魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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ダブルスノー編
雪花の中身はお母様?①


「そうね、貴女に分かりやすいように言うならば、私は『司波 深夜』、ああ、貴女にはこちらの方でないと伝わらないわね。

 

─『四葉 深夜』、それが私よ」

 

 

「へ?シバ?ヨツバ?司波は雪花と深雪と達也のファミリーネームで、えっ?四葉は?というか四葉深夜って『忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)』!?」

 

 

雪花の発言にリーナは警戒も忘れて目を白黒させた。それに雪花は微笑むと携帯端末を取りだしどこかに電話をかけ始める。

 

 

「あっ兄さん?あーうん、そのことについても話すからさ、ちょっと来て欲しい場所があるんだよ、うん、姉さんも一緒に。場所は後から送るから」

 

 

雪花は電話を終え、携帯端末を何やら操作し満足気な顔をして右手を払う動作をする。

 

 

「ああ、ここは現実だったわね、望むだけで物が出現するというのが癖になっているわ……リーナ、紅茶をいれてくれないかしら」

 

「あ、うん……て、それどころじゃないわよ!こっちは何も理解できてないし、大体貴女は何なの!」

 

「だから、四葉深夜という人格のコピーよ、まあ今となっては記憶を受け継いだだけの別物とも言えるかもしれないけど……その辺の詳しい事情は深雪さんと達也が来てから話すわ」

 

 

もう何なのよ…この状況、と呟きながらも渋々と紅茶を用意するリーナ。相手が見た目雪花なだけに無下にも出来ないというのと、我が子を見守るかのような微笑みにいたたまれなくなったからである。

 

 

「リーナ、料理は駄目だけど、紅茶をいれるのはそう下手ではないわね、美味しいわ」

 

「……料理は駄目って何よ」

 

 

若干不貞腐れながらも、頭を撫でられ大人しくしている。完全に飼い慣らされた犬状態のリーナであったが、部屋に備え付けられているインターフォンの音で我に返ると顔を赤くし、慌ててドアを開けた。

 

 

「や、やあタツヤ、ミユキ、なんだか久しぶりね」

 

「久しぶり、という程ではないと思うわよ?……まあ、その短い期間でまさかリーナが義妹になるとは思わなかったけど」

 

「う、何があったのかはちゃんと話すわよ、それより今は……」

 

 

リーナが言葉を切り、視線で雪花を指す。

 

 

「随分早かったわね、大体十五分といったところかしら。さあ、いつまでもそんなところに立っていないで座りなさい。リーナは意外と紅茶をいれるのが上手なのよ?」

 

 

意外とは余計よ、とか、何で私がやることになってるの、とか文句は言いつつも紅茶をいれにいくリーナ。褒められれば無下には出来ないタイプなのだ。

 

 

「えっ?雪花……よね?どうしたの?リーナの料理でも食べた?」

 

「ちょっと!聞こえてるわよミユキ!」

 

 

リーナの怒声に深雪は一切の反応を示さない。達也は深雪の隣で呆れ顔だ。

その様子を見た雪花は口許を上品に手で隠しふふっと笑いを漏らした。

 

 

「深雪さん、あまりリーナをいじめては駄目よ、リーナは少しポンコツなところがチャームポイントなの」

 

「はい、お母様……………え?お母様?」

 

 

極自然に雪花にお母様と言ってしまった自分に驚きを隠せない深雪、達也も雪花を凝視している。

 

 

「そうよ、私は『司波深夜』。と言ってもコピーなのだけどね」

 

 

 

 

 

「…つまりです。貴女は十五年前の『司波深夜』という人格のコピー……『司波深夜』の記憶や思考を限りなく再現した雪花の別人格であるが、雪花の精神世界で十五年の月日を過ごしたことにより、俺たちの知っている『司波深夜』とは全くの別人である、と?」

 

「そういうことね、あくまでも私は『雪花』であって、貴方達が『雪花』と認識している人格とはまた違う人格、……そうね、雪花と深夜で『雪夜(ゆきよ)』とでも呼んでちょうだい。呼び捨てでいいわよ?」

 

 

どうやら自分で考えた名前を中々気に入ったようで雪夜はドヤ顔だ。

達也、深雪、リーナはアレどうする?とばかりにアイコンタクトを取り、まあいっか本人満足そうだし、という結論に至る。そのまんまなネーミングは深夜にしろ雪花にしろ恐らく変わることはなかったであろう。

 

 

「それでお母さ……雪夜。

雪花は私と双子であり、自分の母親が小百合さんではないことを知らされ、精神に多大なダメージを受けたからこそ、眠っているのでしたよね?それならば、目覚めるのはどれくらい先のことになるのでしょう?」

 

「確実に目覚めはするでしょうけど……分からないわ、雪花が眠るのは初めてのことだから。

前に眠りそうになった時は、無理矢理起こしたもの。まあ、その反動で雪花が脱け殻みたいになってしまったからもうやらないけど」

 

 

雪夜がリーナ推しを明言するのは、このときのことが大きく関わっている。脱け殻のようになってしまった雪花を救ったのはリーナだったからだ。

 

 

「では、雪夜がこうして表に出てくるのは初めてなのですね」

 

「そうね、雪花を通して表の世界を覗いてはいたけど、実際に出てくるのは初めてね。…元々はこの体を乗っ取ろうとしていたのだけど、それも止めたし」

 

「なっ!?どういうことよ!」

 

 

何気ない雪夜の物騒な呟きに真っ先に反応したのはリーナだった。

 

 

「元々私は司波深夜が死んだ後のバックアップとしてコピーされた人格なのだから、何もおかしいことはないでしょ。……ただ自分の死期すら予想していた司波深夜も結局のところ自分の心は予想できなかったみたいね。いつの間にか私は四葉ではなく雪花を優先するようになっていた……今だって私、怒っているのよ?真夜にはお仕置きしてやらないと気が済まないわ」

 

 

安心した様子のリーナの傍らで達也と深雪はやっと本当の意味で、この人格が深夜とは別人であることを理解した。

 

四葉を切り捨て、子を取る。

それをコピーとはいえ司波深夜がしたというのなら、雪花への愛は確かなものであり、二人にはそれが少し羨ましかった。

 

 

「さて、大方説明も終わったのだし、達也と深雪さんの家へ移動しましょうか。……そろそろお昼だし、娘の手料理が食べてみたいわ」

 

 

「はい!お任せください!」

 

 

雪夜の言葉に深雪はパアッと顔を綻ばせ、気合い充分とばかりに返事をした。

 

 

「ふふっ期待しているわ」

 

 

微笑む雪夜、嬉々として料理のメニューを兄に相談する深雪、そんな雪夜と深雪の様子に肩の力を抜いて特に美味しかった料理を挙げていく達也。

 

 

そんな三人を見ながらリーナは─

 

 

「……女言葉の雪花…違和感ないわね」

 

 

─どうでも良いことを考えていた。

 

 

 

 

 




雪夜ちゃん、爆誕。まだ本気だしてません。

主人公不在?のまま、結構いくかもしれないです。

ぼくはまだダブルセブン編までしか読んでいないのですが、何やら最新刊で大変なことがあったとか。雪花くんの設定を考えるとこの先、不安でいっぱいです。

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