魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
では、また後書きで。
第九高校との試合は「く」の字に湾曲した人工の谷間である渓谷ステージで行われた。
と言ってもぼくは何もしていない。自軍のモノリスの前でボーッと立っていたら試合は一校の勝利で終了した。
試合を一言で表すならミッキー無双。それくらいこの試合はミッキーの独壇場だった。
「結界」の魔法で霧を発生させ九校選手の視界を悪くする。これにより九校オフェンスは崖に沿って恐る恐る進むこととなり兄さんは簡単に九校陣地へと到達する。
兄さんの周囲だけ意図的に霧が薄くなっていたし霧のおかげで観客の目がないため存在認識の視力を存分に使うことができたからだ。
そして相手に気付かれることなく九校ディフェンダーの背後に回り、難無くモノリスを開き八校との対戦時同様ミッキーが精霊を介してコードを見て打ち込み一度も戦闘を行うことなく勝利したというわけだ。
凄いぞミッキー。
「何故お前は試合前からボロボロだったんだ?」
「いや、うんまあ色々。見た目ほど酷くないから大丈夫」
「はあ…決勝は三時半、今から二時間後だ。遅刻するなよ」
「分かってるよ」
CADの調整を担当している兄さんは二時間のインターバルを競技エリアで過ごすらしいのでぼくは部屋へ戻ることにする。
「修次さんのおかげで最後のピースが揃ったわけだし
部屋へと戻る道中、ぼくはアレの完成に胸を踊らせながら、修次さんとの決闘を思い出していた。
◆
「いえ、一校の男女と名高い渡辺先輩の彼氏がどんなものか見ておこうと思いまして」
そんなぼくの暴言に、ぴしりと固まってしまった千葉修次は数秒間のフリーズを経て言う。
「表に出ようか?」
その言葉にぼくが頷いて千葉修次と移動を開始する。向かうのは九校戦会場外の、屋外格闘戦用訓練所。千葉修次のコネで簡単に借りられた。
「で、本当の目的はなんだい?」
しれっと千葉修次が言う。
「ぼくの力がどの程度なのか確かめておこうと思いまして。剣術家で知られる千葉修次さんに模擬戦を挑もうとした次第です。別に渡辺先輩は男女なんて言われてませんよ?ぼくが個人で思っているだけです」
「…別に怒らせようとしなくても模擬戦なら受けて立つよ。君にも興味があるしね」
「怒らせようとしたのは最初だけで後は本心なんですが?」
「さて、早く始めないか?」
懐から二十センチほどの短刀を取り出してやる気満々の千葉修次。うん、良い感じだ。なるべく本気でやってもらわないとね。
「じゃ、ぼくはこれで」
取り出したのは九校戦で使った拳銃型のCAD二丁。つまりは九校戦のレギュレーションに沿って作ったかなり性能の低いCADである。
「…なめられたものだね」
それを見てさらに目を鋭くさせる千葉修次。
「ルールなんですけどどちらかが降参するか戦闘不能になるまで。後遺症の残りそうな攻撃はアウトというのはどうでしょう?」
「構わないよ」
「では、このコインが落ちたら試合開始ということで」
右手でコインを宙へ弾くと同時に両手でCADを構える。さあ、
コインが落ちると同時に千葉修次が千葉の十八番である自己加速術式によって一気に攻めてくる。とりあえず
千葉修次が得意とし幻影刀と言われる所以である加重系魔法『圧斬り』は細い棒や針金などを沿って極細の斥力場を形成し接触したものを割断する近接術式 。それを千葉修次の場合、起点となる短刀だけを目印にして何もない空中に作り出す。驚異的な技術だ。
まずは小石に群体制御をかけて、それを一斉に飛ばし敵を攻撃する魔法『ストーン・シャワー』を使ってみるも難無くかわされる。
その後も近づかれないようにひたすら魔法を撃ちまくる。『ドライ・ブリザード』、『エア・ブリット』、が見えない刃によって打ち落とされるか、かわされる。このままでは近づかれるのは時間の問題だろう。試合開始から30秒弱…良く持ったほうである。うん、ぼく頑張った。
「というわけで、ここからは本気の本気でいかせてもらいます」
ぼくは兄さんにも姉さんにも見せたことのない切り札を使った。
今のぼくには痛すぎる諸刃の剣を。
◆
「強かったな修次さん。結局勝てなかったし」
部屋に戻り一時間。完成した武装一体型CADエクスカリバーを片手に修次さんとの決闘後のことを考えていた。
千葉だとエリカと被るし修次で良いよと言いながら最後は笑って許してくれてイケメン全開だった。ありゃ渡辺摩利も惚れるわ。
「将輝には悪いけど優勝はぼく達がもらうよ」
決勝戦、負けるわけにはいかない。
ぼくは完成したCADの調整をお願いするため兄さんの元へと向かった。
というわけで次はいよいよ決勝戦。もしかしたら二話に分けるかもしれませんがまだ書いてないのでどうなるかは未定です。
今話ですが、かなり急いで書いたので誤字脱字多いかもしれません。
さて明日も0時に投稿します。