魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
「水波ちゃん、あーん」
「えっ、嫌ですけど」
「……深雪さん、あーん」
「遠慮させていただきますね」
「……良いわよ、自分で食べるわよ……」
「ちょっと!なんで私には聞かないのよ!」
いつもなら、静かで優雅な食事風景である司波家の朝食ではあるが、人数が増えれば賑やかなものだった。
あーんで食べさせてもらおうと奮闘するも諦める雪夜と、自分には頼まなかったことに騒ぎ立てるリーナ。
「リーナは食べさせてもらうより食べさせてあげたくなるのよね。この辺は雪花の影響……なのかしら?やっぱり妹って感じがするのよ」
「うぅ過去を思い浮かべるとそれも仕方のないような気もしてくる」
しょぼーん、と落ち込むリーナをよしよしと慰める雪夜。
「二人とも冷たいわ」
「当たり前です。誰のせいで昨日全然眠れなかったと思っているんですか」
「私は全く覚えてないもの」
昨夜、深雪、水波、リーナは約束通り雪夜と添い寝したのだが、それはもう酷い有り様だった。
雪夜が触ってこようとするのをなんとか阻止し、雪夜を寝かしつけ、これで安心して眠れると思ったのも束の間、とてつもない寝相で、抱きつく、舐める、触ってくると、とても眠れるような状態ではなかった。眠ったら最後、雪夜の餌食になっていただろう。
「それより、今日のことです。本当に学校へ行くんですか?」
「当たり前じゃない。雪花の出席日数はギリギリなのよ?休んだりしたら進級できなくなってしまうじゃない」
「それはそうなんですが……」
正直、達也は雪夜に学校へ来てもらいたくなかった。まず、間違いなく問題が起きるという確信があるからだ。
雪花の留年というのは確かに一大事ではあるのだが、その大部分は自業自得であり、現状山積みの問題にさらに上乗せが確定することと天秤に掛ければ、まあ留年してもいいやと諦めにも似た思いがある。
「留年……雪夜、学校へ行くの止めましょう。私がデートしてあげますから。そしたらあーんもしてあげます」
「なんですって!?……い、一年くらい留年しても別に大丈夫よね……だって雪花にはトーラスも四葉もあるのだから正直学歴とか関係ないし……」
水波が留年という言葉に反応し、雪夜に提案すれば、それは必殺の一撃となって雪夜を揺らす。そして、雪夜の思考は、雪花には留年してもらおう、私と水波ちゃんのデートのために!で可決しそうなるわけだが、そこに待ったをかけたのが深雪であった。
「雪夜、学校へ行きましょうか?」
眩しいくらいの笑顔のはずなのに目が全く笑っていない女王様の笑み。
「そ、そうね!行かないとね!雪花が留年してしまうものね!」
その笑顔の恐怖を、雪花の体は覚えていた。逆らったらどうなるか分からない。雪夜にそう思わせる力がそこにはあった。
「私より深雪さんの言うことを聞くんですね……悲しいです」
ところが、深雪の言葉に従おうとすれば水波が拗ねた。ジトッとした責めるような目がつらい。
「ど、どうしろと言うのよ!?達也、どうにか上手くまとめてちょうだい!」
結局こうなりますか、とは諦めの境地に達した達也の言葉だ。
「雪花は留年しないに越したことはないでしょう。意見が割れたのなら利のある方を取ればいいのではないですか?」
「……水波ちゃんとデート」
達也が意見を言えば、雪夜が小さな声で抗議してくる。達也からしてみれば、下らないにも程がある抗議なため適当に投げやりな意見を返す。
「放課後にすればいいでしょう」
「それだわ!」
「えっ!?」
水波が、雪花が留年すれば来年同級生になれる!と考えてあんな提案をしたことは分かっていた達也ではあるが、水波には犠牲になってもらうことにした。
雪花を留年させないためであって、妹の笑顔が怖かったからでは断じてない。
◆
「貴女本当に雪夜?」
昼休み。
適当にいつものメンバーに理由をつけ、集まったのは雪花、達也、深雪、リーナ。
そこでリーナは集まるなり、唐突にそう質問した。
「えっ?何が?」
それに雪夜はキョトンとした表情で首を傾げる。
「何って、貴女の言動よ。いつもの貴女じゃないし、話し方や癖なんかも雪花のまんまって感じじゃない」
リーナは雪夜が心配で仕方がなく、休み時間の度にC組を訪れては、雪夜の様子を観察していた。そこで見たのはリーナの思い描く雪花そのもの。机にダラリと両手を伸ばして伏せた姿なんかは、完璧に雪花であった。
「リーナは相変わらずポンコツだなぁ。いつもの調子で話していたらすぐにバレちゃうじゃん」
「それよ!話し方だけじゃなくて、なんかこう、表情というか仕草というか、とにかく雪花なの!」
リーナの言わんとしていることは、達也と深雪も感じていたことだった。
演技というには、あまりに雪花そのままなのだ。人格が変われば趣向も変わることは今朝までの雪夜を見ていれば分かる。何気ない日常の中で完璧に、身内にさえ悟られないレベルの演技ともなれば、それはいかなる魔法かと疑いたくなるようなものだ。
「ふふっ、種明かしすると演技ではなく魔法よ」
そして、実際、それは魔法であった。
「たぶんあなた達の誰にも教えていない雪花の魔法、その応用よ。というより無駄遣いかしら?本来の用途とはかけ離れた使い方だもの」
「魔法って、もしかして全校生徒の認識を書き換えているの!?」
「可能ではあるけれど、ここの生徒は魔法師の卵ばかり、それも優秀な、ね。そんなことをしたらきっとバレてしまうでしょうね。あなた達だって、私の魔法にかかったということには気がついたでしょ?」
雪花は四葉家現当主の四葉真夜と、司波兄妹の実の母にして真夜の姉、四葉深夜の才能を受け継いでいる。故に雪夜は『
「んー、これは雪花があなた達に伝えていない以上黙っていようと思っていたのだけど……これからのことを考えると教えておいた方が良さそうね」
雪夜は楽しそうに笑う。
まるで、お気に入りの、とっておきのおもちゃを見せびらかす子供のように。
次話、雪花の隠された力が明らかに!?(本人不在)
ふっ久しぶりにこの台詞を言う時が来たようだな(キメ顔)。
さて、明日も0時に投稿します。
◆
今回はいつものオマケのかわりに『雪花くんにメッセージを送ろうキャンペーン』の回答をしたいと思います。
・雪花さんに質問です!
女の子の服を着てる時の下着は女物ですか? あと振り袖の時は下着はいてましたか?
かなり重要な案件なのでよろしくお願いします!
「全くもって重要ではないけど……流石に下着は男物だよ!振り袖の時もはいてたよ!そこは死守したよ!」
・どんな私服(女装)を着ますか?
「私服(女装)っておかしいよね!?ねぇ、おかしいよね!?普段は女装なんてしないからね!?……まあ、姉さんと買い物行くときは着せられたりするけど……」
・着替えの際の男子の対応を教えてください
「ぼく結構体育はサボるからあんまり機会はないんだけど……ぼくだけカーテンで隔離されるんだ……。カーテンが設置される前は皆が更衣室から出ていってたよ……。いじめかな……寂しい」
・雪花くんに金平糖を食べさせたいのです。
あーん、させてくだされ(><;)」
「ぼくはそんなに安い男じゃ……あーん!」
・雪花さんに質問であります
十中八九近寄ってくる紳士達(変態共)への対応はどのようにしていますか?
それと雪花さんが求める男らしい姿と周りの人達が想像する男らしい雪花さんの姿はどのような物か気になります
最後に・・・・・・男として息子は機能していますか?下品な質問ですがかなり心配です
「紳士どころがむしろ淑女がヤバイよ……兄さんすらどうしようもないから……。
男らしいというより、とにかく女の子に間違われたくない!最近は諦めの境地だけど……。
機能していないわけがないよね!?余計な心配だよ!」
・雪花きゅんか( ゚д゚)わ( *゚д゚)ゆ(*´д`*)す
達也君の行動で胸きゅんとか顔真っ赤になった事ありますか?
正直に答えてね((ゲス顔))
「ないよ!?
そりゃ、格好いいなって思うことはあるけど胸キュンはしないよ!?……顔真っ赤は……ないこともないけど」
・早速ですが、雪花さんに質問です!女ではなく男だと勘違いされていたことで驚かれることが多々あったと思いますが、今までされた中で一番凄かったリアクションは何ですか?銭湯に入るだけで一悶着起きそうな雪花さんなので、絶対にどこかの男子更衣室とかでやらかしているはず!
「これは断然泉美ちゃんかな。なんせ気絶したからね!銭湯は行ったことないから分からないけど、夏休みの旅行で一人寂しくお風呂に入ったのは悲しかった……」
・リーナには制服の他どんな衣装を贈ったのですか、あとお気に入りは?
「メイド服とか巫女服かな。お気に入りは……ぼくの趣味を疑われそうなので秘密!」
・女装はどれが好み?
「全部嫌だよ!好みも何もないよ!……まあぶっちゃけぼくは全部似合っちゃうけどね(自棄)」