魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
生徒会の仕事も一段落し、雑談を交えつつ帰り支度をする。話題は勿論バレンタインデー。自分が聞かれるのは嫌だが人の話を聞くのは楽しい。成る程、クラスメイトが散々私に聞いてくるのも分かるというものだ。
「あんまりいじめちゃ駄目だよ?」
私と深雪で会長を質問攻めしていると今期生徒会唯一の男子メンバーである五十里会計が微笑みながら止めに入った。
「でも気になりませんか?私も興味あります」
今日はやたらと機嫌が良くテンションの高いほのかも目をキラキラとさせている。
「うぅ、もう私のことはいいでしょう。ほら、リーナさんとかどうですか?」
話題の矛先を私に向けようとしているようだが無駄である。なんせ私は誰にもチョコを渡していないし渡す予定もない。チョコは貰う専門なのである。
「私は昔から貰う専門なんですよ、チョコは食べるに限ります」
それを口にしてみれば皆微妙な顔をしている。何かしら、その顔は!?
「貴女からのチョコを心待ちにしている男子も多そうなものだけど……別に手作りでなくても良いのだし」
「それは私にチョコレートは作れないと言っているのかしら!前に一度だけあげたことがあるけど大絶賛だったわよ!個性的なチョコだって!」
何故か皆さらに微妙な顔になる。五十里会計なんて苦笑いだ。
「何よ?」
「あのね、リーナ。個性的なってそれ美味しくなかったってことなんじゃないの?」
「そんなわけないじゃない」
全くなんてことを言うんだか。
そもそもチョコレートなんて溶かして固めるだけのおてがる料理じゃない。まあそれだけじゃつまんないから色々と
「じゃあなんで一度しかあげたことがないの?渡した人から何か言われたからじゃないの?」
「ええ、『ぼくは貰うよりリーナがチョコを食べて笑顔になってくれた方が嬉しいな』って言ってくれたの」
再び皆が微妙な顔に。そして深雪に視線が集まりため息を吐いた深雪が言う。
「それ…甘い言葉で誤魔化されたんじゃないの?」
すぐに反論しようとするも、心当たりがあった。
思えば私が料理をしようとするといつもいつも雪花が割り込んできていた気がする。そういえば雪花のついでにお父さんにもチョコをあげたけど…個性的って言われた。沙世さんは渡す前に忽然と姿を消した。これはもしかして…。
「ちょっとどういうこと雪花!」
「えっ?」
「へっ?」
私の声に何故か深雪と会長から疑問の声が上がる。五十里会計とほのかも不思議そうな顔をしている。
「はいはーい雪花くん登場!」
ドアを勢い良く開けて、ポーズを決めた雪花の幻覚が見えた。
◆
リーナが幻覚?を見ているころ、水波のチョコが出来上がった。雪花の大好物である金平糖の形をした小さいチョコレートである。色も様々あり水波も満足の出来だった。
「後はこれをどう渡すか…ですね」
今日、雪花と水波はこの家で二人きりになる。雪花の両親は仕事が忙しく夜遅くまで帰ってくることはない。沙世は暫く帰っていなかったこともあり夫の所に泊まる予定。渡すタイミングはいくらでもある。
なら問題はどうやって渡すか。
水波は考えた末にインパクトを重視して帰ってきた瞬間に渡すことにした。玄関を開けたその瞬間、驚きと共にチョコレートを渡そうと。
そうと決まればまた新たに準備するものがある。夕飯の支度もしなくてはならない。タイムリミットは迫っている。急がなくては。
水波はいそいそと準備に取りかかった。雪花の驚く姿を思い浮かべて普段は絶対にしないような鼻唄を歌いながら。
ついにこの時がやってきた!リーナと雪花が別れてから約百話、二人がついに!
さて、明日も0時に投稿します。