魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
ではまた後書きで。
姉さんの笑顔には人を凍らせる魔力がある。それはまるで吹き荒れるブリザードの如く、故にブリザードスマイル。そのブリザードスマイル(略してブリスマ)を諸にくらってしまったぼくはその場を動くことすら出来ずただ冷や汗をダラダラと流す。ふと姉さんの後ろに立つ兄さんを見るとまるで頭痛を堪えるかのように頭を押さえており言外にお前のせいだと言いたげな顔だった。
「この娘が貴方のお友達なのでしょう?」
ニコッとより笑顔を強める。ぼくの体温は下がる。
「うっうん、平河千秋さん」
当人であるちーちゃんはぼくの様子を不思議そうに見ている。そりゃ姉さんは表面上まともなことしか言っていないからね!でもこの笑顔はヤバイ時の奴なんだよ!ぼくが学校行かないからと告白した時くらいのヤバさなんだ。
「深雪、とりあえず座ろうか。ほのかの試合までまだ二時間あるんだ、座ってゆっくり話そう」
「そうですねお兄様」
このままではこれから
「で、友達を紹介するというのは建前、いや、ついでなんだろ?本当の用はなんだ?」
「実は北山さんが使ってた例のCAD、ぼくが作ったって言ったら嘘くさいって言うんだ。だからこうして兄さ…司波くんに証明してもらおうと思って」
危ない。うっかり兄さんと言うところだった。ぼくが兄さんの弟だと知ったら折角仲良くなったのに引かれてしまうかもしれない。兄さんのこと怖いとか言ってたし。
「そうか、ならCADを持ってくれば良かったな(何故兄弟だと隠している?)」
「あーそうだね。気がつかなかったよ(兄さんが怖がられてるからだよ)」
言葉で会話をしつつアイコンタクトでも会話をする。これはぼくらが姉さんに気がつかれぬよう合図を送り合うために考え出したものだ。
「平河さん、こいつの言っていることは本当だよ。俺が昨日作らせたんだ」
「……昨日?」
ちーちゃんが首を傾げる。あれ?どこかおかしいところあったかな?
「うん、昨日六時間かけて作ったよ。司波君がギリギリに持ち込むものだから夜中までかかって今日は寝坊したよ」
「あの何故さっきからお兄様のことを司波く…」
「いやーすまなかったな、お前は追い込まれた方が力を発揮するからな、無茶をさせた」
兄さんが姉さんの言葉を遮る。余計なことを言わせないためである。
「たったの六時間であれを作ったの!?」
「司波君が完成品を持ち込んでくれたからだよ、一から作ってたら一日かかってた」
「結局化物ね」
「酷い」
まさかの人外扱いである。たしかにちょっと早さには自信があるけどさすがに酷い。
「あの私の話を…」
「そういえば!平河さんはCAD詳しいみたいだけどやっぱり魔工師志望?」
「えっええ、実技はあまり得意じゃないしCADは好きだから」
姉さんの言葉を露骨に遮ったぼくにちーちゃんが困惑の表情を浮かべるが答えてくれる。
そして間を開けずに兄さんが話し始める。
「そうか、なら今度今日使った標準補助システム付きの汎用型CADを見せてあげたらどうだ?何なら今日にでも」
「見たい!」
その後は話題をCADの結構ディープな話に移していきつつ間を開けずに話すことで姉さんが会話に入ってこられないようにする。まるでいじめである。ごめん姉さん。後で謝るから。
「おっともうこんな時間か。まだ一時間あるが余裕を持っていくべきだな。行こうか深雪」
「え、ええお兄様」
若干涙目の姉さんに罪悪感で胸がいっぱいだ。今すぐ土下座したいくらいである。
しかしそこに兄さんの華麗なフォローが入る。さりげなく姉さんの肩を抱き自らに近づけそのまま歩いていったのだ。姉さんは顔を赤くしてさらにすり寄る。まるで恋人同士の距離である。いつもならぼくがいる前ではやめて欲しい行為だが今はナイスだ。流石ですお兄様!
さてぼくも本題に入らなくては。
「ねえ、これでぼくら今日から友達だよね?」
「…ええ、よろしく」
「こちらこそよろしくねちーちゃん!」
渾身の笑顔で言う。
「名前で呼んでいいとは言ったけどそれは止めなさい」
「なんで?可愛いのに」
「…私もかーくんって呼ぶわよ?」
「良いねそれ!雪花の『か』から取ったんだろ?」
「…もういいわ」
なんでか諦めの表情で歩いていくちーちゃんにぼくは一つ言い忘れていることがあるのを思い出した。
「あっちーちゃん、このホテルの一部屋開けてもらったからここ泊まりなよ」
ちーちゃんの目が再び見開かれた。
はい、四日目はまだ終わりません。本当に下は長くなりそうです。
平河千秋さんが若干オリキャラと化している気もしますが…気のせいでしょう。
さて明日も0時に投稿します。