魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
感想、質問への返しが遅れていますが読んでいます。感想とか嬉しいので夜中だとハイテンションで読んでます。余力があるときにどどーんと返すのでどんどんください。
『私は
水波ちゃんを襲撃した謎の集団を追っ払い、『あれはただのストーカーですね、好きすぎて殺したいとかそういう類いの奴です』という明らかに嘘な今考えたみたいな説明をドヤ顔でされた後、水波ちゃんが私に言った言葉だった。正直なところ意味が分からなかったがその言葉の意味を知る前に水波ちゃんは姿を消した。気にするような事ではないのかもしれない。でも昨日からずっと頭の中をちらついている。まるでその問いの答えを出さずには前に進めないかのように。
「ねえねえ、リーナは誰にチョコあげるの?」
「やっぱり司波君?」
とはいえ今日はゆっくり考えられそうにない。悪気はないのだろうけど何度も何度も同じような質問を繰り返されれば煩わしくもなる。そもそも私は生まれてこの方チョコをあげたことなんて一度も…いや一度だけあった。毎年、毎年、雪花から貰うばかりでは女子的にあれなのでは?と思いどうにか手作りのチョコをあげたことがある。雪花はチョコを全部食べた後、『うん、その、個性的なチョコだったよ』と絶賛したものだ。けどその後に『ぼくは貰うよりリーナがチョコを食べて笑顔になってくれた方が嬉しいな』と言ってくれたからそれ以来食べる専門となったのである。
「あら、リーナ。いつもの場所が塞がっていたの?」
「そういう訳じゃないけど」
次の授業は体育、短い休み時間の間に体操服に着替えなくてはならない。
いつもなら入り口に近い場所のロッカーを使うのだが、今日は深雪のいる右の壁際にやってきた。チョコのことで色々言われるのが嫌になったからだ。
「みんな気になるのよ。リーナは可愛いから」
「じゃあ何でミユキは質問攻めに遭わない……のよ」
深雪が制服のワンピースを開けて右肩を抜こうとした瞬間、その特に何ということはないその仕草が私の目を釘付けにして舌の回転を滞らせた。
「さあ?色気が無いからじゃないかしら」
私が張り合うように制服のワンピースを勢いよく脱ぐと深雪は羨ましいと言いながらウエストのくびれをさすってきた。無邪気な触り方、同性愛的意味合いはないのだろう。だけど顔が赤くなるのを止められない。私も触ってやろうと手を伸ばすも躊躇してしまう。なんだ私は、ちょっと意識しちゃってるの?たしかに深雪は綺麗だけど私は女、同性なのよ、あっでも雪花も女の子みたいな感じだったし、もしかして私ってそういう趣味だったの?えっ衝撃の事実発覚?
私の思考がおかしな方向に飛んでいきそうなところでガタン、という大きな音がして現実に戻ってきた。そこではほのかが腰を抜かし掛けてロッカーにすがりついていた。辺りを見回せばクラスメイトたちが顔を赤くして顔を背ける。どうやら私たちは注目を集めていたようだ。
「……早く着替えてしまいましょうか」
「ええ」
丁度同じことを考えていた私は二つ返事で頷いた。
◆
放課後。
浮わついた空気が一気に盛り上がった校内。私のクラスも例外ではなく絡まれる前にさっさと生徒会室へ避難してきたわけだけど。
「はい、これチョコ!」
ドンッという重い音と共にテーブルへ置かれたのはお弁当箱ほどもある厚紙の化粧箱いっぱいに詰められた手作りと思われる粒チョコレート。
生徒会室へ押し掛けてきた風紀委員長、千代田花音から生徒会の会計、五十里啓へのプレゼントだ。その場で食べるよう笑顔で圧力を掛けられ苦笑いしている。若干汗をかいているように見えるのは気のせいだろう。
「どこもかしこもチョコ、チョコ、チョコ…これが日本のバレンタインデーなのね…あれ?そういえばほのかとカイチョーは?」
「ほのかは五十里先輩の代理で準備棟へ行ったわよ。会長は何やら私用があるとかで、かなり挙動不審というか様子がおかしかったから…たぶん」
深雪は最後まで言わなかったけど、今日という日に挙動不審で私用だというのなら答えは一つしかない。
「カイチョーにもそういう人いたんだ。なんか意外」
「ちょっと失礼かもしれないけど、私もよ。お相手の想像がつかないもの」
会長は見た目のせいもあるのかもしれないけど恋愛には疎そうだった。かくいう私もそう経験があるわけではない、というか皆無なのだけど。
「私の弟なら知っているかもしれないわね、話が合うみたいで仲が良いのよ」
「不登校の?」
「ええ、今日から復帰しているはずだから帰りに紹介するわ」
司波兄妹の弟。一応弟がいるということは事前に知っていたが詳しいことは知らない。情報部からの資料にも名前すらなかったから特に重要ではないのだろう。達也が弟のことを話題に出すと深雪が怒るから、とあまり話題に出ることのなかった彼だけど、どうやら深雪と仲直りできたらしい。
その後も会長のお相手をあれこれ予想していると会長が真っ赤な顔して生徒会室に入ってきた。いや駆け込んで来たと言うべきだろう。
私と深雪は目を合わせて頷く。この状況で聞かないのはありえないだろう。
「チョコレートは上手く渡せましたか?」
「はひ!?ななな何のことでしょうか!?」
私の質問に飛び上がって否定する会長。これ程分かりやすい人間も珍しい。
「お相手は何方でしょう?よろしければ教えていただいても?」
「だ、だだ駄目ですよ!司波さんは特に駄目です!」
駄目だと言っている時点でチョコを渡したこと自体は認めたも同然なのだが、恐らく会長は気がついていないだろう。さすがにこれ以上聞くのは可哀想だ。今にも爆発してしまいそうなほど顔を真っ赤にして目をグルグル回しているのだ、小さな子供を泣かせるみたいな罪悪感がある。
「えーっと…何があったんですか?」
ほのかが生徒会室へ戻ってくる頃には、ぐったりした五十里先輩、ニヤニヤと温かい目で会長を眺めつつ仕事をする私と深雪、エラーを連発しながらあわあわと仕事をする真っ赤な会長、という状況が出来上がっていた。
「バレンタインデーテロってところかしらね」
「えっ?えっ?」
キョロキョロ生徒会室を見回して混乱しているほのかの姿に私は笑いを堪えきれなかった。
バレンタインデー、長くなりそうな予感。
その場のノリで書いていてまだ次話もない状況ですから、作者にすらどうなるか分からないわけですがバレンタインデー…甘いだけでは終わらなそうです。
さて、明日も0時に投稿します。