魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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今日も投稿できました。が干からびました。


九校戦五日目②

「平河さん、古葉くんどうしちゃったの?なんだか死を前にした死刑囚みたいな顔してるけど」

 

「そっちこそ、一条くんどうしちゃったの?なんだか魂を抜かれたみたいな顔してるけど」

 

 

姉さんのアイス・ピラーズ・ブレイク一回戦。どんな魔法を使いどういう試合展開だったのか。曖昧とはいえ原作知識のあるぼくには分かっている。それをあたかも試合を観戦していましたよ風に語ることは容易いだろう。しかしそれはぼくがそこにいなかったという事実がバレていなかった場合に限る。

普通なら観客席の中から一人の人間がいるかいないかを確認するのは不可能である。しかしぼくの兄さんはその不可能を可能にする力、精霊の眼(エレメンタル・サイト)を持っている。ぼくがいなかったことは確認されているのだ。

そして兄さんは確実にチクるだろう。

 

つまりは詰みである。

 

 

 

 

「雪花、私の試合どうでしたか?」

 

 

姉さんの二回戦を含めた新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイク予選全試合を観戦し、部屋に戻るとそこは雪国でした。いやぼくの部屋なんだけどね!何故か雪国の景色が見えるや。猛吹雪のね!

 

 

「圧倒的だったよね!流石ですお姉様!そこに痺れる憧れ…」

 

「私、怒っているのよ?」

 

「ごめんなさい!」

 

 

土下座だった。

条件反射の域に達した最速での土下座だった。

 

 

「…まあ二回戦はちゃんと観戦していた様だし許してあげます」

 

 

助かった。ぼくはほっとした思いで顔を上げようとする。がまるでそこに見てはいけないものでもあるかのように肉体が顔を上げることを拒否していた。何故なのか。その答えは姉さんの口からすぐに語られた。

 

 

「ただし、これを着たらだけど」

 

 

恐る恐る顔を上げた先にあったのは見慣れた服だった。この九校戦中何度目にしたか分からないその服はぼくからしたらコスプレ以外の何物でもなく男物でさえ恥ずかしかった服。そして今も姉さんが着ている服と同じもの。

つまりは一校の女子(・・)制服だった。

 

 

「エイミィに貸してもらったの。私のでは少し大きいし」

 

じりじりと虚ろな目をした姉さんが迫ってくる。逃げないと!退路は!?すぐ後ろにドア!やった!逃げられ…

 

 

「悪いな雪花」

 

 

ドアを開けた先には兄さんが立っていた。初めから退路は断たれていたのである。そして無情にも閉まるドア。最後に見た兄さんの顔が言っていた。

『お前の自業自得だ』

 

 

 

「さてお着替えの時間ですよ?」

 

 

ぼくは投了した。

 

 

 

鏡に映る一校の女子生徒。顔には薄く化粧が施され最近のびてきた髪は何やら飾りのように編み込まれオシャレに。背後に絶世の美少女が立っていようとも霞むことのない美貌。ただその瞳だけは酷く濁っておりまるで全てに絶望しているかの様。

 

 

「似合ってるわよ雪花」

 

 

というかぼくだった。女装したぼくだった。

 

 

「無理言って借りてきたかいがあったわね」

 

「ソウダネー」

 

 

なんだこの美少女は。ぼくより可愛い女子っているの?とか一瞬考えてしまった。死にたい。

 

 

「写真もいっぱい撮ったしもう着替えていいわよ。エイミィには感謝しないと」

 

 

ぼくが着替えて制服を渡すと姉さんは満足気に帰っていった。とりあえず許して貰えたということだろう。

そのために失ったものは大きすぎたが。

 

ぼくは取り合えずこの何とも言えない喪失感を埋めるべく化粧も落とさず完成間近のCAD、エクスカリバーを完成させることにした。そして作業に取りかかろうとしたところでドアがノックされる。あれっ姉さん忘れ物でもしたのか?とぼくは確認もせずにドアを開けてしまう。開けてしまった。

 

 

 

「……やっぱり貴方そっち(・・・)の趣味があったのね」

 

 

 

新たなる誤解が生まれた。




本当は昨日①と合わせて投稿したかったんですが間に合わなかったという。明日の一話分は何とか書き終わったので明日も0時に投稿します。


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