悪役令嬢、不登校を決める。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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8:隠しフロアですわ!

 

「お、やっぱりここ。ありますか。いいですわねぇ~!」

 

 

槍をぶん回したり、剣をぶん投げたり、弓矢を叩き込みながらダンジョンで遊んでいた私ですが……。ちょうど今、隠し要素を見つけることが出来ました。

 

『すいらび』は乙女ゲームではありますが、RPG要素モリモリのゲームでもありました。そんなゲームであるからこそ、ダンジョンの中にある隠し要素というのはたんまり存在していたのです。見えない壁の中へと続く抜け道だったり、クリア後に解放される不思議なダンジョンだったり。

 

それこそ。今私の眼の前に広がっている『隠しフロア』などは、血眼になって探していたものです。

 

 

「一歩ずつ壁に体当たりして確認、とかよくやってましたものねぇ。だからこそ今でも覚えているわけですが。」

 

 

私の眼の前に存在するのは、よくあるダンジョンの壁。

 

積み上げられた石を軽く槍で叩いてみると……。本来しっかりと固められているはずの壁に、違和感。そのままコンコンと叩いてみれば1つの石があちら側に抜け、壁が崩壊。ちょうど私が奥へと進めるいい感じの穴。このダンジョンにも存在する“その先”へと繋がる道が現れました。ごまだれ~! という奴ですわね!

 

ふふ、にしても! さーいこう!

 

やはりこのような自身にとっての未知を既知に変えていく感覚、隠されているものを解き明かしていく感覚! 今回は前世の記憶を参考にしたため少々削がれてしまいましたが、これほど素晴らしい娯楽はないでしょう! しかも前世は画面越しでしか体験できなかったものを、今はこの手で触れて楽しむことが出来るのです。

 

 

「やっぱダンジョン最高ですわ……!」

 

 

しかもしかも、この先に眠っているのは……。ちょっといい剣!

 

現在私が使っている初期装備とも呼べるこの剣より、2段階ほど上の品が待っているのです! 手に入れる以外の選択肢はありません! 確かに我が家の財力、そして自身のお小遣いを考えればすぐに買えてしまえる品なのですが、ダンジョン攻略という素晴らしい娯楽に家の力を持ち込むのはNG。楽しみが削がれちゃいます。

 

メイドのグレタにも言いましたが、攻略に必要な装備達は出来るだけ自力。ダンジョン攻略で手に入れた資金を持って用意すべきでしょう。そっちの方が絶対に楽しめますし、この世界の元である『すいらび』を設計してくださった製作陣の皆様。彼らの意図に沿って最大限楽しむのが、良いプレイヤーというもの。バグやチートはご法度なのです。

 

故に、今私が背負っている魔物のドロップ品。魔石などを売って、剣や槍を買い替えようと考えていたのですが……。ダンジョンで手に入る品は別! 確かに店でも同様の品を買い求めることは出来ますが、節約が出来るのならすべきです!

 

というわけで貰いに行きますわ~!!!

 

 

「よくあるんですよねぇ、こういうの。今攻略しているダンジョンで手に入る武器なのに、実は先に買っちゃってた、というもの。喜びたいけど素直に喜べないし、単にお金を浪費しちゃっただけというあの瞬間。それを先んじて回避できるとすれば、早めに確保しておきませんとね!」

 

 

そんなことを口ずさみながら、槍を構えどんどんと奥へと進んで行ってみます。

 

にしても……。結構解りやすい隠し要素なのに、これまで見つかっていなかったのでしょうか? この世界のダンジョンは、ゲームと違い攻略の痕跡が結構残るタイプとなっております。さっきも見ましたが、ゲームでは消滅していた魔物の死骸が残っていたりと、結構リアルです。

 

 

「初心者用のダンジョンと言えど、発見されてから結構な時間が経っているはず。それまでに一度も見つかっていない隠し要素が残っている、とは考えにくいですし……。おろ?」

 

 

ちょっと考え事をしながら歩いていると、何故か槍の切っ先に物体が当たる感触。

 

自然とそちらの方に視線を向けてみれば……。

 

地面にちょこんと座ったお食事中のコボルトさんたちが、大量に。え、えっと。ひい、ふう、みい、よお……。25匹以上いますわね。あは、どうやら蝙蝠さんをみんなでやっつけて、それをガジガジしながらご休憩をなさっていたようです。

 

 

「あ、その……。お邪魔しましたわぁ、わたくし。帰りますわね……。」

 

「ギャ。…………ギャギャギャギャ!!!!!」

「ギャギャーッ!」

「ギャ!!!!」

 

「やっぱダメですわぁぁぁあああああ!!!!!」

 

 

最初はなんか『あ、ども』って感じで返してくださりましたが、やはり相手は魔物。速攻で立ち上がりこちらに攻撃を仕掛けてきます。あ、あはは。まぁそうですわよね! そうなりますわよね! でも不味いですわッ! わたくし、今の実力的に3匹以上の相手は死の可能性が出てきますわ! 25はマジで無理ですわ~!

 

逃走ッ! 疾走! 大脱走! 公爵令嬢の辞書にも『敵前逃亡』の文字はありましたわ~!!!

 

 

(けどピンチはチャンス! 幸いコボルトは小さくて足が短い魔物、ゲームでもこの世界でも逃げやすい魔物ですわ! となれば……!)

 

 

状況さえ整えば、戦っちゃってもいい相手です!

 

眼に入るのは、先ほど私が壁にあけた穴。追いかけてくるコボルトたちから逃げながら、そこに飛び込み元の通路へ。そしてすかさず、周囲を確認します。見える限りに魔物はおらず、発見できたのはおそらく私が隠しフロアに入ったことで慌ててやって来る護衛の人達が何人か。

 

お仕事ご苦労様と言いたいところですが、今は逃走の真っ最中。即座に思考から切り離し、先ほど抜けた石壁を確認します。

 

 

(サイズ的には、ぎりぎりコボルトが2匹並んで通れる大きさ。そして石の裏側に見える、土以外の汚れ。おそらくコボルトたちが自身の巣として使用し、隠していたが故にこれまで見つからなかったのでしょう。ですがここで重要なのは、サイズです。)

 

 

3匹以上のコボルトが通って来れないのであれば、それすなわち1対2を延々を繰り返せるということに違いありません。コボルトたちとの戦闘において私の敗因に成るのは、背後を取られること。2体までなら十分対処できることを考えれば……。

 

この通路を飛び出して来たコボルトを即殺し続ければ、理論上わたくしの勝利は確実です!

 

そうと決まれば作戦開始。よちよちと奥の方から走って来るコボルトたちに向けて、どんどんと矢を放って行きます。命中率に難のある自身の矢ですが、相手は密集したコボルト。距離感さえ間違えなければ、確実に穿つことが可能です。

 

ということで斉射ですわ~!!!

 

 

(1,2,3。上手く刺さって4,5! っし! 上出来!)

 

 

敵との距離がある程度縮まった瞬間、即座に弓を地面に投げ捨て槍へと持ち替え。

 

タイミングを見計らい……。全力で、突き出します。

 

 

「グギャ!?」

 

「しゃッ! そのままぁ!」

 

 

先頭を走っていたコボルトに向かって、全力の突き。その胴体に突き刺さり、即座に相手を絶命させる刃ですが、それだけでは終わりません。そのまま全力で横へと振り抜け、その横を走っていたコボルトへと直撃。そのまま横の壁に叩きつけ、突き刺さったソレを振るいながら、相手の数を減らします。

 

後はそれを繰り返し、接近され過ぎた相手に対しては即座に槍から手を離し、抜刀して振り下ろし。決して優雅ではありませんが、もう拳も足も使いまくりまして……。

 

 

「最後ォ!!!」

 

「グギャァァァアアアアア!!!」

 

 

全力の右ストレート。決まった……!!!!!

 

ふ、もしかしたらボクサーもいけるかもしれません……!

 

 

「あ、あの……。お嬢様?」

 

「え? あ、やべ。」

 

 

ま、周りに護衛の方いるの忘れてましたわッ!? 

 

あ、でも戦闘終わるまで手を出さずに待っていてくださったんですのね。それは大変感謝です。おかげで大分すっきり……、じゃないッ! 弁明! 弁明しなければッ! 結構皆さんの前で素を出しているとはいえ。公爵令嬢として失望されてしまうのは絶対に避けなければッ!

 

え、だったら危険なことするな? それとこれとは話が別です。

 

 

「お、おほほ! ちょ、ちょーっと肩が凝ってしまって。手を伸ばした先にたまたま魔物がいましたわ~! …………忘れてください、本当に。あとグレタには絶対言わないで。」

 

「「「ア、ハイ」」」

 

 

お、お小言! お小言言われちゃう……!

 

 

「ま、まぁまぁお嬢様。私ら口は固い方なんで。ご安心を。」

 

「ですです、ストレス発散には暴力ですもんね。あ、それとこちらの水をお使いください。血を洗いましょう。」

 

「お嬢様、この度は御身を危険にさらしてしまい大変申し訳なく。この先は未探査エリアだと思われますので、我らに調査をお命じください。また、そろそろお時間ですので、そろそろ……。」

 

 

あ、うん。ごめんなさいね危険なことしちゃって。ただちょっといけるって思っちゃったから……。

 

それと。帰るのはいいけれど、この先の探索だけはやらせて頂戴。奥に宝箱があると思うの。それを開けるまでは帰れないわ。あ、罠の確認は良いけど、絶対に開けないでね。私が開けたいの。一緒に開けるのはまだいいけど、先に開けちゃわないでね。お願いね?

 

 

 





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何かあればすぐに飛び出すつもりな護衛さん達、とりあえず何も起こらず超安堵。
「「「マジで何も起きなくてよかった……。」」」
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