魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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私は帰ってきた!

進学してからというものの時間が流れるのが早い!投稿がかなり不定期になってきまして申し訳ない。




押し付け

黒いゴシックドレスのお嬢様と、いかにもなメイドさん。街中のベンチでそんな二人が座っていれば当然視線は集まる。水波はそんな視線を煩わしく思いながらも、自分がそんな二人組を見かけたらまず二度見するだろう、と思い納得する。とはいえ、あまり気持ちのいいものではない。その辺を今の状態だと男か女か微妙なラインの女装野郎はどう思っているのだろうかとそんなことを考えれば、どうにも雪夜の様子がそわそわしているような気がした。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「……いいえ、なんでもないわ」

 

 

そう答える雪夜は一見、本当になんでもないようだがどこか不自然さを拭えない。

水波はそんな雪夜に小さく首を傾げるが、この人が何を考えているのか分からないのは雪花の時も一緒か、と意識の外に丸投げした。諦めと適度な無関心、それは雪花と長く付き合うために必須のスキルだった。勿論、それは雪夜にも使えるもので……だからこそ、水波は雪夜の呟きを聞き逃してしまったのである。

 

 

「……雪花は一体、何日で表に戻ってこられるかしらね」

 

 

雪夜は妖しく微笑むと買ったばかりのコーヒーを口に運ぶ……がすぐに目を見開くとカップからコーヒーが溢れてしまうことも気にせずに、両手をぱたぱたと振りだした。

 

 

「――ッ!な、なんなのこれ!一体何が入ってるというの!?」

 

 

涙目でそう訴える雪夜に水波は良いものを見れたと、ほのぼのとした気持ち、穏やかな口調で告げる。

 

 

「雪花様、苦いものが大の苦手なんですよ。ピーマンですら涙目で食べますからね、そんな雪花様の体でブラックのコーヒーを飲めばそうなりますよ」

 

「うう、それは知ってたけど味覚は私に依存するかと思ったのよぉ……雪花の中では普通に飲めたんだもの」

 

 

「可愛いかったですよ?」

 

「水波ちゃん!」

 

 

意外とこのデートを楽しんでいる二人だった。

 

 

 

 

 

「つまり、雪花くんは二重人格…?」

 

 

中条先輩には知る権利がある(キリッ)なんてことを言っておきながら達也があずさに話したのは、雪花にはもう一つの人格があり、それを雪夜と呼んでいること。今、表に出ているのは雪夜の方であり雪花は眠っていること。その雪夜は精神干渉魔法を得意とし、達也とあずさの言動を操作されていたこと。主にその三つだった。達也曰く、嘘は吐いていない、ただ言っていないだけ、な説明ではあるがあずさは深刻な様子であった。

 

 

「ええ、完全なる別人格である、と認識してください。事実、記憶も共有していないようですし……会ってみれば中条先輩の知っている雪花とは全く違うとすぐに分かりますよ。……あーただ中条先輩は雪夜に心底嫌われているようですからあまり関わらない方が良いかもしれません」

 

「なんでですか!?私会ったこともないのに……」

 

「一方的に見られていたんでしょうね。雪花と記憶は共有していないくとも、雪花が見ているものを見ることはできたようですから」

 

「うぅ、だとしてもですよぉ…」

 

 

あずさはもはや涙目を通り越して半泣きだった。

なんで嫌われているのかを考えれば、ネガティブな思考に陥り、自分の悪いところばかりがあれこれと頭に浮かぶ。

 

 

「正直言って彼女の考えていることは俺にも分かりません。まあ、何も考えずに行動する雪花よりは読みやすいかもしれませんが」

 

 

達也なりにあずさを気遣ったのだろう。少々のユーモアを混ぜてみたものの、達也にその手の才能はなかったのか、あずさは相変わらずのどんよりだった。

 

 

「そう落ち込むこともありませんよ。雪花が目覚めればそれで終わることですから」

 

 

達也の言葉にあずさは小さく頷くだけだった。

 

 

 

 

 

水波と雪夜がデートを楽しみ、達也とあずさが真剣な話をしているころ、深雪とリーナは男女問わず視線を釘付けにしながら街を歩いていた。

 

 

「ミユキ、私あのアイスが食べてみたいんだけど」

 

「リーナ、今はそんな場合ではないの、お兄様を探さないと」

 

「……アイス」

 

 

男なら誰もが憧れ、女なら誰もが羨む美貌を持つ二人の美少女。

 

 

「リーナ、どうして貴女はそう残念なのかしら」

 

「なっ!スーパーブラコンのミユキに言われたくないわよ!」

 

 

だが実際は、ブラコンを拗らせた深雪とポンコツのリーナ。二人が美少女であり、才女であり、優秀な魔法師であることは間違いないのだが、どことなく残念なこともまた間違えようのない事実ではあった。

 

 

「そこまで言われては私も黙っているわけにはいかないわね、リーナ、いつかの決着をここで着けましょうか」

 

「いいわね、やりましょう。あの時の私と同じと思わないことね」

 

 

一触即発。

何をとち狂ったのか、二人の美少女はここで魔法戦争を開始する気でいるらしい。

 

だがそれも仕方のないことではあった。

 

実はこの二人、既に雪夜によって魔法をかけられている。雪夜が『言ノ葉ノ剣(アブソリュート・ソードワード)』によって与えた命令は二つ、『心で思ったことを躊躇わずに口にする』と『後のことは考えない』だ。

 

これによって二人は歯止めがきかなくなり、街中で決闘などと、とても女子高生の思考とは思えない事態に発展してしまったのだ。断じて、操られてなくてもこういうことになったなんてことはありえない。

 

その証拠に─

 

 

「貴女達、私の予想を斜め上に越えてくるわね」

 

 

──パチン、と雪夜が一つ指を鳴らせば、二人は我に返ったように現状を把握し、握りしめたCADをしまった。

 

 

「喧嘩にはなるかもしれないとは思ったけど、まさかCADまで出してくるとは思わなかったわ」

 

 

呆れ顔の雪夜ではあるが、そもそもの原因は彼女であり、これには流石の二人も反論するしかない。

 

 

「貴女がやったんじゃない!」

 

「そうですよ!少しは自重してください!」

 

「あら、ごめんなさい。元スターズのアンジー・シリウス様と元四葉の次期当主様がこの程度の『手品』に引っ掛かるなんて思わなかったんですもの」

 

 

ニヤニヤしながらそんなことを言って二人を煽る雪夜。当然ぶちギレ寸前の二人なわけだが、後ろでは水波が早く終わんないかなー、とばかりにぼーっと立っており、雪夜を挟んで中々の温度差が出来上がっていた。

 

 

「雪夜、二人を煽るのは止めてください。深雪、落ち着け。リーナ、お前もだ」

 

 

達也が仲裁に入れば深雪はすぐに矛を収めた。そうなるとリーナとしては自分だけがこれ以上突っかかるのもどうかと考え一先ずムスッとした顔でタツヤを睨んだ。

睨まれた達也は、なぜ仲裁に入っただけの自分が睨まれなくてはならないのかと文句の一つでも言ってやりたくなったが、自分はこういう役回りなのだと既に理解してしまったがゆえに、それを口にすることはなかった。

 

 

「あら達也、そちらは済んだのかしら」

 

「ええ、しっかりと貴女の思惑通りに。全く、押し付けるは止めてください」

 

「良いじゃない、私より貴方の方が適任でしょう」

 

 

今回の騒動、雪夜が『言ノ葉ノ剣』によって引き起こした騒動は全て達也にあずさを任せ、事情を説明させるためのものだった。

多分に雪夜の『遊び』が混じっているのはご愛敬だろう。

 

 

「どういうことですか?お兄様」

 

「雪夜はな、中条先輩に事情を説明するのが面倒だから俺に押し付けたんだよ」

 

 

達也の言葉に深雪がじとっとした眼で雪夜を見れば、雪夜は不満げに口を尖らせ言い訳を始める。

 

 

「だって私が話すのではまともに会話も出来なさそうじゃない。中条あずさがあわあわと大混乱して、それに私が悶えながらもイライラしている図がありありと思い浮かぶわ」

 

「……イライラしているのに悶えはするんだ…」

 

 

リーナのツッコミに何故か胸を張る雪夜。別に褒めても、称賛してもいないのだが、雪夜としては誇るべき言葉だったらしい。

 

 

「はぁ、まあ押し付けるのは構いませんが、遊びで振り回すのは止めてください」

 

「うぅ、分かったわよ」

 

 

達也に叱られた?雪夜は小さくなって頷く。まるで雪花である。

 

 

「さて、用が済んだなら帰ろうか。少しやり過ぎたみたいでな……注目を集めてる」

 

 

とんでもないレベルの美少女同士が大喧嘩し、そこに黒いゴシックドレスの美少女と美少女のメイドまでもが現れるというカオス。そしてその中心には達也だ。さぞ好奇の視線が集まっていることだろう。達也に限らずこの視線の中では流石に居心地が悪い。

 

一行はしずしずと帰宅の路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「添い寝、楽しみだわー」

 

「「「……!」」」

 

 

 

そして彼女達の戦いはこれからである。




( ・∇・) 水波「味覚は雪花様に依存する……なら、ちょっとこれ食べてみてください」

(。・ω・。)? 雪夜 「金平糖は普通に好きだけど……(パクっ)……ふぁぁ」

(=´Д`=)水波 「とけてる……はぅ可愛い過ぎます……っ」

ヽ(*´▽)ノ 雪夜 「水波ちゃんもっと!もっとちょうだい!」

(*´Д`*) '`ァ'`ァ 水波「お、お姉ちゃん呼びで可愛くおねだりできたらあげます」


(//・ω・//) 雪夜「うぅ……お姉ちゃん……ちょうだい?(涙目)」


グハッ(*゚Д゚)・:∴(鼻血) 水波 「反則級の可愛さっ!思わず抱きしめてしまうぅ!」


(*´∀`*)雪夜 「ふぁぁ……美味しい…」







後書きのおまけ、過去のお話にも付け足していきたいと思っています。付け足した話については、後程、後書きか活動報告でお知らせします。
近々、コラボ企画も投稿させて頂くので、そちらも合わせて告知させていただきます。



さて、突然ですが……『雪花くんにメッセージを送ろうキャンペーン』を開始いたしました!
活動報告『雪花くんにメッセージを送ろうキャンペーン』にて、雪花くんにメッセージを送っていただくと、雪花くんよりお返事があるという企画でございます。
質問や言いたいこと、なんでも構いません。


期間はとりあえずぼくが次話を投稿するまでの間とします。

たくさんのご質問お待ちしております!(誰からもこなかったら泣く……雪花が)


完結までの大体の流れ(自称、皆さんの予想を裏切る、誰にも予測できない展開)は頭の中に出来ており、不定期ではありますが、これからも完結まで投稿頑張りますので、よろしくお願いします。


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