魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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新人戦モノリス・コードが長くなり過ぎたので章をモノリス・コードで分けました。


九校戦八日目⑦ VS三校③

作戦は簡単だ。

 

そもそも将輝と撃ち合いをしていたのは雪花だったのだ。そしてエクスカリバーを使っていたのが達也だ。入れ替わったのは開幕直後、雪花がわざわざ(・・・・)声を出して魔法を発動させた時である。光の目眩ましによって視界が塞がっている間にCADを入れ換えたのだ。体格の違いを隠すために様々な(・・・)工作をし、さらにはあえて声を出して魔法を発動させることで剣=雪花だと思わせる。全員がローブを着ていたのはこの作戦のためで雪花が決勝戦までの間、ローブを着て試合に挑んでいたのはこの試合を想定し慣れるためでもあったのだ。

 

将輝の注意が逸れた瞬間に走り出していたのは撃ち合いをしていた雪花だけでなく将輝の援護射撃によって吹き飛ばされ地面に倒れていた達也もだったのである。

 

そして達也はレギュレーション違反による動揺で一瞬の空白を作り、雪花の声によってさらなる動揺を強いられた将輝の後ろを取って、指を鳴らしその音を増幅、大音響による鼓膜の破裂と三半規官のダメージによって、将輝を戦闘不能に追い込んだのだ。

が、同時に達也本人も膝をつき戦闘不能に陥る。音によるダメージを受けたのは達也も同じなのだ。

 

 

(後は任せたぞ…雪花、幹比古)

 

 

試合はまだ終わっていない。

 

 

 

 

将輝の戦闘不能、つまり敗北は真紅郎の心を大きく揺さぶっていた。

 

「吉祥寺、避けろっ!」

 

ディフェンスに残したはずのチームメイトの声を間近に聞いて『避雷針』の魔法を反射的に発動。

草の電気抵抗を改変することで幹比古の放った電撃を地面に流す。真紅郎は加重魔法で押さえ込んでいたはずの幹比古が立ち上がってこちらを睨みつけているのにようやく気がついた。

 

 

概ね作戦通りだった。雪花だと思わせた達也が何らかの方法で相手の意識から外れ、達也だと思わせた雪花がタイミングを見計らって正体を明かし将輝を動揺させて達也がその隙に止めを刺す。『一条』という強敵に勝つための作戦。それは成功したのだ。

 

 

─ならば、僕が逃げるわけにはいかない!

 

 

震える足を意地で支え雷撃魔法を放つ。

 

 

─僕なら出来る!あの日貰った勇気を、自信を、そしてそこから得た努力の成果を今、ここで見せる!

 

 

身体をかすめる魔法を無視し、大型携帯端末形態CADのコンソールに、長いコマンドを打ち込む。

 

 

─吉祥寺真紅郎を倒す!

 

 

そしてコマンドを打ち込み終えCADから離した右手を、足元の地面に叩きつけた。

それは五つの魔法の連続発動。吉祥寺真紅郎という敵を倒すべく放たれた幹比古の全て。

 

 

一つ目の魔法『地鳴り』が地面を揺らす。そして二つ目の魔法『地割れ』によって幹比古の手元から地割れが走り真紅郎が空中へ逃れようと魔法を発動させる。が真紅郎の足は地面を離れない。草が足首に絡みついていたからだ。三つ目の魔法『乱れ髪』によって地面すれすれの気流を起こし絡みつかせたのである。さらに四つ目の魔法『蟻地獄』により足の下に地割れが到達し、草が足を地面に引きずり込んだ─ように錯覚した。

 

焦った真紅郎は全魔法力を跳躍の術式に注ぐ。そして必要以上に高く飛び上がった真紅郎に五つ目、最後の魔法が襲いかかった。

 

『雷童子』。

雷撃の魔法が真紅郎を空中から打ち落とした。

 

 

しかし、満身創痍で魔法力もほとんど残されていない幹比古に、三校最後の選手の土砂の塊を叩きつける魔法、『陸津波』が迫っていた。

 

 

─後は頼んだよ、雪花。

 

 

幹比古は回避を諦め、残った一校最後のメンバーに全てを託しながらそっと目を閉じ押し寄せて来る土砂の衝撃に備えた。

 

 

「諦めたらそこで試合終了ですよ…?」

 

 

 

試合終了のブザーが鳴り響き、目を開いた幹比古の目に飛び込んできたのは地面に倒れた三校選手の姿だった。




また詳しい種明かしは次話で。

小さい伏線を回収出来てちょっと安心しました。

さて、明日も0時に更新します。

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