魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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ギリギリ間に合いました。


九校戦編〈新人戦モノリス・コード〉
こうして彼は舞台に上がる①


「では1-Eの吉田幹比古と、1-Cの古葉雪花を」

 

 

 

新人戦モノリス・コード予選リーグ、第一高校と第四高校の試合。試合開始直後の奇襲で『破城槌』を受け一校の選手三名が重傷を負うという事故が発生し代わりの選手として残りの試合に出場することとなった達也は他のメンバー二名をそう指名した。

 

 

「古葉雪花?吉田幹比古が応援メンバーとは別口で、このホテルに泊まっているのは知っていたが」

 

 

古葉雪花という名前を疑問に思ったのは部活連の会頭である十文字克人だけではないだろう。この場にいる全員が誰?という顔をしている。

 

 

「吉田同様このホテルに泊まっています」

 

 

今は少しでも時間が惜しい。達也の言葉に古葉雪花なる人物への疑問は残るものの克人は中条あずさに二人を呼んでくるように伝える。

 

 

「……達也くん。その人選の理由を訊いても構わないかね?」

 

 

すると渡辺摩利がこの場にいる人間全員の疑問を代弁した。

達也はそれに男子メンバーの試合も練習も殆ど見ておらず得意な魔法も魔法特性も知らないということを理由として挙げた。

 

 

「今の二人なら、良く知っているということか?」

 

「ええ。吉田と古葉のことは良く知っています」

 

「ふむ……一理ある。調整は他のエンジニアが手伝うとしても、相手のことが分からなければチームプレイは難しいだろうからな。それで、最大でない理由は何かね?」

 

「実力ですよ」

 

「ほぅ?」

 

 

達也の自信に満ちた回答に興味深げな視線が集まったところで摩利は真由美をちらりと見る。

 

 

「達也くん、吉田幹比古くんと貴方がクラスメイトで友人なのは知っていたわ。校内でも何度か一緒にいるところを見ているしね。でも古葉雪花くんという名前がどうして出てきたのか全く分からないのよ。1-Cというと一科生だし深雪さんとも別のクラス。風紀委員でもないわよね。達也くんとどんな接点があるのか教えてもらうわけにはいかないかしら?」

 

 

真由美が疑問に思ったことは全員が疑問に思っていたことである。達也が二人を選んだ理由は「実力があり良く知っているから」。幹比古はクラスメイトで友人、彼のことを良く知っており実力を知る機会があってもおかしくない。ところが古葉雪花なる人物に関しては何の繋がりも見えてこない。そもそも古葉雪花という人間を知っている者がこの場に達也しかいない。一科生で達也も認める程の実力を持ちながら九校戦にエントリーされていない生徒。そんな生徒がいるのかと思うのは自然なことだ。

 

達也は内心で雪花に少しばかりの謝罪をして口を開いた。

 

 

「彼は弟ですから」

 

 

一瞬の静寂。そして真由美が達也を睨み付けた。

 

 

「達也くん!冗談を言っている場合ではないの!」

 

「冗談ではありませんよ、正真正銘弟です。彼が古葉つまり母の旧姓を名乗っているだけです」

 

「リンちゃん!」

 

「既に調べました。古葉雪花。弟かどうかはさておき確かに一校一年のC組に在席しているようです。…ただ出席率は0%、入学以来一度も登校していません」

 

「……何それ…そんな生徒がいるの?」

 

 

愕然とする真由美。一校のそれも一科生に入学できるのはほんの一握りの優秀な魔法師の卵達。そこに入学するためにどれだけの努力をしなくてはならないのか真由美は身を持って知っていた。

 

 

「…病気か何かなの?」

 

「病気ですね。引きこもりです」

 

「私、頭痛くなってきた」

 

 

真由美が頭を抱えているとあずさが息を切らしてミーティングルームへ入ってくる。その傍らにはわけがわからないといった感じの幹比古がいる。

 

 

「司波くん!教えてもらった部屋に行ったら女の子しかいませんでしたよ!一応確認はしましたが人違いだと言われましたし!」

 

「恐らくそいつです。そしてもう部屋からは逃亡しているでしょう」

 

「ええ!?あれが古葉くん!?」

 

「先に吉田の方だけ話を通しておきましょう。古葉は深雪に連れてこさせます」

 

 

 

 

 

幹比古が突然の出場の申し出に混乱しながらも頷き、一旦部屋へ戻り状況を整理しているころ。

 

古葉雪花は電話で呼び出しを受けていた。

 

『もしもし、雪花。今どこにいるのかしら?』

 

「さっさあ?風の赴くままに来ちゃったからなー!」

 

『そう、では十五分以内に一校のミーティングルームへ来なさい。来なければ一昨日の写真が白日の下にさらされることになるわよ?』

 

「五分で行きます」

 

 

彼は何年か振りの全力疾走を余儀なくされた。




本当はもう一話投稿したかったんですが間に合いませんでした。

いよいよ次話で雪花と一校幹部が対面します。たぶん。

モノリス・コードが盛り上がるようこの辺の話は大事にしたいです。

さて明日も0時に投稿します。

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