(仮)豹頭王の物語の一登場人物に憑依する話。 作:Marchhatter
確かに作品としては終わっていないので、説明を修正しました。
また評価いただいた方も、ありがとうございました!
続きです。あまり進んでいません。
レムスとリンダの騎乗の扱い(騎士1名+双子で同乗なのか、双子のみで同乗か)は、推測です(覚書記載)。
結論から言えば、最悪は免れた。
ああ、最悪ってのは、最初に発見した黒騎士隊になってグインにバッサリ
ちなみに。
僕が憑依する前のイシュトヴァーンの勘の冴えは有名だったらしい。その貯金が利いた。
僕たちの小隊を含めて4個の捜索グループが組織されて探索にまわっていたらしいのだが。
嵐で本降りになりはじめたあたりで僕は小隊長殿に具申し、砦に戻らず風雨を避けて野営することにして。
双子の可能性が高いと言って、森林火災の炎の方向にいちはやく動いて焼け跡を中心に捜索することを強く進言し。
結果として無事に、双子とグインを確保。
野営地から直行したので、おそらく城から捜索隊が出た原作よりずっと早い。
「でかいかまどがロースト」でグインたちが朝ごはんを食べる前だ。小隊長殿もお喜びである。
「イシュトヴァーン、お前に功ありと上申しよう」
「御無用に願いたいもんで。意見を採用された小隊長殿の功かと」
ヴァーノンに喧嘩を売らねばならないかもしれないからな、やんわり、しかし断固辞退する。
だがこのやりとり、周りの兵に奇異の目で見られる。なんか違和感があったみたいだ。やらかしたかな。
違和感持たれたのは、口調か行動か?イシュトヴァーンだったら、積極的に売り込んでたのかもしれない。
わからない、胃が痛い。
次に、口実をつけて護送役を買って出た。
まあ、小隊長殿もグインみたいなあきらかにヤバくみえる奴(ほら、グインが騎士たちからビビられてる描写がある)には距離を開けたいみたいだし、また双子がルードの森の妖魅に攻撃されることから守るために、捕虜たちの近くには腕利きを置いておきたかったんだろう(「
グインは原作どおり単独で馬に乗せられ、両側に暑苦しく騎士が付いている。
双子の横に馬を寄せると、気の強そうな巫女姫がキッと紫の目でこちらを睨んだ。
バイザーを上げた俺は微笑み返してみるが、呪い殺されそうな怨嗟の視線が返ってきた。
まあ、この時期のリンダは(まあ当たり前だが)親を殺されてるし、モンゴール殺すウーマンだからな。
僕としては、どうにか友好関係、──とまでは言わぬまでも非敵対的な関係を築く必要がある。
もちろん保身のためだ。ルートが多少違っても、原作どおりに進めるための保険。
双子の容貌は可愛いらしいが、特にロリコンの気のない僕にはさほど響かない。
「イシュトヴァーンと言ったわね?
ヤヌスの目はごまかせない、あなたもきっとこの悪行のせいで死んで地獄の炎に焼かれることになるんだわ!」
「そうか。──生きてる間にそうなるかもな」
まあ、イシュトヴァーンの後半生なんて地獄みたいなものだしな。
そう思って淡々と返すと、一瞬、気まずそうな顔で怯んだ気配があった。
しかし気を取り直したのか、またつけつけと続ける。
「あんたたちモンゴール人は信義の欠片もない蛮族よ!
グールの這いずる、神に見放されたこの地にお似合いよね!」
「ああ(──モンゴール人ではないんだけどなぁ)」
お姫様はなおも罵言を投げつけてくる。まあ侵略された側の心情からしたら仕方ないのかもな、とは思うが。
かなり一面的に、安全な先進国(?)からの、環境の厳しい新興国に対する差別意識むき出しな嫌味を浴びていると、萎えてくるし怒りも生まれてくる。
──こんなところも両国の関係悪化の一因だったのかもしれないな。「ぶぶ漬けでも」じゃないけど、なんか婉曲な侮辱表現とか巧みそうじゃん、パロって(偏見)。
例えれば、グレタさんに正論パンチで叱られて切れてしまい、トラ◯プを当選させてしまったアメリカの中下流層の気持ち。
割り箸や稲作は環境破壊だぞ、と当の森林破壊国から難癖つけられてる日本人の気持ちを煮詰めた感じかなー。
世界は君が思うように単純にはできてはいない、と言い返したい。
もっともグイン・サーガの世界、結構善悪が単純にできてたりする。この段階のモンゴールなんて、騎士がひと山いくらで撃ち殺される悪役国家。ヴィランみたいな扱いだよな。
「言い返せないんでしょう、そうよね、卑怯者の屑!」
「イシュト、黙らせろ!」「馬に揺られて舌を噛みきる、よくあることだ」「犯せ、いつもみたいによ!」
堪りかねた外野からから怒りの声がかかる。怖いぞ。
後、最後の奴、頼むからやめてくれ。リンダの視線がまさしくゴミを見る目になったぞ。
あと多分、イシュトヴァーンは強姦はしたことがない。そんなことしなくても和姦でいけるからな。
俺と同じ外人傭兵はヘラヘラしてるが、この国生え抜きの兵にしてみれば耐え難い侮辱なんだろう。バイザー越しの目は怒ってる。
この時代、名誉が命より尊ばれてる。ほら、鎌倉武士の世界だよ。舐められたら◯す、っていう。兵士仲間の間でも決闘騒ぎは珍しくない。
ただな、これ。貴人の口塞ぎという後で責任問われそうな汚れ仕事を、切り捨て可能な外人傭兵に負わせる魂胆も透けてみえる。乗らないぞ?
「あんたたちモンゴール人は猿と同じよね、理解できるほどの脳みそが、キャッ!」
板ばさみで困った僕は「俺」に任せてみる。殴ったりせずに穏便に対応できるか?と念じながら。
行動権をとった「俺」は、剣帯につけた小物入れに手を入れ、次いで悪態をつく彼女の口に手を伸ばした。
彼女はなにか危害が加えられると思ったのだろう、目を閉じて身を固くするが。
その口にあてがわれたのは、ヴァシャの乾果。あー、子供への飴玉みたいなものだな。
しかしやっぱりリンダが殴られるかと思ったのかな、このいきさつに聞き耳を立ててた後続のグインからは一瞬、濃密な殺気が噴き出ていた。
彼女は口を開けない。仕方がないので、目の前で自分が噛んでみせる。
ニヤつきながら軽くほい、と投げ上げて口に入れてみせるのはちょっと行儀悪いかもな。上下動のある乗馬中ということを考えると結構難易度高い気もするが。
「毒はない。上物だぜ?
──そっちの坊や、どうだ。腹、空いてるんだろう?」
「あ、ありがとう?」
姉のリンダが口に入れてくれないので、矛先を変え。
馬を寄せてレムスに押し売りした。未来のパロ王に恩を売っておかねば。
こっちは意外に素直に受け入れてくれて、もきゅもきゅと噛んでいる。
14歳には見えない、まだ小学生高学年みたいな感じだ。姉は中1って感じ。
「なんのつもり?──けがわらしい下民の食べ物などよこして。
人殺し、強盗どもの施しを受けて感謝しろ、とでもいうの?」
「朝飯代わりでさあ。──悪態つくにも逃げるにも、閣下の尋問受けるにも、体力は必要では?」
それとも先に備えないのが王様たちの帝王学とかいう奴なんですかねー、と嫌味を返すと。
ぐぬぬ、と黙ったものの、お姫様の尖った視線には、なおもヘイト蓄積中。
僕の親切押し売り(?)は功を奏した気配はない。ただ、レムスは気を悪くした風はない。なんなら美味しいと思ってくれてるように思える。
リンダに再度差し出すと、ヴァシャは口に入れてくれた。だが同時に指を噛みつかれそうになる。
まあここらへんも含めて、原作1巻のリンダは王族というより町育ちのティーンエイジャーみたいだよな。
「イシュト、勝手な真似はよせ」
「まだ子供だぜ?お前の弟と似たようなもんだ。
ルードの森で2日間、砦までまだ7タッド。体力を持たせる必要があるだろう?」
「──小隊長殿たちの前では、やめとけよ」
僕に声を掛けてきたのは、レムスたちの乗る馬の手綱を牽いて先導しているアラリック。
徴兵組だが、腕利き。一目置かれている。寡黙だがまあまあ温厚な奴だ。
家は半農半猟、5人兄弟の長男で、レムスと同年代の弟がいたはず。
兵役が明けたら従士への任官を打診されてる。本当は早く故郷に帰りたいって「俺」は聞かされたことがあるらしい。「僕」の憑依前にね。
「合点承知。
──ああ、そっちの、豹あたまの旦那。仲間はずれにして悪いな、届かねェし、数もねェ」
「俺はいらん」
こっちは取り付く島もない感じだが、敵対的な感じはしない。
やがて捕虜たちが俺たちの耳を気にしながらも、ぽつぽつと話し合いはじめた。騎士たちも特に邪魔しない。
原作でもこういう、パロとかゴーラについて説明があったな、と。
僕は口を挟まず、既視感(既聞感?)のある会話に耳を傾ける。
そして一行は、砦に到着した。
──────
城門と大手門の間にあった、増援組の天幕が撤収作業中だ。先ぶれが城に30人の未帰還者を出したことを報告したからか。
あるいは、昨日別の方面でも死亡者が出たのか。それで城内に空きができたってことなんだろうか。
いずれにしても、すさまじい人員損耗率だ。
原作どおり、リンダが城門で砦の滅亡の予言をして、みんながビビっている。
僕はじっと耳を傾けていた。
「イシュト、──そうなのか?」
アラリックが指を重ねるような魔よけのしぐさをした後、聞いてきた。迷信深い連中だ、数人が勘の鋭いと定評のある僕に目を向けてくる。
だが、この質問には答えられない。
「さあて、俺にはわからん。
そうなのかもな、巫女姫だしな。」
せいぜい、そういうにとどめるが、1対1なら脱走を勧めたい。
原作では、
この騎士ども、女好きだったり乱暴者だったりもするし、敵に対して酷薄な一面だってあるが、それなりに友人や家族の間柄では実直で素朴な連中なのだ。
僕はこの騎士たちの中に生き残る者がいないことに、改めて暗然とした思いを抱いた。
──────
その後は原作と同じだ。伯爵のところに報告、リンダと伯爵のやりとり。
ここで改めて喧嘩売ったら原作どおり牢に入れてもらえるかな、と僕は思ったが、さすがに無礼打ちされそうで思いとどまった。
レムスたちは収容されるようだ。まずいな、僕が入るはずの牢が空いてる。リンダは、スニとは別部屋になってしまう。
(ただ、この点は原作が少々訝しい。リンダのような重要人物を、危害を加えられるかもしれない蛮族と相部屋にするのはちょっとおかしいんだ。牢番が阿呆だということだろうか。)
──────
さて。さっきまでの僕は原作との乖離に頭を悩ませていたのだが。
なんと、原作の強制力というのだろうか。
僕は思わぬ経緯で剣を取り上げられ、装備を剥がされて牢に放り込まれることになってしまった。どうやら出発前にヴァーノン伯を罵ったのと、帰り道でリンダとレムスに好意的に(?)振舞ったことがいぶかしい、と密告されてしまったらしい。
ただ、放り込まれた牢が原作と違うんだ。──そう、スニのいる塔のてっぺんの部屋になってしまった。
おそらくグインとレムスが放り込まれた隣の牢、原作ではイシュトヴァーンが入れられた牢に、リンダがいるんだろうな。
白い塔の頂の部屋に押し込められる。手首の縄もほどかれないまま、突き飛ばされて倒れ込む。
背後でがちゃんと閉まる、重厚な扉(ちなみに、なんと石の一枚扉なんだ。原作ではグインでも壊せず鍵を取りに行ってる。やはり貴人牢だな)。
部屋の中のくらがりには陰火のような緑の光点。あきらかに威嚇の声。セム(矮人)の娘、スニだ。
ルームメイト(笑)は、矮人とはいえうら若き少女なんだよな。
そこに女好きで悪評高い僕を押し込めるという所業。
去っていく牢番のヒヒヒという笑い声も、きっとそういうことを期待してるんじゃないのかな。クソっ。
──さて、どうしたものか。
猫のような緑の目をみつめながら、僕はため息をついた。
(覚書)
○リンダとレムスは同じ1つの馬に乗り、グインは別の馬に載せられている。リンダとレムスに同乗者がいるか、不明。
同乗者がいると思われる事情
→第1巻 第1章 3 小隊長発言「剣をすて、ウマの前に乗せられていくか、──」
いないとも受け取れる事情
→同 グイン発言「子供たちをまともに扱ってやれ」→「リンダとレムスが1頭のウマ、グインは別のウマに乗せられたのである。」(騎士の前に乗せたわけでなく、2人で1頭に乗った?14歳だとそれなりの体重であるし、グインと騎士が同乗すると馬が潰れそう)
※本作中では同乗者なし、誰か別の騎士が双子の馬の轡をひいていたのではないか、と解釈します。
○捕虜たちは、会話を許されている(しかも、縦列になった馬の間で話している)。また、捕虜と騎士の会話も、とがめだてられることはないが可能なようだ。
→第1巻 第1章 3
→第1巻 第2章 1
○原作ではリンダもレムスも危険人物であるグインもスニももちろんイシュトヴァーンも、牢の中では手足を拘束されているという記述はない。また、廊下から見やすいという記述もない(廊下から見えるようなら、イシュトヴァーンが隣の牢との穴や外への穴を開ける作業など、到底できないだろう)。ワンルームマンション感覚のような緩さだが、おそらくは手足に枷があったか、廊下側の一部は格子になっていたのではないか。