異世界迷宮で奴隷生活を   作:Doro

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奴隷のみを迷宮に入れることは本来ないでしょうが、本作ではアランは老齢になったので護衛を迷宮に潜らせています。


はじめての迷宮

あれから数日。

朝日が地平から顔を出し、まだ間もない明朝。

 

俺は装備品の確認をしていた。

革の鎧、皮の帽子、皮の靴。

いずれも商館から借り受けた物だ。

 

「装備の点検は怠るなよ。準備ができたら出発だ」

 

「はい。問題はありません。いつでも行けます」

 

先輩である戦闘奴隷に声を掛けられ、俺も他の奴隷達と共に館を出る。

俺はこれから、ベイルの迷宮へ行くのだ。

 

 

俺は迷宮探索に志願した。

当初、アランには却下されたが、重ねて願い出ると遂に折れたのか許可を出してくれた。

たぶんアランも、俺の身の振り方を決め兼ねているのだ。

これという決め手があるなら、頑として首を縦には振らないだろう。

 

奴隷商館で過ごして分かったのだが、男の奴隷でジョブが盗賊になっているのは俺一人だけだ。

何らかの罪を犯した者は他にもいる筈だが、それでも村人だったりする。

ファーストジョブが盗賊にならなかっただけで、わざわざ村人に戻しているわけではないかも知れないが。

 

何にせよ、盗賊のままでは売りに出せないし、客に見せることもできない。

商館には奴隷を欲した客が訪れるが、その顔見せに呼ばれたことは未だにない。

俺はブラヒム語を話せるし、礼儀作法も修めたことになっている。

にも関わらず、今はまだ売り時ではないということらしい。理由は分からない。

 

これから、初めての迷宮探索に向かう。

ひとまず、ジョブの確認をしておこう。

まずは村人だ。

ジョブ設定を選択し、クリックして詳細を見る。

 

 

 村人 Lv1

 効果 体力微上昇

 スキル なし

 

 

初期ジョブの村人だ。

効果は体力微上昇とあるが、実感することはなさそうだ。

スキルも特にない。うーん、弱い。

 

 

 盗賊 Lv1

 効果 敏捷小上昇

 スキル なし

 

 

お次は盗賊。不本意にも獲得してしまったジョブだ(いらない)。

効果は敏捷小上昇。こちらもスキルなし。

村人よりは幾らかマシと言いたいが、文化的な社会生活が送れない特大デバフ付き。

 

そして借り物の装備品三種。

ボーナス装備のようなスキルは付いていない。

パーティーメンバーの装備も鑑定で確認したが、スキルはない。

これが普通なのだろうか。

 

 

館を出て、通りを歩いていく。

初めてよく見るベイルの町並みは、早朝にも関わらずそこそこ活気がある。

 

これには文明レベルが関係しているだろう。

この世界では、照明器具も発達していない。

夜は本当に暗いのだ。

日の出より早く起床し、日没と共に就寝する。

商館でも概ねそんなライフサイクルである。

 

そのうち商店や民家がだんだんと少なくなっていき、整備された街道からも外れ、背の高い草木の中を歩く。

やや進むと、小山のように土がこんもりした、洞窟のようなものが姿を現した。

その入り口は移動魔法のように真っ黒で、中の様子は窺えない。

直感で、これが迷宮なのだと理解した。

 

迷宮入り口のすぐ傍に、男性が一人立っている。

 

 

 探索者Lv18

 

 

「どこまで進んでいる」

「四階層です。出てきたばかりですから」

 

うちのパーティーの探索者が、入り口横に立っていた探索者に質問した。

四階層が現在の探索深度か。

出てきたばかり、というのは迷宮が出現して間もないということだな。

 

「よし、一階層から行くぞ」

 

言うが早いか、先輩探索者は黒い壁の中に消えてしまった。

続いて次々に迷宮へ入るパーティーメンバー。

俺も遅れないように後へと続く。

 

 

トンネルを潜ると、周囲の壁がうすぼんやりと光る小部屋に出た。

大きさは約四メートル四方の空間だ。

ここが……迷宮なのか。

 

そうだ、質問をしておこう。

俺は先輩探索者に話し掛ける。

 

「先ほど、入り口の方に階層を訊いていたのは何故ですか?」

 

「……」

 

先輩探索者は俺の質問には答えない。

聞こえていない、は違うな。

一度こっちを見たもの。

聞こえないふりをされている。

やっぱり嫌われているのかね、盗賊。

 

 

小部屋の前と左右に伸びた通路を、俺を含めた五人で進む。

ジョブ内訳は、戦士、戦士、剣士、探索者、あと盗賊。

最もレベルが高い人が戦士Lv42。

 

さて、ようやくレベル上げができそうだ。

俺はキャラクター再設定を頭に思い浮かべる。

まずはジョブ設定を確認。

 

 

 カレー 男 20歳

 盗賊Lv1 村人Lv1 探索者Lv1

 

 

選択可能なジョブに探索者が増えていた。

迷宮に入れば、探索者にはなれるらしい。

やっとまともなジョブを得たよ。

 

 

 探索者 Lv1

 効果 体力小上昇

 スキル アイテムボックス操作 パーティー編成 ダンジョンウォーク

 

 

これが探索者の能力か。

体力小上昇は、村人の上位互換だ。

何より、スキルが三種類もあるのが素晴らしい。

まあ今は情報が優先なので詠唱省略で、セカンド以降のジョブはまた今度だ。

 

次はこれだな。

必要経験値減少と獲得経験値上昇。

 

必要経験値減少は、普通に考えれば次のレベルアップまでに必要な経験値が減るのだろう。

獲得経験値上昇は、敵を倒して得られる経験値が増加する筈だ。

 

これは両方付けた方が効率がいいよな。

必要経験値十分の一にするのにポイントは31必要。

獲得経験値十倍にするのにもポイントは31必要。

必要経験値五分の一と獲得経験値五倍で、消費ポイントは30。

 

ワープは予め外してある。

 

キャラクター再設定、鑑定、詠唱省略、必要経験値五分の一、獲得経験値五倍でちょうど35ポイント。

 

…設定を完了したところで、前方に魔物を発見した。

 

 

 ニードルウッド Lv1

 

 

前方にいるのは植物型のモンスターだ。

木の枝が腕、根の部分が足の役割をしているのか、少しだけ人のようにも見える。

 

発見した敵に、パーティーメンバーが駆け寄っていく。

俺はその後を追随する。

まず前衛の戦士の一人が、剣でニードルウッドを攻撃した。

 

今度はニードルウッドが、枝を鞭のようにしならせて攻撃を仕掛けてきた。

それを、探索者が左手に持った盾で受け止める。

そうして、代わる代わる攻撃と防御を数人で受け持って戦う。

俺は武器を持っていないので、連携の邪魔をしないように、しかし注意は払っていた。

 

やがて、取り囲んで攻撃を繰り返したニードルウッドが倒れ、煙となって消えていく。

煙が晴れた跡には、木の枝が落ちていた。

 

 

 ブランチ

 

 

これはニードルウッドのドロップアイテムか。

ブランチというらしい。

 

俺はブランチを拾い、背負っていたリュックに放り込んだ。

戦闘に貢献していないので、せめて荷物持ちはする。

 

「よし。しばらくは俺たちが戦うから、後ろで見ておけ。おかしな真似をするんじゃないぞ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

俺の様子を見た先輩探索者が声を掛けてくる。

礼を言ったが、それに対しては返答はなかった。

 

いや、凹んでいるわけじゃないが。

リアクションがない程度で考えすぎだろうか。

すいませんすいませんとお互いにぺこぺこするのもキリがない。

 

嫌われてはいるが敵対したわけじゃない。

魔物が蔓延る迷宮の奥に置き去りにされたりしているわけでもない。

逸れたりしてはおおごとだからきちんと同行しよう。

 

仮に逸れてしまったら?

手持ちの武器がないのでフラガラッハを振り回すだけだ。

人目がないのは気持ちいいぜー!

 

置き去りにされたら……ワープで脱出を試みよう。

無事に生還できたらアランに訴えよう。

それで状況が改善しないなら逃げるのもアリだ。

死ぬかも知れないのに奴隷身分に拘るのは無駄だろう。

 

俺が商館に留まっているのは、遺族に賠償金を払うためだ。

死んだらそれも叶わない。

そうなったら自力で賠償金相当の金を稼ぐことに注力すべきだ。

 

形振り構わなければ何とかなる筈だ。

他国に逃げるとして、ジョブは変更できるし、ネックとなるのは奴隷身分だ。

これが何とかなるまで、インテリジェンスカードのチェックは避ける。

 

いや、待てよ。

奴隷には契約魔法の力が働いており主人が死ぬと道連れになるが、遺言による解放条件があった筈だ。

主人が亡くなって解放されたと言い張ることはできないか。

どこかに抜け道はある筈だ。

 

杞憂かも知れないが、考えておくのは悪いことではないだろう。

などと思いながら、探索の続きを行うのだった。

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