悪役令嬢、不登校を決める。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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6:虐殺ですわ!

 

「というわけで虐殺ですわー!」

 

「グギャッ!?」

 

「おーほっほっ! 雑魚狩りでのレベリングはRPGでの基本ですのよー!」

 

 

そう言いながら近場にいたコボルトを槍で突き殺していきます。

 

おほほ! スキルを持たぬこの身なれど、武芸は嗜み以上に励んでいるのですわー! 弓は外しましたけど、剣と槍を使えば雑魚魔物など一蹴ですわ! 虐殺ですわー!

 

RPGで一番重要なのは、如何に経験値を集めるかです。レベルを上げてステータスを高め、そしてその過程で資金も集めていく。単純な強さを上げ、集めた資金で装備を整えてどんどんと奥に進んでいく。そして行き詰れば最初に戻りまたレベリング。今の私にとってこの世界は現実ですが、ゲームシステムが生きているのならばやることは変わりませんわ!

 

 

「しかも初心者用のダンジョンだけあって危険は極小! ちょっと囲まれれば不味いですが、ここで負けるほど軟な鍛錬してませんわ! オラァ!!!」

 

「ァギャッ!?」

 

 

そう叫びながら、ナイフ片手に突っ込んできたコボルトに剣を投擲。そして即座に背中から弓と矢を引き抜き、こちらに向かって近づこうとする蝙蝠の魔物に矢を放って行きます。

 

遠距離より近距離で殴り合う方が楽しいため実家で弓の鍛錬を怠っていたせいか、ここまで何本も外しておりましたが……。流石に3mまで近づかれれば外すことはありません。

 

胴体を矢によって貫かれ、地面に落ちる蝙蝠。即座にその生命を終わらせるため踵を叩き込み、その感覚をブーツ越しに足裏で感じます。同時に周囲を確認し、これ以上の敵影が無いことを確認。戦闘終了ということで、少しだけ息を吐き出します。

 

 

「……やっぱちょっと嫌ですわね。まぁ慣れるしかないんでしょうけど。さて魔石魔石~。」

 

 

この初心者用のダンジョンですが、全5階層の可愛らしいものに成っています。

 

出てくる魔物はコボルトや蝙蝠、下の階層に行けばちょっと大きなトカゲが出てきますが、初心者用だけあって敵も初期レベル。出てくる最下層にあるボス部屋で待ち構えている敵もコボルト5人衆と優しいもの。ゲームではチュートリアルの場になっていましたが、現実でもまさにそんな感じですわね。

 

 

(ま、今の私では3体同時に戦える気がしないので、ある程度魔物がバラついている一階層から進む気はないのですが。)

 

 

1対1なら簡単に、1対2なら心に余裕をもって当たればまぁ対処できるのですが……。ちょっと3体相手にするとなると不安が勝ります。たぶん死にもの狂いでやれば勝てるんでしょうけど、ケガする可能性が出てきます。それを考えれば、ボスの5体の敵なんて不可能。挑んではいけない敵になります。

 

主人公は普通に一人で全部倒しちゃった才能ウーマンですが、私はまだレベル1のお雑魚様。職業も初期の貴族でしたし、スキルもないですから、無理なものは無理。私の命は私だけの命ではないのです、ご安全に行きましょうってわけですね!

 

 

「ん? おぉ次はコボルト2人組ですわね! どうやら武器も持ってないみたいですし……、ちょっと弓の練習をしてみましょうか!」

 

 

とまぁこの後は単に一階層をウロチョロ歩き回って魔物を殺し回るだけですから、ちょっと職業周りについて再確認しておきましょう。

 

この世界、いえ『すいらび』はそのゲームシステムに職業システムを起用していました。

 

さっき私のステータスに表示された『Job:貴族』のように、この世界に住まう人々は生まれながらに職を持っています。私でしたら貴族ですし、農家の家の子でしたら村人辺りでしょう。こういった生まれながらの職業である『最下級職』からレベルを上げて、一定レベルに到達すれば転職。より強い職に移行していくわけですね。

 

ゲームでは初期の職業をカンストさせたあと、剣をメインにするなら剣士。魔法をメインにするなら魔法使いのようにジョブチェンジしていき、それがカンストできればより上位の職に変化していく感じでした。転職自体は半分くらいのレベルで出来るんですけど、職業のランクが上がると、その分要求経験値が増えますからね。最大まで上げるのがセオリーです。

 

あと一度初期職業以外のジョブを取得すると、その職にあったスキルを入手出来たりもします。色々と派生がありますし、私もゲームを遊んでいたころはどのジョブのスキルが適切なのかなんて色々転職しながら考えていたものです。

 

 

(でもま、現実となったこの世界では誰も『ジョブ』って概念を持ってないんですよねぇ。)

 

 

まぁ確認する術がないですから、仕方のないことですけれど。

 

一応転職と言いますか、『転職に使用する天使像の前で祈りをささげると強く成れる』的なことは皆さん理解しているのですが、それで真に強く成れるかは『神のお気持ち次第』みたいな感じになっています。

 

みなさんご自身のレベルが解っていない状況でお祈りに行くわけですから、そうなっちゃうのも仕方のない話なのですが……。このせいでカンスト前に転職してしまうという悲しいことが起きてしまっているわけですね。

 

 

(適切な手段を取れば、初期値が低くてもある程度強く成れるのが『すいらび』だったんですけど……)

 

 

おそらく私みたいに口頭でコマンドを入力してみれば自身のステータスを見ることも可能だとは思うのですが『なんでそんなこと知ってるの?』という話になってしまいます。口外なんか不可能です。

 

多分パパ上とか、グレタ辺りの仲のいい使用人であれば受け入れてくれるとは思うのですが……。やっぱり宗教関連がネックなんですよねぇ。

 

 

(ゲームでも出てましたが、こっちの宗教ってキリスト教に似た『輪廻転生は無しで、天国と地獄がありますよー』って奴なのです。)

 

 

つまり『転生』という考え方自体が宗教的に結構アウトと言いますか。受け入れて貰いにくいと言いますか、最悪悪魔とかが乗り移ってる判定されて教会とかから指名手配される可能性があるのです。

 

そうなると滅茶苦茶周りに迷惑をかけてしまうので……、口に出来ない感じなんですよねえ。まぁたまにポロリしちゃいますが、大体グレタの前なので多分大丈夫です。

 

 

(それで何の話……、あぁそうそう。転職関連でしたよね。)

 

 

とまぁそんなわけで、自身のレベルを確認できないこの世界の人体の強さは、最適とは言い難い感じになっています。

 

人を集めて統計を取れば、ステータスとかが見れなくても何となく理解できると思うのですが、多分まだやったことのある人はいないのでしょう。ま、転職するには教会にお布施を払う必要がありますからね。貴族ならば問題ない額ですが、平民がそう何度も出来ることではありません。

 

 

「信仰という壁がある以上、あまり調べる気に成らないというのもありそうですが……。ま、考えても仕方のない事! とにかく今はレベリングを楽しんでやりますわ~!!!」

 

 

レベルを上げて転職、そしたらまたレベルを上げて転職! この繰り返しが基本にして一番楽しい所なんですわ! 単純作業と言われようとも、ちょっとずつ確実に上がっていくのが好きなんですの! なおかつ体も動かせてるわけですから、これ以上ない幸せですわ!

 

うん、やっぱりダンジョンって最高! 不登校して正解でしたわ~!!!

 

 

 

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