(仮)豹頭王の物語の一登場人物に憑依する話。 作:Marchhatter
20260329 微修正(グインによる炭の投擲方法、レムスからの粉袋受け取り時の心理等)
(第三者視点、レント海、夜から早朝)
「どうだ、降伏の白旗は出ねえのか」
「出ねえな、ますます楽しみだぜ」
カラヴィアのラノスは、この「ガルムの首」の船長である。
甲板長のロハスとともに、まあ考えつく限りの悪行はやってきた。
それもこれも、この「ガルムの首」というアグラーヤの戦装船をとある機縁でかっぱらうことができたからだ。
ただこの「ガルムの首」も、手入れをケチったせいでかなり老朽化しており。
そろそろ遠洋は危ないな、この際新しい船を奪うか、実入りのいい仕事をして闇の仕事を受けてくれる船渠に頼んで補修してもらおうか、と思い。
もっとも船の多いあたりをすこし沖にはずした、このあたりに網を張って商船を待ち構えていたのだった。
「でもな。荷積みしてるのは、ありゃあガティ麦かなんかじゃねえかな。喫水の沈みからみて」
「だとしたらあんま金になんねえな。船も鈍足だしな。乗せてる客に期待か」
「ガルムの首」号のやっているのは、海賊の中でも外道な、いわゆる畜生働き。
財はありったけ、かっさらうのは当然として。
生きたまま捕えた男は板を歩かせるか、奴隷に売り飛ばすか、指を何本か落とした後に刃を潰した剣を与えて練習台にするか、体に刃を入れて鱶のいる海に落として食われる様を観察して遊ぶ。
少年や女は皆で楽しんだ後で、生きていれば奴隷に売る、──生きていれば。
もっとも妙な趣味の連中も多いので、1、2人しか生き残らないし見た目もすぐ汚くなるので、売りに行くのもダルくなってそのまま殺すこともままある──そんな連中だ。
「いつもみたいに焼き払っちゃ、まずいのか。かったりい」
「船か金がいる。鈍足でも、売れば船は金になる。無傷か、修理できる程度でねえとな。
そろそろ火矢、やめとくか」
2、30人人ばかりの船員たち(輪番の切り込み役だ。操舵や漕手の番が当たった連中は、船倉の中にいる)が、甲板に上がっている。
もう東の空が明るくなっているので、闇の中でもすぐ片目を使えるよう、片目は手巾で隠したいでたち。
船員たちは手巾で隠すまでもなく片目の眼帯だったり、片腕が凶悪なフックの義手だったり、顔半面が刀でそぎ落とされてたり、切り裂いて楽しんだ女の服を思い出と称してまとっていたり、なぜか着ぐるみのように熊の毛皮を身に着けていたり。多様な個性に富んでいた。
しかもどれもこれも「人の二、三十人は殺していそうな」*1凶悪な様子である点で共通している。
「よしっ、鉤つき鎖を投擲しろ。矢で牽制だ」
非常に柄が悪いが、だが操船にも熟達し、手慣れている連中である*2。準備も怠りない。
他の海賊船のように、剣で切られやすい鉤つき縄でなく、鉤つき鎖を投擲する小さなカタパルト装置も備えている。これで相手の船に鉤をかけ、引き寄せる。近くなると伝って襲う。
毒を塗った刃物の用意も万全だ。肌を刺すかかするだけでも、短時間で麻痺がまわる。
普通、あの程度の貨物兼旅客船はそこまで戦装がない。いいカモだ。
鎖が相手の船に到達する。鉤は深く食い入り、鎖は切れず、矢で牽制すると外せない。
2条、3条と鉤つき縄も投げ込まれる。命知らずの凶悪な面相の男がさっそく鎖と縄を伝い始める。
向こうも縄を切ろうとしたり、鎖をゆすったりして防戦に必死しようとしている。
だが彼ら海賊は、そんなものには慣れてる。下なめずりをしながら攻撃を続けようとしたのだが──。
「よし、片っ端から行けやっ!──何っ!?」
しかし、向こう側から突然。
大きな布の塊のようなものが、弓なりの軌道で10タールほどの距離を越えて正確に海賊船の甲板に投げ込まれてきた。
貨物船の甲板の身長2タール超の仮面の大男によって。ぐるんぐるんと、ハンマーを投げるような姿勢で。
海賊船の甲板に弾むこともなく着地した、分厚い布の丸い塊は。
くるくる、っとほどけ。受け身を取った、長身の人間の姿に変じた。
立ち上がった男は、端正だがふてぶてしい戦士らしい面構え。身軽な装い。防具の類は身に着けていない。手に袋を携えている以外には、見える武器は短い舶刀のみ。
にやっ、とその顔が笑みに崩れて白い犬歯が覗く。狼のような狷介で物騒な印象が、皆に刻まれた。
「初にお目にかかるぜ!俺の名は、ヴァラキアのイシュトヴァーン!
機嫌はどうでえ、海の兄弟?」
あまりのことに、口をあんぐりと開いたまま、棒立ちになっていた彼らを見回し、彼はそう問いかけてきた。
──こともあろうに、人を投げ込んできた?いや、普通あんな投げられたらよほどに受け身がうまいか頑丈でねえとメタメタに骨を折って穴という穴から脳や臓物ひりだす羽目になるだろ、──というか普通投げられねえだろ何考えてるんだ?
海賊たちの脳裏を、そんな思いがうずまくが。
「野郎っ!おらっ、ぼけてんな!射ろ、刺せ!」
しかしそこは海千山千の海賊たち。すぐに立ち直り、船長のラノスの指示で剣を抜き、弓を構える。
「お前ら、モグリなのか?海賊であろうと何だろうと、船乗りなら『海の兄弟』と呼ばれたら『兄弟』と返すもんだぜ!*3
それにしてもむさっ苦しいな、お前らだけかよ。シャンな捕虜や人質はいねえのか?」
「いるわけあるか、馬鹿かお前」「捕虜ならこの前、肉が喰いたくて最後の1人をつぶしてやったぜ!」「お前も、すぐ肉団子スープにしてやんよ!」
口々に威嚇の言葉を叫ぶ、海賊たち。
しかし、イシュトヴァーンと名乗った男は動じない。
──いや、むしろ安堵したかのように、ラノスの目には映った。
「そうか。じゃあ遠慮無用だなっ!」
男はおそるべき身のこなしで海賊の一人から射掛けられた矢を避け、振りおろされた剣をかいくぐり、腕を振る。
彼らの海賊船の船内への入り口に、彼が手にずっと持っていた何かの袋のようなものが、投げ込まれた。かなり大きめの袋が、軽々と。毒か!?
投擲途中にすでに一部破れていた、非常に薄い未知の素材の袋。さらさらと破れ目から宙に舞う、ごく微小な粉粒。
投げ込まれた船倉では中に入っていた粉の粉煙らしいものが舞い上がったらしく、ごほごほ、と中にいた漕手たちの咳き込む音や、「
「何しやがる!毒か!?」
「おお、怖え怖え」
また流麗に剣を避け。
彼が再度ふくらんだかくしに手を入れて抜き出し、手をあたりに振る。
振った手にはさっきよりは小さい袋。中からぶちまけられた白い粉のせいで、あたりに濛々と粉塵が舞う。風もない甲板は、まったく見通しがきかなくなった。
「目潰しだなっ!気をつけろ!」
毒なら、自分も吸い込みかねないマネはすまい。
海賊たちは、すこし冷静さをとりもどした。
「じゃあな、あばよ兄弟っ!また百年後に地獄でなっ!」
魔性の迅さで行く手に立ちはだかる海賊を数名、斬り倒し、突き飛ばし。
海賊らが乗り移ろうと貨物船に渡し、何人かの切り込み隊がすでに渡り始めている、その鉤つき鎖の上をまるで軽業師のように身軽に走りだす。
「おらよっ、と!」
ちょうど半ばすぎまできたところで、口に舶刀を噛み、鎖を伝っていた海賊の切り込み隊ふたりの、鎖に回した足と指を次々にかろやかに蹴飛ばし、海の中に蹴り落とす。
「──なぜ当たらんっ!」
まだ粉塵が濛々としている甲板で、気をとりなおし。
なんとか視界の確保できた端から海賊船の射手の発した矢は。
本来なら、男の肩の間にぶっすり刺さるはずのところ。
まるで背中に目があるように彼が優雅に腰を折ったせいで、むなしく虚空を飛びすぎていく。
偶然かと思ったが、次の矢もひょいと足を上げてすかされ。その次の矢など、見もせずに平然と手ではたき落とされた。
「落ち着け、皆。まだ綱も鎖も渡ってる、行きやがれ!」
海賊たちは、男を追って貨物船に乗り移ろうとする。慣れていて、なかなかの敏捷さ。だがさすがにあの男のように、鎖や縄の上は走れない。
そうして海賊たちが縄にとりつき、進み始めていたとき。
貨物船にまだ到着しないあの男が、「グインっ、やれっ」と叫ぶのが聞こえた。
「?うわっ!」
貨物船の舳先に立っていた巨大な体格の男が、大剣を振るった。
船を引き寄せるためにつけられた頑丈な鎖の輪が金属音を立ててはじけ飛び、鎖は切れた。
鎖の切れる寸前、最後の瞬間に狼のような男はのこり3タールほどを跳躍しており。貨物船に、奇跡のように跳び移る。
彼を追って鎖を伝っていた海賊たちは、絶叫をあげて海に落ちていく。
「──何だ、ありゃあ」
粉塵の舞う甲板のへりにいた海賊たちはそれを目にして、呆気に取られて瞬時立ち尽くす。
「感心してる場合か、──うわっ!」
今度は貨物船側から、火矢が発射された。数条。
そして大男が、何か──おそらく燃える炭を厚手の革手袋か何かを嵌めた手で掬い、盛大に投げつけてきた。
燃えながら飛んでくる礫は、ばらばらとふりかかり。
そのひとつが、まだ粉塵で濛々としている船倉へ入った。
火矢も、粉のまだ漂う甲板に刺さり、──
「やべえ、跳びこめっ」「はあ?──ぐわっ!」
突然の、雷のような轟音、稲光を超える熱と閃光。衝撃に、大気が震えた。
大きな爆発が海賊船の甲板上で、そしておそらくは船倉部分でも起きたのだ。
爆裂四散する甲板部、船橋の基部から船倉部上部、燃えあがる「ガルムの首」号。
爆発で折れた魔犬の首の船首像が、ゆっくりと海面に落ちていく。
海賊たちは爆発で微塵に爆殺され、あるいは海に吹き飛ばされながら。
自分たちが敵対すべきでなかった何かが乗った船を狙ってしまった、ということだけを理解していたのだった。
──────
──────
(偽イシュト視点)
いやー、足ががくがくするっすよ。もう勘弁。
無事、この「サリアの首飾り」号に戻ったとたん、真イシュトヴァーンはお楽しみは終わったとでも言わんばかりに僕に体の統制権を返してきやがった。
え?そうだよ。
ほら、だって。僕みたいな慎重で温厚な人間が、あんな危険で残虐な真似、できる訳ないじゃないか。全部、真イシュトヴァーンがやりやがったんだ。
船に跳び戻った僕は、後ろを振り向き。
爆裂四散する海賊船に感嘆しながら、こうなった経緯を思い出す。
──────
海賊船が近づき、最後の100タール。僕は甲板に出ている相手の人数を確認し、グインと言葉を交わした。
船長はじめ戦闘経験のある船乗りもいるが、戦闘のプロフェッショナルといえるのはこの中でグインと僕だけ。
まだ海賊船が寄せてくるには、多少の時間がある。
幸か不幸か風がない、向こうも漕ぎ寄せるしかない。そしておそらく船に傷をつけたくないのか、火矢ももう放ってこない。
ただ、もうそろそろ腕のいい射手は的を狙える射程距離。矢がときおりぶん、と飛びすぎていく。
数えた向こうの海賊の数は、こちらの甲板の出ている人数より多いが、そこまでは変わらない。
だが向こうはおそらく、甲板の下に相当数の漕ぎ手がいる。それに、戦闘員の質もかなり違う。
命知らずで商船襲撃を繰り返してる連中と、善良な船乗りとでは戦闘の場数が違うんだ。
こっちも古株の船長とか高級船員は肚が座ってるが、若い船員や駆け出しの見習いも多い。下手すりゃ虐殺、皆殺しになる。
グインは最強だが、一人で全員相手取るなんてできない。もし向こうが船をあきらめて火をかければおしまいだ。
だったらちょっと無理して勝つ方策を講じないとな、と僕は思っていた。
まず、僕が考えたのはグインの膂力。相当重いものも離れた船に投げ込めるだろう。
ただ、積んである商品を投げ込むにしても用意するのに時間がかかるし、それだけじゃ効果が薄い。相手船の甲板を削る程度になっちまう。
そこで僕が考えついたのが、よくある異世界ものか何かで読んだ粉塵爆発。
幸いにもほとんど風は死んでる。リンダの機嫌をとるためのお菓子製造用に、僕が一生懸命ふるいにふるった最上級のガティ麦の粉もある。これを投げ込んで、着火する!
さっきレムスにたのんだのが、そのガティ麦の細粒粉。
一度お菓子を供したときにリンダが珍しくほめてくれたので、張り切ってたくさん製造しすぎたんだ。ここにきて役に立ちそう。
ただな、うまく粉の粉塵が立つかな?
それと、甲板だけ焼き払えても意味ないよな、──と、グインに耳打ちして相談する。
そろそろだ。あと50タール、乗り込んでくるまで10
船室に降りる入り口のすぐ近くの物陰。矢が、また飛びすぎる。
「イシュトヴァーン。10タールまであの船が近づけば、俺はお前を投げ込めるぞ」
グインの僕への殺害予告を聞いて、僕はまじまじと彼の顔をみつめた。僕、なんか気に障ること言っちゃった?
トパーズのように光る、グインの眼。こいつの顔って豹頭だけあって、表情が読めないんだよなー。
「面白え冗談だなグイン。──まあ人生、腹にすえかねることもあるだろうが、思い直せ。
グインの親御さんも、グインのことを──」
「近すぎるか?なら15タールまで。そこまでならなんとかしよう」
「
いや、車に10m跳ね飛ばされた結果を考えたらわかるよ。受ける力積、数千ニュートン*4。
着地点に元イシュトヴァーンだった
「死体ではない。その粉で船倉にまで確実に煙を立てる人間が必要。そういう話ではないのか?」
大真面目にみえる、グインの顔。僕は改めてその可能性を検討する。
馬鹿かこいつは、とは思ったが、グイン的には間違っていないのだろう。
そして僕の中のイシュトヴァーンがウケてる。やるか、それ!と言いたがっている。
おっかしいなー、原作イシュト、こんなに考えなしな奴だったか?もうちょっとお前、保身的だったやん。
「──それで俺はどうやって戻るんだ?生きてたとしても、下手すると向こうで丸焼きじゃねえか」
「白兵戦なら相手から縄が渡るはずだな。その上を走れないか?」
「無理だろ!グインよ、豹だけに人肉丸焼きに興味あるのはわかるが、それなら──」
「いや、真面目な話だ。
帆の
俺にはとても無理な相談だが。」
僕は黙る。確かに真イシュトはそれを自慢してた。
縄渡りも、似たことをやったことがあるようだ。今回みたいな揺れる船と船の間に張った縄の上ではないが。
それに軽捷なスニさんなら、僕よりもっと上手くやるかもしれない。
しっかしなー、頭おかしいだろグイン!あーもう「イドの谷」突破あたりで気づくべきだった!
あまりのことに、言いたい文句が頭に無数にならび。
要は、怒りに頭がくらっとしてしまい。
僕は瞬時、体の統制を手放した。──そう、手放してしまったのだ。
そこで待ってましたといわんばかりに元気よく、真イシュトヴァーンが交替して表人格に飛び出してきた。
僕は
「面白えな、グイン!その考え、いただきだぜ!
そんな美味しい役、スニさんにやらせるわけにはいかねえよな!」
あー、真イシュトの馬鹿!
僕の中の真イシュトは、海に出てご満悦で気が大きくなってたせいか。
それともここしばらく僕が統制をずっと握りっぱなしで、欲求不満だったせいか。
ノリノリになって、そんな言葉をほざいた。
どう考えても体重といい敏捷さといい、適任はスニさんじゃないかっ!イシュトの阿呆!
「受けてくれるか。おおレムス、ちょうどよかった」
「イシュト、遅くなってごめんっ!これでいいんだよねっ!がんばって!」
腕だけ、レムスが入口から手を伸ばして革袋と紙を
もう約束の5タルザン過ぎてるはずだ!──ありがたいが今となっては微妙、──。
とりあえずレムスから、袋と紙を受け取る。
「ああ!安心して待ってろい!」
──もう無理。僕はできない。やるんなら真イシュト、お前やれよ。
そして極めてご機嫌な真イシュトに体の統制権を委ね。
僕は半分魂が抜けた状態で、その活躍をみまもることになったんだ、──
──────
そして、いまに至る。
統制権を返された僕は、集中力っていうか何かの精神力のゲージを切らして、しゃがみ込む。
ほら、膝が笑ってる。もう駄目。ヴァシャ酒がないと動けない!
「よくやった、イシュトヴァーン」
グインが寄ってきたので、僕は表面を取り繕い、生まれたての子羊のような足を悟られぬよう不遜さ、ふてぶてしさを装ってゆっくりと立ち上がり。
引き攣りそうな頬に、苦労して悪そうな笑みを浮かべた。
「よせやい、お前の戦功だろうが豹あたま。
ああそれとお前、ハールだっけな。火矢、よくやってくれたぜ!」
「──は、はい。でも、なんなんです、あれ?あの白い粉、って──」
火矢を射こんだ、こちら側の射手の水夫が青ざめた顔で震えながら聞いてきた。ほかの船員も、あのガルムの首の惨状に声を失ってる。はて、お前らガティ麦を船倉に積んで運んでるのに知らんのか?
「ありゃあガティ麦の粉さ。すっごく細かく振るった、な?
粉の煙って奴ぁ、すごい燃え上がり方をするのさ!」
ようやく足のぐらぐら感が抜けた僕は、なにくわぬ顔で戦功を讃えて
彼や周りの船員たちの目の中の怯えの色は、むしろ強まった。
「あ、貴方は、ああなると分かってて、──まったく恐れも、後悔もせずに、──?」
「恐れ?後悔?ああ、してるぜ今!」
「ですよね、海賊だって人間、──」
あー、そっちか、と僕は思う。確かに、船への損害を回収したいよなー。
ただ、操船技術はあっても、忠誠心がないと奴隷としても値が付かないんだ。せちがらい。
「まあ確かに人間なんだが、そんな高く売れねえよあんなゴミども。ルテチアの闇市場ですら、味が悪くてくず肉以下の値しか付かねえ。運び損になるから諦めな!
悔やんでるのは、あれ、あの粉な!最上級のすごく細かく振るったおやつ用の奴だったんだぜ!
全部パーになっちまった、双子とスニさんにこっぴどく怒られちまうぜ!」
僕はリンダへの恐れと粉についての後悔を語るが、ますますまわりの目に畏怖と怯えの色がひろがる。
海賊が怖かったのが、今ごろぶりかえしたのだろう(そんなクズに狙われてたのか、って)。可哀想に。
「──まあ、本拠地や取引先などが分かれば、取締りに役立つかもしれぬ。
まだ海に浮いて生きている海賊がいたら、捕えてやれ」
グインがなにやら船員たちにゴミ回収について指示しているのを聞きながら、僕も鷹揚に頷いてみせる。
グインの言葉で船員たちの関心は、海に浮いてる海賊どもの回収に向かう。
──まあ、僕も少しは協力するかな。あんなクズども、生かしていいことあるとは思えないが。
そう思いながらも、同調圧力に弱い僕は。
船乗りのなかでも際立って良いイシュトヴァーンの視力を、朝まだきの海の紺の中に凝らすのだった。
グインが砲弾のように偽イシュトを殴って撃ち出せば必要な力は5、6000Nですし偽イシュトは肉塊になりかねませんが、グインがハンマー投げのハンマーのごとくぐるっと振り回して投げれば、偽イシュトの変形に力は使われず無事でしょう(※追記0329:こう書いていたのですが、三半規管などへのダメージを度外視していたことに気づきました。ううむ・・)。
着地が問題ですが、厚い布をまとって受け身を取ったことでダメージは小さくなったのでしょう(ほんまかいな)。