(仮)豹頭王の物語の一登場人物に憑依する話。   作:Marchhatter

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 ご感想をいただきました。ありがとうございました!

 中途半端に現代人の意識持ちのイシュトが混ぜっ返しますが、リンダとレムスには幸せになってほしいなー、と思います(グインはグインなので大丈夫)。
 それにしても序盤を読んでいるとイシュトとリンダの関係性、まるで昔の中学校のヤンキーと文武両道の女子学級委員長の感じ(「グイン先生、男子が!」みたいな)。再現の難しい甘酸っぱさです。

 
 筆者も早期での離脱組でして、じっくり読んだのは「サイロンの悪霊」からのケイロニア編あたりだと思います。今、初期の部分を読み直してみるといろいろ発見もあり、なんか読み飛ばしてたところに気づいたりもしています。
 ちなみに勘違い要素はありつつ、今回はやや強引だったかも・・。


 本編として勘違い成分は、まだまだ微量ですが。
 ほの暗い英雄譚(ヒロイックファンタジー)を闇鍋に見立てて転生者(?)をぶちこみつつ、勘違い道を究めようと日々精進したいと思う今日この頃です。



 また、多くのご評価をいただきました。ありがとうございました!


 第三者視点→偽イシュト視点です。


ノスフェラス戦役編後半(原作4巻「ラゴンの虜囚」&5巻「辺境の王者」)
014 紙と大空


(第三者(グイン一行)視点、ラクの村、某日)

 

「ねえレムス。イシュトヴァーン、どこに行ったか知ってる?」

 

「えーと。どこかは知らないけど、偵察って言ってたかな。すこし長く、4、5日くらい会えないって」

 

 男3人用の天幕で作業をしていたレムスは手を休めて、やってきた姉に答えた。

 

「そんなに長く?つまらないわね。」

 

 あの得体がしれない傭兵に対しては、まだ今でもリンダは若干の不審の念を抱いているが。

 ただ意外にも、彼は外見に似ず温厚でラクたちへの人当たりも悪くなく。

 この弟分への面倒見もよく、何よりリンダたちを救ってくれた恩人でもある。

 

 外見も、その、──結構恰好がよくて背も高いし、胸板も厚くたくましいし、──リンダは最近、彼のことが気になりはじめていた。

 もちろん、不埒な気持ちなどない。彼女は聖なる王家の者で、クリスタル公という許婚者を持つ身。

 異性として彼を見てはならない。もちろんそうだ。ただ、思わず目が惹かれてしまったりするだけ。

 だからせめてレムスみたいに、もう少し仲良くなってみたい。もちろん、あくまで普通の友人として。

 

 彼は非常にうさんくさいのだが、それは他面では、彼女の好奇心を刺激してしまうところ満載ということでもあるのだ。

 たとえば寝つくまで半ザンくらい、レムスに語ってくれる寝物語(天幕は隣なので、聞こえてくる)も。

 膨大な粘土板や獣皮紙の巻物を収めたパロ王家の書庫でも読んだことがない、ナリス兄様でも考えつかないようなドキドキする波乱万丈の話だったりして、すごく面白い。

 

 聖なる予言をぶち切られたことには、本来は巫女として怒りを覚えるべきなのだろうけれど。

 でも、(ヤーン)に逆らうなどという冒瀆的な言葉を発し。事実、神の定めたもう既存の身分秩序など、まるで意識にすらないかのようなフリーダムさなのだが。

(王子王女とスニたち卑しい矮人たちとで、まるで彼は態度がかわらない。しかも、パロでもときどき発生して処刑されてる革命思想かぶれや異端者のように、秩序に挑戦するという意識すらなさそう。)

 でも彼は邪悪だというわけでもなく、意外に公平で親切なのだ。徳が高いはずの、パロの腹黒い神官どもより、ずっと。

 庶民たちって、実はこんな自由で楽しい生活を送ってるの?──と、思ったりする。

 

 ただ、その彼の方はリンダに対し。

 塩対応でこそないのだが、一歩引いている気配。

 レムスには違うから、この身分のせいではない。やっぱり彼に対し無慈悲な予言をしてしまったせいか?初対面のときに半ば冤罪で罵倒しつくしたからか?

 ──と、リンダは過去の自分をすこし恨めしく思っている。

 

「──グインも、なんか行っちゃうみたいなこと言ってなかった?」

 

「うん。イシュトと話して決めたって言ってたね」

 

 詳細は教えてもらえなかったらしいが、グインも援軍を求めに行かねばならないらしい。

 今のところ、モンゴール軍はじわじわと支配を広げる様子はあるが、まだ苛烈な殲滅戦などは行っていない。

 カロイは本拠地を追われたが、そのうち降伏した者たちは協定を結び、周辺部のオアシスでの居住を認められ。

 偵察部隊や、この地のガイドとして傘下に加わることを許されているという。

 モンゴール軍と交戦した、グロ族のイラチェリという族長がこの前グインたちのもとにやってきて協議したときに、言っていたそうだが。

 モンゴールは、その支配領域を基本的に砂漠のモンゴール側にとどめている気配がある。

 そして今は「オームの子供ふたり、豹頭の大男、そして裏切り者の黒オーム」の探索にその努力を傾注しはじめているようだ。

(そう語るイラチェリの目が自分たちに据えられ、彼女は落ち着かない思いを味わった。)

 

 ただ、モンゴール遠征軍のやや抑制的な姿勢も、いつか本格的な侵攻に転じる可能性が高い。

 実際、近場の部族は圧力をかけられはじめているし。

 だいたいラク族にグインたちが匿われていると知られたら、確実に攻撃を受けてしまうだろう。

 

「それにしても、あんた何してるの?これ、何?」

 

 レムスのそばにある平たく四角っぽい革の容器を、鼻にしわを寄せながらリンダは覗き込んだ。近くには目の細かい布を使った、掬い網のようなものもある。

 革の容器には、溶かした泥のようなドドメ色の不気味なものが入っている。これって、まるで、──

 

「まるで、──まるで、馬の落とし物みたいじゃない!」

 

「うん、よくわかったね。馬じゃないけど、これ、ペヨテの糞」

 

「!なにやってんのよレムス!あの大きな芋虫みたいなやつでしょう!?

 う○こなんて集めてどうすんのよ。頭、大丈夫?」

 

「でもね、ぜんぜん臭くないでしょ?

 ほら、ラクの家も、これを塗り壁に使ってるんだよ」

 

「まあ、たしかに色はばっちいけど漆喰みたいなものかしらね。

 何、ラクたちにこれ作れって頼まれたの?」

 

「違うよ、これはイシュトとやってる研究なんだ。

 ──ほら、」

 

 レムスは得意そうにひらひらしたものを掲げてみせる。

 ごく薄い、しかし布と違って腰の強い膜のようなもの。これは──?

 

「なにこれ?あー、『紙』!?」

 

 キタイでは獣皮紙でなく、このような良く曲がる布のようなものが字を書くのに使われているのだ、と教師に説明され。

 そのサンプルをみせられたことを、リンダは思い出す。

 

「うん。これは試作品で、不純物が多くて質が低いってイシュトはがっかりしてたけど。

 でも、これってペヨテの糞だとか、オアシスの岸に生えてる雑草からでも作れるみたいなんだ」

 

 リンダは改めて、その黄ばんだ紙を手に取る。

 確かに粗悪で、けば立った繊維が表面に出てきてるところもある。

 ただ、濃い色のインクを使えば、りっぱに実用には耐えるだろう。

 

「あいつ、本当に変な奴ね。

 ──で、これを使ってあんたは何作ってるのよ?」

 

「これ。ほら、みて」

 

 その紙を折り曲げて作った妙なものが、レムスの手から放たれると。

 それはまるで命あるもののように、そう、空を飛ぶ鷲のように、空中をなめらかに滑っていく。

 

「!──すごいっ!」

 

「すごいでしょ?

 これ、『飛ぶ機械(飛行機)』って、イシュトは呼んでる」

 

 レムスはにこにことしている。その顔を、彼女は改めてまじまじとみつめた。

 気がつくと彼の周囲には、様々な類似の形の物体がある。どうやらイシュトヴァーンとレムスは、ここで空を飛ぶ機械を考案して試作していたらしい。

 

「これ、今は玩具みたいなものだけど。

 これが大きくなって。人が一人、乗れるようになれば」

 

「──分かるわよ。

 地面の起伏、凹凸によらず、鳥のように空を飛ぶ。

 飛脚、かたなしね。敵の陣の様子なんか、丸見え。」

 

「うん。──でもさ。

 ただ、飛べるだけでもいいと思わない?」

 

 ──リンダも楽しかったでしょ、あの黒い塔からグインと飛びおりて空を飛んだとき。

 

 そう、楽しそうに語るレムスの様子に毒気を抜かれながらも。

 リンダは、パロにいた時よりも、この弟分が。

 ずっと幸せそうにしていることに、安心感と同時にわずかな寂しさを覚える。

 リンダが当たり前のように楽しく過ごしていたクリスタルの宮殿は、この弟にはあまり楽しい場所ではなかったのだろう。

 

 ひとしきり弟と会話したところで、来客が訪れた。   

 豹頭の、巨大な姿。

 

「レムス、ここにいたか。

 ──近場に哨戒に行くのだが、来ないか。危険なところには、行かない。軽く剣術も見てやろう」

 

「うん、行く!行きたい!」

 

 ぱっと立ち上がるレムス。外で、「飛ぶ機械」の模型を試してみたいらしい。

 哨戒にいくときは、安全な場所でも軽装備を身に着ける必要がある。その準備をしに、外に出て走っていくレムスの後ろ姿を見送る。

 女の子みたいに細かった腕も、すこし太くなった?

 ここら辺もずいぶん変わってきたわね、と思うリンダ。

 

(あれだけ嫌がってた剣術も、最近は嬉々としてやってるのよね。

 まあ、いい変化ではあるけれど、──)

 

「──その、だな。イシュトヴァーンのことだが。」

 

 話があるのか、残ったグインが。

 彼にはひどく珍しく、ためらいがちに話しかけてきたので。

 レムスの変化についての彼女の思考は、中断した。

 

「奴には、気をつけろ。

 いや、そういう意味ではない。そうではなくて、だな──」

 

 要は。

 あいつ(イシュトヴァーン)は、()()()()()()()()なのだから、今後は二人きりにはなるな、とグインは言いたいらしい。

 譲位してマルガで農耕や陶芸などして悠々自適の引退生活をしていた祖父母のいうようなことを、ひどく婉曲に伝えようとするグインがどこかおかしくて、彼女は思わず笑ってしまった。

 

「ふふっ、グイン、大丈夫よ!

 私、許婚者のいる身だし、身分違いだし」

 

「ただな。その。若い男というものは衝動的だし、無理矢理、──」

 

「そのときは、力いっぱいタマを蹴り上げてやるわ!」

 

 そこで折よくスニたちがやってきて、オアシスに美味しい木の実を取りにいこう、と誘われ。

 その話は中断し、リンダはセムの若い娘たちに拉致されてしまう。

 

 グインは、その後ろ姿を見送りながら、ため息をついた。

 グインとてこのような、仲間を告発するような注意をするのは心苦しい。

 あの謎の多い傭兵も、彼らのためにならぬことはしたことがないし。

 なにより、本当の意味で偏見なく。

 つまりリンダやシバたちのような過大評価も、ゴーラの騎士たちのような過小評価もなく、グインの異形をただそのままに受け入れてくれるのが、彼なのだ。

 ただ、それと彼の性的な危険性は別だ。

 

 そう、よく考えれば。

 (イシュトヴァーン)は色欲盛りの年頃。それがスタフォロス城脱出以降、ずっと禁欲生活を送っていることになる。

 グインの目には、リンダは幼い少女でしかないが。

 (イシュトヴァーン)の目は、時々彼女のふくらみかけの胸に据えられていたこともあった。

 そして今、周りにはセム族しかいない。彼はセムの女たちにも愛想はいいが、流石に守備範囲外のようだ。

 そしてスタフォロスでの同僚の声を参考にすると、もとは相当に女好きで強姦魔疑惑もある彼。

 

 そして、この前の出来事。

 モンゴールへ間諜として潜り込ませることを決めたときの、彼との会話。

 あの公女、()るか?と誘ったイシュトヴァーンの目は、まぎれもなく本気だった。

 誤解かと思ったが、穴兄弟になることを示唆する言葉もあり。その真意はたがえようもない。

 もちろん公女を捕らえて、あるいはたらしこんで凌辱することは。

 血を流さず、ヴラド大公の後継にも、婚姻政策の駒にも彼女を使えなくする算段として非常に有効だということは、わかる。

 ただ、その発想はあきらかに異常者(サイコパス)のそれだ。

 たとえ敵だからとはいえ。リンダはそのような非道な手段を採ったイシュトヴァーンを許さないだろうし。

 王としてのグイン自身の倫理観にも、そんな手段は到底沿うものではない。

 

 もっとも(イシュトヴァーン)自身も、迷っていた。

 選択肢として排除しないと言いつつも、そんな非道な手段はできれば避けたいという口ぶりだった。彼にも、最低限の良識があるが故の葛藤だろうが、──。

 

(それはそれで別の意味で心配だ、イシュトヴァーン。

 お前が()()()()()()のため、潜入先でへまをしなければいいのだが)

 

「リアード!パロの真珠も、用意ができた!」

 

 シバの、元気な呼び声。

 仲間(イシュトヴァーン)のことをまだ心の隅で憂慮しながらも、苦労人のグインは。

 哨戒に出る準備が整ったレムスと、シバたちのもとに急いだのだった。

 

 ──────

 ──────

 

(イシュトヴァーン視点、ケス河ほとりのモンゴール軍本拠地、某日)

 

「ほう、アルゴン中隊?──見慣れぬ顔だな。

 アルゴン中隊は、あの矮人の村を潰しに行かせたはずだが?」

 

 マルス伯(ほぼ間違いない)の青い目が、じっと僕を見ている。不審がられている?

 落ち着かない。

 

「はい、閣下。私はもともとアルヴォン所属です。アルゴン中隊には臨時配属でして。

 アルゴン中隊へ伝令兼増派として出され、そのままセム襲撃に参加。現在は臨時配属であります。」

 

 ほうほう、と厳格そうな顔が納得して頷く。

 

「そうか。ははっ、ずいぶん使い倒されておるな?

 悪いが伝令を頼みたい。殿下の近衛に、マルスが『月の件』で報告があると。

 この証を持ってゆけ。殿下の天幕を教えてもらえよう」

 

 おおっ。ラッキーじゃないか?

 明らかに警備は厳重化されていて、公女の天幕がどこかもわからない状態だったんだ。

 かつてはあきらかに重要人物とわかる天幕だったのが、今回は一般兵と同様になってて。

 目のいいイシュトでも、まだ見つけられていなかったんだよ。

 

 それに。

 何がモンゴール軍上層部で起きてるのか、休憩中の一般兵にも聞いてみたんだけど全く情報がなく。

 仕方がないから忍び込むしかないか、なんて思ってたけど。

 これは、千載一遇のチャンスではないだろうか?

 

 ちょっと首の後ろがチリチリする感じは、イシュトセンサーでは危険ってことだろうけど。

 もともと危険は承知の上。虎穴に入らずんば虎子を得ず、だよ。

 

 身につけたモンゴール式の敬礼をし、指示を受けて急ぎで走っていく僕の後ろ姿を。

 マルス伯の不吉な青い目がじっと見ていることに、そのときの僕は気づく由もなかった。

 

 ──────

 

「『月の件』?──ああ、そうか。

 伝令よ、しばし待て。これから緊急で幹部会議がある。すぐ伝令に立ってもらうので待機せよ。

 おい、エクハルト。『各隊への伝令』を5人よこせ。こちらで待機だ。」

 

 途中の番兵にマルス伯からの証を示すと、大天幕前の小広場に案内された。

 当番の近衛兵は、いかにも腕が立ちそうな白騎士たちだったが。

 何か言い含められていたのだろう、すぐにピンときた様子で手配を始める。

 会議後すぐに伝令で出すためだろう、僕は都合よくこの広場での待機を許され。

 おそらくは各隊への伝令のため、アルヴォンの赤騎士やタロスの黒騎士、ツーリードの青騎士などの伝令が集められ、僕もそこに加えられた。

 

「──月の件だと聞いた」

 

「リカード、お呼びにより参上」

 

 モンゴール軍の腕利きの武将たちが集まり始めて、なんとなく居心地が悪くなってくる。

 さすがは軍事国家モンゴール、相当に腕が立ちそうなやつらが揃っている。

 しかもどいつもこいつも来る面々、いずれもバリバリに殺気を放ってるんだもの。

 まあ、戦時中だから当然なのかな。

 でも幼いころから戦場稼ぎをしていたイシュトにして、こんな緊迫した空気はあまり記憶にない。

 

 ボリュームを限界まで絞ってた「元イシュト」の警戒センサーのアラートが脳内で音量を増す。正直、気が散ってしまう。

 僕は、とりあえず。

 この場を離れてちょっと立て直そうか、と思い始めるが。

 

「おい、どこに行くのだ。そなたの手も必要だ。」

 

 僕がその場を去ろうとしたとき、青い目の将軍が立ちふさがった。マルス伯だ。

 横にはアストリアス。こちらはいぶかしげに僕を見つめている。

 なるほど(イシュトヴァーン)に似ているが、ちょっと屈折してるイシュトヴァーンと違い、典型的な体育会系ハンサム男という感じ。

 ──ただ、勝てないとは思わない。僕の中のイシュトヴァーンが、そう感じてる。

 

 その斜め後ろにいるのは、マルス伯の副官だろうな。ガランスとか言ったか。

 これも相当できる。なかなかの腕、だが勝てなくはない。

 

「エル、だったか?

 これは大功を挙げる機会となるかもしれぬぞ。我らの護衛としてついて参れ」

 

 しかも親しげにマルス伯に背中を叩かれ。

 やむなく僕は彼らに伴われて、大天幕に入った。

 

 ──このときの僕は大馬鹿野郎だった。

 イシュトセンサーの警告を軽視せず、なりふりかまわず逃げておくべきだったんだ。

 ただこのとき、センサーが鳴りっぱなしなのがうるさすぎて、元イシュトの意識を寝かせてほぼ完全に切ってしまった。

 それに、機密情報が話されるかもしれないという期待。

 そして現代日本人的な流される性質と危機感のなさもあって。

 僕はそのまま、ほいほいとマルス伯に伴われ。

 会議があるという大天幕に入ってしまったのだった。

 




(覚書)
○グインたちの視力と視野
 アムネリスは「100ゴル先の」(※1)、イシュトヴァーンは「1タッド(約1.5km)先の木の上のバルト鳥」(※2)をみることができる。後者はフカシかもしれないが、引くくらい目が良いようである。
 ※1→「荒野の戦士」第1話3(48頁)。「私の100ゴル先の鳥を見る目でも、たしかにはわからなかったが」
 なお、「ゴル」という長さの単位はこれ以外にはあまり見受けないが、ゴーラ(あるいは辺境)の単位であろうかと思われる。
 ※2→「荒野の戦士」第4話1(203頁)。(グインがイシュトヴァーンにアストリアスら赤騎士を主にする追手の数を確認するよう求めたのに対し)「この俺の目は一タッド先の木の上のバルト鳥だって・・・」。

 グインの頭はその構造上、巨大な豹そのものと考えられる。グインの視力は豹のそれと思われるところ、豹の視力についての記述は日本語文献では見当たらないものの、外国語の情報では人間よりわずかに目が悪い(ただし夜間視力はずっと高い)と述べる記述がみられる(https://blog.londolozi.com/2023/02/06/how-leopards-see-the-world/ など)。
 そのため、この物語の中では、上記の記述に沿って、グインの昼間の視力は並外れて良いというわけではなく、「普通に目の良い人間なみ」と想定したい。 

○謎の「鞍つぼ」
 原作では、しばしば騎乗の人が「鞍つぼを叩く」という描写がある。
 →(例)第4巻第2話2「小さな拳で激しく鞍つぼを叩いた。」
 ただし、この「鞍つぼ」は、鞍の一番低くなっている場所(本来なら人が座る位置、お尻の下)であり、とても叩けるような場所ではない。叩くためには鐙を踏んで腰を浮かせ、その股の間の鞍を叩くことになる。あのアムネリスがそういうことをするとは思えない(いや、しているのならそれはそれで面白いが)。
 おそらく原作者は鞍の前(馬の首の近く)の部分、「前橋」のところを指しているのではないかと想像されるが、あまりに多数回出てきたのでこのキレノア大陸では特殊な形状の鞍があるのだと想定しても別にいい気がしてきてしまった。筆力は偉大だ。
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