の傷跡。

 

それは静かに影へ溶けていく。

 

 

 

 




そういえば書いてて気付いたのですが転生者掲示板って久しぶりでしたね……

急に現れたシリアス!……ですが人生は色々あります。悲しいこともあれば楽しいこともある。

近づいてくるのは奴の気配……!

次回、自信満々のリーダーが動きます!(迫真)



ー備考ー

今回の掲示板の話を読んで、誤解され、感想で突っ込まれそうなので申し上げます。
別にヒールのメンバーは一人が異常に突出しているだけであって、それぞれが担当する仕事量は相応に多いです。まあ二足のわらじを履いているので当然と言えば当然ですね。
本当に一人が異常なだけなので……(憐れみ)

これが立場の苦労というものです。
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