魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
「さて、美味しい昼食を頂いたことですし、今後のことを話し合いましょうか」
「今後のこと、ですか?」
「ええ、まず私には帰る場所がない、ということ。恐らく、真夜に雪花のことを密告したのは小百合さんと沙世、もしくは沙世の独断、意図としてはリーナのために一国を敵に回そうとしている雪花には強力な味方が必要だと思ったから、といったところね。恐らく味方だろうとは思うのだけど、暫く接触は避けるわ。私、雪夜のことをどう思うかなんて分かりきっているもの」
「それが良いでしょう。この家には元々雪花の部屋もありますから、そこを自由に使ってください」
達也は沙世について、深夜が秘密裏に付けた雪花のガーディアン、ということしか知らず、あまり会ったこともなかったが、十数年雪花に仕えている人間、それも訓練を受けている人間に、雪夜が演技をしたところでバレてしまうだろうことは分かった。事情を説明する気がないのなら、その方が良いだろうと考えるのは自然なことだった。
「ごめんなさいね、正直、私も小百合さんや龍郎さんと住むのは気まずいのよ」
雪夜の言葉に達也と深雪は微妙な顔をするしかなかった。自分達も同じ気持ちであるし、雪夜と小百合が仲良くしている光景が浮かばなかったからだ。
リーナは、雪花が私のため……なんて顔を赤くして溶けており別の世界にトリップしている。なんかもうすっかり駄目な子である。
「それと、水波ちゃんを呼んでもいいかしら、一日放置しているし状況も分かっていないと思うから」
「構いませんよ、信用できる味方は多い方が良いでしょう。情報も共有しておいた方が良い」
達也は特に考えることもせずにそう答えた。
雪夜が水波を信用し、事情を説明するというのなら、構わないと思ったからだ。
それが達也と深雪に、悲しい現実を教えることになるとは思ってもみなかったのである。
◆
「ああ、生水波ちゃんだわ!可愛い、可愛いわ!」
「え?え?なんですか?どういうことですか!?私の時代ですか!?」
「この年相応の発展途上の胸がまた良いわね!」
「ひゃ、ちょっななな何ですか!?」
呼び出されてほんの十五分足らずで現れた水波が暴走した雪夜に抱きつかれ、胸を揉まれ、混乱している傍らで、達也と深雪も相当に混乱していた。彼らの知っている深夜はこんなことをする人物では絶対になかったからだ。
「お、おおお母様?一体どうなされたのですか!?」
「どうもこうもないわよ、生水波ちゃんよ?愛でないと!それと、私は雪夜、深夜ではないわ」
キリッと効果音が付きそうなキメ顔でそんなことを言う雪夜だが、やっていることは只のセクハラである。
「それに、深夜はガチガチの百合だったから、きっと同じようにしたんじゃないかしら?穂波とは百合な関係だったしね。深雪さんのことだって大きくなったら食べようと思っていたし」
ササッと雪夜から距離を取った深雪の判断は正しい。そして、その深雪を守るように前に立った達也はガーディアンとしてきっと満点だ。
「嫌ね、冗談よ。娘を食べようだなんて流石に考えてなかったわよ。精々愛でるくらい………勿論ベッドでね」
「何も解決しておりません!それに穂波さんの方は否定なされないのですか!」
「そっちは本当だもの」
深雪は色々昔の思い出を思い浮かべながら、泣きたくなった。二人は四六時中一緒ではあったが、そんな関係だったと誰が思うだろうか。いや、自分の母親が同性愛者なのでは?と疑うことはそうそうないのだから、当然ではあるが。
「真夜のことがあってから、男はどうも苦手なの、だから龍郎さんとは殆ど一緒にいたことなんてないのよ。貴方達が生まれたのは奇跡ね」
そんなことを聞かされてどうすれば良いのか分からない二人だが、よくよく考えてみると思い当たる節があるらしく、どんどん雪夜から距離を取っていく。
「女の子は柔らかいし、良い匂いだし、可愛いし、最高よ。ちなみに水波ちゃんは私の嫁だから、手を出しては駄目よ?」
「出しません!」
涙目になりながらも、なんとか返事を返した深雪、頭を抱える達也、トリップしたまま一向に帰ってこないリーナ。
そして。
「あの……そろそろ誰か助け、ひゃ!ふぁ……力がぁ…やめ…てぇ…」
「ふふっ水波ちゃんの弱点は分かってるのよ、さあ、可愛く悶えなさい!」
悪の大魔王のような邪悪な表情でセクハラをする雪夜と、弄ばれ色々限界な水波。
日曜の昼下がり、一般家庭よりは少し広い程度の司波家のリビング。抜け出せないカオスがそこにはあった。
雪夜さん、百合百合します。
あれ、雪花の時とあまり変わらない気が……。