魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
ちなみに今日のティッシュボックス先輩、妖怪○ォッチのティッシュボックスだった。アニメを毎週録画して見ているらしい。
「私はもうダメです。どうせこのまま弟から女王様と恐れられ距離を置かれるんです」
あの手この手で雪花と仲良くしようとした深雪であったが、結局今日のところは『深雪さん』で終わった。
「きっと照れているんだよ、異性の兄弟が急に出来ればこんなものだろう。深雪は美人だから余計にね」
「ま、まあお兄様ったら」
深雪がクネクネと照れているのを見ながら達也は雪花のことを考えていた。
雪花が深雪を深雪さんと呼ぶことはどうしようもなかったが距離は詰められた。怯えることも少なくなったしプレゼントの効果もあり仲良くはなったのだろう。
「何かきっかけがあればすぐに打ち解けられるさ」
そして、その時はすぐにやってきた。
◆
「しばらくお世話になります 」
雪花が司波宅にしばらくの間泊まることになったのだ。両親が新婚旅行に行き、丁度良いから沙世にも休暇をというわけで雪花が一人になったからだ。ちなみに沙世はこの休暇で
「ぼくの部屋があるんだよね?」
「ああ、空部屋になっていたが元々お前がいつでも泊まれるように作られたものらしいからな。用意の良いことだ」
龍郎がこの家を達也たちのために用意したとき雪花のための部屋を一部屋確保していた。普段は使われていないが最低限の家具は揃っている。
「必要なものは全部揃ってるね。枕は持ってきたし」
雪花より大きい特大の枕が荷物の中にあったことを思い出して苦笑いの達也。
「さっさと片付けて夕飯にしよう。深雪がいつも以上に張り切っているからな」
深雪は雪花が泊まりにくるということで小百合から雪花の好みを聞いたりして入念に準備をしていた。料理で雪花に近づこうと考えたのである。このおかげで深雪と小百合の仲が改善され、数年後には雪花の画像を送り合う程度には仲良くなっていたりする。
「美味しい!深雪さん料理上手なんだね」
「そっそう?ありがとう」
美味しい、という言葉にパアッと顔が明るくなるが「深雪さん」という呼び方に変な笑顔で固まってしまう。それを見ていた達也がフォローに入った。
「深雪、そろそろあれが出来上がっているんじゃないか?」
「そうでした!」
深雪は小百合から雪花の好みを聞いている。当然、甘いものが好きなことも。ならば、と用意した秘密兵器。雪花の大好物の一つ、ゼリーだ。プリン、ゼリー、アイス、は雪花の三大好きなデザートである。ちなみに金平糖は主食である。
「初めて作ったからうまくいったかどうか少し心配だけど」
おしゃれな、ぐにゃりと曲がった入れ物に入ったゼリーは様々な色があり、苺、みかん、ぶどうなどの果物を使っている。
「どう…かしら?」
「うん、とっても美味しい」
ぱくぱくとゼリーを食べる雪花はご機嫌で、深雪も嬉しくなる。実は何度か練習していたことは内緒だ。練習で作ったゼリーをいくつも食べさせられた兄がいた事実などない。
「雪花、深雪はお前に姉さんと呼んで欲しいそうだぞ?」
「お兄様!?」
深雪はばっと達也の方を見たあとすぐに雪花を見る。これで深雪さんと呼ばれるようなことがあれば、自分はもう立ち直れないかもしれないなんて思いながら。
「えーっと…姉さん?」
ちょっと照れたように頬を掻きながらこてっと首を傾げてそう言った雪花。
「もう一回お願い」
「姉さん?」
「もう一回」
「ね、姉さん?」
「可愛い!」
姉と呼ばれたことで今まで我慢してきたものが溢れてしまったのだろう。ひしっと雪花を抱き締める深雪。
「雪花、お姉ちゃん、て呼んでくれるかしら」
「えっそれはなんか恥ずかしい」
「一回だけでいいの、お願い」
「うぅ…お、お姉ちゃん?」
深雪から熱心にお願いされ恥ずかしがりながらもそれに答える。だが羞恥から涙目になり下から見上げるように言ったのがいけなかったのだろう。
「可愛いわ!」
深雪は暴走した。
「ああ、
「ぼくは
深雪に抱き締められジタバタする雪花からの救援要請に達也は目をつぶって達也用に作られたコーヒーゼリーを一口。そして小さく呟いた。
「…まあ、今日くらいは良いだろう」
基本的に兄は妹の味方なのである。
達也はそのままもう一口ゼリーを口に入れた。姉弟のじゃれあいをBGMにして。
司波深雪の弟シリーズは今後も続いていくかもしれません。シールズ家での話も飛ばしすぎたので、そこも番外編でやろうかなって思ってます。
さて、明日も0時に投稿します。