異世界迷宮で奴隷生活を 作:Doro
奥の部屋に入ると、背後の扉が閉じる。
見ると部屋の中央に煙のような物が集まり始めている。
煙が晴れると、ニードルウッドを大きくしたような姿の魔物が現れた。
ウドウッド Lv1
こいつがボスか。
前衛の戦士や剣士がボスに駆け寄り、回り込んで取り囲むように動き始める。
探索者はボスとは距離を取っている。
俺も後に続いて、各々と適度な距離を取るポジショニングを行う。
「ウドウッドだ、毒に気をつけろ!」
先輩探索者が叫ぶと、皆が一斉に攻撃を開始した。
俺たちは剣で次々に魔物へと斬りつける。
魔物は太めの枝を振って攻撃を仕掛けてくる。
毒。毒かぁ。
ステータス異常もあるんだな。
毒を喰らうとどうなるのかは、できれば想像したくない。
知りたくなければ攻撃を受けないようにするしかない。
想定されるリーチを目測で導き出し、振り回された枝が目の前を通過したタイミングで踏み込んで、斬る。
攻撃したらすぐさま、バックステップで退避する。
神経を使うが、毒にやられるよりはましだろう。
探索者以外の五人で数十回、攻撃を繰り返しただろうか。
ウドウッドはとうとう倒れ、煙になって消えた。
リーフ
ボスが倒れた後には、葉っぱのようなアイテムが落ちている。
それを拾い、ブランチが入った背負い袋にしまい込む。
「毒でやられた奴はいないな。よし、二階層で少し休憩するぞ」
先輩探索者の号令で奥に出現した扉へと進み、また小部屋に出る。
ここが二階層のスタート地点か。
見た目は一階層の最初の小部屋と見分けがつかない。
ここは他の小部屋と同様に、安全地帯なのだろう。
全員が前回のように寛ぎ始めた。
ボスと戦ったことで、ほぼ全員が幾らかダメージを受けている。
もっというとレベルの関係上、一番危ないのは俺だ。
さすがにノーダメージではボスを倒せなかった。
「なかなかこっぴどくやられたな。ま、毒を受けなきゃ十分だ」
先輩がへたり込む俺を見て口元を歪める。
後ろで見ていたから元気だな。
「先輩は戦いに参加しないのですか?」
「俺は回復役だよ。毒を使う魔物が相手なら毒消し丸は欠かせない……そうだ。お前、リーフを拾ったろ。さっきボスが落としたアイテムだよ。あれは毒消しの材料になるんだ」
「あの葉っぱが、ですか」
探索者は支援に徹していたらしい。
回復アイテムはアイテムボックスの中なのだろう。
一人だけ距離を取っていたのは、敵の攻撃範囲に入り自分が毒を受けると行動に支障が出るからとか、そんな理由か。
「今日は俺が売却するから、探索が終わったらアイテムを寄越しな」
「分かりました」
「言っていなかったが、ニードルウッドも毒を使うぞ」
「え」
俺がちょっと驚いていると、探索者は僅かに笑って元の場所へ戻った。
…先に言って欲しかった。
まあ最初の探索の時点ではかなり警戒されていたから、訊いても無視されたかも知れない。
現在のレベルはどうなっているだろう。
ボス戦の後だ、確認してみよう。
キャラクター再設定からジョブ設定をチェック。
カレー 男 20歳
村人Lv2 探索者Lv1 奸雄Lv1 盗賊Lv2 薬草採取士Lv1
村人のレベルが上がっていた。
腰を落ち着けている今の内に、少し考えてみよう。
ここまでで何か問題はあるだろうか。
探索自体は非常に順調だと思われる。
何か問題があるなら、経験者の誰かが言い出しているだろう。
逆に何か違和感があったとして、俺では気付けないかも知れない。
そういえば、ニードルウッドを倒すのに必要な手数が減っていた気がする。
単純に考えれば、何かしら攻撃力が上がったということになる。
前回との相違点は、俺の村人のレベルが上がったことくらいか。
あとは探索メンバーが一人増えている。
前回のメンバーのレベルに変化はない。
俺のレベルは他のメンバーよりもだいぶ低い。
当然、攻撃力も低いと見るべきだ。
にも関わらず、俺が参加した今回は、前回より少ない手数で敵を倒せているのはなぜだろう。
俺の攻撃力が実は並外れて高いとか。
違うな。攻撃力五倍のフラガラッハでも高レベルの盗賊を一撃で殺せなかった。
あとは新たにジョブを得ていた。
薬草採取士。
これは、おそらくリーフを拾ったときだろうな。
荷物持ちを買って出たのが幸いしたということか。
薬草採取士 Lv1
効果 知力小上昇
スキル 生薬生成
スキルは生薬生成。
というからには、回復アイテムを作れるのではないか。
先輩はリーフが毒消しの材料になると言っていた。
試してみたいが、アイテムはアランの物だ。
しかし、レベルはなかなか上がらんな。
仕方がないとは言ったが、物足りないのは事実だ。
獲得経験値上昇と必要経験値減少はちゃんと作用しているのだろうか。
必要経験値減少は、仮に次のレベルに必要な経験値が100だとして、五分の一なら20になるのだろう。
では、このスキルをセットせずに獲得した経験値が20を超えたタイミングで、必要経験値減少をセットしたら正しく作用してレベルアップするのだろうか。
また、必要経験値減少をセットしてからの獲得経験値が15だとして、そのときに外したら経験値がセットする以前の0に戻ったりはしないだろうか。
俺は最初の探索で必要経験値五分の一をセットしたが、レベルアップする前に交渉スキルを試そうと必要経験値五分の一を外している。
レベルアップが遅くなっているのは、この辺りが原因かも知れない。
この疑問は経験値が可視化できないので、はっきり言って確かめようがない。
いや、長期間着脱を繰り返して、レベルアップが遅くなれば確認できるかも知れないが、メリットが小さすぎる。
経験値効率二十五倍は魅力的だが、盗賊戦みたいな強敵にはフラガラッハのような切り札が欲しい。
……必要経験値減少はしばらく外しておこう。
一気にレベリングできる目途が立ったら、そのときに改めて使えばいい。
必要経験値五分の一を外し、獲得経験値十倍をチェック。
ボーナスポイントはちょうど36ポイントで使い切った。
朝食を済ませ、探索の続きを行う。
二階層の様子も、一階層と変わらない。
壁や床の模様もそうだし、常に薄明るいというか薄暗いので、時間の感覚に乏しくなる。
飽きてくるが、かといって世間話というのも緊迫感がなくなるから、無言で進むことになる。
グリーンキャタピラー Lv2
ニードルウッド Lv2
などと考えていたら、魔物が現れた。
グリーンキャタピラーは初めて見る魔物だ。
一言で言うと、デカい芋虫。
そして敵は二体ともLv2。
一階層のニードルウッドは全部Lv1だった。
二階層だから敵のレベルも上がっているのか。
こちらに気付いた魔物が接近してくる。
先に近づいたのはニードルウッド。
そこに戦士たちが攻撃を加える。
「糸だ、大きく避けろ!」
味方の一人がそう叫ぶと同時に、何かがこちらに飛散してくる。
白い塊が散らばって迫ってきた。
横っ飛びに跳んでなんとか躱す。
塊は床に着弾すると、すぐに溶けて消えた。
今のは糸なのか?
たぶん、命中すると拘束されてしまう。
抜け出すのに時間がかかればその間はずっと無防備になるし、囲まれたら危険である。
味方が多いからなんとかなるかも知れないが。
その後はグリーンキャタピラーも近づき、ニードルウッドの横辺りでこちらと打ち合いになった。
しばらく攻撃を繰り返すと、どちらも煙となって消える。
糸
糸を吐く芋虫はドロップアイテムも糸のようだ。
俺は糸を拾い、背負い袋に入れる。
「見えたか?」
「糸のことですか? 危ないところでした」
「その前だ。魔物は足元を発光させて、魔法やスキルの準備をしている」
先輩の一人が忠告してくる。
グリーンキャタピラーは糸を吐く前に光っていたらしい。
一番後ろにいたこともあり、見えていなかった。
「そうなのですね。後ろからはよく見えませんでした」
「一応、声はかけるが、ちゃんと自分で注意しとけよ」
「はい。ありがとうございます」
さっき、大声で叫んでいた人だったようだ。
ちゃんと頭を下げておこう。
お、頷きで返してくれた。
…まぁ、二人くらい話し掛けてこないし、目も合わせようとしない人もいるんだけどね。
それは仕方がない。
この世の中、盗賊に恨みを持つ人も多いだろうし、直接何かされないだけでも十分だろう。
その後も何度か戦闘を行い、途中で安全な部屋を見つけた俺たちはそこで本日の探索を終了した。
アイテムを先輩探索者に手渡し、ギルドで待つ間にジョブ設定で自身の状態をチェック。
カレー 男 20歳
村人Lv3 探索者Lv2 奸雄Lv1
おお、レベルが上がった。
ちゃんと獲得経験値十倍は作用したのだろうか。
ボーナスポイントも1ポイント増えているようだ。
これで上がらなかったらどうしようかと思っていたところだ。
我ながら現金だが、少しやる気が出てきた。
レベルは上がったが、今回は反省点が多い探索だった。主に戦闘。
魔物の攻撃は多彩だし、相手の特徴を知らずに潜るというのは危険だ。
ニードルウッドが毒を使うことも知らずに戦っていたし、結構危ない。
そして階層が変わると、遭遇する魔物の種類も増えるようだ。
迷宮の階層と魔物の関係は、次回までの課題にしておこう。
2025/10/12
原作では毒を使う敵は多いですがニードルウッドが具体的に何をするかはまとめによれば判明していない模様。ウドウッドは青い魔法陣を発生させますが作中では詠唱中断でキャンセルされたため攻撃内容は不明。
2025/11/24
原作を読み直しましたがニードルウッドが特殊な攻撃をするシーンはありませんね。当作ではこのままでいきます。