魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
「うぅ嫌いだ…もう絶対口聞かない!寄るな触るな!」
「随分と嫌われましたね、七草先輩」
放課後、クラスで散々な目にあった雪花は校内をさ迷っていた。というよりクラスメイトから逃げていた。
そんなわけで雪花はカフェテリアの片隅、パーティションで仕切られた簡易なミーティングスペースが並ぶエリアに来たのだ。人気が高く、事実上、一科の三年生御用達となっており下級生は三年生が一緒でないと中々足を向けられない場所、クラスメイトから逃げるのには最適だった。
とはいえ、中々足を向けられない場所、というのは雪花も同じこと。彼がここに入り込めたのは知り合いの姿を見つけたからである。
七草真由美と兄の司波達也。
何やら忘れ物を取りに戻ってきたという二人に笑顔で近づいていった雪花はそこでとんでもないものを食べさせられる。
カカオ95%、糖類0%のチョコレート、それもエスプレッソパウダーをこれでもかとふりかけた奴だ。
「たっ達也くん!どうしたら良いと思う?」
真由美としてはちょっとしたイタズラのつもりだった。二回連続で成功しているのだ、雪花もきっと良いリアクションを取ってくれるに違いない。その程度の考え。
結果、雪花にとんでもなく嫌われた。
「どうしようも無いでしょう。雪花は苦いものが苦手でコーヒーすらまともに飲めませんからね。あんなものを食べさせられれば…」
「どうして先に教えてくれなかったのよ!」
真由美が焦るのも無理はない。雪花の蔑むような視線だけではなく、周囲からもそれと同じような視線を浴びせられているのだ。八つ当たりの一つもしたくなる。
「もう嫌だ…バレンタインデー嫌い、七草真由美嫌い」
ふらふらっと立ち上がった雪花がゆらゆらと立ち去っていくのを真由美と達也はただ黙って見送った。
それくらい雪花の状態はヤバかったのである。
「バレンタインデー最高!」
だが数十分と経たずに雪花のテンションは最大まで上がっていた。
婚約者である中条あずさから手作りチョコレートを貰ったからである。
「大げさですよ、死にそうな顔して歩いていたから何があったのかと心配していたのですが大丈夫そうですね」
「そんなのあーたんのチョコで回復したよ!やっぱりチョコは甘くないと!」
小さめのチョコが六つ、化粧箱に入っていたがそれを次々と口に放り込んでいく。
そして最後の一つを食べようとしたとき、それを小さな手が横からかっさらった。
「あーん」
顔を真っ赤にしてチョコを差し出してくるあずさに雪花は笑顔で口を開いた。
「おいしいですか?」
「とっても」
雪花がチョコを全部食べたことで我に返ったのか自分のやったことを思いだし顔を真っ赤にしたあずさは脱兎の如く去っていく。
「あれ?これあーたんの携帯?」
慌てすぎていたのだろう。あずさは自分が携帯を落としたことに気がつかなかった。雪花が携帯に気がついた頃にはもうあずさの姿はない。
「生徒会室ってどっちだっけ?」
放課後、達也と深雪の家へ行くことを約束していた雪花は結局二人の仕事が終わるまで校内で待つ予定だった。生徒会室まで届けにいくことは別に苦ではない。
例え良く場所が分からなくても。
◆
雪花が学校でラブコメを繰り広げているころ、水波は一足先に家に帰っていた。四葉からの襲撃の心配がなくなり、昨日から元の家に戻ってきていたのだ。その際雪花が今までにないくらい怒られたりしたものの水波は受け入れられこうして今日もこの家に帰ってきた。両手に合わせて四つの紙袋を持って。
中身は勿論チョコレートだ。女の子同士、義理チョコというやつだろう、と水波は
水波はチョコの入った紙袋をテーブルの上に置いてエプロンを装備。チョコレート作りを開始した。
雪花は司波兄妹宅で事情聴取されぐったりした状態で帰ってくるだろう。そこにおいしいチョコレート。水波はこの作戦をより効果的なものにするためチョコを作る素振りを一切見せていない。ツンデレの原理である。
ゆえにこの時間、雪花が帰ってくるまでにチョコを完成させなくてはならないのだ。
「さて、やりましょうか」
水波の戦いが始まる。
生徒会室へと向かった雪花。
そこには一体何がっ!
書いていてとってもワクワクします。
さて、明日も0時に投稿します。