魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
アンジェリーナ・クドウ・シールズがアンジー・シリウスであった、という事実を無かったことにした。そう四葉真夜は言った。どういう手段を使ったのかは知らないが、ぼくの目的が達成されているのなら問題はない。
USNAには、リーナの他にも公表されていない戦略級魔法師が存在し、ただ、今まではその魔法師達が功績があったり、権力のある家の者だったりして扱いづらかったため、一番利用しやすい、若く、功績も権力もない、リーナをシリウスにしたらしい。だから、リーナが居なくなったとしても、戦略級魔法師を失うという事態にはならないそうだ。
「アンジェリーナさんには学校も続けて行って貰うわ。彼女が日本に残るのは、表向き、日本の魔法学校を気に入ったからってことにしてあるから」
リーナをUSNAに帰すわけにはいかなかった。軍が一枚岩ではない以上、こちらとの交渉を無視して、ちょっかいをかけようとする連中が現れてもおかしくはないからだ。今度はリーナが日本で逃亡生活というわけだ。
「九島が働きかけたのでしょうけど、アンジェリーナさんは日本国籍を手にしたわ。アンジェリーナ・九島・シールズね。これで日本にいれば、ほぼUSNAは手を出せないわ。日本国民となった上、九島と四葉、二家の保護下に置かれている人間に手を出すリスクを向こうは理解しているでしょうから」
九島烈にも思うところはあったのだろうか。今までは、ちょっと便利でうざい年寄りくらいに思っていたが、近所のおじいちゃんレベルには親しみを持ってあげようではないか。
「それで、本当に
「良いよ、ぼくもういらないし」
アレというのはパラサイトのことである。
ぼくが防諜第三課のスパイ収容施設からちゃっかりパクってきたやつである。今は特殊な部屋で拘束しているが、無傷で確保したのだ。
「ついでに何とか中佐もあげるよ、何かに使えるかと思って連れてきたけど、そっちで解決したならいらないし」
「バランス大佐ね、別に私もいらないわ。返してきなさい」
「はーい」
面倒だからその辺に捨てておこう。大丈夫、彼女もエリート軍人なんだ、自力で何とかするさ。例え手足を縛られて、目隠し、耳栓、お口はガムテープの状態でも。
まあ、そんなどうでも良いことはさておき、問題はこの対応の早さである。ぼくが四葉に来たのは昨日の夜中。それから半日と経たずにこの成果はいくら四葉でもありえない。
「どれだけ前から準備してたの?この対応の早さは流石におかしいでしょ」
「あら、素直に喜んでいてくれれば良かったのに。そうね、アンジェリーナさんが留学してくると分かった時点である程度準備は始めていたわよ」
ぼくが海外に逃亡している間も四葉の監視はついていた。当然、ぼくとリーナが幼馴染みであることも把握していたはずだ。そして、リーナがアンジー・シリウスであるということを知っていたか、予想していたのなら、ぼくがリーナをどうにかしようとするのは簡単に分かる。
「全部貴女の掌の上ってことね」
これで四葉は、パラサイトを三体手にした上に、リーナに恩を売れ、ぼくからの好感度も爆上げだ。
「そうでもないわよ。正直に言えば最初は貴方とアンジェリーナさんは会わせないようにしようと考えていたもの。そのために態々貴方を怒らせて逃げ回らせたのだし。屋敷を半壊させられるとは思っていなかったけど。…下着もね」
「それは素直にごめんなさい」
下着事件に関しては本当に申し訳ないことをしたと思っているので素直に謝っておく。
「けど、色々新しいことが分かって事情が変わったから、貴方とアンジェリーナさんを引き合わせることにしたの。嬉しい誤算だったのが貴方とアンジェリーナさんが予想以上に親密だったことね。その時よ、私が前から準備していたものを実際に使おうと思ったのは」
四葉真夜にどうゆう思惑があったのかは知らないが運が良かったと思うことにする。そのおかげでリーナを引っ張り出せたのだから。
「その時期、とても素晴らしいことがあったから私の機嫌も良かったのよ」
それは知らないよ!そんな嬉しそうな顔で言われてもどう反応して良いか分からないよ!
「それで、その話を今日しようと思うの」
なんで機嫌が良かったかなんて、話されても困るよ!
「まあ、それは後にして、大事なことを伝えるのを忘れていたわ。実はアンジェリーナさんと貴方は婚約したの」
へーリーナ婚約したんだ、おめでとう……って違うよ!えっ、何それ!
「九島と繋がりを作れる良い機会だもの。向こうも喜んで了承してくれたわ。実はこんなにも早く対応出来たのは九島の協力もあったからなのよ」
前言撤回!九島烈何してんの!?やけにすんなり婚約を破棄してくれたと思ったらコレだよ!
「ぼくにはあーたんという人が既に…」
「大丈夫よ、
「そんな無茶苦茶な」
「あら、意外ね。てっきり貴方はアンジェリーナさんも好きなのかと思っていたわ」
「それは…」
その後の言葉が出てこなかった。
リーナの顔と、あーたんの顔が浮かんでは消える。あれ?何を迷ってるんだ。言えば良い。ぼくには心に決めた相手がいるので、いくら十師族の当主でも愛人は作らない!と……ん?あれれ?ぼく、十師族の当主でしたっけ?
「ああ、そういえば言っていなかったわね。四葉家の次期当主は貴方に決めたの」
四葉真夜は笑顔で言った。
いつもの妖艶な、人を惑わす、笑みとは違う。
感情が溢れてしまったような純粋な笑顔で。
ついに始まった原作改変。次話で衝撃の事実が明らかになります。予想してみてください(ニヤニヤ)
さて、次話の投稿ですが、かなり重要な話になりそうなのでじっくり考えたいと思いますが、遅くとも一週間以内には投稿します。