魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
ぼくに雪花の可愛さを表現できる絵心なんてなかった……。
「いや、もう二度とリーナに辛い思いはさせない……
ぼくはついに、表に出てくることができた。
ここに至るまで、長く辛い物語があるのだけど……まず、一言言わせてもらいたい。
なんでぼくは女装しているの!?
明らかに高そうな黒いドレスを着ているんですけど!?というか下着も女物だよね!?
これはもう色々終わってるね!ぼく、起きてそうそう心が折れそうだよ!
『何を騒いでいるのかしら、可愛い娘が可愛い服を着るのは当たり前でしょ』
『うるさいよ!
男の子が女物の服や下着を着るのは当たり前じゃないんだよ!』
ぼくの頭に直接声が響く。
これはぼくに書き込まれた司波深夜の人格のコピーである雪夜だ。
こいつのせいでぼくは散々な目にあった。
どうやらぼくは精神に強いショックを受けると深い眠りにつくという中二設定があるらしい。
さらに。ぼくが眠っている間、雪夜は表に出ることが出来る。
『それで、出てきたということは、課題はクリアしたのかしら?』
そして、ぼくは目覚めた後もこの雪夜によって精神の世界に閉じ込められていた。
雪夜は、ぼくには自分を見つめ直す時間が必要だと、確固たる自分というものを見つけることが必要だというのだ。
『ぼくは……』
ぼくは弱くて、たぶん、そう重いものは背負えない。
生まれも、力も、友達も、好きな人も、全部を飲み込んで前に進むなんてきっとできないだろう。
でも前に進めなくても良い。
今はただ、今あるものを守りたい。
自分の出自なんてもう終わったことをいつまでも考えるのは止めた。
力はあるんだ。
どんな形であっても誰にも負けないと自信を持てるくらいには。
だったら出来るはずだ。
これから訪れるどんな困難だって、きっと乗り越えられる。
だって気がついたから。
ぼくは一人じゃなかったって。
何もないように感じた真っ白な世界には、ぼくを想ってくれる沢山の人がいて。
そんな人たちが待ってくれているのなら、一緒にいてくれるなら、こんなぼくでもいつか……全てを飲み込んで、全部背負って、前に進める時がくるんじゃないかって。
そう思えたなら、後は何も怖くなかった。
閉じこもる必要のないくらい、ぼくの世界は優しいから。
『そう……もう大丈夫そうね』
ふざけてるやつだと思う。
司波深夜の人格をコピーしたとは思えないくらいおかしな発言はするし、端的に言って変態だ。
でも、ぼくを心配して、ぼくのために色々やってくれているのは感謝してる。
きっと彼女もまたぼくのことを想ってくれる人の一人なんだ。
『なら、リーナに中条あずさとのこと話しましょうか?二人の女の子と婚約するなんて羨ましいわ』
どうやらぼくのことを想ってくれる人は沢山いてくれるけど、ぼくのことをいじめる人もそれと同じくらいいるらしい。
いや、ぼくが悪いんだけどね!
◆
『じゃあセッカはずっと私のそばに居てくれる?』
頷いてあげることが出来なかった。
リーナが辛くて、どうしようもなくて、それでぼくを頼ってくれたのに、ぼくは……。
ただ頷くだけでリーナはきっと救われた。ただ一緒にいてくれる人間がいるだけでどれだけ救われるかを、ぼくは他でもないリーナから教えてもらったのに、ぼくは背負うことが出来なくて結局頷けなかったのかもしれない。
『大丈夫だよ、私がいる』
その言葉に安心できた。
リーナはぼくが辛いとき、いつもそばにいてくれた。何もなくなっても、リーナは、いてくれた。
『……じゃあリーナはずっとぼくのそばに居てくれる?』
『ずっとそばにいる。セッカがどうしても辛くなる前に、涙が溢れそうになる前に、必ずそばにいて、私がいるって教えてあげる。そしてこうして抱き締めてまた優しくて明るい、私の大好きなセッカに戻ってもらう』
リーナはぼくを強く抱き締めて、そう言った。
ぼくが頷けなかったもの。
彼女は心からぼくを、何年もずっと慕っていてくれたのだ。
弱くて、臆病、良いところなんてないぼくをずっと。
正直に言おう。
リーナたんマジ天使。
つまり惚れました……。
でも待って欲しい。
ぼくには将来を約束した彼女が、あーたんがいるのだ。
そして、ぼくはあーたんも好きという。
……二人の女の子に恋をするってなしですか?
いや、ぼくは今の日本の一夫一妻はあまり良くないと思うんだよね、やっぱり、男の夢的なものもあるし、そうすれば結婚できない未婚の女性とか減って良いことがいっぱいあるんじゃないかなと思う次第なんですけど。
『素直に認めなさい、貴方は最低よ』
素敵な人と他人より多く出会っちゃっただけじゃん!どっちも本当に好きなの!
『まあ、仕方がないといえば仕方がないのよね。雪花は実験によって作られた魔法師だから色々副作用が出ているのだし』
『副作用!?初耳なんですが!?』
『深夜の力と真夜の力を継がせようとした結果、ホルモンバランスとか色々アレで、些か以上に女の子みたいな可愛い容姿になってくれたし』
『色々アレって何!?ねぇ、何なの!?』
『大丈夫よ、性別は確かに男だし、今後性転換するようなことにはならないから……たぶん』
『たぶん!?詳しく!その辺詳しく!』
『うるさいわね……良いからさっさとリーナに言いなさいよ!』
『逆ギレ!?』
後程、雪夜には詳しく聞くことにして、今は確かに優先すべきことがある。
ぼくがあんまり黙っているから、唖然としてしまっているし。
ぼくが雪花であるかどうか皆判断できないでいるんだろう。
「やあやあ、ただいま。雪花さんのご帰還だ」
魔法が飛んできた。
(`・ω・´)キリッ 雪夜「雪花は男の娘だからこそ可愛いのだと思うのよ。だから女の子じゃなくて良かったのかもしれないわ」
ヾ(o゚Д゚o)ノ 雪花「真剣な顔でどうでも良いこと言わなくていいよ!」
(゜Д゜)ハァ?? 水波「今更気がついたのですか?そんな当たり前のことに」
ヽ(;゚д゚)ノ雪花「当たり前ではないよ!?なんでそんなことをドヤ顔で言えるの!?」
'`ァ(*´д`*)'`ァ 水波「嫌がりながらも、涙目で女装するのが最高に可愛いんじゃないですか」
(;>ω<)/雪夜「くっ、負けたわ」
Σヾ(;`・Д・)ノギャアー 雪花「勝手に負けた!?そして水波ちゃん、その手に持っている服を置こ……ぎゃあぁあああー!?」
◆
明日も0時に投稿します。