魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
決勝トーナメントの組み合わせが発表された。
準決勝第一試合、第三高校VS第八高校。第二試合、第一高校VS第九高校。
トーナメントの開始は正午。ぼくたちの試合は第二試合だけど、三校の試合を見逃すわけにはいかない。
というわけで、少し早い昼食を取るべく兄さんと姉さんはランチボックスを手にホテルへ。ミッキーも自室へと戻った。そしてぼくはといえば─
「格好良かったですよ!特にあの『チェックメイトだ』のところが!」
「うう、今思えば恥ずかしい…その台詞」
「私は『別に、アレを倒してしまっても構わないよね!』のところが格好いいと思ったわよ?一人言にしてはテンション高くて」
「止めて!ぼくのライフはもうゼロだから!」
─澪さん、響子さんとお食事をしていた。そしていじめられていた。
「大体、響子さんどうしてここが分かったんですか!澪さんは急に来ることになったのに」
今、ぼくらがお食事会をしているのは澪さんが泊まるVIP用の部屋。部屋というには広く小さなパーティーが出来そうなくらいだ。
で、なんでお食事会に響子さんも参加しているかというとぼくがこの部屋の場所を電話で教えてもらいやってくるともうこの部屋の前に響子さんがいたのだ。そしてそのまま響子さんを加えてお食事会となった。
「裏技よ」
ハッキングですね分かります。
試合後、姉さんから返された携帯電話のGPS情報だけじゃ部屋の位置までは特定出来ないだろうから五輪家のためにずっと空けられていたこの部屋に澪さんがチェックインしたのも調べてここへ来たのだろう。澪さんとぼくが親しいのは知っているわけだし。
「そういえば雪花くんと藤林さんはどうしてお知り合いなんですか?」
このパターンは!?ぼくが気がついた時には遅かった。既に爆弾は落とされていたのだ。
「婚約しているんです。私たち」
カランと澪さんがナイフを床に落とした。すっと現れた執事が新しいナイフをテーブルに置く。あっ邦人さん、お久しぶりです。
「こっこここ婚約!?雪花くん、本当なんですか!?」
「ええ、九島烈閣下に嵌められまして。そういうことになってしまいました」
「雪花くんに婚約なんてまだ早いです!こんなに小さいのに!」
「小さいは関係ないよ!というか貴女にだけは言われたくないよ!」
チラッと響子さんを見ると口元がニヤけていた。確信犯である。こうなることが分かっていてあえて言ったのだ。
その後もお食事会の間中、婚約についての話となってしまいお食事会が終わるころにはぼくの精神力はごっそり持っていかれていた。ぼく、試合が控えているんですが。
それに澪さんが「こうなったら戦争ですっ!」とか言ってたけど大丈夫だろうか?…大丈夫だよね?だって最後は笑いながら「次の試合も応援しています」って言ってくれたし。大丈夫なはずだよね!?
◆
「おい、二人とも顔色が悪いぜ?大丈夫かよ?」
「なんだか随分疲れてるようだけど…」
一般用観客席で兄さん、レオぽん、ミッキーと落ち合って早々にそう問われた。
試合で気合いが入れば大丈夫なんて答える兄さんは確かに疲れているようでぼくもこんなんなのかと思うとため息が出る。
「はあ…ぼくも試合になれば大丈夫だと思う。なんというか年上の女性は怖いなって不安になってただけだから」
「なんだそれ?」
「真理」
馬鹿なことを言うぼくを置いてけぼりにして三校対八校の試合が始まろうとしていた。
と、ここでぼくは
「兄さん、
「来ていたが…なんだ、知り合いか?」
「いや、チラッと見かけたからそうかなって。ぼく実はファンなんだよね!帰っちゃうかもしれないしこれから探して会ってくる!」
「雪花、試合は…」
兄さんの言葉も聞かずにダッシュで客席を離れる。そして客席全体を見渡せる位置に移動して遠隔視系知覚魔法『マルチスコープ』を発動。これにより実体物をマルチアングルとしてとらえることが出来る。
「見ーつけた!」
どうにか試合が始まる寸前で見つけ出し急いで向かう。
そこには一般客に混ざり何の変装もせずに座っている千葉修次がいた。
「千葉修次さんですか?」
「…君、一校だね。僕に何か用かい?」
長身で兄さんより少し高い身長、細身の引き締まった身体に涼しげな眉目の美青年。 気性の優しさが滲み出ている。
そしてぼくはそんな世界的に有名な剣術家である好青年にこう言い放った。
「いえ、一校の男女と名高い渡辺先輩の彼氏がどんなものか見ておこうと思いまして」
ぴしりと千葉修次の顔が固まった。
ちゃっかり再登場、奉賀邦人さん。最近出番のない家政婦の紗世さんの夫です。
さて明日も0時に投稿します。