魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
母さんと押し問答をしている間に皆落ち着いたのかぼくは自然と解放された。ありがとう、母さん!ぼくを見捨てようとしたけど!
「はあ…どうして貴方はそう問題を次から次へと」
心底疲れたようにソファに腰かけた母さん。いや本当になんでこんな問題ばかり起きるのかぼくが知りたいです。
「じゃ、じゃあ私帰るわね!」
「わ、私も!そろそろ失礼します!」
母さんの登場で気まずくなったのか、二人とも冷や汗を流しながらさっと荷物を持って帰り仕度をすませる。
「送っていくよ」
元々送っていこうと考えていたのでそう提案する。水波ちゃんが不満そうな顔をしているが仕方ない。頭を撫でて誤魔化しておく。兄さん流、妹のご機嫌取り術だ。
「ああ雪花、ちょっと待ちなさい、実は今日─」
母さんから声がかかったのは丁度、一足先に玄関に向かったリーナがドアを開けたところだった。
「サプラ~イズ!雪花くんと妹になった水波ちゃんにチョコレートでーす!驚きました?驚きましたよね?だって愛媛の本家にいるはずの私がここにいるんですから!ふふっ良いでしょう教えてあげます。実はチョコを渡すためにヘリと車で…あれっ?…えーっとどちらさまです?」
そこには澪さ…澪姉さんがいた。何やらテンションが高く大分喋ったところでやっとリーナの存在に気がついたようだ。リーナも突然現れた車椅子少女?に目を丸くしている。
「─澪様がいらっしゃる予定なの」
言うの遅いよね!?
◆
澪姉さんから貰ったチョコレートは愛媛らしさを感じさせる一口大のみかんチョコ。澪姉さんは引きこもってるだけあって料理がとても上手い。部屋で時間を潰す方法とか、ベッドの上だけで楽しく過ごすためにはどうしたら良いかとか、話せば話題の尽きないぼくたちだけど、料理の話も結構する。二人とも甘いものが好きだからデザートの話が多いけど。
「とっても美味しいです!」
「美味しいです」
水波ちゃんと二人で感想を言うとニコニコといつも以上の笑顔を向けてくれた。あーたんとリーナにも一個ずつあげてみるとそれぞれ美味しいとのこと。あーたんはともかくリーナのチョコは…うん、子どもの頃の話だからね!きっと今はちゃんと作れるよ!信じてるよ!
「こうして直接会うのは初めてですけど画像で見るより可愛いですね!こんな可愛い妹が出来て嬉しいです」
澪姉さんは水波ちゃんにあれをやりましょう、これをやりましょうと、色々提案していた。女兄弟がいないらしいから、妹が出来たら色々やりたいことがあったのだろう。水波ちゃんも自分が求められていることが嬉しいのか微笑みながらコクコクと頷いている。早速仲良くなれたようで何よりだ。
「雪花くん、五輪澪さんって確か二十歳を過ぎていたような」
「うん、澪姉さんは二十六歳だよ?」
こそこそっと聞いてきたあーたんにそう教える。確かに初見では少々驚くかもしれない。一見少女にしか見えないし車椅子も子供用のサイズだ。澪姉さんと水波ちゃんが並んでいると水波ちゃんの方がお姉さんみたいだし。実際は十歳以上澪姉さんの方が年上なんだけどね。可愛らしくニコニコ微笑む澪姉さんは、ぼくの疲弊した心を癒してくれる。
「あっ雪花くん、お二人を送っていくなら家の車で送りますよ?キャビネットで二人とも送っていくのでは大変でしょうから」
折角の好意なので車に乗せてもらうことにした。セレブ御用達の黒くて長い車、愛媛にいる間は結構お世話になった。飲み物完備な上、広い車内、振動もほとんどない快適な車なんだけど…今は地獄だった。
ぼくの右側に座り腕に抱き着く澪姉さん。そのさらに右隣には何故かついてきた水波ちゃん。そしてぼくの左側にリーナ、さっきからぼくの腕をチラチラ見ている。その左隣に座るあーたんはこんな車に乗るのは初めてなのか萎縮してちっちゃくなっている。可愛い。
が、そんな状況も最初だけだった。何故か数分で皆が火花を散らし始め車内は地獄と化したのだ。澪さんは相変わらずニコニコしているだけだが他の三人が無言で何かやってるよ!言葉は話してないし、動いてもいないんだけど、何かが起きてるよ!今、この車内で!
早く着いて!
ぼくは冷や汗を流しながらひたすらそう願った。
澪さん参戦。
まだ特大の爆弾が残っていますが、次話から原作に戻れればなーっと思っています。
さて、明日も0時に投稿します。