悪役令嬢、不登校を決める。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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20:転職済みですわ!

 

 

 

「というわけで、新ダンジョンですわ~!」

 

 

いつものように仮面とフードで身を隠しまして、やって来たのが新しい迷宮。『鼠と腐肉の迷宮』です。その名の通り鼠の魔物や、アンデッド系の魔物が出てくる場所ですので“準備不足”だと、結構苦戦しちゃう場所なんですよね。つまりまぁ、『何が出るか』知っていて『どう対策すべきか』を知っている私からすればイージーになっちゃうっていう……。

 

 

(ま、しょうがないことなのですが。)

 

 

そもそもこのダンジョンは、そこまで難度の高いものではございません。

 

初心者用ダンジョンの次に出てくるものなので、探索に入る冒険者の量も多め。つまりその内容が広く伝わっているものになります。この世界を生み出したと言えるゲーム制作者の皆様が考えたゲーム体験。ソレをそのまま遊びたいと考える私の場合、1人だけであれば『知っていたとしても』無防備で飛び込んだでしょうが……。

 

このダンジョンに出てくる敵が毒を使って来て、聖属性。一部の武器や職業が扱える属性が酷く有用なことは、私だけでなく護衛も、メイドのグレタですら知っています。

 

 

「つまり新しく『耐毒』の指輪が装備に追加されちゃいましたし、ポッケはアイテムで一杯ですわ! 不本意ですわッ! 防具も自分であつめたかった……ッ!!!」

 

 

まぁ普通に毒で死にますし、属性有利を突き続けるのはRPGの基本なので何も言えないんですが……。

 

紫色の宝石が埋め込まれた『装備者に完全な毒耐性を与える』指輪に、解毒剤と一時的にですが武器に聖属性を付与するアイテムをどっさり。私が『次はこのダンジョンに挑みますわ~!』と言った次の瞬間に、グレタに無理矢理持たされちゃった奴です。

 

今の私は公爵令嬢ですし、この体は既に私だけのものではありません。ワガママを許してもらう代わりに、私が存在するだけで起きる全てを保持し続けることが求められるのです。私が死んでしまえば私に仕えてくれていた人たちの雇用とかが吹き飛ぶわけですからね、体を大事にしないといけないのは理解しているのですが……。やっぱりこういう装備も、アイテムも自分で集めたかったです。

 

妥協しなければいけないのは理解できるのですが、納得できるのかはまた話が別なんですよね……。

 

 

「ま、もうどうにもならないのです。地面は変に湿ってますし、暗いですし、腐臭も凄い。雰囲気最悪で現実で見るとかなり酷いダンジョン環境ですが……。切り替えていきましょう!」

 

 

鼻を腐臭に適応させながら、そう唱え気合を入れ直します。

 

……あ、ちょうど前からゾンビ君がいらっしゃいましたわね。ちょうどいい機会ですし、最近覚えた戦法で相手してみましょうか! というわけでちょっと魔法を唱えまして。

 

 

「『火属性付与』からの……、レイピアッ!」

 

 

詠唱が終わった瞬間。お気に入りのレイピアに灯るのは、真っ赤な炎。

 

ゾンビがこちらを認識し、この薄暗いダンジョンの中で目立つその光を認識した瞬間。大きく踏み込み姿勢を低くしながら、敵の懐に滑り込みます。そしてここから狙うのは勿論顎下、頸動脈を貫き切るのではなく、柔らかい顎下から上へと突き上げることで、脳を破壊します。後は引き抜く際にちょいっとかき混ぜて差し上げれば、戦闘終了ってやつですわ!

 

 

「ゾンビには火も効きますからねぇ。上手くいって良かったです。……ちょっと不本意ですが。」

 

 

えぇ。御覧の通りわたくしは、今日の為に鍛錬と転職を済ませて来たのです。

 

これからもっとバリバリとダンジョン攻略しなくちゃいけません。足踏みなんかしているヒマないのです。……あ、転職ですが『ちょっとびょうきが酷いので神様に祈ってみますわ~』という名目で大量の寄進と共にやってもらった感じになります。何も隠さずヴァネッサの姿で向かい、別室で転職って感じですわね。原作の「すいらび」でもそうでしたが、教会ってお金さえ渡しておけば黙っててくれるような所ですので……。

 

あ、聖職者の皆様全員がそう言うわけではないですからね? でも教会からのお金で食ってる人もいるので、定期的に金投げないといけないのです。多少強欲な人の懐に入りますが、孤児院とかにちゃんと流れてますからねぇ。

 

ということで進化したわたくしの力、ご覧入れましょう。

 

 

 

[STATUS]

Name : ヴァネッサ・ド・ラモルヴィーヌ

Race : 人間 (転生)

Age : 15

Job : 魔剣士

Level : 1

EXP : 0 / 71

 

HP : 12 / 12 

MP : 14 / 14 

 

ATK : 5 

DEF : 5 (+3)

M.ATK : 7 

M.DEF : 9 

SPD : 12

LUK : 14

 

SP : 10 

 

Skill Slots: 1 / 3 『付与魔法』

 

 

 

(というわけでわたくし、魔剣士になりました! 器用貧乏ルート一直線な下級職ですわ~! ……これもっかい転職できないかしら、マジで。器用貧乏とか一番やっちゃいけない奴ですわよ。)

 

 

えーはい。こんなんなっちゃいました。

 

い、いや実はですね? 最初はもっと物理寄りにしようと思ったんですよ。ほら私の攻撃スタイルって、敵に突っ込んで回避しながら『攻撃が最大の防御!』って感じの奴じゃないですか? つまり物理攻撃力に補正が掛かる『戦士』や、速度に補正が掛かる『槍兵』あたりが最適な訳です。

 

の完全な近接職にしようかと思ったのですが……。

 

 

『ダメです。』

 

『……なんでグレタ。』

 

『解って言っているでしょうお嬢様。貴種である貴女様が魔法の力以外を望むなどありえません。公爵令嬢としての立場をお忘れなきようお願いいたします。……土壇場で替えるとかもなしですからね???』

 

 

とまぁこんな感じに強く言われちゃいまして、逆らえなくなっちゃった感じになります。

 

確か以前どこかで言った気がしますが、この世界における『魔法』というのは、かなり特殊な技能になっています。弓などの『矢を手に取り、弦を引き、放つ』という3段階の行動が必要になる遠距離武器と比べると、魔法と言うのは『詠唱などのキーを行使する』だけで高威力の遠距離攻撃を放つことが出来ます。

 

そんな特異な技能、国が放っておくわけがなくて……。どんどんと爵位を与えた結果。『貴族=魔法』の方程式が出来上がっているのが、この国です。つまりそんな国において、魔法が使えない貴族は、ゴミなんですね。はい。

 

い、いや職業に由来しない簡単な奴なら出来るんですよ? 魔導学院に通えるぐらいには修めてるんですのよわたくしも? まぁそもそも公爵級になるとそもそも魔法を行使する前に、護衛が何とかしちゃうことが多いので、そう使う機会がないのは確かなのですが……。

 

 

(魔法使いに満たない魔法しか使えないとなれば……、まぁ不味いんですよね。殿下の婚約者以前に、公爵令嬢として不味いです。)

 

 

まぁ私もそれを理解していたので、当初は『ある程度戦士系の職業コンプリートしたら、転職し直して魔法職取ればいいかぁ』と思っていたのですが、グレタにそう言われてしまえば、従うしかありません、ただでさえ不登校からのダンジョン攻略という厄ネタを隠してもらっているわけですからね。これ以上の負担を掛けるのはよろしくないでしょう。

 

というわけで業腹ですが、一応魔法が使える剣士である『魔剣士』に転職し、一旦こっちのルートをある程度極めたのち、わたくしが一番したかった前衛戦士職に移っていく、って方針にした感じになります。

 

 

(魔剣士でも出来ることは多いのです。剣振りまわせるだけ良かった、ってことにしておきましょうか。)

 

 

さ、まだまだダンジョン攻略中です。気を抜かずやっていきましょう。

 

そんなことを考えながら、ゾンビの胸を開き魔石を取り出します。コボルト相手にも結構やっていたので手順は慣れて来たのですが、このダンジョンからは腐肉が相手。匂いに顔を顰めながらも、何とか入手することに成功します。……にしても、魔石溜まって来ましたわね。

 

 

(屋敷にそのまま保管しちゃってるので……。今度売りに行かないと。)

 

 

魔物の体内から発見される、魔石、コレの販売が冒険者の稼ぎになります。私は特にお金が必要じゃないというか、『ダンジョンを攻略する』ということが目的でしたのでそのまま家に持ち帰って魔道具の燃料とかにしていたんですけども……。量が量ですし、そろそろ売りに行ってもいいかもしれません。そしてその入手したお金で、装備品のグレードアップ。って感じですわね。

 

 

(と言ってもグレタが防具関連を揃えちゃってますし、私個人で入手できそうなのは武器ぐらい。……お店に入るのにも護衛の許可が要りますし、今日の探索が終わったら話を通しておいた方がいいですわね。)

 

 

今後のことを考えていると、前方からまた足跡。その音の重さと大きさからまたゾンビと判断し戦闘へと意識を切り替えていきますが……、その直後に私の耳へと届く、背後からの足音。しかもゾンビなどよりも重く、早い存在。

 

 

(……足音を殺す様な感じではありません。となると後ろを詰めてくれている護衛の皆様が“試練”として見逃した魔物?)

 

 

一瞬そのように考えますが、戦闘には必要のない要素。すぐに思考を戦闘へと戻し、背後を確認すれば……。

 

ここにいるはずのない顔が、一つ。

 

 

「あ、いた!!! こんにちは~~~!!!!!!」

 

 

な、何で主人公がここにいるんですのッ!? しかも今日授業日でしたわよねッ! が、学校はッ!?!?!?

 

 

 






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